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第445話 魔神たちの戦い2
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法国の中心部では今も神魔の激しい戦闘が続いている。遠く離れたここからでもその光景はよく見える。相変わらず派手な神魔の魔法だが、あれだけ乱発していても未だ倒せない魔神クラスがあの地にはいるのだろう。そして遠く離れたこの地でも魔神同士の戦いが起きていた。
「オラァ!これで終いだ。さすがに魔神ってだけあるな。だが相手が悪かった。崩壊魔力の耐性無いのが命取りだったな。」
崩神ギュスカールの眼前で相手をしていた魔神の身体が崩れていく。この魔神は神魔の戦闘から逃げてきたようだ。魔神らしい力は持っていたが所詮は敗走した魔神。せいぜい三流止まりだ。
そしてそんな三流の魔神の背後から新たな魔神たちがギュスカールへと近づいて来る。その姿を見たギュスカールは一瞬表情を失うが、すぐに闘志あふれる姿に戻った。
「これはこれは…お久しぶりです先代様。それに…その近くのは歴代の当主の方々ですね。」
「あの荒くれもんがちゃんと喋れるようになったか。強すぎる崩壊魔力ゆえにお主は言葉すら知らんかったからな。うんうん、良い表情じゃ。」
「このレベルの崩壊魔力で生き残ったか。奇跡としか言いようがないな。」
「今でも崩壊魔力の研究は行われていますからね。年々崩拳の技術も高くなっています。…まあ何が言いたいかというと、この中で一番強えのは俺ってことだ。死人はあの世にとっとと戻れや。カカカ…」
ギュスカールは大胆に挑発する。すでに目の前にいる歴代の崩神たちからは殺気が漏れていた。明らかにこちらを殺そうとしてきている。そして特殊魔力である崩壊魔力にこの世で一番耐えられるのはギュスカールだ。ギュスカールがこの崩神たちをなんとかしないと大変なことになる。
それにギュスカールの戦闘狂としての血が騒いでいる。敵は歴代の崩神。自身の力を確かめるのには最適な相手だ。ここで全員に勝てば史上最強の崩神として名が残る。
「すいませんね先代様。俺にも養わなきゃならん家族がおりまして…家族のことを考えればあの男は敵に回したくない。」
「ほう?お主にも家族ができたか。それにお主が敵に回したくないと言う男まで…随分楽しそうな人生を送っておるのぉ…」
「安心しろ。家族もまとめて粉々にしてあの世に送ってやる。」
歴代の崩神の一人がそう発言した瞬間、ギュスカールは勢いよく飛び出し拳を放つ。怒りに任せた一撃は崩神に効くはずはない。いともたやすくカウンターを放たれるとギュスカールは笑みを見せた。
するとカウンターを放ったはずの崩神の方がギュスカールに殴り飛ばされていた。さらに殴られた箇所の肉体が崩壊を始めている。すぐに魔力を集中させ崩壊を止めるが、崩壊された場所の再生が始まらない。
「話聞いてなかったのかよ。崩拳の技術力は高まっているって言っただろうが。初代が生み出した表の十拳と裏の十拳。合わせて二十の崩拳は今や100を超える武術にまで成長した。それに俺のオリジナルもある。崩壊魔力も崩拳の技術も俺の方が上だ。大人しくあの世に帰りな。」
ギュスカールは高らかに笑う。そもそも崩拳と言う拳法は対崩拳を想定して作られた拳法だ。そこらの人間と戦う場合は崩壊魔力だけでなんとでもなってしまう。拳法そのものが必要ないのだ。
崩壊魔力保持者と戦える前提で考えた場合、最も敵になりやすいのは同じ崩壊魔力保持者。同門対決が当たり前なのだ。それゆえ初代崩神は表と裏の崩拳を生み出した。表の技は多くの者たちが学ぶ技、裏の技は表の技に対するカウンター技だ。
そして長い年月の中で裏の技に対するカウンターも編み出されていき、初代の頃の崩拳とは別物になっている。ゆえにその全てを習得したギュスカールは歴代の崩神よりも優位に立つ。
多くの地で魔神同士の戦いが起きている中、妖精たちにも戦いが始まろうとしていた。十本指たちは妖精たちまでも復活させたのだ。しかし妖精たちの戦いはあまりにも一方的なものであった。復活した妖精たちがあまりにも弱いのだ。
妖精たちは基本的に魔力を生成できない。自然にある妖精の力を吸収するしかないのだが、世界樹がない現代ではその力を回復できない。しかしミチナガから物資提供を受けている現代の妖精たちは薬を使って力を回復できる。
力を回復できるものとできないもの。その差によって妖精たちの戦いはすんなりと片付いた。今も押し寄せてきた復活した妖精たちを蹴散らし終える頃だ。
「ここまで圧倒的だと心が痛むわね。それにしても人間たちは大変ねぇ…。さてと、もう少し頑張るわよ。妖精は長く生きる。だから死んだ妖精もそんなに多くないからあっという間に片付くわ。そしたら人間たちに力を貸すわよ。」
「はい、女王様。」
ピクシリーは前線に立ちその力を振るう。ここまで力を振るって戦うのは人生初めてのことだ。正直なことを言えば楽しくってしょうがないほどだ。その様子を見守る一人の妖精と使い魔がいる。妖精の国の転移を管理する管理者とミチナガの使い魔だ。
「みんな大丈夫そうでよかった…だけど世界は大変なことになっているわ。」
『スナフ・あなたが心を痛めなくても大丈夫です。現代の魔神たちは歴史上から考えても指折りの実力です。』
「そうね、スナフが言うなら間違いないわね。ありがとうスナフ。」
管理者の妖精は笑みを見せる。この管理者の妖精が生きている中継地点と呼ばれるこの空間は全ての妖精の国とつながっている。ただしこの場所で生きられるのはこの管理者だけ…のはずであった。
しかしミチナガの使い魔は数百と死を繰り返すことでこの地に適応した。そのことを知った管理者はずっと一緒に居られる他の生命の誕生を喜び、この使い魔にスナフと名前をつけた。管理者は初めてできた友達に喜び、毎日楽しく暮らしている。
だが管理者は突如にこやかな顔を歪ませ、恐怖した。その恐怖の理由はわからない。しかし理由分からぬ恐怖に体の震えが止まらなくなっている。
『スナフ・大丈夫か?どうしたんだ?』
「分からない…だけど……何か嫌なものが蘇った。」
『スナフ・大丈夫、君のことは僕が守る。心配しないで…』
恐怖で震える管理者を慰めるスナフ。順調にいく妖精たちの戦いだが、一波乱起こるのかもしれない。
そしてその頃、現状最も国力が高いと思われる英雄の国では予想以上の大苦戦を強いられていた。未だ法国に出兵した多くの兵たちが帰還できず、兵力が乏しいことも理由の一つだがそれ以上の問題が各地で起きている。
その問題は英雄の国だからこそ起きた問題。英雄たちを信奉する英雄の国だからこその大問題。それは英雄たちの復活である。
死者となり、霊廟に祀られたはずの英雄たちが各地で蘇ったと報告される。しかし蘇った英雄は元の英雄ではない。今では生者を襲う死者の一人だ。しかし今を生きるものたちにとって英雄たちの骸はあまりにも神聖すぎる。決して傷つけて良いものではない。
各地で蘇った英雄たちとその部下たちの封印措置が行われる。絶対に傷つけたくないからこその措置だ。ただし封印には多くの人員が必要になる。その影響で、各地で戦力不足問題が起きている。
「お願いします…お願いします……あなたは今でも我々の英雄なのです…ですからお願いします…お願いします……」
「動き出す前になんとしてでも止めるんだ!動き出したら我々でもどうしようもできない!」
蘇った英雄たちは各地で確認されているが、今のところ動き出す気配がない。普通なら蘇ってすぐに動き出し、生者を襲う。しかしまるで何かを持っているかのようにまるで動き出す気配が見られない。
その様子がまた不気味で人々に恐怖を植え付ける。彼らが動き出した時、一体何が起きるのか。それはまだ誰にも分からない。
「オラァ!これで終いだ。さすがに魔神ってだけあるな。だが相手が悪かった。崩壊魔力の耐性無いのが命取りだったな。」
崩神ギュスカールの眼前で相手をしていた魔神の身体が崩れていく。この魔神は神魔の戦闘から逃げてきたようだ。魔神らしい力は持っていたが所詮は敗走した魔神。せいぜい三流止まりだ。
そしてそんな三流の魔神の背後から新たな魔神たちがギュスカールへと近づいて来る。その姿を見たギュスカールは一瞬表情を失うが、すぐに闘志あふれる姿に戻った。
「これはこれは…お久しぶりです先代様。それに…その近くのは歴代の当主の方々ですね。」
「あの荒くれもんがちゃんと喋れるようになったか。強すぎる崩壊魔力ゆえにお主は言葉すら知らんかったからな。うんうん、良い表情じゃ。」
「このレベルの崩壊魔力で生き残ったか。奇跡としか言いようがないな。」
「今でも崩壊魔力の研究は行われていますからね。年々崩拳の技術も高くなっています。…まあ何が言いたいかというと、この中で一番強えのは俺ってことだ。死人はあの世にとっとと戻れや。カカカ…」
ギュスカールは大胆に挑発する。すでに目の前にいる歴代の崩神たちからは殺気が漏れていた。明らかにこちらを殺そうとしてきている。そして特殊魔力である崩壊魔力にこの世で一番耐えられるのはギュスカールだ。ギュスカールがこの崩神たちをなんとかしないと大変なことになる。
それにギュスカールの戦闘狂としての血が騒いでいる。敵は歴代の崩神。自身の力を確かめるのには最適な相手だ。ここで全員に勝てば史上最強の崩神として名が残る。
「すいませんね先代様。俺にも養わなきゃならん家族がおりまして…家族のことを考えればあの男は敵に回したくない。」
「ほう?お主にも家族ができたか。それにお主が敵に回したくないと言う男まで…随分楽しそうな人生を送っておるのぉ…」
「安心しろ。家族もまとめて粉々にしてあの世に送ってやる。」
歴代の崩神の一人がそう発言した瞬間、ギュスカールは勢いよく飛び出し拳を放つ。怒りに任せた一撃は崩神に効くはずはない。いともたやすくカウンターを放たれるとギュスカールは笑みを見せた。
するとカウンターを放ったはずの崩神の方がギュスカールに殴り飛ばされていた。さらに殴られた箇所の肉体が崩壊を始めている。すぐに魔力を集中させ崩壊を止めるが、崩壊された場所の再生が始まらない。
「話聞いてなかったのかよ。崩拳の技術力は高まっているって言っただろうが。初代が生み出した表の十拳と裏の十拳。合わせて二十の崩拳は今や100を超える武術にまで成長した。それに俺のオリジナルもある。崩壊魔力も崩拳の技術も俺の方が上だ。大人しくあの世に帰りな。」
ギュスカールは高らかに笑う。そもそも崩拳と言う拳法は対崩拳を想定して作られた拳法だ。そこらの人間と戦う場合は崩壊魔力だけでなんとでもなってしまう。拳法そのものが必要ないのだ。
崩壊魔力保持者と戦える前提で考えた場合、最も敵になりやすいのは同じ崩壊魔力保持者。同門対決が当たり前なのだ。それゆえ初代崩神は表と裏の崩拳を生み出した。表の技は多くの者たちが学ぶ技、裏の技は表の技に対するカウンター技だ。
そして長い年月の中で裏の技に対するカウンターも編み出されていき、初代の頃の崩拳とは別物になっている。ゆえにその全てを習得したギュスカールは歴代の崩神よりも優位に立つ。
多くの地で魔神同士の戦いが起きている中、妖精たちにも戦いが始まろうとしていた。十本指たちは妖精たちまでも復活させたのだ。しかし妖精たちの戦いはあまりにも一方的なものであった。復活した妖精たちがあまりにも弱いのだ。
妖精たちは基本的に魔力を生成できない。自然にある妖精の力を吸収するしかないのだが、世界樹がない現代ではその力を回復できない。しかしミチナガから物資提供を受けている現代の妖精たちは薬を使って力を回復できる。
力を回復できるものとできないもの。その差によって妖精たちの戦いはすんなりと片付いた。今も押し寄せてきた復活した妖精たちを蹴散らし終える頃だ。
「ここまで圧倒的だと心が痛むわね。それにしても人間たちは大変ねぇ…。さてと、もう少し頑張るわよ。妖精は長く生きる。だから死んだ妖精もそんなに多くないからあっという間に片付くわ。そしたら人間たちに力を貸すわよ。」
「はい、女王様。」
ピクシリーは前線に立ちその力を振るう。ここまで力を振るって戦うのは人生初めてのことだ。正直なことを言えば楽しくってしょうがないほどだ。その様子を見守る一人の妖精と使い魔がいる。妖精の国の転移を管理する管理者とミチナガの使い魔だ。
「みんな大丈夫そうでよかった…だけど世界は大変なことになっているわ。」
『スナフ・あなたが心を痛めなくても大丈夫です。現代の魔神たちは歴史上から考えても指折りの実力です。』
「そうね、スナフが言うなら間違いないわね。ありがとうスナフ。」
管理者の妖精は笑みを見せる。この管理者の妖精が生きている中継地点と呼ばれるこの空間は全ての妖精の国とつながっている。ただしこの場所で生きられるのはこの管理者だけ…のはずであった。
しかしミチナガの使い魔は数百と死を繰り返すことでこの地に適応した。そのことを知った管理者はずっと一緒に居られる他の生命の誕生を喜び、この使い魔にスナフと名前をつけた。管理者は初めてできた友達に喜び、毎日楽しく暮らしている。
だが管理者は突如にこやかな顔を歪ませ、恐怖した。その恐怖の理由はわからない。しかし理由分からぬ恐怖に体の震えが止まらなくなっている。
『スナフ・大丈夫か?どうしたんだ?』
「分からない…だけど……何か嫌なものが蘇った。」
『スナフ・大丈夫、君のことは僕が守る。心配しないで…』
恐怖で震える管理者を慰めるスナフ。順調にいく妖精たちの戦いだが、一波乱起こるのかもしれない。
そしてその頃、現状最も国力が高いと思われる英雄の国では予想以上の大苦戦を強いられていた。未だ法国に出兵した多くの兵たちが帰還できず、兵力が乏しいことも理由の一つだがそれ以上の問題が各地で起きている。
その問題は英雄の国だからこそ起きた問題。英雄たちを信奉する英雄の国だからこその大問題。それは英雄たちの復活である。
死者となり、霊廟に祀られたはずの英雄たちが各地で蘇ったと報告される。しかし蘇った英雄は元の英雄ではない。今では生者を襲う死者の一人だ。しかし今を生きるものたちにとって英雄たちの骸はあまりにも神聖すぎる。決して傷つけて良いものではない。
各地で蘇った英雄たちとその部下たちの封印措置が行われる。絶対に傷つけたくないからこその措置だ。ただし封印には多くの人員が必要になる。その影響で、各地で戦力不足問題が起きている。
「お願いします…お願いします……あなたは今でも我々の英雄なのです…ですからお願いします…お願いします……」
「動き出す前になんとしてでも止めるんだ!動き出したら我々でもどうしようもできない!」
蘇った英雄たちは各地で確認されているが、今のところ動き出す気配がない。普通なら蘇ってすぐに動き出し、生者を襲う。しかしまるで何かを持っているかのようにまるで動き出す気配が見られない。
その様子がまた不気味で人々に恐怖を植え付ける。彼らが動き出した時、一体何が起きるのか。それはまだ誰にも分からない。
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