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隠れ家――アンフェールとグレン1

アンフェールと竜の生態 ※

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 一週間前の話だ。

「閨の係って男の人なんだね。将来お妃さまとする練習なら、女の人の方が良さそうなのに」
「女性と交わると、子が出来てしまう可能性があるからね。正妃を娶るまでは閨に女性を上げないんだ」

 閨係のシステムが気になってグレンに質問したのだ。なんか面倒くさそうな仕来たりがありそうな回答だった。
 だからグレンの話だけでなく、本でも調べた。『ヴィシュニア王国と風俗』というタイトルの、王侯貴族の生活や仕来たりを纏めた本だ。読破したので今では王族の閨に詳しい。
 なんせ王族扱いになったアンフェールにもかかわる事だ。知っておく必要がある。

 ヴィシュニア王国では、王侯貴族は十四歳になると男性の閨係が付けられる。
 王侯貴族は正式な配偶者を得る前に子を成すというのは非常に体面が悪い。正妻を迎えれば、正妻に子が生まれなくとも、子供は作り放題になる。

 閨係は男性であり、教会出身者がなるものである。
 これは、神に仕える人間と縁を結ぶ事で、死後『天界の門』へ渡りやすくなると、宗教上理由づけているからである。
 貴族は相手が平民であっても見目が好ければ閨で使う分には問題無いようだ。その中でも魔力の高い者が王族や上位貴族に宛がわれる。
 教会としても王侯貴族と関係が結べるのは政治的に好都合だから、閨に差し出す人材は惜しまない。王侯貴族と教会にとって『閨係』は持ちつもたれつなのだ。

 女性と婚姻を結べば必要なくなる閨係も、大半はその後も長く関係は続く。
 肉体関係を除いても、若い時代に深くコミュニケーションをとった相手というのは、友人として貴重だからだ。
 教会出身者は結婚しないから、婚姻相手よりも肉体関係が深いまま、というのもよくあることらしい。閨係は貴族のお嬢様と違って、閨事のプロだから仕方ない。
 閨係になるものは最低五年は閨の作法や技術を仕込まれる。身体も男性役・女性役どちらも熟せるように変えられるのだ。結構な技術職なのだ。

(……しかし、私も十四になれば、誰かつけられるという事か。七年後か。まぁ、暗示を掛けて遠ざければいいな。教会の人間という事は純粋な人間だろうが、暗示をかける事自体問題ないだろう。暗示が切れたら掛け直せばいいのだし)



◇◇◇



 そして現在。
 アンフェールの隠れ家の寝室だ。『魔力循環』を行うべくグレンが準備をしている。準備と言っても脱衣するだけなのだが。
 それを脇目で見つつ、アンフェールは得たばかりの知識を頭で巡らせていた。

「アンフェール、脱ぎ終わったが……」

 一糸纏わぬ姿になったグレンが声を掛けてきた。今回は下穿きも脱いでもらった。十代とはいえ立派な男性であるグレンが、ベッドに座り、恥ずかしそうにしている様子はとても可愛い。

「この前みたいに横になって。魔力の流れを確認するから」

 アンフェールがそう指示を出すと、グレンはそれに従って仰向けで横たわった。
 アンフェールもローブのボタンをプチプチと外して全裸になる。
 ベッドに乗り、グレンの身体を確認する。視線は前回下穿きで見る事の出来なかった一点に集中するのは仕方ない。

(ふむ……赤ちゃんの割に中々立派なペニスだ。半勃ちでこれなら、勃起すれば如何ほどの物か。グレングリーズ程の大きさではないが……まぁ、アイツは竜種の中でもデカい方だったからな。
 交雑種はオスとメスが別に存在するから、オスはオスの機能しかないのだろう。そこは人間由来なのか。どういう仕組みになっているのか、腹の中を調べてみたいものだ)

 アンフェールはグレンの性器を見て、学術的な方面に思いを馳せた。

 竜種に性別は存在しない。

 竜種はオスであり、メスでもある。
 外性器はオスの形状であるし、性格も個体差はあるものの、強さを至上とする竜種なので男性的である。だから竜種は人型に変化するときは男性の形をとる。
 メスでもあるので卵子も、それを育てる子宮もある。オスの性器を受け入れるのは人間でいう所の肛門に当たる後孔だ。
 排出腔である後孔は内部で二つに分かれている。片方が消化器で、もう片方が子宮に繋がっている。弁の切り替えで精子を子宮に導けるようになっているのだ。
 排出腔は性刺激を受ければ、分泌液が漏出される仕組みになっている。

 ――要するに竜種は、見目は男性であっても受け入れる側になれば濡れるし孕むのだ。

(流石に幼体でオスを受け入れるのは無理だな。濡れはするだろうが)

 アンフェールは現在の身体でグレンと遊ぶ・・として、どの範囲まで遊べるかの算段をしていた。
 触るだけなら良いだろう、位に思っていたのが存外大きい性器を見て、美味しそうだと食指が動いたのだ。

(……ああいけない。無垢な精霊ごっこを忘れてしまうな。可愛い子孫の為に可愛い様子でいなければ)

 アンフェールは天使の如き微笑みを浮かべてから、グレンに向き直った。

「前みたいに上に乗るね。大分魔力の流れる量も増えているし、前回ほど辛くならないと思うよ」
「そうか。頼む」

 アンフェールは前回のようにグレンの下腹部に跨ってから、身体を倒してペタンとくっつく。
 グレンの魔力放出が始まる。彼の涼やかで凛とした魔力は清廉でとても好ましい。アンフェールはグレンの魔力を受け取り、彼に対して己の魔力を流し込む、という循環を繰り返す。
 グレンは前回ほど辛そうな顔はしていない。夢見心地に呆けた表情は、どちらかと言うと気持ちよさそうだ。
 しばらくそうしていると、アンフェールのお尻にちょん、と何かが触った。

(ん……?)

 アンフェールの尻に触れていたのは、グレンの勃起したペニスだった。

「あっ、す、すまない……」
「ちょん、ってするの何だろうと思ったら、グレンのおちんちんだったんだね」
「何とか鎮めようと、難しい事を考えてみたのだが、鎮まらず……」
「『魔力循環』の時は仕方ないよ。気持ち良くなれるなら気持ち良くなって。ここにはぼくしかいないから、何にも恥ずかしくないよ」

 アンフェールは観察したくて、一旦身を起して振り返る。

 グレンの性器は腹につくのではと思う程の角度で張り詰めていた。
 長いし、根も太く立派だ。這うように血管が浮く陰茎は優しいグレンに似合わない粗暴な雰囲気を醸し出している。
 カリの高い亀頭は今にも爆発しそうにパンパンに張り、溢れた先走りで濡れて光っている。

 アンフェール好みの、逞しく、美味しそうなペニスだった。垂涎ものだ。

「大きいまんまだと辛いよね」

 アンフェールは身体を下の方にずらし、グレンの乳首をぺろりと舐めた。

「えっ……なっ……なん、で、そこ」
「グレンはお胸で気持ち良くなった事ないでしょ? こんなに粒が小さくて可愛いもの。でも『魔力循環』の時は身体が敏感になるから……ね。前回だって髪をなでなでしただけで良くなっちゃったものね」

 グレンの顔は戸惑っている。性に対して忌避感の強い彼は、性感帯としての乳首など、意識したことも無いはずだ。
 今の所、閨係の行為はペニスに対する手技のみだ。色々許されそうなアンフェールが同じ事をしてもつまらない。
 可愛い子孫に、ペニス以外にも気持ち良くなれる場所があるのだと教えてあげたい。

「へん、だ……なんで、きもちい……」
「ふふ。乳首の方が髪よりもっともっと良くなれるよ。こうしてペロペロすると、気持ちいいよね」

 なるべくグレンに見えるように、性感を煽るように舐め上げる。ここはいやらしい部分なんだと、意識させる為に。
 舌で舐り、指で弄る。
 小さく存在感の無い乳首も、刺激でコリコリと硬くなった。小さいのに立派に硬くなるなんて、いじらしい。アンフェールは可愛さに震えた。

「お胸は気持ちいいって覚えようね。覚えたら、閨係のお兄さんに『お胸を可愛がって』っておねだりしようね」
「そ……んな、出来ない……アンフェール」
「お兄さんとちゃんとお話ししないと。会話はキャッチボールなんだから。気持ちいい部分は、口に出して伝えてあげようね。お胸が気持ちいいのは、とっても可愛いんだよ?」

 魔力を注ぎ込む際にちょっとの工夫をする。アンフェールはグレンの両乳首を左右それぞれの手でちょん、と摘まんだ。そこから魔力をピンポイントで流し込む。

「あ、やっ! ……っ、い゛っ」

 グレンが嫌がる様に首を振る。気持ち良くて嫌がっちゃうのは、もっとしての合図だって何千年も前から決まっているので、アンフェールは止めない。
 徹底的に乳首は快感をもたらす場所だと頭に叩き込めば、閨でも自然に乳首への刺激を欲しがるようになるだろう。
 肌さえ見せるのを抵抗していたグレンが、閨係に半泣きで乳首への刺激を求めるというのは、中々にそそるシチュエーションである。

「だめ、だ……あん、ふぇ……っ」

(随分と我慢強くなった。前回は髪を撫でただけで漏らしたというのに。それだけ閨で日々排泄しているという事か。可愛い子孫が大人の階段を上っていくというのは、お目出度い事だな……しかし)

「いって? グレン」

 命ずるように言って、アンフェールは摘まんでいた乳首を一旦離し、指先でピンと弾いた。
 まだ粒の小さいグレンの乳首では弾く、というよりも引っ掻いたに近い。

「ひっ……ぃ……!!」

 グレンは鋭い刺激に絶頂した。

 オーガズムの感覚が抑えられないのだろう。跳ねるように身体を反らせている。口から洩れた声は悲鳴に近く、目には涙が浮いている。
 アンフェールは尻にぽつぽつと掛かる刺激を感じた。グレンの精液だ。
 量の多い白濁が、ねっとりと尻を舐めるように、伝い落ちてくる。漂ってくる、若く青臭い匂いに、アンフェールは恍惚とした。

(いやらしい匂い……凄く濃い。それに達した顔も可愛いな……)

 出し切ったのか、脱力してはぁはぁとベッドに身体を沈ませるグレンをアンフェールは見つめる。
 汗ばんだ肌に髪が張り付いているのが何とも艶めかしい。頬を染めて、うっとりとする表情も煽情的である。
 アンフェールの口元が歪む。グレンの未開発の部分に忘我の境地を刻んだのだ。新雪を踏み荒らす事程楽しい事は無い。

「グレン、いい子、いい子、ね。ふふ。上手にいけたね」

 アンフェールは、身体を前にずらしてグレンと目を合わせる。そうしながら彼の髪をなでなでして褒めた。
 その刺激にグレンの身体はまたピクリと跳ねた。

「すまな、い、アンフェール……掛かってしまった……汚して……」

 グレンは我に返ったような顔をした。さっきまでのうっとりでなく、しょんぼりした顔になってしまう。
 アンフェールに精液が掛かってしまった事を申し訳ないと思っているようだ。

「大丈夫。汚れてないよ? グレンが気持ちいいの、うれしいんだ。それに気持ち良かった時は、ごめんなさいじゃないでしょ?」

「あ、りがとう……」

「うん、よくできました」

 ちゃんとありがとう出来たので、なでなでに加えて、よく出来ましたのキスをグレンの頬に落とす。
 また彼の身体がヒクつく。
 褒められて身体を反応させるのは自己肯定感の低さ故だろうか。――そう思い至ったアンフェールは、上手に達せたら、その都度なでなでして褒めようと決めた。



◇◇◇



「――あっ!」

 アンフェールは達した。
 グレンに喉を撫でられて。


 アンフェールの首筋には生まれつきの痣がある。
 竜の鱗に見えるそれはアンフェールが教会から連れ出され、離宮に入る切っ掛けになった。
 その鱗はアンフェールにも何となく心当たりがある。『逆鱗』と呼ばれる竜の急所だ。古代竜時代からそうだったが、そこはアンフェールの性感帯だった。
 今はその痣を『隠匿コンシール』で隠している。
 グレンがこの痣を見たら、アンフェールが弟だと気がつく可能性があるからだ。

 達する姿を見せる約束もしたし、その『逆鱗』の位置をグレンに教えて撫でてもらった。
 仰向けに寝転がるアンフェールの脇に座り、喉を撫でるグレンの様子は、腹を上向けた猫を可愛がる飼い主のようだった。


 アンフェールはすぐ達した。


 グレンは『思ってたのと違う』という腑に落ちない感じを漂わせながらも、精霊の不思議な生態に触れられた事に満足したようだ。
 子供のように目をキラキラさせている。


 キラキラする子孫まごは、とても可愛い。
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