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第418話 小さな問題
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「…まじで?」
『ポチ・まじだよ。ナイトが9大ダンジョン、巨大のヨトゥンヘイムを完全制覇した。人類史上数百年ぶりの快挙だよ。』
「う…うわぁぁ……まじか。まじかまじか…まじか……」
あまりのことにミチナガは狂喜乱舞するとか雄叫びをあげることなく、椅子に腰掛けたまま笑顔でじっくりとその偉業を喜んでいる。ポチもミチナガとハイタッチをして喜ぶ。だが喜んでばかりはいられない。
『ポチ・ただこの事実は公表しない。ダンジョンの完全開放に加えダンジョン制覇なんて大騒動になるからね。…復興が続く中、明るいニュースにもなるけどこれが原因で騒動が起きかねない。…まあ何が言いたいかというと僕たちでは扱いきれない偉業なのでとりあえずアレクリアル様に報告して全部丸投げしようってことです。なので他言無用にお願いします。』
「本音が言えてよろしい。まあことがことだからな。アレクリアル様に全部任せよう。しかしスゲェなぁ…それで今ナイトはどうしているんだ?」
『ポチ・今は地上に出てダンジョン前の仮設宿舎で休んでいるよ。ただその後はダンジョン探索のためにしばらく残るみたい。なんでも第100階層が気になるらしくてね。そこのボスを倒すとかなんとか…まあ満足したら一度顔出すように言っておくよ。』
「そっか。戦闘馬鹿にとって讃えられるとかそんなのはどうでも良いんだもんな。まあ気にせずいつでも良いとだけ言っておいてくれ。それじゃあ俺らはアレクリアル様のところに行こうか。」
『ポチ・ん~…今はちょっと忙しいみたい。どうせだから明日の夜にでも行こうよ。なんてったって例の日だからね。』
「あ~…そういやそうなのか。じゃあ明日で予約取っておいてくれ。そしたら今日の仕事終わらせて少し遊びにでも行くか。」
ミチナガの提案に賛成するポチは急いでその日の仕事を終わらせる。そしてみんなで街へ遊びに繰り出すのであった。
ミチナガの調子が良くなってからというもの少しずつ街で遊ぶ機会が増えてきた。しかしまだまだ街も復興の最中。あまり羽目を外して遊ぶのは不謹慎になりそうで街の様子を伺いながら軽く遊ぶ程度だ。
そんなミチナガたちの遊び方はとりあえず面白そうな店に入り、その店の商品をいくつか買うことだ。別に欲しいとかそういうことではなく、このご時世ならば商品を買って消費を促したほうが多くの人々のためになる。
それにミチナガは要らないと思っても、数万に及ぶ使い魔たちの誰か1人の琴線には触れるかもしれない。働き詰めの使い魔たちにご褒美だと思えばこの出費もなんて事はない。その後も色々な店で買い歩き、少しくたびれたところで喫茶店に入る。
その喫茶店はどこかの民族が愛飲しているお茶を提供するようで独特な香りが漂っている。ミチナガも一杯もらうが、独特の風味が慣れないらしい。ただ少しお高い店のようで一杯だけでもそこそこの値段がする。まあこれだけ砂糖を使って甘くなっていればこの値段にも納得だろう。
砂糖はミチナガ商会でも取り扱っているが、なかなかの高級品だ。ただ近年はミチナガ商会で大量生産を行なっているので価格は安定し、少しずつ値段を抑えられている。そのうち一般庶民でも週に1度は砂糖を使った甘味を食べられる日が来るだろう。
すると店に冒険者と思われるものたちが数名入ってきた。冒険者がこういう店に来るのは珍しいだろう。ミチナガも思わず目を向ける。よく観察してみるとそこにいる数名はそれぞれ他の冒険者パーティーのリーダのようであった。どうやら作戦会議を行うらしい。
聞き耳をたてるミチナガだが、うまく会話が聞こえない。そんなミチナガに気がついたポチが冒険者たちの方を見る。そして1人に目星をつけた。
『ポチ・あそこにいる彼。以前うちの商会の輸送の護衛についてもらったことあるよ。お礼言っとく?』
「いや…う~ん……あの男だよね?それじゃあちょっと行ってみるか。」
ミチナガはポチの提案に乗り、冒険者たちの方へと向かう。冒険者たちの方はいきなり近寄ってきたミチナガに対し警戒する。作戦会議中に押しかけるような男などなんとも無粋だとわかっているが、ミチナガの好奇心はそれを上回った。
「すまない、知った顔があったのでついね。そこの彼には以前うちの商会の護衛についてもらったんだが、商会長としてお礼を言いたくて。」
「うちの商会?……あ、英雄ミチナガ様!!こ、これは失礼を!」
「いや、押しかけたのはこちらだから。会議中にすまないね。ただ…これだけの冒険者たちが集まって何を会議しているか気になって。まあこっちが本命なんだけど。よかったら教えてくれないか?もちろん他言はしない。」
突如現れたミチナガに驚きを隠せない。やはり英雄に選ばれたミチナガはこの国では神聖視される。ミチナガにならば信用してなんでも話すとすぐに椅子を用意して会議に加わることを認めた。それに会議の内容自体そこまで隠すものでもない。ただ十分問題視するだけのことだ。
「墓荒らし?…そんなのが起きているなんて初めて聞いたな。中央墓所でか?」
「いえ、大きな墓所ではありません。ああいった場所はお金がかかりますから。森の中などの小さな墓です。駆け出しの冒険者などの墓などが中心ですね。」
中央墓所というのは英雄の国にある大きな墓所だ。主に街の衛兵や騎士などが埋葬されている。確かにこの中央墓所に埋葬するのはなかなかの値段がかかる。一般市民の中にはもっと安い場所に埋葬されることの方が多いだろう。
特に駆け出しの冒険者などは金もなく、身寄りもわからないことの方が多いため、死んでいた場所に他の冒険者たちによって埋葬されることが多い。今回はそういった人目の少ない場所に埋葬された墓を荒らしているようだ。
「けどそんな墓じゃ金目のものなんてないだろう?……髪の毛とか骨とかを売るのか?」
「そのようです。荒らされた墓には何も残っていないので。黒魔術的な禁断の魔法を行う際の触媒にするというのが今のところの結論です。そうだとなると街に危機にもつながりかねません。もしも違い、金目当ての墓荒らしだとしても許す訳にはいきません。」
「金目当てだとすると復興事業に出資している俺の問題にもなるなぁ…そういう奴が出ないように頑張ったつもりだったんだが甘かったか。明日アレクリアル様に会う予定があるからその時にこのことも話しておこう。」
「あ、アレクリアル様にですか!そ、それはなんとも恐れ多い……」
「この事はそれだけの問題という事だ。それからうちでもなんとか対処しよう。…そうだな。墓の見回りなんて今依頼はないだろう?出資できるような人もいないだろうからな。うちで正式に冒険者ギルドに依頼しよう。依頼として頼んでおけば誰かが見回りしてくれるだろう?」
「そ、それはありがたいです!余裕があるのは我々くらいでしたからどうしようか悩んでいて…。依頼として来るのであれば他の冒険者たちでも対応できます。」
基本的に冒険者は依頼がなければ動くのは難しい。金にならなければ生きていくのが難しくなるからだ。そして今回のような無縁仏は出資者がいないため依頼は起きない。問題視することも難しい。できる事は他の依頼中に寄ってみるくらいのことだろう。
だからこそミチナガのように依頼として出すだけで十分ありがたいのだそうすれば墓の見回りなど実に楽な依頼。やりたがるものは多く現れるだろう。これで墓荒らしの被害も無くなるはずだ。
「どうせだから他にも何か問題が起きていないか教えてくれないか?君たち冒険者の現場の声というやつを聞かせてほしい。時間はあるかい?」
「もちろんです!今日はこのことを夜まで話し合うつもりでしたから。」
「そうかそれじゃあもう少しこの店で話してから他の店に行こうか。店主、全員にお代わりをもらえるかい?もちろん私のおごりだ。好きに頼むと良い。」
その後、冒険者たちと会話を続け、夜は他の冒険者たちとも合流し大いに騒ぎ倒した。どうやら墓荒らし以外にはこれといった問題は起きていないらしい。ミチナガの復興事業によって助かっているという声も多く聞いた。
それゆえ墓荒らしという問題が目立っているようであった。まあまだ殺人などと比べれば墓荒らしは小さな問題だ。それでも死後その死体を荒らされるというのは人々の不安にもなる。ミチナガはその日のうちに冒険者ギルドに依頼を出した。
これで心置きなく明日を迎えられる。明日は魔神のランキングの更新日だ。
『ポチ・まじだよ。ナイトが9大ダンジョン、巨大のヨトゥンヘイムを完全制覇した。人類史上数百年ぶりの快挙だよ。』
「う…うわぁぁ……まじか。まじかまじか…まじか……」
あまりのことにミチナガは狂喜乱舞するとか雄叫びをあげることなく、椅子に腰掛けたまま笑顔でじっくりとその偉業を喜んでいる。ポチもミチナガとハイタッチをして喜ぶ。だが喜んでばかりはいられない。
『ポチ・ただこの事実は公表しない。ダンジョンの完全開放に加えダンジョン制覇なんて大騒動になるからね。…復興が続く中、明るいニュースにもなるけどこれが原因で騒動が起きかねない。…まあ何が言いたいかというと僕たちでは扱いきれない偉業なのでとりあえずアレクリアル様に報告して全部丸投げしようってことです。なので他言無用にお願いします。』
「本音が言えてよろしい。まあことがことだからな。アレクリアル様に全部任せよう。しかしスゲェなぁ…それで今ナイトはどうしているんだ?」
『ポチ・今は地上に出てダンジョン前の仮設宿舎で休んでいるよ。ただその後はダンジョン探索のためにしばらく残るみたい。なんでも第100階層が気になるらしくてね。そこのボスを倒すとかなんとか…まあ満足したら一度顔出すように言っておくよ。』
「そっか。戦闘馬鹿にとって讃えられるとかそんなのはどうでも良いんだもんな。まあ気にせずいつでも良いとだけ言っておいてくれ。それじゃあ俺らはアレクリアル様のところに行こうか。」
『ポチ・ん~…今はちょっと忙しいみたい。どうせだから明日の夜にでも行こうよ。なんてったって例の日だからね。』
「あ~…そういやそうなのか。じゃあ明日で予約取っておいてくれ。そしたら今日の仕事終わらせて少し遊びにでも行くか。」
ミチナガの提案に賛成するポチは急いでその日の仕事を終わらせる。そしてみんなで街へ遊びに繰り出すのであった。
ミチナガの調子が良くなってからというもの少しずつ街で遊ぶ機会が増えてきた。しかしまだまだ街も復興の最中。あまり羽目を外して遊ぶのは不謹慎になりそうで街の様子を伺いながら軽く遊ぶ程度だ。
そんなミチナガたちの遊び方はとりあえず面白そうな店に入り、その店の商品をいくつか買うことだ。別に欲しいとかそういうことではなく、このご時世ならば商品を買って消費を促したほうが多くの人々のためになる。
それにミチナガは要らないと思っても、数万に及ぶ使い魔たちの誰か1人の琴線には触れるかもしれない。働き詰めの使い魔たちにご褒美だと思えばこの出費もなんて事はない。その後も色々な店で買い歩き、少しくたびれたところで喫茶店に入る。
その喫茶店はどこかの民族が愛飲しているお茶を提供するようで独特な香りが漂っている。ミチナガも一杯もらうが、独特の風味が慣れないらしい。ただ少しお高い店のようで一杯だけでもそこそこの値段がする。まあこれだけ砂糖を使って甘くなっていればこの値段にも納得だろう。
砂糖はミチナガ商会でも取り扱っているが、なかなかの高級品だ。ただ近年はミチナガ商会で大量生産を行なっているので価格は安定し、少しずつ値段を抑えられている。そのうち一般庶民でも週に1度は砂糖を使った甘味を食べられる日が来るだろう。
すると店に冒険者と思われるものたちが数名入ってきた。冒険者がこういう店に来るのは珍しいだろう。ミチナガも思わず目を向ける。よく観察してみるとそこにいる数名はそれぞれ他の冒険者パーティーのリーダのようであった。どうやら作戦会議を行うらしい。
聞き耳をたてるミチナガだが、うまく会話が聞こえない。そんなミチナガに気がついたポチが冒険者たちの方を見る。そして1人に目星をつけた。
『ポチ・あそこにいる彼。以前うちの商会の輸送の護衛についてもらったことあるよ。お礼言っとく?』
「いや…う~ん……あの男だよね?それじゃあちょっと行ってみるか。」
ミチナガはポチの提案に乗り、冒険者たちの方へと向かう。冒険者たちの方はいきなり近寄ってきたミチナガに対し警戒する。作戦会議中に押しかけるような男などなんとも無粋だとわかっているが、ミチナガの好奇心はそれを上回った。
「すまない、知った顔があったのでついね。そこの彼には以前うちの商会の護衛についてもらったんだが、商会長としてお礼を言いたくて。」
「うちの商会?……あ、英雄ミチナガ様!!こ、これは失礼を!」
「いや、押しかけたのはこちらだから。会議中にすまないね。ただ…これだけの冒険者たちが集まって何を会議しているか気になって。まあこっちが本命なんだけど。よかったら教えてくれないか?もちろん他言はしない。」
突如現れたミチナガに驚きを隠せない。やはり英雄に選ばれたミチナガはこの国では神聖視される。ミチナガにならば信用してなんでも話すとすぐに椅子を用意して会議に加わることを認めた。それに会議の内容自体そこまで隠すものでもない。ただ十分問題視するだけのことだ。
「墓荒らし?…そんなのが起きているなんて初めて聞いたな。中央墓所でか?」
「いえ、大きな墓所ではありません。ああいった場所はお金がかかりますから。森の中などの小さな墓です。駆け出しの冒険者などの墓などが中心ですね。」
中央墓所というのは英雄の国にある大きな墓所だ。主に街の衛兵や騎士などが埋葬されている。確かにこの中央墓所に埋葬するのはなかなかの値段がかかる。一般市民の中にはもっと安い場所に埋葬されることの方が多いだろう。
特に駆け出しの冒険者などは金もなく、身寄りもわからないことの方が多いため、死んでいた場所に他の冒険者たちによって埋葬されることが多い。今回はそういった人目の少ない場所に埋葬された墓を荒らしているようだ。
「けどそんな墓じゃ金目のものなんてないだろう?……髪の毛とか骨とかを売るのか?」
「そのようです。荒らされた墓には何も残っていないので。黒魔術的な禁断の魔法を行う際の触媒にするというのが今のところの結論です。そうだとなると街に危機にもつながりかねません。もしも違い、金目当ての墓荒らしだとしても許す訳にはいきません。」
「金目当てだとすると復興事業に出資している俺の問題にもなるなぁ…そういう奴が出ないように頑張ったつもりだったんだが甘かったか。明日アレクリアル様に会う予定があるからその時にこのことも話しておこう。」
「あ、アレクリアル様にですか!そ、それはなんとも恐れ多い……」
「この事はそれだけの問題という事だ。それからうちでもなんとか対処しよう。…そうだな。墓の見回りなんて今依頼はないだろう?出資できるような人もいないだろうからな。うちで正式に冒険者ギルドに依頼しよう。依頼として頼んでおけば誰かが見回りしてくれるだろう?」
「そ、それはありがたいです!余裕があるのは我々くらいでしたからどうしようか悩んでいて…。依頼として来るのであれば他の冒険者たちでも対応できます。」
基本的に冒険者は依頼がなければ動くのは難しい。金にならなければ生きていくのが難しくなるからだ。そして今回のような無縁仏は出資者がいないため依頼は起きない。問題視することも難しい。できる事は他の依頼中に寄ってみるくらいのことだろう。
だからこそミチナガのように依頼として出すだけで十分ありがたいのだそうすれば墓の見回りなど実に楽な依頼。やりたがるものは多く現れるだろう。これで墓荒らしの被害も無くなるはずだ。
「どうせだから他にも何か問題が起きていないか教えてくれないか?君たち冒険者の現場の声というやつを聞かせてほしい。時間はあるかい?」
「もちろんです!今日はこのことを夜まで話し合うつもりでしたから。」
「そうかそれじゃあもう少しこの店で話してから他の店に行こうか。店主、全員にお代わりをもらえるかい?もちろん私のおごりだ。好きに頼むと良い。」
その後、冒険者たちと会話を続け、夜は他の冒険者たちとも合流し大いに騒ぎ倒した。どうやら墓荒らし以外にはこれといった問題は起きていないらしい。ミチナガの復興事業によって助かっているという声も多く聞いた。
それゆえ墓荒らしという問題が目立っているようであった。まあまだ殺人などと比べれば墓荒らしは小さな問題だ。それでも死後その死体を荒らされるというのは人々の不安にもなる。ミチナガはその日のうちに冒険者ギルドに依頼を出した。
これで心置きなく明日を迎えられる。明日は魔神のランキングの更新日だ。
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