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プロローグ――エンシェントドラゴンは番と××したい

アンフェールとグレンとお風呂 ※

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 離宮――浴場手前、脱衣所。

 脱衣所は側仕えが数人出入りしても狭くない程度の広さがある。
 アンフェールとグレンは、並んで脱衣している。
 若干、離れている。
 距離を開けられたのは、『閨を怖がっている弟』という設定があるからだろうか。

 アンフェールは全裸になる事に躊躇いは無い。
 精霊時代、アンフェールはグレンと全裸で魔力循環をしていたし、慣れたものだ。
 パッパッと脱いでスピーディーに全裸になる。
 躊躇が無いどころか、これから楽しい事をするんだし鼻歌でも歌いたい位の気分だ。しかし、可愛い弟は鼻歌を歌いながら全裸にならないだろうから歌わない。

 アンフェールはグレンを観察すべく、そちらの方にチラリと目をやった。
 既に脱ぎ終わったグレンは腰にタオルを巻いていた。

(ん……。そこを隠すのか? ……ああ、そういえばグレンは自分の性器にコンプレックスがあったな。
 閨教育に怯えている――という風に見られている私が、大きな性器を見て怖がってはいけないと考えたのか。残念だな。久しぶりにアレを見たかったが)

 アンフェールはついジロジロと彼の下半身を見てしまう。タオル越しであっても、僅かに膨らんでいる。その膨らみで想像するのは長年見てきた立派な形だ。
 グレンは視線に気づいたらしい。手で膨らみを隠されてしまった。
 顔を上げると、グレンと目が合った。彼はこちらを見ていたのか。恥ずかしそうにしている。見すぎたかもしれない。

(……いかん。自重しよう。可愛い弟が兄の性器を見たがったらおかしいからな)

「兄上。よろしくお願いします」
「……っ! あ、ああ。頑張ろう」

 アンフェールは何事も無かったかのように、涼しい顔で挨拶した。
 頬を染めて照れていたグレンも、弾かれるように言葉を返してくれる。

 精霊時代、何度もグレンとはお風呂に入っている。しかし今回はただのお風呂じゃない。閨のお風呂だ。
 アンフェールはそれを考えただけで、勃つし、お腹がきゅんと疼くのだ。

「アンフェールは……」
「どうしましたか?」
「アクセサリーを外さないのか?」

 アンフェールの胸はドキリと跳ねた。
 何も隠さず全裸のアンフェールだがチョーカー、ブレスレッド、アンクレット、指輪とフル装備だ。
 これはフェロモン受容体を縛る為の魔道具だ。
 全部外したら、アンフェールは番のフェロモンで正気を失ってしまう。グレンを犯してしまう。なので外せない。

「……これは身を護る為の魔道具なのです」
「なるほど。入浴の時は無防備になるからな。それはつけていた方がいい」

 グレンは妙に早口で納得していた。
 アンフェールはそんなグレンの様子を不思議に思い、コテンと首を傾げた。


 ――アンフェールは気づかない。
 全裸に宝飾品だけを付けた姿はかなり色っぽいのだ。男娼が主人に侍る時はそのような姿でいる事も多い。
 グレンは当然そういった知識はないのだが、飾り立てた弟の姿に色気を感じている。
 彼が腰に巻いたタオルの膨らみを手で抑えたのは、アンフェールの視線が恥ずかしかったからじゃない。
 色気に中てられて勃ち上がった性器を、押さえつけていたのだ。



◇◇◇



 離宮――浴場。

 浴場はかなり広い。
 客人を迎える事もあるし、閨行為に使われることもあるからだ。

 アンフェールはバスチェアに腰かけている。
 準備はグレン任せだ。
 初めての行為に挑む、閨を怖がる弟がテキパキ動いてはいけない。設定に忠実に、ちょこんと置きものになっている。

 目の前で跪く姿勢のグレンは、湯桶を使い湯煎でもするように香油の瓶を温めている。
 おそらく冷たい香油を塗られて、アンフェールがヒンヤリして驚かないようにだ。
 優しい。

 なんだか慣れた様子にも感じて、ちょびっとだけムムっとするけれども。
 慣れた、とは言ってもグレンは性行為に対して基本消極的だ。
 だからこういう知識は精霊時代のアンフェールか、唯一の閨係であるロビン由来なのだ。

 グレンの閨係はロビンだとエドワードから教えて貰った。当時、ボロボロに傷ついたグレンの心と体を守るため、ロビンは閨係になったと。
 ロビンが閨係になった理由を聞いて納得してしまった。
 彼は父性の塊のような男だ。守るべき子供がいたら守ってしまう男だ。
 それが例え、彼に向かない閨係としての役割が必要だとしても。

(……ん? しかし、グレンとの閨を覗き見た時は結構ノリノリだったような……?)

 グレンを後ろから抱き、快感に追い詰めていた大柄な男。
 器用な手技でグレンを絶頂に導いていた、あの――……。

 アンフェールは、ぷるぷると首を振った。
 父親ロビンの夜の顔は忘れよう。
 なんかこう、親の閨をちょっとでも想像しちゃうと、わーってなるのだ。精神衛生上よくない。

「アンフェール、緊張しているのか?」

 グレンが心配そうにこちらを見ている。
 いけない。余計な事を考えてこれからの楽しい時間に水を差すのは止めよう。折角の番とのお風呂なんだから。
 アンフェールは彼を安心させるために、可愛い弟の顔で微笑んだ。

「いえ、大丈夫です。兄上にしていただけるのですから」
「アンフェール……」

 グレンはなんだか、じーんとしている。兄として嬉しかったのかもしれない。
 閨を怖がる弟から、性器の扱いを任せてもいいと思って貰える程、信頼を寄せられている――と。

 別にアンフェールは閨が怖い訳じゃないし、番に扱いてもらえるならこれ程ハッピーな事は無いと思っている。
 しかしグレンはそんなこと知らない。
 でも彼は凄く幸せそうだし、アンフェールも幸せだし。
 どっちも幸せなら、それでいいのだ。




 グレンは香油の瓶を開けている。ついに始まるらしい。
 アンフェールはドキドキしながら脚を開いた。

 アンフェールのペニスは既に勃っている。
 白く、つるりとした細身のペニスは皮を被っているのでシンプルな形状に見える。
 幼体の頃より太さも長さも成長しているのだが、まだまだ幼い形だ。実は精通も訪れていない。
 前世の頃と似た姿形をしている割に、ここはあまり似ていない。
 グレングレーズ程ではないにしろ、古代竜の性器は王らしく立派だったのに。

「優しくする。だが、怖くなったらちゃんと教えてくれ。我慢してはいけないよ?」
「はい」

 そう言って、グレンはアンフェールの性器に香油を垂らし、丁寧に塗ってくれた。
 ペニスを包み込むように、男らしい手で優しく握られる。
 剣を握る手特有のゴツゴツ感が、自慰の時とは比べ物にならない位刺激的で堪らない。

 感覚だけじゃない。見た目だってそうだ。
 明るい浴室で、良く見えるのだ。番の手に収まるペニスは発展途上のくせに一丁前に反りかえっている。
 その、幼げな興奮が視覚的にとてもいやらしい。

 グレンの手が、僅かに動いた。

「あ、あ……ッ」

 思わず情けない声が漏れる。上擦った、普段より少し高い声。 
 その声にグレンがピクリと反応する。
 弟になって初めて官能の声を聞かれてしまった。
 その事にアンフェールのほっぺはカッと熱くなってしまった。思春期の身体は恥ずかしがりなのだ。

 グレンが顔を上げる。目がバチリと合う。
 アンフェールは真っ赤になった顔を見られてしまった。グレンの頬も赤い。
 なんかこう、居たたまれない空気だ。口端が引き攣る。

「その、これからアンフェールのここを、剥く、のだが」
「はい」
「痛かったら、ちゃんと痛いと……言って欲しい」
「……はい」

 グレンはたどたどしく、これからする事を教えてくれた。
 どうやら包皮を剥くらしい。
 『ヴィシュニア王国と風俗』には、性器の皮が柔らかいうちに剥く習慣をつけるのが望ましいと書かれていた。
 衛生的に大事な事だと。

 グレンは弟の健康のために真剣に取り組んでくれている。
 頬を染めながらも、その表情は真剣そのものだ。

 しかしアンフェールは簡単に剥けるようになっている。
 毎日のように番を想いながら自慰をしているし、その時は当然、剥いているからだ。
 だからアンフェールにとっては、番に剥かれて敏感な部分を見られるという、刺激的なプレイでしかないのだ。

「んッ……ふ、ぅ」

 グレンはやわやわと丁寧にマッサージをしてくれる。
 上下に、引き下ろすような動きで。
 快感としては弱い刺激であるものの、興奮がそれを遥かに超えてくる。

「~~~~ッ、あぁ……」

 つるりと皮が剥け、ピンク色の亀頭が、しっかり顔を出してしまった。
 そこはぷっくりと膨らんでいて、つやつやしている。

 興奮が分かられてしまって恥ずかしい。
 いやらしくなった部分を見られている。
 そう考えただけで、アンフェールの目は潤むし、呼吸は荒くなってしまった。

「痛くなかった?」
「……はい。大丈夫です」
「良かった」

 グレンはホッとしたように微笑んでくれた。
 優しげな顔をされると、途端に恥ずかしくなってしまう。アンフェール一人で興奮していたと自覚してしまうからだ。

「でも、恥ずかしいです。見られてしまうのは……」
「……そうか」

 アンフェールは目を伏せ、気持ちを素直に口にした。


 ――しかしグレンから見たその顔は、ひどく煽情的だった。
 上気した頬も、震えるまつ毛も、しっとりと濡れた瞳も。
 煽られたグレンは当然ぎこちなくなってしまうし、顔も赤らんでしまうし、下半身の血の巡りが良くなってしまう。


「……恥ずかしがる事はない。アンフェールのここはとても愛らしいし……綺麗だ」
「兄上……」

 グレンは優しい。
 もじもじするアンフェールにちゃんとフォローする言葉を掛けてくれる。

「それに、毎日するのだ。いずれ慣れる」
「毎日……して下さるのですか?」
「ああ。ロビンからそうするようにと」

 グレンが顔を上げる。

「私がアンフェールを、綺麗にしてあげよう」

 グレンは騎士が姫君に傅くような姿勢で、アンフェールに微笑みかけてくれた。

 アンフェールは『手ずからケアをしてくれる』という約束にドキドキしてしまう。
 囁く様な低い声もいけない。雄みを感じてゾクゾクしてしまう。
 アンフェールはそのドキドキゾクゾクでお尻が疼き、熱い蜜を零してしまうのだ。


(グレンは兄として、真面目に弟の事を考えてくれているのに……。私ときたら欲情するばかりだ)


 アンフェールは激しく反省してしまった。

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