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第398話 ぴょこぴょこ作戦
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「動く気配がない?なんで?」
「それは我々にも…ただ敵としても予想外のようで敵本陣からは苛立ちの声が聞こえていました。」
夜。情報収集から戻って来た蛍火衆からの報告を聞いたミチナガたちは予想外の反応に困惑していた。敵としては物資の補充をしてから一気に攻め込むものだと思っていたが、すでに物資は十分補充されているのに一向に動く気配がないということだ。
「う~ん…考えられるのは……龍の国が動いていないから?」
「考えられるのはそれくらいかと。50万の洗脳された市民ではさすがに英雄の国は落とせませんから。こちらを陽動にして背後から龍の国が強襲するものだったと…」
法国の作戦は全て龍の国ありきであった。こんな各地で騒がしく戦火を広げたのも、背後で蠢く龍の国が気がつかれないため。今こうして洗脳された市民を待機させているのも弱者を重んじる英雄の国が一般市民に手を出しにくいため、これが最高の足止めになるとわかっているからだ。
しかしその肝心の龍の国はなぜか動いていない。そして現在法神と勇者神の戦闘が起こっているが、その前に法神が話した言葉によると龍の国が動いていることをまるで疑っていない様子であった。
そして龍の国に使い魔を派遣しているミチナガは龍の国が動いていないという事実を知っている。龍の国の別働隊が秘密裏に動いているような気配もまるでない。正直各地に戦力を分散させた法国はすでに負け戦だ。たとえ法神が勇者神を倒したとしても英雄の国の全戦力を持ってすれば法国の全兵力を潰せる。
「わけがわからん。あと考えられるとしたら…龍の国は法国と手を切りたくて今回この強硬策を選んだ…みたいなことか?ああ……もう考えてもまるでわからん!とにかく目の前の問題から片付けよう。それで敵の洗脳の司令塔みたいなのがいる場所はわかったの?」
「敵本陣で間違いないかと。ただ…防御が硬いです。聖人と思われる戦力がいました。さらに魔王クラスも複数。洗脳の司令塔がやられると大問題ですから防衛はかなり強化されています。」
細かく報告を受けると敵本陣は洗脳された市民に囲まれ、防御柵などもしっかり作られているらしい。おまけに洗脳した魔王クラスも複数名おり、法国の精鋭が1000ほど控えているとのことだ。そして何より聖人、魔帝クラスがいる。
「そこまで強固だとは…ポチ、ドルイドたちはどうしている?」
『ポチ・敵に動きがないから足止め作戦からこっそり洗脳解除に回っているよ。ワープを使って頑張っているから1000人近くを洗脳解除して近くの国に保護してもらっている。』
現在使い魔のワープがドルイドたちを転移させて精霊魔法を用いてこっそりと拐って洗脳解除している。ドルイドたちは精霊魔法を極限まで使用しているため、魔法を行使後動けなくなっている。それをワープが転移させてバックアップしているのだ。
さらに単独行動している洗脳された市民の元まで瞬時ドルイドたちを転移させられるのでワープはこの地で働き詰めだったらしい。しかしそれでも洗脳解除できたのは1000人だけだ。残り49万9000人はいる。正確に言えば50万人以上いたため、今もまだ50万人以上いるだろう。
「ヴァルくんはどうした?」
『ポチ・ヴァルくんは…』
「お呼びですか我が王よ。」
突如現れたヴァルドールに思わず悲鳴をあげそうになるものたちがいるがなんとか使い魔たちが口元に張り付いてその声を抑えた。ミチナガも驚くものだと思っていたが至って冷静だ。
「ヴァルくん。例えばだけど敵本陣に結界を張って敵の洗脳電波を遮断できる?」
「可能です我が王よ。しかし現在までの実験によると電波を遮断したことによって暴れ出すことが確認されています。下手に遮断すれば死人が増えます。」
「……なんとかしよう。残りのエヴォルヴは2万を残して全て洗脳された人々を抑える役割に。2万のエヴォルヴと俺たちで敵本陣を落とそう。…ヴァルくんは洗脳された人々を抑える役割についてくれ。ヴァルくんなら洗脳解除もできるし、大規模魔法を使えば…傷つけずにみんなを抑えられるだろ?」
「可能です。しかしよろしいのですか?私が動けば…敵の本陣くらい5分で落とせます。」
「その5分で何万も死ぬ可能性がある。被害を最小限にするためにはそれが一番だろ?」
ヴァルドールの言う通りヴァルドールならば単騎で敵本陣を落とすことは可能だろう。だが敵には魔帝クラスに魔王クラスが大勢いる。ヴァルドールでも瞬殺というのは難しいだろう。その間に洗脳された人々が暴れ出せば死者は数えきれないだろう。
だからこそミチナガの方法が一番だ。ヴァルドールが結界を張ったのちにエヴォルヴたちで洗脳された人々を取り押さえる。そしてエヴォルヴたちでは抑えきれない人はヴァルドールの魔法で取り押さえる。
「結界内まで俺たちを気がつかれずに運び込める?」
「可能です。ですが万全を期すため結界が少し大きくなり一部の市民が結界内に巻き込まれます。」
「それで構わない。それじゃあポチ、今の内に洗脳された人々全員にマーカーをつけておけ。そしてそれぞれのマーカーごとに使い魔たちに担当を決めさせろ。基本的には1人の洗脳された市民に対して1人の使い魔だが、魔力量と体の大きさで人数を増やせ。ヴァルドールの大規模拘束魔法が発動したのちは各々の判断で取り押さえ人数の配分を決めろ。」
『ポチ・了解!大忙しになりそうだね。って…そう言えば結界張られてから近づいて取り押さえるまでに時間かかりそうだけど…』
「…なんとか頑張って事前に近づいておいて。み、みんなならできるって!」
『ポチ・他力本願…まあ僕たちらしいけどさ。まあなんとか頑張ってみるよ。はぁ…作戦開始時刻遅めにしてね。準備に時間かかるから。』
「おっけーおっけー。それじゃあなんとかなりそうだから…みんなも一旦休憩!今のうちに仮眠とっておきな。始まったら休み暇なんてないよ。」
篝火が焚かれる法国の陣営では一部の兵士が夜警に当たっていた。そんな兵士たちは口を開けば文句ばかり出てくる。
「くそっ!いつまで待たせんだよ。毎日毎日そこらへん見ておしまいだぞ。」
「食い物に事欠かないし安全なのは良いって最初は思っていたけど…流石にきついわ。後ろの仲間のとこがよかったわ。」
「あっちなら暇でも20万も仲間がいるからな。多少お祭り騒ぎしても平気そうだ。こっちは上の目が厳しいから毎日規律正しく…おい待て。何か見えなかったか?」
「んどれだよ…あの白いやつか?一体…ってうさぎじゃねぇか。脅かすなよ。」
兵士たちが目を向ける先には一匹のうさぎが跳ねていた。いや、よく目を凝らせば他にもうさぎがいる。うさぎの群れのようだ。
「うさぎでも捕まえて飯にするか?」
「いや…やめておこう。あれだけ数がいても俺たちの口には入らねぇよ。どうせ上の奴らがみんな食っちまう。それにしてもずいぶん多いな。繁殖期か?」
「人間と違って静かだから問題なく寝れそうだよ。おい、そろそろ交代の時間じゃないか?とっとと交代して寝ようぜ。」
そういうと見張りの2人は交代のために戻っていく。その様子を見ていたヴァルドールは動き始めた。瞬時に近づき、敵の本陣の真上を飛ぶ。そんなヴァルドールの接近に気がついた魔帝クラスの男と幾人かの魔王クラスは急いで寝床から飛び起き、テントの外へ出た。
「そこそこの反応だ。だがその反応速度ではこの魔法は止められまい。」
ヴァルドールは闇の帳を発動させる。敵本陣をすっぽりと覆うように発動されたその魔法は内部から光を取り払った。どれだけ松明を焚こうと10cm先も照らせない。誰もが暗闇に戸惑う中、突如光が灯った。そしてその先には大勢のエヴォルヴとガリウスの兵たちがいた。
「突撃ぃ!!」
突如現れた敵の兵団に法国の軍勢は慌てふためる。そんな慌てふためる法国の軍勢にエヴォルヴたちは容赦無く襲いかかる。おそらくこの戦いがこの法国との戦いの最終決戦となるだろう。
一方その頃、闇の帳の外では洗脳電波が遮断されたことによって暴れ出そうとしている洗脳された市民たちがいた。するとその足元にいたうさぎが急に機械の兵士、エヴォルヴへと変貌した。エヴォルヴたちはすぐに暴れ出そうとした市民を取り押さえる。
そんなエヴォルヴの内部では動きづらいとうさぎの着ぐるみを脱ぐ使い魔たちがいた。使い魔たちによるうさぎぴょこぴょこ作戦は実にうまくいったようだ。
「それは我々にも…ただ敵としても予想外のようで敵本陣からは苛立ちの声が聞こえていました。」
夜。情報収集から戻って来た蛍火衆からの報告を聞いたミチナガたちは予想外の反応に困惑していた。敵としては物資の補充をしてから一気に攻め込むものだと思っていたが、すでに物資は十分補充されているのに一向に動く気配がないということだ。
「う~ん…考えられるのは……龍の国が動いていないから?」
「考えられるのはそれくらいかと。50万の洗脳された市民ではさすがに英雄の国は落とせませんから。こちらを陽動にして背後から龍の国が強襲するものだったと…」
法国の作戦は全て龍の国ありきであった。こんな各地で騒がしく戦火を広げたのも、背後で蠢く龍の国が気がつかれないため。今こうして洗脳された市民を待機させているのも弱者を重んじる英雄の国が一般市民に手を出しにくいため、これが最高の足止めになるとわかっているからだ。
しかしその肝心の龍の国はなぜか動いていない。そして現在法神と勇者神の戦闘が起こっているが、その前に法神が話した言葉によると龍の国が動いていることをまるで疑っていない様子であった。
そして龍の国に使い魔を派遣しているミチナガは龍の国が動いていないという事実を知っている。龍の国の別働隊が秘密裏に動いているような気配もまるでない。正直各地に戦力を分散させた法国はすでに負け戦だ。たとえ法神が勇者神を倒したとしても英雄の国の全戦力を持ってすれば法国の全兵力を潰せる。
「わけがわからん。あと考えられるとしたら…龍の国は法国と手を切りたくて今回この強硬策を選んだ…みたいなことか?ああ……もう考えてもまるでわからん!とにかく目の前の問題から片付けよう。それで敵の洗脳の司令塔みたいなのがいる場所はわかったの?」
「敵本陣で間違いないかと。ただ…防御が硬いです。聖人と思われる戦力がいました。さらに魔王クラスも複数。洗脳の司令塔がやられると大問題ですから防衛はかなり強化されています。」
細かく報告を受けると敵本陣は洗脳された市民に囲まれ、防御柵などもしっかり作られているらしい。おまけに洗脳した魔王クラスも複数名おり、法国の精鋭が1000ほど控えているとのことだ。そして何より聖人、魔帝クラスがいる。
「そこまで強固だとは…ポチ、ドルイドたちはどうしている?」
『ポチ・敵に動きがないから足止め作戦からこっそり洗脳解除に回っているよ。ワープを使って頑張っているから1000人近くを洗脳解除して近くの国に保護してもらっている。』
現在使い魔のワープがドルイドたちを転移させて精霊魔法を用いてこっそりと拐って洗脳解除している。ドルイドたちは精霊魔法を極限まで使用しているため、魔法を行使後動けなくなっている。それをワープが転移させてバックアップしているのだ。
さらに単独行動している洗脳された市民の元まで瞬時ドルイドたちを転移させられるのでワープはこの地で働き詰めだったらしい。しかしそれでも洗脳解除できたのは1000人だけだ。残り49万9000人はいる。正確に言えば50万人以上いたため、今もまだ50万人以上いるだろう。
「ヴァルくんはどうした?」
『ポチ・ヴァルくんは…』
「お呼びですか我が王よ。」
突如現れたヴァルドールに思わず悲鳴をあげそうになるものたちがいるがなんとか使い魔たちが口元に張り付いてその声を抑えた。ミチナガも驚くものだと思っていたが至って冷静だ。
「ヴァルくん。例えばだけど敵本陣に結界を張って敵の洗脳電波を遮断できる?」
「可能です我が王よ。しかし現在までの実験によると電波を遮断したことによって暴れ出すことが確認されています。下手に遮断すれば死人が増えます。」
「……なんとかしよう。残りのエヴォルヴは2万を残して全て洗脳された人々を抑える役割に。2万のエヴォルヴと俺たちで敵本陣を落とそう。…ヴァルくんは洗脳された人々を抑える役割についてくれ。ヴァルくんなら洗脳解除もできるし、大規模魔法を使えば…傷つけずにみんなを抑えられるだろ?」
「可能です。しかしよろしいのですか?私が動けば…敵の本陣くらい5分で落とせます。」
「その5分で何万も死ぬ可能性がある。被害を最小限にするためにはそれが一番だろ?」
ヴァルドールの言う通りヴァルドールならば単騎で敵本陣を落とすことは可能だろう。だが敵には魔帝クラスに魔王クラスが大勢いる。ヴァルドールでも瞬殺というのは難しいだろう。その間に洗脳された人々が暴れ出せば死者は数えきれないだろう。
だからこそミチナガの方法が一番だ。ヴァルドールが結界を張ったのちにエヴォルヴたちで洗脳された人々を取り押さえる。そしてエヴォルヴたちでは抑えきれない人はヴァルドールの魔法で取り押さえる。
「結界内まで俺たちを気がつかれずに運び込める?」
「可能です。ですが万全を期すため結界が少し大きくなり一部の市民が結界内に巻き込まれます。」
「それで構わない。それじゃあポチ、今の内に洗脳された人々全員にマーカーをつけておけ。そしてそれぞれのマーカーごとに使い魔たちに担当を決めさせろ。基本的には1人の洗脳された市民に対して1人の使い魔だが、魔力量と体の大きさで人数を増やせ。ヴァルドールの大規模拘束魔法が発動したのちは各々の判断で取り押さえ人数の配分を決めろ。」
『ポチ・了解!大忙しになりそうだね。って…そう言えば結界張られてから近づいて取り押さえるまでに時間かかりそうだけど…』
「…なんとか頑張って事前に近づいておいて。み、みんなならできるって!」
『ポチ・他力本願…まあ僕たちらしいけどさ。まあなんとか頑張ってみるよ。はぁ…作戦開始時刻遅めにしてね。準備に時間かかるから。』
「おっけーおっけー。それじゃあなんとかなりそうだから…みんなも一旦休憩!今のうちに仮眠とっておきな。始まったら休み暇なんてないよ。」
篝火が焚かれる法国の陣営では一部の兵士が夜警に当たっていた。そんな兵士たちは口を開けば文句ばかり出てくる。
「くそっ!いつまで待たせんだよ。毎日毎日そこらへん見ておしまいだぞ。」
「食い物に事欠かないし安全なのは良いって最初は思っていたけど…流石にきついわ。後ろの仲間のとこがよかったわ。」
「あっちなら暇でも20万も仲間がいるからな。多少お祭り騒ぎしても平気そうだ。こっちは上の目が厳しいから毎日規律正しく…おい待て。何か見えなかったか?」
「んどれだよ…あの白いやつか?一体…ってうさぎじゃねぇか。脅かすなよ。」
兵士たちが目を向ける先には一匹のうさぎが跳ねていた。いや、よく目を凝らせば他にもうさぎがいる。うさぎの群れのようだ。
「うさぎでも捕まえて飯にするか?」
「いや…やめておこう。あれだけ数がいても俺たちの口には入らねぇよ。どうせ上の奴らがみんな食っちまう。それにしてもずいぶん多いな。繁殖期か?」
「人間と違って静かだから問題なく寝れそうだよ。おい、そろそろ交代の時間じゃないか?とっとと交代して寝ようぜ。」
そういうと見張りの2人は交代のために戻っていく。その様子を見ていたヴァルドールは動き始めた。瞬時に近づき、敵の本陣の真上を飛ぶ。そんなヴァルドールの接近に気がついた魔帝クラスの男と幾人かの魔王クラスは急いで寝床から飛び起き、テントの外へ出た。
「そこそこの反応だ。だがその反応速度ではこの魔法は止められまい。」
ヴァルドールは闇の帳を発動させる。敵本陣をすっぽりと覆うように発動されたその魔法は内部から光を取り払った。どれだけ松明を焚こうと10cm先も照らせない。誰もが暗闇に戸惑う中、突如光が灯った。そしてその先には大勢のエヴォルヴとガリウスの兵たちがいた。
「突撃ぃ!!」
突如現れた敵の兵団に法国の軍勢は慌てふためる。そんな慌てふためる法国の軍勢にエヴォルヴたちは容赦無く襲いかかる。おそらくこの戦いがこの法国との戦いの最終決戦となるだろう。
一方その頃、闇の帳の外では洗脳電波が遮断されたことによって暴れ出そうとしている洗脳された市民たちがいた。するとその足元にいたうさぎが急に機械の兵士、エヴォルヴへと変貌した。エヴォルヴたちはすぐに暴れ出そうとした市民を取り押さえる。
そんなエヴォルヴの内部では動きづらいとうさぎの着ぐるみを脱ぐ使い魔たちがいた。使い魔たちによるうさぎぴょこぴょこ作戦は実にうまくいったようだ。
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