魔王は育ての親、勇者は親友、という変な立ち位置の俺

さかえ

文字の大きさ
上 下
12 / 16

俺は自分の身すら守れない

しおりを挟む
エスメルは何故か急にパチッと目を開けてのそのそと起きだした。
どのくらい眠っていたのだろうか?
身体はすごく……今までにないくらい気持ちがいい。
ぼーっとしていると、頭の中から魔王の声が聞こえてきた。

「起きたか……。執務室へ来い。言いたいことと聞きたいことがある。」

全く頭が働かないエスメルはベットから降りて。執務室へと向かった。
エスメルの横を通り過ぎる使用人たちは顔を赤くして通り過ぎる。
エスメルはそんな使用人たちの顔を見て不思議そうに首を傾げた。
エスメルの服は、彼シャツのようなダボダボの服。大きすぎて、鎖骨が綺麗に見えている。魔族において、鎖骨を見せるということは、自由に襲ってどうぞという意味なのだが、エスメルは知らない、

門番たちが俺を見て目を見開いた。

「…………」

なにか言いたげな顔をしていたが、俺はまた首を傾げた。
俺は扉を蹴ってまた開けた。

「ふぁ~~おやじぃついたぁ」

と目を擦りながら入っていった。

「やっと来ましたね。今貴方の話を………………!?なんて格好してるんですか?」

宰相の声が聞こえた途端、親父が黒いフード付きのマントを俺に被せた。

「んん?んだよこれ。あちぃ。」

俺が脱ごうとすれば、親父が脱げないように服を抑えた。

「あっついよ!」

「涼しくしてやる。」

親父が手を動かすと俺の周りにふわりと風が吹いて、いつの間にか暑さは消えていた。

「な、なんで着なきゃいけねぇの?」

俺が問いただすように言えば、女といちゃこらしていた側近が俺の肩にぽんっと手を置いた。

「あのなぁ?魔族において鎖骨を見せるってのは自由に襲っていいぞって意味なんだぜ?」

「なっ!!」

「確かにファッションのように鎖骨を見せてる奴もいるがそいつは強者かよっぽどの淫乱かの二つだ。お前、淫乱だったのか?にひひ」

変に笑った側近に俺はゾゾゾッと背筋が凍った。お、襲ってください?それって喧嘩とかじゃねぇよな?淫乱ってことは子作りするって事か?

「お、おい待てよ。男を襲って何になる??男は子供も作れねぇぞ?」

側近は、がはははっと笑い出す。
俺は毎度毎度側近に笑われてる気がするが気のせいだろうか?

「青くせぇなぁ!童貞め!逆に考えてみろよ!孕む可能性がないって事は自由にヤッても責任とらなくていいって考える奴の方が魔族には多いんだぜ?だから男娼が魔国には多いんだぞ」

言われてみてハッとした。ルル(学友)に夜の街に行こうと誘われた時、男が男を誘っているのを見て、俺は頭の中が混乱していた。しかし、童貞は関係ないだろ!

「これで分かったか?人間のお前は襲われる可能性が魔族よりも倍って訳だ。」

「うるせぇ!!俺は魔族だ!!」

俺はキッと側近を睨みつけたがニヤリっと悪い顔をする側近にびくりと怯える。もちろんそれは顔には出さず心の中でだ。

「まぁ、おめぇが人間だろうと魔族だろうと正直興味はない……が、確実なのはお前が弱いってことだな」

「お、おれは!!」

「お前は自分の身を自分では守れねぇよ。」

反論しようとした口がキュッと閉まる。
俺は親父に貰った飴が無ければあの時死んでいたかもしれない。あの時、あの男の子がいなかったらラビーは死んでいたかもしれない。その可能性は捨てきれない。そんな事実を突きつけられたエスメルの心はバラバラに砕かれた。

「エ、エスメル!!」


気づけば俺は走り出していた。
逃げていると思われても仕方ない。しかし、その場から脱したくてしょうがなかった。所詮魔王に拾われた運のあった子という訳だろう。
あの埃まみれの屋根裏部屋に居た時からなんら変わっていないと思うと涙が溢れた。そのまま、エスメルは森へと足を進めた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

色狂い×真面目×××

135
BL
色狂いと名高いイケメン×王太子と婚約を解消した真面目青年 ニコニコニコニコニコとしているお話です。むずかしいことは考えずどうぞ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

王と宰相は妻達黙認の秘密の関係

ミクリ21 (新)
BL
王と宰相は、妻も子もいるけど秘密の関係。 でも妻達は黙認している。 だって妻達は………。

処理中です...