婚約破棄現場に訪れたので笑わせてもらいます

さかえ

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7話

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「ウ、ウィス~。つ、月が綺麗ですわねぇ~」

「……」

「ごほんっ!み、見てくださいまし。こちらの庭園は手入れが完璧ですわ、ねぇ……。ほ、ほんと綺麗ですわぁ。」

「……」

私は今フル回転で話題を探しておりますのよ……とほほ。
見てくださいまし。隣の夫の今にも庭園が凍ってしまいそうな雰囲気を。
しかし、、今回ばかりは私めも黙って出て行ってしまいましたからね……。は、反省はしておりますのよ??

「…………たんだぞ」

「は、はい?」

やっと喋りだしたかと思われた旦那様の声は風の音によってかき消されてしまった。

「だから!心配したんだぞ!」

肩を両手で掴まれる。
不意打ちにびっくりしたアリスベータはきょとりとした顔をする。

「ご、御心配をお掛けして申し訳ありません?」

「……はぁ。全然反省してないでしょ?」

旦那様にそう言われればびくりっと反応してしまう。い、いやですわね!そんな事ないですわ!!

「反省しておりますわ!」

「ふーん……私には、最高の余興を見たーって顔をアリスはしているように見えますがね?」

少し苦い顔をする。
さ、流石旦那様!よくお分かりで!って言ったら、射殺されそうですわね……。

「ぐ、、ウ、ウィス!!確かに、確かに私楽しんでしまいましたわ……でもそれはウィスが絶対来てくれるという信頼ありきだったのですわ!!」

首を上下に振る。

「信頼……………はぁ。もうアリスに何を言ってもどうせ言う事聞いてくれないんでしょ?」

ぷくっと顔を膨らませた夫にアリスベータはきゅんっと不覚にもしてしまった。

「お、怒っておりますの?」

控えめに上目遣いでウィスタリアに言えば、うっと言葉を詰まらせた。

「怒ってはないよ?怒っては。ただ…」

「た、ただ?」

「アリスが…アリスが楽しんでいる事は私にも共有して欲しい。」

アリスベータは目をぱちりっと瞬いた。
その後、口元に手を持っていき、キラキラとした目をウィスタリアに向けた。

「ウ、ウィス!私もよ?私もウィスが楽しいと思っている事、たっくさん知りたいわ!でも、この余興にはウィスが居ては行けないの。この国……というより他国はほとんどが男尊女卑ですのよ。だから、男のウィスが隣に居れば、王子様方は強気に出れず本性を表してくれないわ。それに言ったでしょう?私はどこの国と外交を続けるか判断する為にウィスと来ているのですわ。だから、手っ取り早く私に矛先を向けてもらえれば本性を見れるのです。あまり、私もウィスに仕事を増やして欲しくはないの。い、一緒に居たいのはウィスだけではないのよ?」

アリスベータは自分で言いつつも、かぁっと顔を赤くし、火照る顔を隠すように月を見上げた。

次の瞬間ぐるりっと視点が変わり、黒色が目の前を覆った。
そこはウィスタリアの胸元だった。
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