魔王は育ての親、勇者は親友、という変な立ち位置の俺

さかえ

文字の大きさ
上 下
5 / 16

僕だけが不幸ではない

しおりを挟む
体操座りをしたままぼーっとしていると、ユランが頭をガシガシとかいて、急に立った。
ユランは部屋の中央へ来ると、次は胡座をかいて座った。気まずそうに視線を彷徨わせていたが、決心したのか僕をじーっと見た後口を開いた。

「えと……その……すまんかった。」

僕はまだ怒っていたため、ぷいっと顔を背けた。

「簡単には許してくれねぇよな。ここに来るからには何かしらあるってのによ。人間って聞いたらつい……。1つ昔話をするから聞いてくれ。」

そう言ったユランの声はワントーン下がった気がした。

「俺は前までここから少し離れた奥の魔界でも超ど田舎な場所に住んでたんだ。笑顔でいっぱいの家族と一緒に畑を耕し、動物と戯れたり飼育したり、時々商売したり、まぁそこそこ幸せだった。」

穏やかな目、穏やかな口調で話していたユランだったが、急に声は低くなり、言葉一言一言に重みがあるような声色で話し始めた。

「忘れもしねぇ。あの夜……満月が綺麗な日だった。その日俺は遠出していて帰るのが遅くなっちまった。村に戻った時俺が見たのは……火に燃える村だった。真っ赤だったよこの世であんな赤は二度と見ることはないだろう。俺は急いで家族の元へ駆けつけようとした……でもな家は半壊俺が入れる状態じゃなかった。魔法を使って必死に必死に消火したさ。いつの間にか日も上がっちまってよ。丸焦げになった家の木材を少しずつ退かしていったら…………炭になった弟が居たんだ。その近くには母親と父親も居た。弟を守るようにしてな。」

ユランは上を向いた。

「わりぃ……この話すると止められねぇんだわ。」

ぽたぽたっと涙が落ちる。
僕は問いかけた。

「誰がやったの……?」

話を聞く限りユランの家族が恨まれていた可能性はほぼ低い。そんな中でどうしてユランの家族……いや村が襲われたのか。

「この話には続きがあってな……灰になった家族を見たら力が抜けて涙は止まらねーわで俺はその場に泣き崩れた。それから数時間後だった。声が聞こえたんだ。村の生き残りか?って俺も考えた。」

ユランの顔は憎しみで染まっていた。

「姿を見て俺は怒りが収まらなかった。人間だったんだ。それだけならなんとも思わねーよ。でもなあいつらこう言いやがった。「魔族なんて楽勝だな。金目の物奪って逃げるぞ」ってな。」

「まぁ。そこでごちゃごちゃあって宰相様に拾ってもらってここにいるって訳だ。」

メガネの?っと聞くと、そうだ。と帰ってきた。

「ふーん」

僕は俯いた。やはり人間は私利私欲のために動くクソだな……と。

「んだよ。他になんかねーのかよ。」

「何?なんか言って欲しい?」

「いや。そーじゃねぇけど……」

調子狂う……と呟き頭をガシガシとまたかき始めたユランに僕は口を開いた。

「僕以外にも不幸な人っていたんだね。」

僕はぼそっと呟いた。
この部屋は密室で二人しかいない。当然ユランにも聞こえた。

「おめぇはまだマシな方だろうよ。魔王様に拾ってもらえただけマシだ。」

「もしかしてここにいる子も。君みたいな子ばっかりなの?」

「あぁそうだ。俺より酷いやつもいる。」

あぁだからか、だから年齢関係ないんだなっと1つ謎が解けた。

「なぁ。仲直りってことで友達になろうぜ。お前の話は後でしてくれよ。」

「…………魔族って裏切らないよね?」

満面の笑みでユランは、言った。

「あたりめぇだ!!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

色狂い×真面目×××

135
BL
色狂いと名高いイケメン×王太子と婚約を解消した真面目青年 ニコニコニコニコニコとしているお話です。むずかしいことは考えずどうぞ。

兄に魔界から追い出されたら祓魔師に食われた

紫鶴
BL
俺は悪魔!優秀な兄2人に寄生していたニート悪魔さ! この度さすがに本業をサボりすぎた俺に1番目の兄が強制的に人間界に俺を送り込んで人間と契約を結べと無茶振りをかましてきた。 まあ、人間界にいれば召喚されるでしょうとたかをくくっていたら天敵の祓魔師が俺の職場の常連になって俺を監視するようになったよ。しかもその祓魔師、国屈指の最強祓魔師なんだって。悪魔だってバレたら確実に殺される。 なんで、なんでこんなことに。早くおうち帰りたいと嘆いていたらある日、とうとう俺の目の前に召喚陣が現れた!! こんな場所早くおさらばしたい俺は転移先をろくに確認もせずに飛び込んでしまった! そして、目の前には、例の祓魔師が。 おれ、死にました。 魔界にいるお兄様。 俺の蘇りの儀式を早めに行ってください。あと蘇ったら最後、二度と人間界に行かないと固く誓います。 怖い祓魔師にはもうコリゴリです。 ーーーー ざまぁではないです。基本ギャグです(笑) こちら、Twitterでの「#召喚される受けBL」の企画作品です。 楽しく参加させて頂きました!ありがとうございます! ムーンライトノベルズにも載せてますが、多少加筆修正しました。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...