魔王は育ての親、勇者は親友、という変な立ち位置の俺

さかえ

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はじまりはいつも急

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「や……めて」

「へっ!よわっちーの!」
「これだから出来損ないって言われんだ!」
「やーい!へたれー!ヘタレ小僧」

3人の男の子たちは、そう言って僕を突き飛ばし僕の身体を蹴った。何度も何度も蹴って、気が済んだら満足気に帰っていく。
僕は起き上がり砂まみれの顔をボロボロの服で拭った。
ふらふらになる足を引きずって今日も家へと向かった。

「かあさんただいm」

「どうして分かってくれないの??」

「あー、うっせーーくそばばあ!黙れよ!」

「な、何よその口の利き方!!!!お母さんに謝りなさい!!」

「だーれが謝んだよ!!✕ね!」

家へ帰ると兄と母が喧嘩をしている。
いつもの日常。僕が帰っても誰も僕を待っててはくれない。

「……」

黙って僕の部屋に行く時に、2人の横を通っても2人は僕が居ないものとし、喧嘩をしている。
自分の部屋……と言っても物置の様なほこりが舞っている部屋でいつも寝ている。

「コホンっコホンっ」

この部屋に来るといつも咳が出る。
身体は、どんどん悪くなっていると分かっていたが、ここ以外に行く宛てなどない僕は部屋の隅っこ……小さな窓近くの隅っこに居た。電気などない。魔法を使えばいいのかもしれない。しかし思い出して欲しい。どうして僕が「出来損ない」と呼ばれていたのか。そう、僕は魔法を使うことをが出来ない。
基本魔法すらできない僕を親は蔑み、友達は見下し、兄は鼻で笑う。
小さな窓から漏れる月明かりだけが僕の部屋を照らしてくれる。



どれくらい経っただろうか、いつものように蹲りぼーっとしていた時、僕の周りをぽわぽわ~と真っ黒な光が舞っていた。
ひとつだった光はどんどん数が増えていった。

「コホンっ」

この部屋に居ると喋ろうとすると咳が出る。
僕はガラガラになった声で呟いた。

「ぎれいだね。コホンっ」

呟いたと同時に真っ黒な光は人の形を帯びていく。
僕は息を飲んだ。黒色の髪の毛だが銀色の光が散りばめられた髪。黒色の眼は少し紫がかっていた。鼻筋は高く、小さな口は顔のバランスにあっていた。そしてすらーっとした体型。この世のものでは無い姿に僕は呆然のした。
そして、小さな形の良い唇は少し開いた。

「俺は魔王。それ以外でもなんでもない。俺は人を助ける義理はないが……このままだったらお前死ぬぞ。」

返事ができない代わりに咳をした。

「ゴホッゴホッ」

「……来い。一緒に来い。ここに未練なんかねぇだろ?」

すっと差し出された綺麗な手。
僕は薄れる意識の中手を伸ばした。

「だずげて」

と呟いて。
目の前に居た男の顔が少し歪んだ気がしたが、確認する間もなく意識は薄れていった。
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