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第503話 始まる復興

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 ミチナガの目覚め。これにより復興事業が大きく動き出すこととなった。しかし手をつけなくてはならないことがあまりにも多くありすぎる。

 国によっては中枢機関が壊滅し、国としての形を続けられないものもある。そういった国から国民を他国に任せなくてはならない。さらには復興しようにも国中が瓦礫の山というところも多い。

 食糧生産を行う牧場や畑、河川などが戦闘により使えなくなっているところもある。まず初めに手をつけなくてはならないという場所を定めるのが非常に難しい。それにミチナガがやる気になってもその国の国王などに話をつけなくては動くことは難しい。

 そこでミチナガは復興が必要な国の土地を高額で購入した。購入した土地でミチナガが何かしたところでそれは問題にはならない。さらに高額で購入したことで復興するための資金がその国に落とされることになる。

 さらにミチナガは購入した土地の整備にその国の国民を雇った。正直復興など場合によっては金にならないことが多い。復興している中で貧しくなり、犯罪や食糧難で死ぬことを考え、仕事を与えることを選んだ。

 だがミチナガが雇うことで他の復興事業が進まず、住む場所もないような状況になる。そこでミチナガは簡易テントの貸し出しを始めた。家を建てずに楽に住む場所を得られるということで多くの希望者が現れた。

 そしてわずか数週間後にはミチナガが購入した土地からは瓦礫がどかされ、まっさらな土地が生み出された。これには国民は大いに喜んだ。そしてその土地では新たな建物の建設準備まで始まっている。

 しかしそこで問題が起きた。その問題が起きたのはミチナガではない。国の方だ。その問題はミチナガが購入した土地以外に目を向ければわかる。他の土地ではまるで復興が進んでいないのだ。

 未だ瓦礫の山が積み重ねられた痛々しい土地。ミチナガの土地と見比べた国民はこの状況に不満を漏らした。その事態を知った国は復興に力を入れようとするが人がまるで集まらない。

 なぜなら国の復興事業とミチナガの復興事業では給金に数倍の差がついていたからだ。国の復興事業など、資金に限りがあるため出せる金は限られている。しかしミチナガは惜しげも無く投資した。

 これに対し国はミチナガに給金を下げるように圧力をかけようとした。しかしミチナガはこれを拒んだ。ミチナガとしても今給金を下げるような真似をすれば暴動が起きてしまう。

「人々のために少しでも生活が良くなるようにお金を出していたんですが、もう生活は問題ないと下げようとしたら現場でボイコットまで起きてしまい下げることができないんです……」

 非常に申し訳なさそうに言うミチナガ。これはあくまでもミチナガの善意。もしも給金を下げるのであれば国からの命令だと言うことで公布して欲しいと頼まれた。しかし国もこれには困った。この状況下で人々のやる気を削ぐそうなことをすれば国が簡単に傾いてしまう。

 ましてや今は多くの国で人が足りていない。下手なことをすれば他国へ逃げられてしまう可能性がある。しかしこの状況を放っておけば復興しないことによる不満も高まる。手の打ちようがない。そこでミチナガは唯一の改善策を示した。

 それは国に多額の資金を貸すことだ。国の復興が進まないのは国にお金がないからだ。お金さえあればなんとでもなる。しかし国としては多額の借金をするのには躊躇した。復興後に借金で国が回らなくなる可能性がある。そこでミチナガは提案した。

「今は世界中でこのような状況です。それにこのことに関しては私にも責任があります。貸し付ける資金に関して利子はつけません。返済についても事前に取り決めをしましょう。」

 多額の無利子の借金の上、返済についても数十年単位でミチナガ商会の税金の引き下げや国の税金の収入から無理のない返済で良いと言う誓約書まで作った。これには多くのものは疑ったが、ミチナガのこれまでの実績から嘘はないと信じられ、早いうちに多額の借り入れが決まった。

 そして国の復興事業にも力が入り出した。この調子であれば1年でかなりの復興が行われるだろう。そんな復興が進む中、ミチナガは使い魔たちからの報告を受けていた。

「そうか…もう20以上の国で貸付が進んだか。」

『ポチ・額にして金貨50億枚。今後もまだまだ増える予定だよ。それに伴い…うちの収入も大きく上がっている。』

「どんなに無利子で金を貸し付けても、その金を使うのは全部うちでだからな。ばら撒けばばらまいたぶんだけ返ってくる。この世界の流通が乏しくて助かる。」

 今世界中の商人は立て直すのでやっとの状態だ。物資を仕入れることすらできない。しかしミチナガにはスマホの中の膨大な物資が存在する。その全てを貸し付けた金と交換しているのだ。

 今や世界中の商売をミチナガ商会が独占している。その儲けの額は昨年度の十数倍にも及ぶ。復興バブルが起きているのだ。まだまだ儲けは上がっている。

 さらにミチナガ商会の店頭に並ぶ商品の価格は戦争前と比べると倍以上の値段がついている。物によっては十倍以上の値がついている。値段が上がっている名目は世界中こんな状況なので仕入れや輸送料が通常よりも多くかかっていると言うことだ。

 正直なことを言えばミチナガにはそんなこと関係ないのだが、人々はそんなことは知らないのでむしろこんな状況下でもこの程度の値上げで済んでいると感じている。

 ただ平時であればこの値段では買い物できずに餓死してしまう可能性がある。しかし購入していく人々は一切文句を言わない。それどころかいつもよりも購買意欲が高いようにさえ感じる。

 その理由はこの復興バブルだ。この復興バブルの恩恵を受けているのはミチナガだけではない。復興事業の現場で働く人々もだ。

 ミチナガは復興事業に多額の給金を給付した。そして国も同様の額を給付している。平時の仕事よりもはるかに稼げるのだ。そして平時よりも高い給金と物価に人々の金銭感覚は混乱していく。

 通常なら買えるはずのない値段のものに手が届くどころか安いとさえ感じさせる。その気持ちが人々の購買意欲を駆り立てた。生活必需品だけでなく嗜好品なども飛ぶように売れる。

 これによりミチナガは自分で支払った金の半分以上を回収していた。そして支払っている分の給金も土地や物件に変わっているので決して無駄遣いではない。

「冒険者たちはどうなっている?」

『ポチ・順調に数が増えているよ。戦争中にかなり大勢亡くなったから優秀な人材不足は起きているけどね。冒険者も稼げることがわかったから新規の数も増えているよ。』

 戦時中は戦力として多くの冒険者たちが駆り出され、そして亡くなった。そして今もまだ冒険者たちは同じ仕事をしている。それは死者の掃討だ。

 ミサトの能力で蘇った死者はまだ数多くいる。そしてそれらが日々襲いかかってくるのだ。国もその掃討に動いてはいるが、それだけでは手が足りず冒険者や傭兵にも仕事を頼んでいる。

 最初はかなりの危険を伴うと言うことで忌避するものが多かったが、ミチナガが多額の報酬を出すことで人員不足が格段に減った。

 おかげで死者による被害はごくわずかなものしかない。ただこれも勇者王カナエツグナオが多くの死者を引き連れてこの世を去ってくれたおかげだ。最近では勇者教なる宗教が誕生するほどの人気っぷりである。

「とりあえず1年…1年耐えれば死者は全てこの世を去る。それまで辛抱すればこの問題は解決する。学校の方はどうなっている?」

『ポチ・建設予定もほとんど決まっているよ。子供のためだからナイトも資産全部使う勢いでやってくれって言っているしなんの問題もなく済みそう。』

「そうか…個人の資産で言えば世界的に見てもナイトって俺の次に金持ちだよな?」

『ポチ・まあダンジョン踏破者だしね。巨大のヨトゥンヘイム攻略に人災のミズガルズも攻略中。正直もうお金は使い果たせないほどあるね。まあ本人は使う気もないけど。』

「学校や孤児院以外にもナイトの金を使うあて作らないとなぁ……今って使い魔の人員のあまりってある?」

『ポチ・う~ん…ないと言えばないしあると言えばある。各国の人員不足は未だに問題だからね。僕たちでそこを補っているけど…うまくやり繰りすれば2万人くらいはなんとかなるかな?』

「そうか。それじゃあこう言うのはどうだ?」

 ミチナガはポチに提案をする。それを聞いたポチは面白そうだからと早速人員の割り振りを見直し、すぐにその提案を元に何かを始めた。世界復興もとい世界改革はまだまだ続く。
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