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第423話 動かせる兵

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「ほう?幻術か。奴らは法術を用いた幻術も得意とする。しかし神魔、お前ならその程度の幻術破ることができるのではないか?」

「え~~あいつらうるさいからやなのだ。ぐちぐちうるさいし。」

 ポセイドルスの発言にフェイは舌を出しながら嫌そうな表情をした。どうやら以前法国と関わった際に外交問題になったのが効いているらしい。聞くところによるとフェイが法国と一悶着起こした次の月から各地で泣き叫ぶ法国の信徒が続出したらしい。

 力ではどうすることもできないと知っている法国は精神的にフェイを追い詰めたということだ。実際にその攻撃は効いたようでフェイはもう法国とは関わらないと心に決めている。しかし今重要なのは法国にかかっているという幻術だ。

「法国が何かしようとしているのは…間違い無いようだな。あれだけやられたというのにまだ何か考えているのか。」

「もしかしたら今回のこの騒動も法国の影響かもしれませんね。十本指によるものと断定するのは早計だったかもしれません。ですが今回英雄の国との戦争で傷ついた法国がまた何か企んでいる。これは十分注意すべきことなのでは?」

「まあ確かにそうね。でも具体的にどうするつもり?みんなで仲良く攻め込んで滅ぼす?」

 ミスティルティアの発言に空気が凍りつく。さすがは氷神などと冗談を言えるような雰囲気でもなさそうだ。確かにこうして集まったからと言って具体的に何をやるのか、その具体的な案は話していなかった。

 確かに不安の種を取り除くのが一番楽な方法だろう。しかしそれなれば本当に世界戦争になりかねない。今回の法国と英雄の国との戦争が小さく思えるほどの大きな戦争になることだろう。しかし疲弊している今の英雄の国としてはあまり乗り気になれない。

「最終的にはそうなることでしょう。しかし今ではありません。もしも戦争になれば敵は防衛戦だけではなく、攻め込んでくるでしょう。そうなった時の防衛策を講じてもらいたいのです。具体的には各国の連携、それと新たな防衛拠点の建造です。」

「各国の連携というのは連合軍ということか?しかし下手に合同訓練でもすれば奴らを刺激する。それに付け焼き刃程度の合同訓練をするくらいならば別々に動いた方が良い。」

 ポセイドルスの発言に例の2人を除いた全員が頷く。中途半端な連携は現場に混乱をもたらすだけだ。それならばバラバラに動いた方がはるかに力を発揮できる。だがミチナガはその辺りも具体的に考えてある。

「いざ戦うことになれば法国と龍の国どちらも相手にします。その際の簡単な振り分けと上陸作戦くらいは考えておいた方が良いでしょう。それからうちの使い魔と各国の司令官級の人と顔合わせだけはさせてください。そうすれば使い魔を通して連絡が取り会えます。」

「まあそれくらいなら可能か。しかし上陸作戦となると…防衛の軍を残すことも考えれば……」

 急に静まり返る。まあそうだろう。相手の大陸に上陸し戦うとなれば命を落とす確率は非常に高い。連合軍ということならばできる限り自国の痛みは少なく、儲けを多くしたい。そのためにも出し渋るのだ。しかしそれ以前のものたちもいる。

「私は私兵とかいないですけど?」

「私もいなーい!アハハ!」

 イッシンもフェイも魔神としての名は別格であるが、残念なことに部下が1人もいない。だがその辺りもミチナガは考えている。そしてあらかじめ準備しておいたことがようやく形になる。

「あれ?どうし…あ、はい。わかりました。」

「ここからは私もこの会談に参加させてもらう。ロクショウ流当主、ロクショウ・サエだ。」

「あれ?どうしたのだパパ?」

「パパもファイちゃんと一緒にみんなとお話しがしたいんだよぉ。……ふむ、魔国第45代目国王ガンドラス・エラルーである。」

 突如現れた2人に他の魔神たちは全員興味を抱いた。イッシンの妻サエに関してはロクショウ流の当主であり、あの一帯を納める領主である。まあロクショウ流の領地ということだが、大元の王様などはいないので実質サエが国王でもある。

 そしてもう1人、魔国の国王ガンドラスはフェイが生まれる前までは魔神の地位にいた。当時は魔神第5位の位置にいた実力者として知られている。現在も魔国はガンドラスの力で一つにまとめ上げられている現役の武闘派の国王だ。

 ただ現在は娘が可愛すぎるただの親バカに成り果てた。本来は実力が上のフェイに王位を任せるはずなのだが、毎日遊び歩いているフェイを王位などというもので縛り付けたくないと今も王として働き続けている。フェイには劣るが実力は申し分ないので皆文句無くしたがっている。

「ここに魔神でない人を混ぜるのに異議がある人がいるかもしれませんが、これは国家の問題にもなります、故に事前に要請しておきました。あらかじめ伝えず申し訳ありません。」

「問題ないわよ。元魔神のガンドラスにその実力は先代の剣神を超えたと言われるロクショウ流当主サエ。実力も申し分ない。それにそこの2人じゃここからの話には厳しいでしょ?」

「はは…おっしゃる通り。」

「バカにされて笑う奴がいるか。どっしり構えろ。それからミスティルティア様、あなたがどう思っているかは知りませんが私はまだ修行中の身。先代を超えたなどという根拠のない話はおやめいただきたい。」

「あらごめんなさい。でも画面越しでも十分伝わってくるわよ。あなたの実力。一度手合わせしたいものだわ。」

 確かにミスティルティアの言う通りサエの実力はかなりのものだ。魔神と比べても遜色ないだろう。ただ本人はやはりイッシンを意識しているため自分の力を過小評価してる。しかしだからこそまだまだ上を目指して邁進できるのだろう。

「しかしお二人が出て来ると言うことは…そちらから軍を出してくれると言うことで?」

「いや…我としてはそれでもよかったのだが、今回はやめることになった。代わりに我らからはフェイを送り出す。」

「私も同様にイッシンを出す。それ以外は防衛戦力に回す。」

 神魔と神剣が前線に出る。それを聞いた他のものたちは非常に驚いた。戦力としては他にないほど最高のものだ。しかしそれならば防衛戦力として残しておきたいはずだ。しかしここも事前に話がついている。

「両国とは事前交渉でいざという時は神魔と神剣が出ることが決まっています。そしてそれに対し……私は防衛拠点の新設、及び街道整備の費用の捻出を決定しました。これが具体的な資料です。」

 他の魔神たちは使い魔たちから渡された資料に目を通す。すると両国には破格の待遇で拠点作成の物資と資金が提供されている。しかもあくまでこれはいざという時に戦力を出すという約束に対し支払われた額だ。

 その額に思わず唾を飲み込む。もしも戦争が起こらなくても、いざという時はこれだけ戦力を出すといえばその対価でこれだけのものをくれるとなれば目の色を変え出す。

「私個人としても火の国の友人が法国に攻撃されたり、今後商売をする上で下手に戦争が長期化すればそれだけ儲けが減る可能性があります。つまりいざという時が来たら一気に片付けたい。だからこそ戦うみなさんのために物資、資金提供は惜しみません。」

 微笑むミチナガに最小の防衛戦力を残しどこまで兵を派遣できるか考える。嘘をつくことも可能だが、ここでミチナガと手切れになることになれば損失は大きいものになるだろう。だからこそ現実的に考えられる数字を出す。
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