いじめられて引きこもりの僕が天才料理人に弟子入りしたらなぜか最強の剣士になっていく。

寝転ぶ芝犬

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第8話 栄養学試験

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「ん?栄養学を学びたい?栄養かぁ…まあ大切なところではあるよな。そうだな……来週試験あったと思うからその試験受けてみるか。」

「え!さ、さすがに厳しいんじゃ…」

「あんなもん覚えればなんとかなる。ちゃちゃっと教えるぞ。」

 な、なんだか随分と適当な感じだけどすぐに講義が始まっちゃった。ヴィンランド師匠は普段使っている食材の栄養価を一つ一つその場で話し出して、その栄養が体にどういう影響を与えるかまで教えてくれた。

 ヴィンランド師匠はどんな食材でもその栄養価を覚えているんだ。さらに食材をその場で食べてその栄養が一般的な同じ食材と比べてどの程度違うかまですぐに言い当てた。これは僕も舌には自信があるからすぐに覚えられた。

 それから調理後の料理の栄養価も熱処理によって失われたもの、調理によって栄養価が変質したものまで教えてくれた。さらに人を見たときにその人の表情や体つきからどういった栄養不足が起きているかまですぐに言い当てた。

 な、なんて覚えることが多いんだ。それに料理を提供する人を見て、ある程度栄養バランスを考えなくちゃいけないなんて。普段ウェイターとしてガーランド師匠に教わっているおかげで人を見る目は養われている。今までの経験がなくちゃついて行けない。

 ほんの数時間でこんなに多くの情報を与えられると脳が追いついてくれない。するとそんな僕を見たヴィンランド師匠は脳が疲れているときにはと、また新しい情報を追加する。きょ、今日ばかりはヴィンランド師匠が鬼に見える…

「それから…お、インドラ。どうした?」

「もうベルクス限界。はいこれ、去年の過去問と一般参考書。今日はもう休んだ方が良いよ。」

「あ、ありがとうございます……」

 僕はふらふらとした足取りのまま家路に着いた。帰って夕食を食べたら今日のことを忘れないように全てノートにまとめないと。早くしないと忘れちゃいそうだよ。

 ちょっと迂闊なこと言っちゃったかな。だけど栄養の勉強は重要だもんね。ただ来週に試験があるのにそんな急に勉強して受かるわけないよ。…でもヴィンランド師匠あんなに熱心に教えてくれたよな。それなのに僕が諦めちゃ師匠に悪い。僕も受かる気で必死にやらないと。

 それから試験までの間、ヴィンランド師匠の特訓は続いた。ヴィンランド師匠の教えてくれることは参考書にも書かれていない知識ばかりだ。毎日毎日頭から湯気を立てるほど勉強した。ヴィンランド師匠からせっかく教わったことを無駄にしちゃいけない。

 そんなに毎日学んでいくともう目の前に出された料理に料理の栄養素が見えてきそうだ。そしてそんな毎日を過ごし、ついに試験前日になった。ヴィンランド師匠はここで最後の追い込みをかける、と思ったのだけれどその日は今まで学んできたことの復習をするだけで終わった。

「師匠。もう他に覚えることはないんですか?」

「ん?もう必要なことは教えたぞ。わからないことがあったらまたその都度調べりゃいいんだよ。あ、もしかして前日に無理やり詰め込むと思ったのか?そんなんじゃ結局なんの役にもたちゃしねぇよ。ちゃんとした料理人になるのならしっかり覚えておかないとな。あ、それからこれ紹介状だ。これ持って行けば受けさせてくれるから。」

「え?持っていかないと受けさせてくれないんですか?」

「何をいうのかと思ったら。当たり前だろ?これ国家試験なんだから普通は2年間びっちり学ぶんだぞ。ただお前はそんな暇ないからな。俺の紹介状で何とかしてやる。」

 そ、そんなに大変な試験なのかな?栄養学について勉強はしたけど、色々と経験が必要な試験なのならば僕なんかが受けていいのかな?

 そして翌日、ヴィンランド師匠に言われた場所に移動するとそこには大勢の人たちが集まっていた。これから受付で確認をして入場していくみたいだけど、本当に大丈夫なのかなぁ…

「ではこちらをお持ちになって入ってください。次の方……子供?えっと…ここは試験会場なので君では…」

「あ、えっと…しょ、紹介状を持って来ました!」

「紹介状?一体誰の……ヴィ、ヴィンランド様!しょ、少々お待ちください!」

 紹介状を持って奥に行っちゃった。ここで待ってれば良いよね?5分経っても出てこないけど…それでももう少し待っているとさっきのお姉さんが落ち着かない様子で戻って来た。

「お、お待たせしました。紹介状の確認が取れましたのでこちらの書類を持ってお入りください。」

「え!ど、どうも…」

 なにか色々言われるかと思ったけどすんなり入れるみたい。案内された部屋に入るとそこには大勢の人がいた。しかも全員僕より年上だ。少し観察してみると今も必死に勉強している人と和気藹々と話している人に分かれているみたい。

 どうしてこんなに分かれているのか不思議に見ていると突然肩を叩かれた。すぐに振り向くとそこには知らないお兄さんが立っていた。

「よお少年。ここは子供が来るところじゃないぜ。」

「え…い、いや僕は…」

「あははは、悪い悪い、ちょっとしたジョークだよ。ここにいるってことはお前も俺らなんかと同い年だもんな。ツレはみんな別会場で暇でさ。あ、俺は隣の席のガーズってんだ。よろしくな。」

「よ、よろしくガーズさん。僕はベルクスって言います。ガーズさんは勉強しなくていいんですか?」

「ん?俺は1級狙いじゃないからいいんだよ。俺はあくまで兵站部隊所属にするつもりだからな。最低限の資格を取っておいて出世の役に立てるつもりだ。そういうお前は1級狙いなのか?」

 1級ってなんのことだろう。ヴィンランド師匠からそんなこと聞いたことないしよくわからないや。僕が不思議そうな表情をしているとガーズさんは呆れた表情で僕を見て来た。

「お前…そんなことも知らずに来たのか?栄養学の資格はいくつか種類があって俺みたいなのは最低限の栄養学の知識を知っているって証明になる普通の資格取得だ。それで…今も頑張って勉強している奴らはその上の資格取得を目指している。9割以上正答で1次試験合格だからな。全員必死だぜ。というかこのくらい常識だぞ。お前…大丈夫か?この試験は8割以上合格するが逆に2割は落ちるんだからな?ちゃんと勉強しないとまずいぞ。」

「あ、あははは…頑張ります……」

 そんなのがあったなんて全然知らなかった。参考書にも書いてないし、ヴィンランド師匠も教えてくれなかった。どうせなら1級が欲しいけどさすがに僕じゃ無理だよなぁ。

 不安になって来たから少し予習しておくことにしたけどものの10分もしたら試験官の人が入って来て、すぐに試験が始まっちゃった。

「試験時間は2時間です。時間以内に終わった方は途中退室も可能です。挙手して試験管を呼んでください。問題用紙と解答用紙は届きましたね?カンニングは即退場となります。それでは…試験開始!」

 早速試験が始まったけど問題用紙が分厚い。問題数は300問以上あるから急がないと時間が間に合わなくなっちゃう。みんなどんどん書き込んでいるみたいだから僕も急がないと。

 最初の問題はさっき予習したところだからすぐにわかるぞ。この辺りは昨日ヴィンランド師匠と復習したところだ。こっちも復習したところ。ここは何度も教わったからちゃんと覚えている。時間大丈夫かな?急がないといけないけど焦ってミスしたらダメだ。

 よし、とりあえず全部書き終わったぞ。まだ試験終わってないみたいだし見直しもしておこう。……一度全部見直したけどもう一度確認しよう。……もう大丈夫だよね?あれ?時間まだなのかな?なんだかホッとしたらトイレ行きたくなっちゃった。その場で手を挙げると試験官の人がすぐに来てくれた。

「どうしました?何か落としましたか?」

「い、いえ、終わったので退出してもいいですか?トイレも行きたくて…」

「終わった?トイレに行きたいだけなら一時退出も可能ですよ?」

「いえ、もう終わったので大丈夫です。」

「そう…ですか。では解答用紙を預かります。試験開始1時間で退出は非常に珍しいです。それでは廊下にいる係員の案内のもと移動してください。」

 あ、あれ?そんなに早く終わったんだ。ずいぶん焦ってやったけどそんなに焦る必要はなかったんだね。もう少しゆっくり慎重にやればよかったかな?まあ見直しもしたから大丈夫だよね?




「ま、まじかよ…もしかして途中で諦めた?それとも…」

「そこ!私語は厳禁です。カンニング扱いで退出させますよ。」

「す、すみません!!」
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