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隠れ家――アンフェールとグレン1
アンフェールと隠れ家と出会い
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離宮に隣接する広大な森。その中心を横断するように川が流れている。
森の丁度中心近く、川からほど近い場所。
アンフェールは『強化』を掛けた肉体で飛ぶように駆け、ここまで移動してきた。
離宮から使用人を遠ざけることに成功し、アンフェールは自由に動けるようになった。
そうなれば、気になるのが古代竜時代の縁の場所だ。
特に住居がどうなっているか気になり、真っ先にここに訪れる事にした。
『――隠匿解除――』
施していた『隠匿』を解除する。すると何もないように見えた場所に洞窟を利用した住居が現れた。
屋外にはオシャレに仕上げた木製の丸テーブルと椅子が二脚、傍らにキッチンがある。昨日まで使っていたかのようにどこも劣化していない。
古代竜の『保存』の魔術は経年で綻ぶ事なく、アンフェールの隠れ家を守ってくれていた。
「わぁ~! あの頃のままだ」
思わず駆け寄り、アンフェールは椅子に腰かける。アンフェール用の椅子だ。
あの頃、身長は一八〇センチ程あった。現在一メートルしかないアンフェールが座ると脚がぶらぶらしてしまう。
「うわぁ、ぼく本当に小さくなっちゃったんだね。こんなかぁ……」
もう一脚の椅子に目をやる。そちらは番だったグレングリーズの椅子だ。彼は身長二メートル近くあった。赤ちゃんのくせに。
なのでアンフェールの椅子とデザインは同じだけれど、サイズは彼用に大きく作ってある。
椅子から降り、グレングリーズの椅子に寄った。膝を折ってしゃがむ様にして座面に頬っぺたをつける。
『保存』され、昨日まで彼が座っていた状態だろうか。
(ぬくもりなんて残っていないけれど……それでも)
アンフェールは目を閉じた。グレングリーズとの生活の名残で胸が一杯になる。
脳裏にグレングリーズの困ったように笑う顔が蘇る。
まだ、はっきりと覚えてる、彼の顔。
(グレングリーズ……)
ここは人間から身を隠す為に築いた、束の間の住居――二人だけの楽園だった。
洞窟住居の扉は木製だ。
入口は上部、綺麗なアーチを描いた形に整えており、そこに扉が嵌っている。
この辺の河原の石は鉱物を含んでおり、それを拾って魔術を使い、金属生成と圧縮を行った。蝶番とノブはそれを使って作り上げている。
開け閉めを何度かしたけれど軋む音もしない。問題なく使えそうだ。
「自分で作ったものながら凄いな」
歪みない金属部品もそうだけれど、扉の美しい彫り物も見事だ。植物をモチーフにした優美なデザインは今見てもため息が出る。入口だから気合を入れて考えたのも覚えている。
扉を開け中に入り、室内を見回すと、背の高さが違う分記憶の中の隠れ家よりずっと広く感じる。
床はピカピカに均され、天井は入り組んだアーチ状に整えている。飾り柱は美しく彫刻が入っていて、神殿のようだ。
自然の洞窟を利用した住居ではあるけれど、中に入ればそれを一切感じさせない。
芸術品だ。
神のごとき古代竜時代のアンフェールの御業で作り上げられた作品だ。
「家具はちょっと地味かなぁ……思い出があるけど、もうちょっと可愛くしてもいいかな」
竜種狩りをする人間から情報を引き出す際、アンフェールは老魔術師を装った。
だからこの住居は老魔術師が住む家、というイメージで作り上げたものなのだ。故に家具は地味で古めかしいデザインになっている。
当時で古めかしいのだから、現在で見たら遺跡レベルに古いイメージなのだ。
時代に合わせたイメージの刷新は大事だと、アンフェールの中の芸術家魂が言っている。
「机とか椅子とかまあるく可愛くしたいな ふふ、考えたら楽しくなってきた」
今の小さなアンフェールが使いやすい大きさに作り替えたい。
成長したらサイズが合わなくなるけれど、また作り直せばいいのだ。アンフェールは竜種だ。時間は飽きる程いっぱいあるのだ。
部屋は二部屋ある。
手前が今いるリビング兼客間で、奥は寝室だ。扉で仕切られている。
アンフェールは扉を開けて寝室に入った。そこには大きなベッドが当時のまま、そこにあった。
フレームに施された彫刻の美しい、かなりの大きさのベッドだ。天蓋には精霊の加護がついていて、森の中にいる様な安心感を得られる仕様になっている。
(グレングリーズ……)
ベッドを覗いたアンフェールは頬を赤らめた。
番であるグレングリーズに初めて組み敷かれた時を鮮明に思い出したからだ。
古種の王から見たら、いくら逞しく大柄であっても、たった六十年しか生きていないグレングリーズは赤ちゃん同然だった。
神のごとき存在だったアンフェールが赤子の陽根で貫かれ、女にされたのだ。
その倒錯感たるや、思い返す現在の幼体にあっても、腰がもぞつく程の出来事だった。
「うう、おまたがムズムズする……この事は、あまり考えないようにしよう……」
アンフェールはポフリとベッドにうつ伏せになった。シーツを握って鼻を押し当て、スンスンと匂いを嗅ぐ。
僅かに匂いがするかもしれない。なんとなく、だけれど。
嫌な匂いではない。しかし『番』のフェロモンかどうかは分からなかった。
前世アンフェールはフェロモン受容体を縛られていたせいで、番の匂いが分からなかった。今世では分かるかと思ったけれど、まだ幼体だからよく分からない。
成長したら、いい匂いだと分かるんだろうか。
それとも今世の肉体はグレングリーズと番では無いんだろうか。
中身はアンフェールであっても肉体は産まれたての幼体だ。別個体、という扱いだろうか。
(まぁ、そうだろうな。生まれ変わって肉体が変わっても番が一緒という事は無いだろう、どう考えても。死者とは番えない。
グレングリーズがいつ亡くなったかは分からないけれど、新種の寿命を考えたらもう没しているはずだ)
胸がシクシクする。
あの、命の尽きた日の続きを生きている感覚なのに。アンフェールの中ではたった七年前の出来事なのに。
ここにグレングリーズはいない。どこにもいないのだ。
アンフェールは悲しくなって、シーツに伏せって、しくしくと泣いた。
(泣いてどうにもなるものでもないのだが……幼体は泣きたがりだ。でも、救われる。泣けるという事で救われる……)
◇◇◇
あれから半月。毎日充実している。
今日も今日とて、森の秘密基地で遊ぶのだ。
アンフェールはリメイクした白いローブで過ごしている。
隠れ家の洋服ダンスには老魔術師に擬態していた頃の服がたくさん収納されていた。
布自体、古竜種時代にアンフェールが編んだものだ。魔術師のローブだから布をいっぱい使ってドレープを作っているデザインになっている。
リメイクで子供服が沢山作れる布量だった。
衣装の布質はふんわりと柔らかく、軽い。魔術で編んだ布はシルクのような肌触りでいてシルクでない、滑らかな輝きのある不思議な質感だった。
『殿下』の為に用意された衣装はボタンも多いし、窮屈だし、肌触りも良くなかった。
平民の着る服よりも遥かに着心地は良いのだが、アンフェールが編んだ布は天女の薄絹が如きふわさら感なのだ。一度着ると帰れない感じが強い。
色白でフワフワ金髪碧眼の小さなアンフェールが、白いローブを纏った姿は、絵にかいたような天使だった。
「あ、タンジェントだ」
遠くで「クピィ」と鳴く声が聞こえる。
アンフェールはこの森に他の飛竜がいたとしても、タンジェントの声を聞き分ける自信がある。
「タンジェント、どうした、の……?」
タンジェントは一人じゃなかった。人を連れていた。
男だ。彼は馬を引いている。
黒い長髪に赤い目の男だった。
美しく整った顔立ちには若干幼さも残っている。寮長と同じくらいの年齢だろうか。背は高いが体形はスマートだ。
黒っぽい乗馬服の中で白いパンツが目を引く。パンツからブーツに流れるラインがスタイルの良さを際立たせていた。仕立てが良いのもあるが、着ている男がそう見せているのだろう。とても上品だ。
男はこちらを見て目を見開き、驚いている。
「子供……? いや、子供がこんなところにいる訳ないのだが……精霊の類だろうか?」
男の口からブツブツと疑問が洩れている辺り、驚愕っぷりが伺える。
(驚いても仕方ないな。私は年齢より幼く見える。五歳ぐらいに見えると寮長から言われていた位だ。森の奥深くに幼児がいたら違和感しかないだろう。しかし、コイツ何者だ……?)
アンフェールも勿論、男の登場に驚いている。
アンフェールは周囲に『縄張り』を張っていた。にもかかわらず初対面のこの男が近づいて来る事に対し、何の違和感も覚えなかったのだ。
それに、この男を連れてきたのはタンジェントだ。
タンジェントは男に随分気を許しているようで、男の肩に止まり「クピィ」と鳴きながら全身を擦り付けている。これは飛竜の強い親愛行動だ。
「お兄さん、誰?」
「あ、ああ。済まない。私はグレン。こんにちは」
「グレン……」
確か、立場上アンフェールの兄にあたる第一王子の名がグレンじゃなかったか。
ここは離宮の森だ。その辺の貴族が自由に出入りできる場所じゃない。だから彼は兄なのだ。メンドクサイ相手と遭遇してしまったのではないだろうか。
冷や汗を垂れ流すアンフェールとは逆に、グレンは穏やかな笑みを浮かべている。
「この国の守護竜となった偉大なるグレングリーズ様から名を頂いたそうだ。髪と目が同じ色だったからね。なので本名は『グレングリーズ』というんだよ。
でも、恐れ多いからグレンと名乗っているんだ」
グレンの語る名前の由来に、アンフェールの顔から血の気が引いた。
兄という立場にいる王子が、かつての番と同じ名だなんて何の冗談なのかと。
確かにグレンの髪と目の色はグレングリーズと同色だった。
森の丁度中心近く、川からほど近い場所。
アンフェールは『強化』を掛けた肉体で飛ぶように駆け、ここまで移動してきた。
離宮から使用人を遠ざけることに成功し、アンフェールは自由に動けるようになった。
そうなれば、気になるのが古代竜時代の縁の場所だ。
特に住居がどうなっているか気になり、真っ先にここに訪れる事にした。
『――隠匿解除――』
施していた『隠匿』を解除する。すると何もないように見えた場所に洞窟を利用した住居が現れた。
屋外にはオシャレに仕上げた木製の丸テーブルと椅子が二脚、傍らにキッチンがある。昨日まで使っていたかのようにどこも劣化していない。
古代竜の『保存』の魔術は経年で綻ぶ事なく、アンフェールの隠れ家を守ってくれていた。
「わぁ~! あの頃のままだ」
思わず駆け寄り、アンフェールは椅子に腰かける。アンフェール用の椅子だ。
あの頃、身長は一八〇センチ程あった。現在一メートルしかないアンフェールが座ると脚がぶらぶらしてしまう。
「うわぁ、ぼく本当に小さくなっちゃったんだね。こんなかぁ……」
もう一脚の椅子に目をやる。そちらは番だったグレングリーズの椅子だ。彼は身長二メートル近くあった。赤ちゃんのくせに。
なのでアンフェールの椅子とデザインは同じだけれど、サイズは彼用に大きく作ってある。
椅子から降り、グレングリーズの椅子に寄った。膝を折ってしゃがむ様にして座面に頬っぺたをつける。
『保存』され、昨日まで彼が座っていた状態だろうか。
(ぬくもりなんて残っていないけれど……それでも)
アンフェールは目を閉じた。グレングリーズとの生活の名残で胸が一杯になる。
脳裏にグレングリーズの困ったように笑う顔が蘇る。
まだ、はっきりと覚えてる、彼の顔。
(グレングリーズ……)
ここは人間から身を隠す為に築いた、束の間の住居――二人だけの楽園だった。
洞窟住居の扉は木製だ。
入口は上部、綺麗なアーチを描いた形に整えており、そこに扉が嵌っている。
この辺の河原の石は鉱物を含んでおり、それを拾って魔術を使い、金属生成と圧縮を行った。蝶番とノブはそれを使って作り上げている。
開け閉めを何度かしたけれど軋む音もしない。問題なく使えそうだ。
「自分で作ったものながら凄いな」
歪みない金属部品もそうだけれど、扉の美しい彫り物も見事だ。植物をモチーフにした優美なデザインは今見てもため息が出る。入口だから気合を入れて考えたのも覚えている。
扉を開け中に入り、室内を見回すと、背の高さが違う分記憶の中の隠れ家よりずっと広く感じる。
床はピカピカに均され、天井は入り組んだアーチ状に整えている。飾り柱は美しく彫刻が入っていて、神殿のようだ。
自然の洞窟を利用した住居ではあるけれど、中に入ればそれを一切感じさせない。
芸術品だ。
神のごとき古代竜時代のアンフェールの御業で作り上げられた作品だ。
「家具はちょっと地味かなぁ……思い出があるけど、もうちょっと可愛くしてもいいかな」
竜種狩りをする人間から情報を引き出す際、アンフェールは老魔術師を装った。
だからこの住居は老魔術師が住む家、というイメージで作り上げたものなのだ。故に家具は地味で古めかしいデザインになっている。
当時で古めかしいのだから、現在で見たら遺跡レベルに古いイメージなのだ。
時代に合わせたイメージの刷新は大事だと、アンフェールの中の芸術家魂が言っている。
「机とか椅子とかまあるく可愛くしたいな ふふ、考えたら楽しくなってきた」
今の小さなアンフェールが使いやすい大きさに作り替えたい。
成長したらサイズが合わなくなるけれど、また作り直せばいいのだ。アンフェールは竜種だ。時間は飽きる程いっぱいあるのだ。
部屋は二部屋ある。
手前が今いるリビング兼客間で、奥は寝室だ。扉で仕切られている。
アンフェールは扉を開けて寝室に入った。そこには大きなベッドが当時のまま、そこにあった。
フレームに施された彫刻の美しい、かなりの大きさのベッドだ。天蓋には精霊の加護がついていて、森の中にいる様な安心感を得られる仕様になっている。
(グレングリーズ……)
ベッドを覗いたアンフェールは頬を赤らめた。
番であるグレングリーズに初めて組み敷かれた時を鮮明に思い出したからだ。
古種の王から見たら、いくら逞しく大柄であっても、たった六十年しか生きていないグレングリーズは赤ちゃん同然だった。
神のごとき存在だったアンフェールが赤子の陽根で貫かれ、女にされたのだ。
その倒錯感たるや、思い返す現在の幼体にあっても、腰がもぞつく程の出来事だった。
「うう、おまたがムズムズする……この事は、あまり考えないようにしよう……」
アンフェールはポフリとベッドにうつ伏せになった。シーツを握って鼻を押し当て、スンスンと匂いを嗅ぐ。
僅かに匂いがするかもしれない。なんとなく、だけれど。
嫌な匂いではない。しかし『番』のフェロモンかどうかは分からなかった。
前世アンフェールはフェロモン受容体を縛られていたせいで、番の匂いが分からなかった。今世では分かるかと思ったけれど、まだ幼体だからよく分からない。
成長したら、いい匂いだと分かるんだろうか。
それとも今世の肉体はグレングリーズと番では無いんだろうか。
中身はアンフェールであっても肉体は産まれたての幼体だ。別個体、という扱いだろうか。
(まぁ、そうだろうな。生まれ変わって肉体が変わっても番が一緒という事は無いだろう、どう考えても。死者とは番えない。
グレングリーズがいつ亡くなったかは分からないけれど、新種の寿命を考えたらもう没しているはずだ)
胸がシクシクする。
あの、命の尽きた日の続きを生きている感覚なのに。アンフェールの中ではたった七年前の出来事なのに。
ここにグレングリーズはいない。どこにもいないのだ。
アンフェールは悲しくなって、シーツに伏せって、しくしくと泣いた。
(泣いてどうにもなるものでもないのだが……幼体は泣きたがりだ。でも、救われる。泣けるという事で救われる……)
◇◇◇
あれから半月。毎日充実している。
今日も今日とて、森の秘密基地で遊ぶのだ。
アンフェールはリメイクした白いローブで過ごしている。
隠れ家の洋服ダンスには老魔術師に擬態していた頃の服がたくさん収納されていた。
布自体、古竜種時代にアンフェールが編んだものだ。魔術師のローブだから布をいっぱい使ってドレープを作っているデザインになっている。
リメイクで子供服が沢山作れる布量だった。
衣装の布質はふんわりと柔らかく、軽い。魔術で編んだ布はシルクのような肌触りでいてシルクでない、滑らかな輝きのある不思議な質感だった。
『殿下』の為に用意された衣装はボタンも多いし、窮屈だし、肌触りも良くなかった。
平民の着る服よりも遥かに着心地は良いのだが、アンフェールが編んだ布は天女の薄絹が如きふわさら感なのだ。一度着ると帰れない感じが強い。
色白でフワフワ金髪碧眼の小さなアンフェールが、白いローブを纏った姿は、絵にかいたような天使だった。
「あ、タンジェントだ」
遠くで「クピィ」と鳴く声が聞こえる。
アンフェールはこの森に他の飛竜がいたとしても、タンジェントの声を聞き分ける自信がある。
「タンジェント、どうした、の……?」
タンジェントは一人じゃなかった。人を連れていた。
男だ。彼は馬を引いている。
黒い長髪に赤い目の男だった。
美しく整った顔立ちには若干幼さも残っている。寮長と同じくらいの年齢だろうか。背は高いが体形はスマートだ。
黒っぽい乗馬服の中で白いパンツが目を引く。パンツからブーツに流れるラインがスタイルの良さを際立たせていた。仕立てが良いのもあるが、着ている男がそう見せているのだろう。とても上品だ。
男はこちらを見て目を見開き、驚いている。
「子供……? いや、子供がこんなところにいる訳ないのだが……精霊の類だろうか?」
男の口からブツブツと疑問が洩れている辺り、驚愕っぷりが伺える。
(驚いても仕方ないな。私は年齢より幼く見える。五歳ぐらいに見えると寮長から言われていた位だ。森の奥深くに幼児がいたら違和感しかないだろう。しかし、コイツ何者だ……?)
アンフェールも勿論、男の登場に驚いている。
アンフェールは周囲に『縄張り』を張っていた。にもかかわらず初対面のこの男が近づいて来る事に対し、何の違和感も覚えなかったのだ。
それに、この男を連れてきたのはタンジェントだ。
タンジェントは男に随分気を許しているようで、男の肩に止まり「クピィ」と鳴きながら全身を擦り付けている。これは飛竜の強い親愛行動だ。
「お兄さん、誰?」
「あ、ああ。済まない。私はグレン。こんにちは」
「グレン……」
確か、立場上アンフェールの兄にあたる第一王子の名がグレンじゃなかったか。
ここは離宮の森だ。その辺の貴族が自由に出入りできる場所じゃない。だから彼は兄なのだ。メンドクサイ相手と遭遇してしまったのではないだろうか。
冷や汗を垂れ流すアンフェールとは逆に、グレンは穏やかな笑みを浮かべている。
「この国の守護竜となった偉大なるグレングリーズ様から名を頂いたそうだ。髪と目が同じ色だったからね。なので本名は『グレングリーズ』というんだよ。
でも、恐れ多いからグレンと名乗っているんだ」
グレンの語る名前の由来に、アンフェールの顔から血の気が引いた。
兄という立場にいる王子が、かつての番と同じ名だなんて何の冗談なのかと。
確かにグレンの髪と目の色はグレングリーズと同色だった。
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