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第460話 勇者と呼ばれた男2
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ツグナオと拾われた子供の奇妙な二人生活は拾われた子供がツグナオに従う…ということではなく、ツグナオが下僕のように扱われる生活であった。
ツグナオが外で金を稼ぎ料理を作る。拾われた子供はそれをただ食べるだけだ。子供としては何もしなくても好きなだけ食べることができて暖かく眠ることができる。最高の環境だ。
ツグナオも何か言えば良いとは思うのだが、何も言わずその子供の好きなようにやらせている。子供はそのせいでさらにわがままを助長させている。そしてそんなある日、ツグナオはもう一つの運命の出会いを果たす。
それはある日のこと、いつものように仕事に行った時に仕事先で起きている揉め事から始まった。巻き込まれないように遠くで見ているとやがて一人の大女が店から追い出された。筋骨隆々な女は飲食店で働くようには見えない。
しかしその大女は片腕を失っていた。長年続けた傭兵による影響だろう。よくあることだ。しかし傭兵という仕事は命がけだというのに儲けは少ない。そして片腕を失い傭兵として働けなくなった今、新しい仕事を求めているのだろう。ツグナオはその大女に興味を持った。そして一つの案を考えついた。
「大丈夫ですか?」
「あ?チッ!大丈夫だよ。失せな。」
「あの…仕事を探しているんですよね?」
「それがどうした。まさか…仕事をくれんのかい?」
大女は明らかに自分よりも弱い男に心配されたことに腹を立てたが、仕事をくれるのなら話は違うとすぐに機嫌を直した。そこでツグナオは大女に一つの提案をした。大女はその提案に不信感を覚え、頭を悩ませたがすぐに結論を出した。
そしてその日の仕事終わり、ツグナオの帰宅を待つ拾われた子供の目の前にはツグナオと一人の大女が立っていた。
「な、なんだお前…」
「あ、近頃移民も増えてきて物騒になってきたから護衛として新しい同居人に来てもらったんだ。最近仕事も順調だから2人くらいなら養えると思って。」
「ガンガルド・エリッサだ。よろしくな嬢ちゃん。名前はなんていうんだい?」
「…別に。名前なんかない。住みたきゃ勝手に住め。」
エリッサとの間の力の差を感じた子供はそれ以上何も言わない。しかしこれにはエリッサもツグナオに怒りを見せた。
「同居人なのに名前も知らないのかい?今まで何して来たんだ。」
「い、いっつも話しかけても無視して来たし…力関係的に…その…」
「はぁ…じゃあ煤汚れがすごいからススとでもつけるかい?」
「それはさすがに……でも綺麗な黒髪だし…クロとか?」
「どうでも良い。好きに呼べ。」
「じゃあクロで決まりだな。ほら、とっとと飯にすんぞ。って誰が飯を作ってんだい?」
「あ、それは僕が。今作りますね。」
「仕事も飯も全部一人でやってんのかい。クロにも少しは働かせな。」
奇妙な2人暮らしに文句を言うエリッサ。しかしツグナオが作る料理を食べると何も文句を言わなくなった。どうやらツグナオの料理が気に入ったらしい。
それから奇妙な3人の生活は始まった。ツグナオが外で金を稼ぎ、飯を作る。エリッサは毎日ぶらついているだけに見えるが、あちこちで人の話し声を聞いて情報を集め、時折ツグナオの様子をみて問題がないか確認する。本当に何もしていないのはクロだけだ。
そんなクロに対しエリッサは苛立ちを募らせる。そしてついに我慢の限界が来た時、先にツグナオに詰め寄った。クロを追い出してしまおうと。しかしツグナオはそれに対して困った表情で笑み浮かべながら話し出した。
「クロは僕にない才能を持っている。それがいつの日か分かれば良いなって思って連れて来たんだけど……クロにはね、背中のところに刺青があるんだ。番号みたいなんだけどよくはわからない。けどそれってもしかしたら…どこかで奴隷だったのかもしれない。外に出たがらないのも元の主人みたいなのに見つからないようにしているのかも。そう考えたら……それに子供だからさ。少しくらいわがままに育ったっていいじゃないか。」
「はぁ……あんた本当にお人好しだね。まああんたがそれで良いならわかったよ。私も養ってもらっている身だからね。なんならお礼に一発くらいヤらせてやろうか?」
「だ、大丈夫です。さすがにもう一人養うことになったら厳しいから…」
「安心しな。私たち鬼人族は産めなくなるのが早いんだよ。私ももう産めやしない。…昔一度だけ出産したんだけどね、生まれてすぐに死んじまった。あの子がちゃんと成長していたらクロくらいの年にはなっていたのかね。」
しんみりとした空気が流れる。そこでこの話は終わってしまった。これ以上話を続けてもエリッサもツグナオに養ってもらっている身のため、最終的な決定権はツグナオにある。そのツグナオが乗り気でないのならば話をしても無意味だ。
それから数日後のある日。ツグナオが仕事に出かけたしばらくあとに突如エリッサがクロに付いてくるように指示する。クロも自身より格上のエリッサに命じられたため拒否することができず、言われた通りについていく。
エリッサが向かった先はツグナオの仕事先だ。クロによく見るように指示をする。渋々ツグナオの仕事姿を見るクロだが、その時ツグナオにガラの悪い客が絡んだ。罵声を浴びせられるツグナオはその客に殴られるとそのまま料理をぶっかけられた。
「な!あいつ…」
「動くんじゃないよ。あんたはそこで見ているだけだ。」
料理をかけられドロドロになったツグナオはその流れでその店の女将にも叱責される。制服を汚された挙句、さっきの客から料金も取れなかったのが原因らしい。おまけにその日の給料は損失分を天引きされるとのことだ。
クロはその様子を見て苛立ちを募らせる。さらにそんな目にあったツグナオが妙にヘラヘラしているのもクロの怒りを増幅させた。しかしエリッサはそんなことはどうでも良いという。
「あっちの角。見てみな。」
「…あれがどうした。」
「監視だよ。一昨日からツグナオを見ている。さっきの料理ぶっかけた奴もグルだ。ツグナオに仲間がいないか確認したんだ。」
「……なぜ?」
「あいつの稼ぎはこの国の中じゃ目立つほうだからな。あの手のやつが湧くのはよくあることだが、今回のは手が込んでいる上に数も多い。さすがに今回は…」
「そうじゃない!なぜ私をここに連れてきた!こんなのを見せて一体何が言いたい!私はあいつがどうなろうと…」
「だからさ。今回ばかりは数が多い。私だけじゃ対処しきれない。私も死にたくはないからここいらで手を引こうと思ってね。あんたも私と同じだ。あいつはもうダメだから他に行った方が良いよ。言いたかったのはそれだけさ。」
エリッサはそれだけクロにいうとその場を去った。これまではエリッサが全て対処してきた。しかし今回はそこそこの組織ぐるみらしい。だからツグナオを見限り、新しい食い扶持を探しに行こうというのだ。
なんとも薄情な言葉。しかしこの国で生きていくためには他人のことを考えてはいられない。戦争から逃げてきたこの場所であっても毎日数十人は死んでいる。それぐらいの危険地帯なのだ。だからこその判断。エリッサの判断は生きていく上では正しい。
クロもツグナオがどうなろうと知ったこっちゃない。クロもその場を去ろうとツグナオのいる方へ背を向けた。しかし去り際にふと振り返った際のツグナオの頑張る姿が目についた。
そして翌日。ツグナオが仕事に行き、エリッサもどこかへ行こうとした時クロが呼び止めた。振り返るエリッサの目にはものすごく不本意そうなクロの顔が映った。
「なんだい?」
「元傭兵なんだろ。戦い方を教えろ。」
「はっ!どういう風の吹き回しだい?別にあいつがどうなろうと関係ないんだろ?だったらどうでも良いじゃないか。」
「うるさい。あいつが死んだ後に戦える方がこの街で生き残る可能性が増える。そのためだ。それに……あんなに良い金づるはいないからな。」
今ひとつ正直になれないクロ。しかしそれでも少しでもやる気になったクロを見てエリッサも一安心する。どうやら作戦がうまく行ったらしい。
少しでもやる気を見せたクロに喜ぶが、正直あの連中を倒すのに正面からぶつかるのはエリッサでも厳しい。今のうちから闇討ちして数を減らして対処してようやくだ。クロが今から少し強くなったところで戦力にはならない。
だからクロをある程度鍛えて今回の件はエリッサが対処しようと考えていた。しかしエリッサがクロに稽古をつけてから半日。エリッサの考えは大きく変わっていた。
「くそ…この怪力ババァ……」
「あ゛?まだ減らず口を叩ける余裕があるようだね。それじゃあもう一丁やってやろうか。」
滝のような汗を流すクロにエリッサは再び襲いかかる。しかしエリッサの猛攻を前にクロは華麗に避け続ける。さらに反撃までして見せた。今日の朝までは間違いなく武術の素人であったクロだが、今の姿は間違いなく戦士の姿だ。
そしてその日の夕方。一連の稽古を終え、水浴びをして休むクロにエリッサはつい問いかけた。
「ん?なぜこんなに動けるかだと?」
「ああ。お前のその動きは並大抵のものじゃない。間違いなく朝の段階では素人だったが、今じゃ別人だ。」
「別に……ただ見ていただけだ。見て真似して動いて、考えて動いただけだ。別に難しいことじゃないだろ。」
真似して動いただけ。そしてそこから考えて模倣から派生させた発展系の動きを編み出した。そんなこと凡人にはできない。できるのは本当の天才だけだ。しかも1日でここまでできるようになるのはもう天才を超えている。
「あいつが才能あるって言っていたのは本当だったか。後答えたくなかったら別に良いんだが…その背中の数字はどうしたんだ?」
「数字?ああ、これのことか。生まれつきの痣みたいなものだ。それにしてもこれって数字なのか?」
「ツグナオの奴はそう言ってたぞ?数字の刺青があるから元奴隷じゃないかって。」
「はぁ?なんでそんなことに…ってちゃんと話したことないし当たり前か。」
「たまにはちゃんと話すんだな。お前らお互いのこと何も知らないだろ。」
困り顔を見せるクロ。それを見て軽くため息を漏らすエリッサ。そんな二人の元へその日の仕事を終えたツグナオが戻る。こうして3人の生活は一歩ずつ進んでいく。
ツグナオが外で金を稼ぎ料理を作る。拾われた子供はそれをただ食べるだけだ。子供としては何もしなくても好きなだけ食べることができて暖かく眠ることができる。最高の環境だ。
ツグナオも何か言えば良いとは思うのだが、何も言わずその子供の好きなようにやらせている。子供はそのせいでさらにわがままを助長させている。そしてそんなある日、ツグナオはもう一つの運命の出会いを果たす。
それはある日のこと、いつものように仕事に行った時に仕事先で起きている揉め事から始まった。巻き込まれないように遠くで見ているとやがて一人の大女が店から追い出された。筋骨隆々な女は飲食店で働くようには見えない。
しかしその大女は片腕を失っていた。長年続けた傭兵による影響だろう。よくあることだ。しかし傭兵という仕事は命がけだというのに儲けは少ない。そして片腕を失い傭兵として働けなくなった今、新しい仕事を求めているのだろう。ツグナオはその大女に興味を持った。そして一つの案を考えついた。
「大丈夫ですか?」
「あ?チッ!大丈夫だよ。失せな。」
「あの…仕事を探しているんですよね?」
「それがどうした。まさか…仕事をくれんのかい?」
大女は明らかに自分よりも弱い男に心配されたことに腹を立てたが、仕事をくれるのなら話は違うとすぐに機嫌を直した。そこでツグナオは大女に一つの提案をした。大女はその提案に不信感を覚え、頭を悩ませたがすぐに結論を出した。
そしてその日の仕事終わり、ツグナオの帰宅を待つ拾われた子供の目の前にはツグナオと一人の大女が立っていた。
「な、なんだお前…」
「あ、近頃移民も増えてきて物騒になってきたから護衛として新しい同居人に来てもらったんだ。最近仕事も順調だから2人くらいなら養えると思って。」
「ガンガルド・エリッサだ。よろしくな嬢ちゃん。名前はなんていうんだい?」
「…別に。名前なんかない。住みたきゃ勝手に住め。」
エリッサとの間の力の差を感じた子供はそれ以上何も言わない。しかしこれにはエリッサもツグナオに怒りを見せた。
「同居人なのに名前も知らないのかい?今まで何して来たんだ。」
「い、いっつも話しかけても無視して来たし…力関係的に…その…」
「はぁ…じゃあ煤汚れがすごいからススとでもつけるかい?」
「それはさすがに……でも綺麗な黒髪だし…クロとか?」
「どうでも良い。好きに呼べ。」
「じゃあクロで決まりだな。ほら、とっとと飯にすんぞ。って誰が飯を作ってんだい?」
「あ、それは僕が。今作りますね。」
「仕事も飯も全部一人でやってんのかい。クロにも少しは働かせな。」
奇妙な2人暮らしに文句を言うエリッサ。しかしツグナオが作る料理を食べると何も文句を言わなくなった。どうやらツグナオの料理が気に入ったらしい。
それから奇妙な3人の生活は始まった。ツグナオが外で金を稼ぎ、飯を作る。エリッサは毎日ぶらついているだけに見えるが、あちこちで人の話し声を聞いて情報を集め、時折ツグナオの様子をみて問題がないか確認する。本当に何もしていないのはクロだけだ。
そんなクロに対しエリッサは苛立ちを募らせる。そしてついに我慢の限界が来た時、先にツグナオに詰め寄った。クロを追い出してしまおうと。しかしツグナオはそれに対して困った表情で笑み浮かべながら話し出した。
「クロは僕にない才能を持っている。それがいつの日か分かれば良いなって思って連れて来たんだけど……クロにはね、背中のところに刺青があるんだ。番号みたいなんだけどよくはわからない。けどそれってもしかしたら…どこかで奴隷だったのかもしれない。外に出たがらないのも元の主人みたいなのに見つからないようにしているのかも。そう考えたら……それに子供だからさ。少しくらいわがままに育ったっていいじゃないか。」
「はぁ……あんた本当にお人好しだね。まああんたがそれで良いならわかったよ。私も養ってもらっている身だからね。なんならお礼に一発くらいヤらせてやろうか?」
「だ、大丈夫です。さすがにもう一人養うことになったら厳しいから…」
「安心しな。私たち鬼人族は産めなくなるのが早いんだよ。私ももう産めやしない。…昔一度だけ出産したんだけどね、生まれてすぐに死んじまった。あの子がちゃんと成長していたらクロくらいの年にはなっていたのかね。」
しんみりとした空気が流れる。そこでこの話は終わってしまった。これ以上話を続けてもエリッサもツグナオに養ってもらっている身のため、最終的な決定権はツグナオにある。そのツグナオが乗り気でないのならば話をしても無意味だ。
それから数日後のある日。ツグナオが仕事に出かけたしばらくあとに突如エリッサがクロに付いてくるように指示する。クロも自身より格上のエリッサに命じられたため拒否することができず、言われた通りについていく。
エリッサが向かった先はツグナオの仕事先だ。クロによく見るように指示をする。渋々ツグナオの仕事姿を見るクロだが、その時ツグナオにガラの悪い客が絡んだ。罵声を浴びせられるツグナオはその客に殴られるとそのまま料理をぶっかけられた。
「な!あいつ…」
「動くんじゃないよ。あんたはそこで見ているだけだ。」
料理をかけられドロドロになったツグナオはその流れでその店の女将にも叱責される。制服を汚された挙句、さっきの客から料金も取れなかったのが原因らしい。おまけにその日の給料は損失分を天引きされるとのことだ。
クロはその様子を見て苛立ちを募らせる。さらにそんな目にあったツグナオが妙にヘラヘラしているのもクロの怒りを増幅させた。しかしエリッサはそんなことはどうでも良いという。
「あっちの角。見てみな。」
「…あれがどうした。」
「監視だよ。一昨日からツグナオを見ている。さっきの料理ぶっかけた奴もグルだ。ツグナオに仲間がいないか確認したんだ。」
「……なぜ?」
「あいつの稼ぎはこの国の中じゃ目立つほうだからな。あの手のやつが湧くのはよくあることだが、今回のは手が込んでいる上に数も多い。さすがに今回は…」
「そうじゃない!なぜ私をここに連れてきた!こんなのを見せて一体何が言いたい!私はあいつがどうなろうと…」
「だからさ。今回ばかりは数が多い。私だけじゃ対処しきれない。私も死にたくはないからここいらで手を引こうと思ってね。あんたも私と同じだ。あいつはもうダメだから他に行った方が良いよ。言いたかったのはそれだけさ。」
エリッサはそれだけクロにいうとその場を去った。これまではエリッサが全て対処してきた。しかし今回はそこそこの組織ぐるみらしい。だからツグナオを見限り、新しい食い扶持を探しに行こうというのだ。
なんとも薄情な言葉。しかしこの国で生きていくためには他人のことを考えてはいられない。戦争から逃げてきたこの場所であっても毎日数十人は死んでいる。それぐらいの危険地帯なのだ。だからこその判断。エリッサの判断は生きていく上では正しい。
クロもツグナオがどうなろうと知ったこっちゃない。クロもその場を去ろうとツグナオのいる方へ背を向けた。しかし去り際にふと振り返った際のツグナオの頑張る姿が目についた。
そして翌日。ツグナオが仕事に行き、エリッサもどこかへ行こうとした時クロが呼び止めた。振り返るエリッサの目にはものすごく不本意そうなクロの顔が映った。
「なんだい?」
「元傭兵なんだろ。戦い方を教えろ。」
「はっ!どういう風の吹き回しだい?別にあいつがどうなろうと関係ないんだろ?だったらどうでも良いじゃないか。」
「うるさい。あいつが死んだ後に戦える方がこの街で生き残る可能性が増える。そのためだ。それに……あんなに良い金づるはいないからな。」
今ひとつ正直になれないクロ。しかしそれでも少しでもやる気になったクロを見てエリッサも一安心する。どうやら作戦がうまく行ったらしい。
少しでもやる気を見せたクロに喜ぶが、正直あの連中を倒すのに正面からぶつかるのはエリッサでも厳しい。今のうちから闇討ちして数を減らして対処してようやくだ。クロが今から少し強くなったところで戦力にはならない。
だからクロをある程度鍛えて今回の件はエリッサが対処しようと考えていた。しかしエリッサがクロに稽古をつけてから半日。エリッサの考えは大きく変わっていた。
「くそ…この怪力ババァ……」
「あ゛?まだ減らず口を叩ける余裕があるようだね。それじゃあもう一丁やってやろうか。」
滝のような汗を流すクロにエリッサは再び襲いかかる。しかしエリッサの猛攻を前にクロは華麗に避け続ける。さらに反撃までして見せた。今日の朝までは間違いなく武術の素人であったクロだが、今の姿は間違いなく戦士の姿だ。
そしてその日の夕方。一連の稽古を終え、水浴びをして休むクロにエリッサはつい問いかけた。
「ん?なぜこんなに動けるかだと?」
「ああ。お前のその動きは並大抵のものじゃない。間違いなく朝の段階では素人だったが、今じゃ別人だ。」
「別に……ただ見ていただけだ。見て真似して動いて、考えて動いただけだ。別に難しいことじゃないだろ。」
真似して動いただけ。そしてそこから考えて模倣から派生させた発展系の動きを編み出した。そんなこと凡人にはできない。できるのは本当の天才だけだ。しかも1日でここまでできるようになるのはもう天才を超えている。
「あいつが才能あるって言っていたのは本当だったか。後答えたくなかったら別に良いんだが…その背中の数字はどうしたんだ?」
「数字?ああ、これのことか。生まれつきの痣みたいなものだ。それにしてもこれって数字なのか?」
「ツグナオの奴はそう言ってたぞ?数字の刺青があるから元奴隷じゃないかって。」
「はぁ?なんでそんなことに…ってちゃんと話したことないし当たり前か。」
「たまにはちゃんと話すんだな。お前らお互いのこと何も知らないだろ。」
困り顔を見せるクロ。それを見て軽くため息を漏らすエリッサ。そんな二人の元へその日の仕事を終えたツグナオが戻る。こうして3人の生活は一歩ずつ進んでいく。
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