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隠れ家――アンフェールとグレン4

アンフェールと幸せと零れた涙 ※

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「グレン、落ち着いて。ぼく小さいから、グレンのおっきいのお尻に入んないよ」

 アンフェールは慌てて説得した。
 大事故が起きてしまう。
 現在の年齢である十二歳の人型なら大丈夫そうではあるけれど、今取っている人型は七歳児の大きさだ。どう考えても入らない。

「分かっている。……指を、入れるだけでいい」
「指だけならいいけど……。ほんと、思ったより広がりそうだから挿れてみよう、とか、絶対ダメだからね!」
「絶対に傷つけない。約束する」

 アンフェールは再三確認してしまった。
 思わずそうしてしまいたくなるぐらい、グレンの様子はおかしかった。
 あと、グレンの性器の状態が凶悪過ぎて『待て』は無理だと思えてならなかった。

 グレンは許しを得たとばかりに、指でアンフェールのアナルをマッサージしている。
 クチクチという水音と、時折はぁはぁとグレンの熱っぽい呼吸音が聞こえる。獰猛な獣を思わせる様な呼吸音だ。
 凄く気持ちいいのに、ちょっと怖いのは何でだろう。

(ああ、グレングリーズと初めてした時を思い出すからだろうか。あの時、彼は番のフェロモンで飛んでしまって正気じゃなかった。
 赤ちゃんとはいえ、二メートルの巨体に押さえつけられたのは、ちょっと怖かった。私は爺のくせにバージンだったからな……。
 その時の彼と比べたらグレンはまだ真面まともか)

 アンフェールは、犯されるように暴かれた夜を思い返す。

 何度も胎の中に出され、気を失って、意識が戻ってもグレングリーズの陽根が突き刺さったままだった時には、どうしようかと思った。
 アンフェールは番のフェロモンが分からなかったから、ずっと素面シラフだった。
 本来番同士であれば、お互いのフェロモンに酔うから、そんな一晩中の交接にも耐えられるんだろう。意識が正常なままでグレングリーズの熱情を毎夜注がれるのは大変だった。
 初回以外は彼も飛ぶことは無かったから気を使ってはくれたけど。

「うぅん……ん……」
「アンフェール、気持ちいい? マッサージだけで凄く濡れている。」

 アンフェールは気持ち良くなっている。だから漏れる声も甘く切ない。
 グレンの目は相変わらず不穏で、こんな甘ったるい声を聞かせるのは危ないと分かっているものの、快感に負けて抑えられない。

「挿れるよ、アンフェール。ゆっくり……ゆっくりするから……」
「あ……」

 グレンの指がアナルに押し当てられ、ゆっくりゆっくり挿入はいってくる。
 アンフェールの現在の人型はとても小さいため、大人の男の指が一本であっても凄く大きく感じる。とはいえ、丁寧にマッサージをしてくれたグレンの指は蜜に濡れ、ふやけているのか痛みもない。
 普段直系三センチほどの竜石を排出をしている後孔だ。指二本位なら受け入れられるだろうか。

「ああ、凄いな。小さな穴なのに、入ってしまうね。分かる? 指、根本まで入ったよ」
「うん……。あ、ぁ……ぐれん、ゆび、ながい……んッ、あ、だめ、あたってる……ああっ!」

 アンフェールの幼体は身長一メートル程だ。
 だから成体よりも内部がかなり浅く、中指を根元まで入れればかなり奥の方まで届く。スタイルの良いグレンは指も長いのだ。
 子宮と排泄口の切換え弁の辺りまでは届いている。正確にスポットに当たらなくても、弁の周囲は広く性感帯になっている。

「アンフェールは、ここが気持ちいいのか?」
「やっ、あっ、あ~~~~っ!!」

 グレンは良いスポットを聞いたとばかりに、探る様にぐにぐにと押してきた。
 アンフェールは、あまりの刺激に身体を大きく撓らせて、高い声で喘ぐ。

「ここ、ぽこっとなってるトコ……すごく良いんだね。押すと、アンフェールが可愛くなる……」

 そう言ってグレンはうっとりと笑いながら、アンフェールを攻め立てた。
 太い男の指でぐりぐりとされると、気持ち良すぎて怖くなる程だった。思わず腰が逃げてしまう。
 するとグレンは逃がさないと言わんばかりに、グッと腰を押さえつけてきた。その部分への愛撫を止めてくれない。

「いッ~~~~」

 アンフェールは翻弄され、言葉にならない声を上げて、その感覚に耐えた。
 気を抜いたら正気が飛んでしまいそうだった。グレンは蜜に酔い、欲情している。欲情した彼からは強いフェロモン臭が香っていた。
 その香りに酔った状態で、弁をグリグリされ、奥の方の良い部分をトントンノックされ続けたら。
 アンフェールは入りもしないのに、挿入を強請ってしまいそうで恐ろしかった。

 グレンは後孔への手技はそのままに、アンフェールのペニスにちゅっと強く吸いついてきた。
 予告なく与えられた性器への強い刺激に、アンフェールは弾けてしまった。

「ひっ……!! い゛!!」

 強いオーガズムの波。
 何度も何度も身体を震わせ、アンフェールは達した。
 きゅうきゅうとお尻の穴は締り、締まれば中に入り込んでいるグレンの指の違和感を強く感じた。その、締める事でも強い快感を得てしまうのだから堪らない。
 息も吸えない程の緊張から、徐々に、荒い呼吸に戻り、少し、楽になってきた所でグレンの指がずるりと抜かれた。

「やっ……ンっ!」

 肉の輪が内側から引きずり出されるような感覚が、強い快感を伴ってしまう。抜かれれば、開いたアナルから熱い蜜が多量にゴポリと流れ出た。

「アンフェール」

 高揚したグレンの声。アンフェールは息も絶え絶えにグレンの顔を見る。

(ああ。まだ、酔っている顔をしている)
 
「ぐれん……」
「その、挿れない、から、擦り合わせるのは許してもらえないだろうか……」
「挿れない?」
「挿れない」

 再び確認したところで、アンフェールはうつ伏せにひっくり返されてしまった。

「なんで? うしろ……」
「脚を閉じて……。そこで擦るから。大丈夫。アンフェールが嫌がる事はしないよ」

 この姿勢だとグレンの様子が見えない。

「……うつ伏せだと不安かな、アンフェール。ごめんね。ただ、今の私の顔を見せたくないだけなんだ」
「ぐれん……」

 ああ、最近マシになって来たとはいえ、グレンは自己肯定感の低い子だった。
 閨の顔を見られるのも抵抗感があるって聞いてる。
 本来そういう感じなのだ。精霊設定であるアンフェールには、気持ち良くなる顔を見せてくれるけれど。

 グレンは今、普通の状態でないと自覚してるんだろう。もしかしたら、アンフェールの不安感も伝わっているのかもしれない。

(私に嫌がられたらどうしよう、と不安になっているんだろうか。なっているんだろうな。だから顔を見られたくないんだ。
 こんな……初めて番の蜜に当てられて過度の欲情をきたしていても、私に嫌がられる事を怖がるなんて。
 ……馬鹿だな。馬鹿だ。私がグレンを嫌う事なんて万に一つもないのに。例え……制止を聞いて貰えず、後孔を犯されたとしても)

 グレンにされることは全て受け入れていると、きちんと伝えなければ。

「グレン、大丈夫だよ。怖がらないで……。ぼくは何をされても、グレンを嫌いにならないよ」
「アンフェール……」
「大好き、グレン。一緒に気持ちよくなろう? 顔を見られるのが怖いなら、このままでもいいから」

 アンフェールはそう言って、うつぶせの状態のまま、お尻に両手を当てる。
 尻のあわいを割り開くように見せれば、それは挿入を誘う仕草だ。しかし今回は挿入ではないので開くことはしない。それでも誘っているには違いない。
 体勢から、グレンの姿は見合ないけれど、体重を大きく移動したのかギシリとベッドが鳴った。

「アンフェール。私もアンフェールが大好きだ。ずっと……ずっとこうしたかった」

 見えなくても声だけで、グレンが泣きそうに顔を歪めているのが分かる。そんな顔をいっぱい見てきた。

(……立派に成長したのに、相変わらず私の番は泣き虫だ)

 アンフェールは気を抜いたように笑った。そして『大好き』という言葉を何度も反芻する。
 嬉しくて、そして切ない。

 アンフェールの尻にグレンの熱が触れる。ヌルついた股座にグレンのペニスが滑る様に入り込んできた。

「……っ、アンフェール、アンフェール……」

 グレンはアンフェールの名を繰り返し呼びながら、腰を振っている。

 アンフェールの股の間の三角地帯。閉じられた脚の隙間。
 達するには圧が少ないかもしれない柔らかな隙間は、しかし、アンフェールの蜜で溢れている。その蜜で粘膜の感度は増すだろう。
 後ろからは、はぁはぁと獣のような荒い息遣いがずっと聞こえている。すぐに出てしまうかもしれないと思ったけれど、堪えているようだった。
 勃ち上がったまま堪えていた時間が長かったろうに、少しでも長く味わいたいのかもしれない。

(朝まで、何度でも求めてくれていいのに……。初めては、特別という事だろうか。グレンは夢見がちな物語が大好きだものな。ロマンチストだ)

 アンフェールの会陰とアナルは、その逞しく張った熱で、何度も擦り上げられた。
 ぐちゅぐちゅとした水音は卑猥で、音だけ聞けば交接しているのと変わらない。立ち昇る性の匂いも何も変わらない。
 挿入は受けていないというのに、疑似的に処女を喪失したような気分になった。
 疑似的に、でも番と結ばれた気がした。
 アンフェールは幸せな気分になった。


(大好きだ……グレン……愛している)


 幸せであればある程、辛い。


(私はグレングリーズのように、この記憶だけをよすがに生きられるだろうか。『弟』として何も知らない顔をして彼の側に居続ける事が出来るだろうか――……)


 そうすると決意して、最後の交わりに挑んだというのに。番の香りに、熱に包まれると情けない程揺らいでしまった。

 白んでいく意識の中で、アンフェールの目からポロリと涙が零れた。

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