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隠れ家――アンフェールとグレン4
アンフェールとグレンの料理の話
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アンフェールとグレンは屋外テーブル席に夕食のセッティングをして、着座し「「いただきます」」と、声を揃えて食前の挨拶をした。
あれから刻んだ具材は、なぜか二人とも驚く程細かいみじん切りになっていた。
無心で刻んでいたらそうなっていた。シチューを作るってお互い分かっていて作業に取り掛かったのに。
これではすぐに煮溶けてしまう、とゴロゴロ野菜も別で作って投入し、シチューを完成させた。
細かい野菜はやっぱり煮溶けてしまったけれど、味を見ると野菜の甘みがよく出ている。これはこれで、ってやつだ。
今日はグレンが狩りをしていた間に焼いたパンもある。
酵母はフェンリルから頂いたリンゴから作った。齧れば鼻に抜けるリンゴのいい香りがするのだ。アンフェールの自信作だ。
「パン、いい香りだね。ドミグラスソースもリンゴを使うからかな。シチューと相性が良いね」
「でしょ? 香りが爽やかだから、お肉がいくらでも食べれちゃう。パン、朝の分も焼いてるんだ。ハムを作ってあるから朝はサンドイッチにしようかと思って」
「ああ、いいね。それは美味しそうだ」
先程の変な空気を引きずらないようにしたいのだ。アンフェールもグレンも料理の話が主体だ。
「グレンは料理、上手になったよね。最初は包丁も上手く使えなかったのに」
アンフェールは、最初にグレンと一緒に料理をした時の事を思い出す。
包丁の握り方から教えたのだ。危なっかしく芋の皮を剥く彼を懐かしむと、自然と笑みがこぼれた。
目をキラキラさせて、まだかまだかと煮込み中の鍋を何度ものぞく姿は本当に可愛かった。
「そうだな。……ふふ、実は内緒にしていたのだが、城の料理長と仲良くなったんだ。三年前くらいからか。城の厨房で時々料理をしているんだよ」
「ええ!」
ちょっと得意げな顔をして告白するグレンに、アンフェールは驚きの声を上げる。
確かに三年前くらいからか。メキメキ料理の腕が上がっていった。二年で料理の基礎が馴染んだから、応用が利くようになったと思っていた。
「……その驚いた顔が見たかった。アンフェールに美味しいものを食べさせたくてな。忙しいから毎日は無理だが、練習したんだ」
グレンははにかむように微笑んでいる。
アンフェールの目には彼の周りにキラキラとした何かが浮かんでいるように見えた。ランプの明かりとは別に、グレンの周りだけ明るい。
「ぼくの為に……」
「アンフェールから沢山のものを貰っている。何か返したかったんだ。料理なら泊まりの時に必ずするしね。私の料理で笑顔になってくれるアンフェールを見るとやり甲斐を感じた」
「うれしい……凄く、うれしい。グレン」
アンフェールは目頭が熱くなった。
子孫に祖先孝行して貰った――以前ならそう考えただろう。
番としての認識がかなり強くなってしまった今では、愛する番に給餌行為をされた感覚なのだ。
給餌行為は竜種にしてもフェンリルのような神獣、もしくは獣人にしても番に対する愛情表現に当たる。
グレンは恩返しをしてくれただけだと分かっている。
それでも愛されているように感じて、アンフェールの心は多幸感で満ちた。
グレンは席から立ち上がり、アンフェールに歩み寄った。
アンフェールの目から涙が落ちていたらしい。グレンはそれを指で優しく拭ってくれた。
少しだけ屈んで目線をアンフェールに合わせてくれる。顔が近い。
「私も嬉しい、アンフェール。きみがそこまで喜んでくれるなんて」
「だって、凄いなって思ったんだよ。城の厨房なんて、王族の人は普通入らないんじゃない?」
前世、人の世に人型で交じって過ごした事が何度かある。
前王朝時代、宮廷魔術師をした事もあった。だから王宮の様子というのは何となく分かる。
アンフェールは料理が好きだったから料理人達と顔見知りだったし、時々厨房に遊びに行く事もあった。
そこに王侯貴族がやって来ることなんて無かった。
記憶の中の城の厨房と、王子であるグレンが包丁を持っている姿を合成すると違和感が凄い。
国は変わっても厨房はそんなに変わらない気がする。城という性質上、準備する食事量が多い上に質を求められるからだ。
沢山の料理を扱う城の厨房は、ピーク時間は戦場のようだった。
だから料理人の口調が荒っぽくなるのは順当なのだ。戦場で綺麗な言葉を使うやつなんていない。
アンフェールが知っている料理人達は気の良い人達だったが、礼儀作法が出来るタイプではなかった。
料理人が王侯貴族と直に接する機会なんてほぼ無い。だからそれで問題なかったんだろう。
料理が上手ければ認められる世界だった。職人気質、なんだろうか。
だからそれ以外の所は出来なくても関係ないのだ。粗野なオヤジの手から繊細な料理が生み出されるのは面白かった。
当時アンフェールと一番仲が良かったオヤジは相当に口が悪かった。料理の腕だけはピカ一だったから料理長候補になっていたが。
彼らのような人たちが仕切る調理場に、身分がある人間が入っていくのは大変な事だろうに。
グレンは邪険に扱われなかったろうか。
「エックハルトと話した時に、友人とどのように過ごしているのか聞かれたんだ。二人で料理を楽しんでいると言ったら驚かれてな。料理が楽しいというなら料理長と話してみたらどうだと紹介されたんだ。
エックハルトの紹介とはいえ、料理長も私が料理をするという話に半信半疑だったらしいね。『箱入り王子様が本当に料理なんてするのか?』って聞かれたよ。だから実演したんだ。私が包丁を扱いなれているのを見て、彼は面白いぐらい仰天してくれた。ふふ、今思い出してもその時の料理長の顔は面白かった。
それから彼とは仲良しになったんだよ。アリウムを入れないレシピを私用に作ってくれるくらい、可愛がって貰っている」
グレンは得意げな顔をした。力こぶを作るポーズというか、腕まくりをするポーズというか、まかせろ! と言いたげなジェスチャーをしている。
そういう所はまだ子供っぽくて可愛い。
「そっかぁ……」
「アンフェールと過ごすようになってから、城にも親しく接する者たちが増えた。……昔の私が今の私を見たら驚くだろうね。城の人間に対して、とても臆病だったから」
グレンがにっこり笑う。その笑顔は穏やかだけれど力強かった。
城の人間に対してトラウマのあるグレンが、調理場で馴染んでいく過程は大変なものだったに違いない。
その頑張りを想像すると胸がまたきゅんと切ない痛みを訴えてくる。
頑張ったね、と褒めたくて、アンフェールはグレンの頭を子供にする様になでなでした。
「良かった。色々教えた甲斐があったよ。グレンが自信を持てるようになったら良いなって思ってたから。お城にグレンの味方が増えたのは嬉しいな」
「アンフェール……」
アンフェールはニコニコ笑いながら気持ちを伝えた。
すると感極まったような顔をしたグレンに、ギュッと抱きしめられた。
屈んで抱かれるとグレンの首筋の辺りに顔が来る。髪の長いグレンはその辺に香りが籠りやすい。アンフェールはフェロモンの香りにクラクラとしてしまった。
頬が熱く、熱を逃がしたくて呼吸を深くする。深くすればまたフェロモンを吸い込んでしまうのだ。
今の育ち切っていないフェロモン受容体では、我を忘れる程おかしくはならない。
それでも心拍数は上がってしまう。
グレンはアンフェールの変化に気付いていないのか、離す様子はない。その姿勢のまま耳元で言葉を続ける。
「ありがとう。本当に、返せないくらい沢山のものを貰ったんだ。料理ぐらいでは……」
「やだな、グレン。返すなんて思わなくていいんだよ。だってぼくたちは――……」
『――番なんだから』と酩酊感のままに言いかけて言葉が止まる。
それを口に出来たらどれだけ良いか。
アンフェールは気をしっかり持つべく、ギュッと目を閉じて歯を食いしばった。
おかしく思われないようにしなくては。
大きく息を吐いた後、両腕でグレンの身体を押す様にすると、彼は腕を緩めて離れてくれた。
いつもの様に無垢な笑顔を心がけてグレンの方を向いた。
「――ぼくたちは親友でしょ?」
「……そう、だな」
グレンは苦し気に眉を寄せ、僅かに頬を染めていた。
それがなぜなのか分からず、アンフェールはコテンと首を傾げた。
――アンフェールは気がついていない。
フェロモンによる酩酊感が出た表情に、どれだけの色気があるか。
アヴァロニアにあった国中の要人を陥落させた色気は、アンフェールにも備わっているのだ。
アンフェールはその艶っぽく誘う笑顔をグレンに向けたのだ。
グレンは自らの雄が勃ち上がるのを感じていた。
魔力循環中ではなく平時に、しかも友人を思いやる笑顔に対して欲情したのだ。
『唇を奪い、幼く小さな身体を暴きたい』と。
グレンはその事に驚愕し、慌ててアンフェールから離れて自分の席に戻った。
食事を再開し、平静を保とうとする。
シチューは少し冷めていた。
あれから刻んだ具材は、なぜか二人とも驚く程細かいみじん切りになっていた。
無心で刻んでいたらそうなっていた。シチューを作るってお互い分かっていて作業に取り掛かったのに。
これではすぐに煮溶けてしまう、とゴロゴロ野菜も別で作って投入し、シチューを完成させた。
細かい野菜はやっぱり煮溶けてしまったけれど、味を見ると野菜の甘みがよく出ている。これはこれで、ってやつだ。
今日はグレンが狩りをしていた間に焼いたパンもある。
酵母はフェンリルから頂いたリンゴから作った。齧れば鼻に抜けるリンゴのいい香りがするのだ。アンフェールの自信作だ。
「パン、いい香りだね。ドミグラスソースもリンゴを使うからかな。シチューと相性が良いね」
「でしょ? 香りが爽やかだから、お肉がいくらでも食べれちゃう。パン、朝の分も焼いてるんだ。ハムを作ってあるから朝はサンドイッチにしようかと思って」
「ああ、いいね。それは美味しそうだ」
先程の変な空気を引きずらないようにしたいのだ。アンフェールもグレンも料理の話が主体だ。
「グレンは料理、上手になったよね。最初は包丁も上手く使えなかったのに」
アンフェールは、最初にグレンと一緒に料理をした時の事を思い出す。
包丁の握り方から教えたのだ。危なっかしく芋の皮を剥く彼を懐かしむと、自然と笑みがこぼれた。
目をキラキラさせて、まだかまだかと煮込み中の鍋を何度ものぞく姿は本当に可愛かった。
「そうだな。……ふふ、実は内緒にしていたのだが、城の料理長と仲良くなったんだ。三年前くらいからか。城の厨房で時々料理をしているんだよ」
「ええ!」
ちょっと得意げな顔をして告白するグレンに、アンフェールは驚きの声を上げる。
確かに三年前くらいからか。メキメキ料理の腕が上がっていった。二年で料理の基礎が馴染んだから、応用が利くようになったと思っていた。
「……その驚いた顔が見たかった。アンフェールに美味しいものを食べさせたくてな。忙しいから毎日は無理だが、練習したんだ」
グレンははにかむように微笑んでいる。
アンフェールの目には彼の周りにキラキラとした何かが浮かんでいるように見えた。ランプの明かりとは別に、グレンの周りだけ明るい。
「ぼくの為に……」
「アンフェールから沢山のものを貰っている。何か返したかったんだ。料理なら泊まりの時に必ずするしね。私の料理で笑顔になってくれるアンフェールを見るとやり甲斐を感じた」
「うれしい……凄く、うれしい。グレン」
アンフェールは目頭が熱くなった。
子孫に祖先孝行して貰った――以前ならそう考えただろう。
番としての認識がかなり強くなってしまった今では、愛する番に給餌行為をされた感覚なのだ。
給餌行為は竜種にしてもフェンリルのような神獣、もしくは獣人にしても番に対する愛情表現に当たる。
グレンは恩返しをしてくれただけだと分かっている。
それでも愛されているように感じて、アンフェールの心は多幸感で満ちた。
グレンは席から立ち上がり、アンフェールに歩み寄った。
アンフェールの目から涙が落ちていたらしい。グレンはそれを指で優しく拭ってくれた。
少しだけ屈んで目線をアンフェールに合わせてくれる。顔が近い。
「私も嬉しい、アンフェール。きみがそこまで喜んでくれるなんて」
「だって、凄いなって思ったんだよ。城の厨房なんて、王族の人は普通入らないんじゃない?」
前世、人の世に人型で交じって過ごした事が何度かある。
前王朝時代、宮廷魔術師をした事もあった。だから王宮の様子というのは何となく分かる。
アンフェールは料理が好きだったから料理人達と顔見知りだったし、時々厨房に遊びに行く事もあった。
そこに王侯貴族がやって来ることなんて無かった。
記憶の中の城の厨房と、王子であるグレンが包丁を持っている姿を合成すると違和感が凄い。
国は変わっても厨房はそんなに変わらない気がする。城という性質上、準備する食事量が多い上に質を求められるからだ。
沢山の料理を扱う城の厨房は、ピーク時間は戦場のようだった。
だから料理人の口調が荒っぽくなるのは順当なのだ。戦場で綺麗な言葉を使うやつなんていない。
アンフェールが知っている料理人達は気の良い人達だったが、礼儀作法が出来るタイプではなかった。
料理人が王侯貴族と直に接する機会なんてほぼ無い。だからそれで問題なかったんだろう。
料理が上手ければ認められる世界だった。職人気質、なんだろうか。
だからそれ以外の所は出来なくても関係ないのだ。粗野なオヤジの手から繊細な料理が生み出されるのは面白かった。
当時アンフェールと一番仲が良かったオヤジは相当に口が悪かった。料理の腕だけはピカ一だったから料理長候補になっていたが。
彼らのような人たちが仕切る調理場に、身分がある人間が入っていくのは大変な事だろうに。
グレンは邪険に扱われなかったろうか。
「エックハルトと話した時に、友人とどのように過ごしているのか聞かれたんだ。二人で料理を楽しんでいると言ったら驚かれてな。料理が楽しいというなら料理長と話してみたらどうだと紹介されたんだ。
エックハルトの紹介とはいえ、料理長も私が料理をするという話に半信半疑だったらしいね。『箱入り王子様が本当に料理なんてするのか?』って聞かれたよ。だから実演したんだ。私が包丁を扱いなれているのを見て、彼は面白いぐらい仰天してくれた。ふふ、今思い出してもその時の料理長の顔は面白かった。
それから彼とは仲良しになったんだよ。アリウムを入れないレシピを私用に作ってくれるくらい、可愛がって貰っている」
グレンは得意げな顔をした。力こぶを作るポーズというか、腕まくりをするポーズというか、まかせろ! と言いたげなジェスチャーをしている。
そういう所はまだ子供っぽくて可愛い。
「そっかぁ……」
「アンフェールと過ごすようになってから、城にも親しく接する者たちが増えた。……昔の私が今の私を見たら驚くだろうね。城の人間に対して、とても臆病だったから」
グレンがにっこり笑う。その笑顔は穏やかだけれど力強かった。
城の人間に対してトラウマのあるグレンが、調理場で馴染んでいく過程は大変なものだったに違いない。
その頑張りを想像すると胸がまたきゅんと切ない痛みを訴えてくる。
頑張ったね、と褒めたくて、アンフェールはグレンの頭を子供にする様になでなでした。
「良かった。色々教えた甲斐があったよ。グレンが自信を持てるようになったら良いなって思ってたから。お城にグレンの味方が増えたのは嬉しいな」
「アンフェール……」
アンフェールはニコニコ笑いながら気持ちを伝えた。
すると感極まったような顔をしたグレンに、ギュッと抱きしめられた。
屈んで抱かれるとグレンの首筋の辺りに顔が来る。髪の長いグレンはその辺に香りが籠りやすい。アンフェールはフェロモンの香りにクラクラとしてしまった。
頬が熱く、熱を逃がしたくて呼吸を深くする。深くすればまたフェロモンを吸い込んでしまうのだ。
今の育ち切っていないフェロモン受容体では、我を忘れる程おかしくはならない。
それでも心拍数は上がってしまう。
グレンはアンフェールの変化に気付いていないのか、離す様子はない。その姿勢のまま耳元で言葉を続ける。
「ありがとう。本当に、返せないくらい沢山のものを貰ったんだ。料理ぐらいでは……」
「やだな、グレン。返すなんて思わなくていいんだよ。だってぼくたちは――……」
『――番なんだから』と酩酊感のままに言いかけて言葉が止まる。
それを口に出来たらどれだけ良いか。
アンフェールは気をしっかり持つべく、ギュッと目を閉じて歯を食いしばった。
おかしく思われないようにしなくては。
大きく息を吐いた後、両腕でグレンの身体を押す様にすると、彼は腕を緩めて離れてくれた。
いつもの様に無垢な笑顔を心がけてグレンの方を向いた。
「――ぼくたちは親友でしょ?」
「……そう、だな」
グレンは苦し気に眉を寄せ、僅かに頬を染めていた。
それがなぜなのか分からず、アンフェールはコテンと首を傾げた。
――アンフェールは気がついていない。
フェロモンによる酩酊感が出た表情に、どれだけの色気があるか。
アヴァロニアにあった国中の要人を陥落させた色気は、アンフェールにも備わっているのだ。
アンフェールはその艶っぽく誘う笑顔をグレンに向けたのだ。
グレンは自らの雄が勃ち上がるのを感じていた。
魔力循環中ではなく平時に、しかも友人を思いやる笑顔に対して欲情したのだ。
『唇を奪い、幼く小さな身体を暴きたい』と。
グレンはその事に驚愕し、慌ててアンフェールから離れて自分の席に戻った。
食事を再開し、平静を保とうとする。
シチューは少し冷めていた。
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