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第546話 そして俺は
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簒奪者によって留められていた魂達が輪廻へと帰る。その光景はあまりに幻想的であった。この光景は生涯忘れられない景色になるだろう。そしてその魂達が解放されていく中心には今尚神の力を我が物にしようとする初代神魔とそれに連なる者達がいた。
「嫌だ…」「これを手放すのは…」「私のものだ…」「誰にもやらぬ……」
『もうお前達のものじゃない。返してもらうよ…』
醜い簒奪者達の前でポチは座っている。すでにエヴォルヴの機体は限界を迎えていた。一歩たりとも動くことは叶わないだろう。そんな簒奪者達の前にミチナガとイッシン、フェイミエラルが立つ。
「なんだか最初の方しか役に立っていなかったけど、なんとかなって良かったよ。」
「二人が最初に時間を稼いでくれなきゃどうにもならなかった。感謝してる。」
「感謝するのは良いけど…これダメじゃないのか?」
簒奪者に指を向け、そう発言するフェイミエラル。それがなんなのか理解していないのはイッシンだけだ。
「これ完全に混ざり合っているのだ。剥がすのは無理じゃないか?」
「そうなのか?それじゃあ…どうするんだミチナガ。」
「問題ない。そのためのアイテムは存在する。」
そう言ってスマホから一つのアイテムを取り出す。それは小さなロザリオだ。このロザリオはかつてリリーを苦しめ、死に至らしめようとした代物。そして異世界から来たミチナガのスマホと同じ、遺品の一つである。
「このロザリオの所有者はこの世界に来てすぐに盗賊に襲われ、死ぬことになった。しかし本来はそんなことあり得ないんだ。こういったアイテム持ちの異世界人は基本的に長生きする。自ら危険に飛び込まない限りは。お前はこのロザリオを恐れた。だからこの所有者をすぐに殺そうと転移先に介入した。」
「なぜそれが…」「やめろ…」
「十字架は神聖を表すものでもある。しかし本質は神を磔にし、封じるためのものだ。こいつでお前から神の力だけを取り出す。さあ…頼んだぞ。」
ミチナガはロザリオを掲げる。ロザリオは淡い発光をしながら簒奪者から少しずつ神の力を取り出していく。分離されてく簒奪者たちは一人、また一人と輪廻の輪に帰ろうとしていく。
「我らの神の力が」「だがいずれ」「また我らの手に取り戻すぞ」「何百年、何千年かかろうが…」「我らは再び蘇る」
「ちっ!やっぱり異世界人をこっちに連れてきたときに転生魔術完成させてたか。」
「転生魔術って…それじゃああいつらいずれは復活するってことか?」
「多分そういうことだと思う。魂に干渉できる技術なんて知らないぞ。それに…下手すれば他の関係ない魂にも影響が…」
天へと還る簒奪者たちの魂。彼らの魂はいつになるかはわからないが、知識や魔力を引き継いで復活する。そしてその頃にはミチナガたちは生きていないだろう。簒奪者たちとの戦いに終わりはない。
「数百年後にまた会えると良いな」「その頃には誰も生きていないか」「ん?なんだこの光は…」
「おいおいおいおい……良いところ待っていくね。」
魂の還る先、輪廻の向こうから光が差す。その光は神々しく、なんと眩いことか。そしてそこには幾人もの輝く人間の姿があった。
「なんだあれは…」「ああ…暖かい」「美しい」「ああ…神よ」
「神を奪ったやつらに神と呼ばせるか。お前の名声、再び天の果てから届いたぞ。カナエ・ツグナオ。」
輪廻で待ち構えるのはカナエ・ツグナオと数多の英雄たちであった。そしてその背後にはぼんやりと浮かぶ12人の光が見える。
「ああ…彼らのことも救ってくれたのか。」
簒奪者たちの魂は全てツグナオと英雄たちによって回収された。彼らが転生して再び神を奪うようなことは起きないだろう。そしてツグナオはミチナガへ声なき声を届けた。
「後は頼んだ…か。ああ、頼まれた。」
ツグナオに微笑み、そして輪廻へと戻っていった。もうここにはミチナガとイッシン、フェイミエラルに使い魔たちしかいない。そして目の前には神の力のみが浮遊している。
「すごい力の塊だね。だけどこれで一件落着?」
「そう…だな。簒奪者によって世界が歪められることはなくなった。だけど…正確にはまだ終わりじゃない。」
「どういうことなのだ?」
「地上にいくつかカメラを残してきた。これを見ればわかるはずだ。」
「どれどれ…ってなんだこれ……地震か?」
「世界の終わりさ。」
「どういうことだ?」
「簡単な話だ。目の前にあるこれは神の力の塊だ。だが正確に言えば神の力しかない。元々の神という名の世界を構築するシステムは簒奪者たちによって歪められた。そして簒奪者がいなくなったことによりそのシステム自体が崩壊したんだ。もうこの神の力に世界を構築するシステムは残っていない。そしてそれは世界の崩壊を意味する。」
「そんな…それじゃあ俺たちがやったことは世界に終焉を迎えただけ?」
イッシンは驚愕する。世界を救うためにやったと思ったことが、結果的に世界を終わらせることになるなんて予想だにしていなかった。フェイミエラルも世界中で発生している地震によって大地が割れていく様を見て恐怖している。
「だ、だったらこの中の誰かが次の神になれば良いのだ。ただイッシンは不器用だから無理。私がやる」
覚悟を決めるフェイミエラル。しかしミチナガはそんなフェイミエラルの頭を撫でた。
「たとえどんなに天才でも世界を構築するシステムを作るのは無理だよ。大丈夫だ。これは俺の仕事だよ。」
「ミチナガ、お前には世界を構築することができると?」
「俺じゃない。俺のこのスマホだ。このスマホの中にはすでに世界が存在する。世界を構築するシステムそのものが存在するんだ。一から作るよりも確実だし、はるかに楽だ。2人とも焦る必要すらないんだよ。もとより俺はこうなることも予期していた。覚悟はできている。ここに俺が残って神様に成り替わるよ。」
「ミチナガ…お前には無理だ。お前は高い魔力を持たない。時期に寿命を迎えるお前では…」
「イッシン、俺の顔よく見てみて。戦う前と違わない?」
ミチナガにそう言われよく見るイッシン。戦いの疲労で疲れた顔をしているが、どこか若返っているように見える。ただそれは肩の荷が降りたからというだけのようにも思える。
「多少若いように見えるくらいだ。」
「ありゃ、そのくらいしかまだ効果でないか。俺はこの世界の人間とは違う時間が流れる。あっという間に寿命を迎えるんだ。それが嫌だった。だから長生きするために研究をした。そしてこれが完成した。俺専用のナノマシンだ。戦いが始まる前に身体に注入したんだが、こいつで細胞分裂による細胞の老化を食い止め、老化した細胞を若い細胞に作り変えている。まあ何が言いたいかというと…このナノマシンがある限り俺は不老不死の存在になった。」
ミチナガの肉体には数億ものナノマシンが注入されている。これにより細胞分裂による細胞の劣化を抑え、細胞を若返らせることに成功した。ミチナガはもう寿命に怯えることはない。ここで神に成り代わり、永遠の時を生きる。
「…本当に良いのか?」
「問題ない。もともと俺の仕事は使い魔たちがやってくれていたからな。俺がいなくても全て回る。俺はここから離れられないが、使い魔たちはいつだって…」
「そうじゃない!お前は…永遠にここで1人なんだぞ。」
「…大丈夫だよ。使い魔たちを使えばテレビ電話もできる。いつだって会話できるんだ。だから問題ない。」
そんなのはやせ我慢だ。だが誰かがこの役目をしなくてはならない。そしてミチナガ以上の適任者は存在しない。
それがわかっているからこそ、セキヤ国の運営をミチナガがいなくても回るようにした。最後の観光で世界を見て回った。そしてリリーと最後の別れを済ませた。
もう思い残すことはない。彼らを守れるのならばこれ以上の幸せはない。だから自分が全て引き受けて終わらせる。
「異世界に来て商人になって貴族になって、世界貴族にもなった。そして国を作って王様になって英雄になって……魔神になったと思ったら最後は神になるか。数奇な人生だな。でも…良い人生だ。」
ミチナガは神の力に手を伸ばす。これでセキヤミチナガの波乱万丈の旅は終え、世界が終わるその時までここで過ごす。
「嫌だ…」「これを手放すのは…」「私のものだ…」「誰にもやらぬ……」
『もうお前達のものじゃない。返してもらうよ…』
醜い簒奪者達の前でポチは座っている。すでにエヴォルヴの機体は限界を迎えていた。一歩たりとも動くことは叶わないだろう。そんな簒奪者達の前にミチナガとイッシン、フェイミエラルが立つ。
「なんだか最初の方しか役に立っていなかったけど、なんとかなって良かったよ。」
「二人が最初に時間を稼いでくれなきゃどうにもならなかった。感謝してる。」
「感謝するのは良いけど…これダメじゃないのか?」
簒奪者に指を向け、そう発言するフェイミエラル。それがなんなのか理解していないのはイッシンだけだ。
「これ完全に混ざり合っているのだ。剥がすのは無理じゃないか?」
「そうなのか?それじゃあ…どうするんだミチナガ。」
「問題ない。そのためのアイテムは存在する。」
そう言ってスマホから一つのアイテムを取り出す。それは小さなロザリオだ。このロザリオはかつてリリーを苦しめ、死に至らしめようとした代物。そして異世界から来たミチナガのスマホと同じ、遺品の一つである。
「このロザリオの所有者はこの世界に来てすぐに盗賊に襲われ、死ぬことになった。しかし本来はそんなことあり得ないんだ。こういったアイテム持ちの異世界人は基本的に長生きする。自ら危険に飛び込まない限りは。お前はこのロザリオを恐れた。だからこの所有者をすぐに殺そうと転移先に介入した。」
「なぜそれが…」「やめろ…」
「十字架は神聖を表すものでもある。しかし本質は神を磔にし、封じるためのものだ。こいつでお前から神の力だけを取り出す。さあ…頼んだぞ。」
ミチナガはロザリオを掲げる。ロザリオは淡い発光をしながら簒奪者から少しずつ神の力を取り出していく。分離されてく簒奪者たちは一人、また一人と輪廻の輪に帰ろうとしていく。
「我らの神の力が」「だがいずれ」「また我らの手に取り戻すぞ」「何百年、何千年かかろうが…」「我らは再び蘇る」
「ちっ!やっぱり異世界人をこっちに連れてきたときに転生魔術完成させてたか。」
「転生魔術って…それじゃああいつらいずれは復活するってことか?」
「多分そういうことだと思う。魂に干渉できる技術なんて知らないぞ。それに…下手すれば他の関係ない魂にも影響が…」
天へと還る簒奪者たちの魂。彼らの魂はいつになるかはわからないが、知識や魔力を引き継いで復活する。そしてその頃にはミチナガたちは生きていないだろう。簒奪者たちとの戦いに終わりはない。
「数百年後にまた会えると良いな」「その頃には誰も生きていないか」「ん?なんだこの光は…」
「おいおいおいおい……良いところ待っていくね。」
魂の還る先、輪廻の向こうから光が差す。その光は神々しく、なんと眩いことか。そしてそこには幾人もの輝く人間の姿があった。
「なんだあれは…」「ああ…暖かい」「美しい」「ああ…神よ」
「神を奪ったやつらに神と呼ばせるか。お前の名声、再び天の果てから届いたぞ。カナエ・ツグナオ。」
輪廻で待ち構えるのはカナエ・ツグナオと数多の英雄たちであった。そしてその背後にはぼんやりと浮かぶ12人の光が見える。
「ああ…彼らのことも救ってくれたのか。」
簒奪者たちの魂は全てツグナオと英雄たちによって回収された。彼らが転生して再び神を奪うようなことは起きないだろう。そしてツグナオはミチナガへ声なき声を届けた。
「後は頼んだ…か。ああ、頼まれた。」
ツグナオに微笑み、そして輪廻へと戻っていった。もうここにはミチナガとイッシン、フェイミエラルに使い魔たちしかいない。そして目の前には神の力のみが浮遊している。
「すごい力の塊だね。だけどこれで一件落着?」
「そう…だな。簒奪者によって世界が歪められることはなくなった。だけど…正確にはまだ終わりじゃない。」
「どういうことなのだ?」
「地上にいくつかカメラを残してきた。これを見ればわかるはずだ。」
「どれどれ…ってなんだこれ……地震か?」
「世界の終わりさ。」
「どういうことだ?」
「簡単な話だ。目の前にあるこれは神の力の塊だ。だが正確に言えば神の力しかない。元々の神という名の世界を構築するシステムは簒奪者たちによって歪められた。そして簒奪者がいなくなったことによりそのシステム自体が崩壊したんだ。もうこの神の力に世界を構築するシステムは残っていない。そしてそれは世界の崩壊を意味する。」
「そんな…それじゃあ俺たちがやったことは世界に終焉を迎えただけ?」
イッシンは驚愕する。世界を救うためにやったと思ったことが、結果的に世界を終わらせることになるなんて予想だにしていなかった。フェイミエラルも世界中で発生している地震によって大地が割れていく様を見て恐怖している。
「だ、だったらこの中の誰かが次の神になれば良いのだ。ただイッシンは不器用だから無理。私がやる」
覚悟を決めるフェイミエラル。しかしミチナガはそんなフェイミエラルの頭を撫でた。
「たとえどんなに天才でも世界を構築するシステムを作るのは無理だよ。大丈夫だ。これは俺の仕事だよ。」
「ミチナガ、お前には世界を構築することができると?」
「俺じゃない。俺のこのスマホだ。このスマホの中にはすでに世界が存在する。世界を構築するシステムそのものが存在するんだ。一から作るよりも確実だし、はるかに楽だ。2人とも焦る必要すらないんだよ。もとより俺はこうなることも予期していた。覚悟はできている。ここに俺が残って神様に成り替わるよ。」
「ミチナガ…お前には無理だ。お前は高い魔力を持たない。時期に寿命を迎えるお前では…」
「イッシン、俺の顔よく見てみて。戦う前と違わない?」
ミチナガにそう言われよく見るイッシン。戦いの疲労で疲れた顔をしているが、どこか若返っているように見える。ただそれは肩の荷が降りたからというだけのようにも思える。
「多少若いように見えるくらいだ。」
「ありゃ、そのくらいしかまだ効果でないか。俺はこの世界の人間とは違う時間が流れる。あっという間に寿命を迎えるんだ。それが嫌だった。だから長生きするために研究をした。そしてこれが完成した。俺専用のナノマシンだ。戦いが始まる前に身体に注入したんだが、こいつで細胞分裂による細胞の老化を食い止め、老化した細胞を若い細胞に作り変えている。まあ何が言いたいかというと…このナノマシンがある限り俺は不老不死の存在になった。」
ミチナガの肉体には数億ものナノマシンが注入されている。これにより細胞分裂による細胞の劣化を抑え、細胞を若返らせることに成功した。ミチナガはもう寿命に怯えることはない。ここで神に成り代わり、永遠の時を生きる。
「…本当に良いのか?」
「問題ない。もともと俺の仕事は使い魔たちがやってくれていたからな。俺がいなくても全て回る。俺はここから離れられないが、使い魔たちはいつだって…」
「そうじゃない!お前は…永遠にここで1人なんだぞ。」
「…大丈夫だよ。使い魔たちを使えばテレビ電話もできる。いつだって会話できるんだ。だから問題ない。」
そんなのはやせ我慢だ。だが誰かがこの役目をしなくてはならない。そしてミチナガ以上の適任者は存在しない。
それがわかっているからこそ、セキヤ国の運営をミチナガがいなくても回るようにした。最後の観光で世界を見て回った。そしてリリーと最後の別れを済ませた。
もう思い残すことはない。彼らを守れるのならばこれ以上の幸せはない。だから自分が全て引き受けて終わらせる。
「異世界に来て商人になって貴族になって、世界貴族にもなった。そして国を作って王様になって英雄になって……魔神になったと思ったら最後は神になるか。数奇な人生だな。でも…良い人生だ。」
ミチナガは神の力に手を伸ばす。これでセキヤミチナガの波乱万丈の旅は終え、世界が終わるその時までここで過ごす。
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