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第377話 断絶VS聖槌
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「ふぁぁぁ…寝みぃ…」
「だらしないなぁ…まあわからなくもないが。」
ザクラムは大きなあくびをしながら寝転んでいる。それをダモレスは指摘するがダモレスも同じようにあくびをしている。アレクリアルと12英雄の一団は法神の敵部隊と睨み合って数日が経過している。その間何もやることがなくて暇なのだ。
まあ彼らが暇でなくなるとそれはそれで大問題だ。勇者神と法神の正面衝突など笑い話にもならない。第二の終末の地の出来上がりである。だからそこ彼らは戦わず暇であることが一番望ましい。しかし法神も暇だと感じたのか法神の陣営から一人の男が飛び出してきた。
「ありゃ…聖槌か?」
「聖槌のゲランパッドだな。一人飛び出してきたってことは…そういうことだな。ちょっとアレクリアル様に許可取ってくる。」
「あ!お前ずりぃぞ!!」
ダモレスは駆け足でアレクリアルのいるテントの中へ入っていった。アレクリアルは現在地図を広げながら各地の情報を聞いて戦術を組み立てている。アレクリアルの指示のおかげで各地の戦況は随分と良くなっている。
「アレクリアル様!聖槌の奴が出てきたんでいいですか?」
「ん?そうか…まあそろそろだとは思っていたが…良いだろう。ダモレス、お前が…」
「ちょっと待て!俺に行かせろ!暇でしょうがないんだ!」
「ザクラムはあのアレルモレド戦で活躍しただろ!それにダンジョン内でもいいとこ取りした!俺活躍少ないんだぞ!!」
「落ち着け二人とも。今回はダモレス、お前がいけ。ザクラムは少し待て。奴らが横槍を入れてきた時がお前の出番だ。」
「チッ!」
「やりぃ!!それじゃあいってきまーす!」
ダモレスは大急ぎでテントを飛び出し聖槌のゲランパッドの前に飛び出した。ダモレスの先ほどまでのゆるい気配は消え去り、戦士らしい表情になった。ゲランパッドはその手に持つ片手槌をポンポンと弾ませながらダモレスを見極めている。
「ふむ…ザクラムが出てきてくれるかと思ったが……期待はずれだな。」
「そりゃ悪かったな。まあ俺で満足してくれよ。それで…開始の合図はどうする?すぐに始めちゃうか?」
「お前程度なら構わんだろう。とっととかかってこい。」
「それじゃあ遠慮なく。」
ダモレスは予備動作なしで瞬時にゲランパッドに近づいて手に持つ大剣ツバキを振り下ろした。そんなダモレスの一撃をゲランパッドは軽々とその手に持つ聖槌で受け止めた。そして空いているもう片方の手に魔力を溜め魔法を放った。
魔法はダモレスに直撃する。ふんっと鼻で笑うゲランパッドだが、ダモレスはかすり傷一つない状態で魔法を詠唱している。それを見たゲランパッドは瞬時に距離をとった。急にゲランパッドがいなくなったことで大剣はそのまま地面に衝突する。すると大剣が地面に触れた瞬間巨大な爆風が巻き起こった。
「いててて…死ぬかと思った。あ~あ、しかも攻撃外れちゃったし。なあ……もう一回防いで見ろよ。」
ダモレスはゲランパッドめがけて駆け寄る。しかしゲランパッドは一切近づこうとしない。離れた状態で先ほどと同じように魔法を放っている。だがダモレスは一切避けようともせずに一直線に近づく。
「どうしたどうしたぁ!そんなにちょこまか逃げんなよ!!」
「ふん…さすがは12英雄に選ばれることだけあるか。断絶のダモレス…防御不能の一撃の準備が終わったお前に近づく馬鹿はいない。」
「ちぇ!タネがバレているとやりづらいなぁ…んじゃあ…こうしよう。」
ダモレスは無造作に剣を振るった。すると次の瞬間ダモレスの姿が消えた。まるで何かに吸い込まれていくように消えたのだ。それを見たゲランパッドは一瞬硬直した。この現状を理解できずに思考のためにわずかな隙。そのわずかな隙がこの勝負を決めた。
突如目の前に現れた大剣。ゲランパッドはすぐに飛び退いたが遅かった。その大剣はゲランパッドの肩口から入り腹部まで続く袈裟斬りを放った。とっさに飛び退いたことで即死には至らなかったが明らかに致命傷だ。おまけに傷が治らない。すると大剣と共に空間からダモレスが現れた。
「うおっ!初見殺しの一撃なのに避けられた!まじかぁ……俺のとっておきだったのに。」
「き、貴様……」
「あ、その傷はそう簡単に治らないぜ。俺の断絶剣は全てを断ち切る。お前の魔力も断ち切ったから回復のための魔力を阻害する。」
ダモレスの断絶剣はありとあらゆるものを断ち切る。空間も魔力も魔力の流れでさえも。治すためには魔帝クラスでも数週間は要する。そしてこの戦いの最中に癒すことなど不可能。内臓さえも切られているゲランパッドは何もしなくても数分で死に至るだろう。だがゲランパッドはそれを許さなかった。
「なめるな小僧!!法国の聖人がこの程度で終わるわけがないだろうがぁ!!」
ゲランパッドは手に持つ聖槌に炎をまとわせ、それを傷口に押し当て傷を焼いて塞いだ。傷は治らないがこれで出血は止まる。戦うのには十分だ。無茶苦茶なやり方ではあるがこれが最善の方法である。
「うへぇ…無茶すんなぁ。まあそれしかないんだけどな。でも…その状態で俺に勝てると思ったか?」
「なめるな…わしは聖人……法国の柱の一人…そうだ……あんなものが我々の代わりなどと…わしが……わしが法国の守り手であるのだぁぁ!!」
ゲランパッドは執念を見せる。その気迫にはダモレスも一瞬気圧されそうになった。しかしダモレスはゲランパッド以上に気迫を見せると再び打ち合いが始まった。
ダモレスとゲランパッドは真っ向から立ち向かった。片手槌と大剣が激しくぶつかり合う。ダモレスも再び断絶剣を使えば防御不能の一撃でトドメをさせるのだが、断絶剣は魔力の消耗が激しい。その気になれば魔神にさえ致命傷を与えられる断絶剣はダモレスのとっておきだ。これ以上の消耗を望まないダモレスは普通の剣戟と魔法でゲランパッドと戦う。
ゲランパッドとダモレスの応酬は30分に及んだ。ゲランパッドは勇猛果敢に戦った。しかしダモレスからくらった一撃が致命傷となった。焼いて塞いだとはいえ、体を動かす時にどうしても痛みが伴い、それによって動きが悪くなった。
しかしそれでも30分も持ったのはゲランパッドの執念だろう。いつ倒れてもおかしくないほどのダメージを負いながらもゲランパッドは最後まで戦い抜き、その最後は立ったまま終えた。ダモレスもゲランパッドが死んだと気がつくのが遅れたほどだ。
「あんた…すげぇやつだよ。だがあんたが組した国が悪かったな。今度はもっとまともな国に生まれな。」
ダモレスはその場から立ち去り自身の陣営に戻った。それから少し遅れてゲランパッドの遺体が回収された。そして法国の陣営で確かにゲランパッドの死亡が確認されたのだろう。法国の陣営に動きがあった。
それは転移ゲートから現れた兵士の一団だ。魔王クラスと思われるものも数名見られる。他にも数百名の法国の兵士がいる。
これがこの戦いの意味であり、大きな戦果だ。この勇者神と法神の睨み合いは常に同等の戦力が向かい合うことが前提だ。そしていまの戦いは両国の代表者同士が戦い、どちらかが命を落とす。そして命を落とした側の陣営はその分の戦力を補充しなくてはならない。
つまりいまの戦いはお互いの手駒の削り合いだ。勝てば勝つほど負けた側の自由にできる戦力を減らせる。ただ睨み合っているだけだが、ここで起こる小競り合いがこの戦争の行方を大きく左右する。
そして負けた側の法国がこれで諦めるはずがない。さらなる者達が現れた。第2戦の始まりである。
「俺はもう十分に戦ったから次の人どうぞ。負けないでくださいよ。」
「当たり前だ。全勝以外ない。英雄がこんな小競り合いで負けて良いはずがない。」
再び12英雄と法国の聖人がぶつかる。彼らの戦いがこの戦争の早期決着に近づくと信じて。
「だらしないなぁ…まあわからなくもないが。」
ザクラムは大きなあくびをしながら寝転んでいる。それをダモレスは指摘するがダモレスも同じようにあくびをしている。アレクリアルと12英雄の一団は法神の敵部隊と睨み合って数日が経過している。その間何もやることがなくて暇なのだ。
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「ありゃ…聖槌か?」
「聖槌のゲランパッドだな。一人飛び出してきたってことは…そういうことだな。ちょっとアレクリアル様に許可取ってくる。」
「あ!お前ずりぃぞ!!」
ダモレスは駆け足でアレクリアルのいるテントの中へ入っていった。アレクリアルは現在地図を広げながら各地の情報を聞いて戦術を組み立てている。アレクリアルの指示のおかげで各地の戦況は随分と良くなっている。
「アレクリアル様!聖槌の奴が出てきたんでいいですか?」
「ん?そうか…まあそろそろだとは思っていたが…良いだろう。ダモレス、お前が…」
「ちょっと待て!俺に行かせろ!暇でしょうがないんだ!」
「ザクラムはあのアレルモレド戦で活躍しただろ!それにダンジョン内でもいいとこ取りした!俺活躍少ないんだぞ!!」
「落ち着け二人とも。今回はダモレス、お前がいけ。ザクラムは少し待て。奴らが横槍を入れてきた時がお前の出番だ。」
「チッ!」
「やりぃ!!それじゃあいってきまーす!」
ダモレスは大急ぎでテントを飛び出し聖槌のゲランパッドの前に飛び出した。ダモレスの先ほどまでのゆるい気配は消え去り、戦士らしい表情になった。ゲランパッドはその手に持つ片手槌をポンポンと弾ませながらダモレスを見極めている。
「ふむ…ザクラムが出てきてくれるかと思ったが……期待はずれだな。」
「そりゃ悪かったな。まあ俺で満足してくれよ。それで…開始の合図はどうする?すぐに始めちゃうか?」
「お前程度なら構わんだろう。とっととかかってこい。」
「それじゃあ遠慮なく。」
ダモレスは予備動作なしで瞬時にゲランパッドに近づいて手に持つ大剣ツバキを振り下ろした。そんなダモレスの一撃をゲランパッドは軽々とその手に持つ聖槌で受け止めた。そして空いているもう片方の手に魔力を溜め魔法を放った。
魔法はダモレスに直撃する。ふんっと鼻で笑うゲランパッドだが、ダモレスはかすり傷一つない状態で魔法を詠唱している。それを見たゲランパッドは瞬時に距離をとった。急にゲランパッドがいなくなったことで大剣はそのまま地面に衝突する。すると大剣が地面に触れた瞬間巨大な爆風が巻き起こった。
「いててて…死ぬかと思った。あ~あ、しかも攻撃外れちゃったし。なあ……もう一回防いで見ろよ。」
ダモレスはゲランパッドめがけて駆け寄る。しかしゲランパッドは一切近づこうとしない。離れた状態で先ほどと同じように魔法を放っている。だがダモレスは一切避けようともせずに一直線に近づく。
「どうしたどうしたぁ!そんなにちょこまか逃げんなよ!!」
「ふん…さすがは12英雄に選ばれることだけあるか。断絶のダモレス…防御不能の一撃の準備が終わったお前に近づく馬鹿はいない。」
「ちぇ!タネがバレているとやりづらいなぁ…んじゃあ…こうしよう。」
ダモレスは無造作に剣を振るった。すると次の瞬間ダモレスの姿が消えた。まるで何かに吸い込まれていくように消えたのだ。それを見たゲランパッドは一瞬硬直した。この現状を理解できずに思考のためにわずかな隙。そのわずかな隙がこの勝負を決めた。
突如目の前に現れた大剣。ゲランパッドはすぐに飛び退いたが遅かった。その大剣はゲランパッドの肩口から入り腹部まで続く袈裟斬りを放った。とっさに飛び退いたことで即死には至らなかったが明らかに致命傷だ。おまけに傷が治らない。すると大剣と共に空間からダモレスが現れた。
「うおっ!初見殺しの一撃なのに避けられた!まじかぁ……俺のとっておきだったのに。」
「き、貴様……」
「あ、その傷はそう簡単に治らないぜ。俺の断絶剣は全てを断ち切る。お前の魔力も断ち切ったから回復のための魔力を阻害する。」
ダモレスの断絶剣はありとあらゆるものを断ち切る。空間も魔力も魔力の流れでさえも。治すためには魔帝クラスでも数週間は要する。そしてこの戦いの最中に癒すことなど不可能。内臓さえも切られているゲランパッドは何もしなくても数分で死に至るだろう。だがゲランパッドはそれを許さなかった。
「なめるな小僧!!法国の聖人がこの程度で終わるわけがないだろうがぁ!!」
ゲランパッドは手に持つ聖槌に炎をまとわせ、それを傷口に押し当て傷を焼いて塞いだ。傷は治らないがこれで出血は止まる。戦うのには十分だ。無茶苦茶なやり方ではあるがこれが最善の方法である。
「うへぇ…無茶すんなぁ。まあそれしかないんだけどな。でも…その状態で俺に勝てると思ったか?」
「なめるな…わしは聖人……法国の柱の一人…そうだ……あんなものが我々の代わりなどと…わしが……わしが法国の守り手であるのだぁぁ!!」
ゲランパッドは執念を見せる。その気迫にはダモレスも一瞬気圧されそうになった。しかしダモレスはゲランパッド以上に気迫を見せると再び打ち合いが始まった。
ダモレスとゲランパッドは真っ向から立ち向かった。片手槌と大剣が激しくぶつかり合う。ダモレスも再び断絶剣を使えば防御不能の一撃でトドメをさせるのだが、断絶剣は魔力の消耗が激しい。その気になれば魔神にさえ致命傷を与えられる断絶剣はダモレスのとっておきだ。これ以上の消耗を望まないダモレスは普通の剣戟と魔法でゲランパッドと戦う。
ゲランパッドとダモレスの応酬は30分に及んだ。ゲランパッドは勇猛果敢に戦った。しかしダモレスからくらった一撃が致命傷となった。焼いて塞いだとはいえ、体を動かす時にどうしても痛みが伴い、それによって動きが悪くなった。
しかしそれでも30分も持ったのはゲランパッドの執念だろう。いつ倒れてもおかしくないほどのダメージを負いながらもゲランパッドは最後まで戦い抜き、その最後は立ったまま終えた。ダモレスもゲランパッドが死んだと気がつくのが遅れたほどだ。
「あんた…すげぇやつだよ。だがあんたが組した国が悪かったな。今度はもっとまともな国に生まれな。」
ダモレスはその場から立ち去り自身の陣営に戻った。それから少し遅れてゲランパッドの遺体が回収された。そして法国の陣営で確かにゲランパッドの死亡が確認されたのだろう。法国の陣営に動きがあった。
それは転移ゲートから現れた兵士の一団だ。魔王クラスと思われるものも数名見られる。他にも数百名の法国の兵士がいる。
これがこの戦いの意味であり、大きな戦果だ。この勇者神と法神の睨み合いは常に同等の戦力が向かい合うことが前提だ。そしていまの戦いは両国の代表者同士が戦い、どちらかが命を落とす。そして命を落とした側の陣営はその分の戦力を補充しなくてはならない。
つまりいまの戦いはお互いの手駒の削り合いだ。勝てば勝つほど負けた側の自由にできる戦力を減らせる。ただ睨み合っているだけだが、ここで起こる小競り合いがこの戦争の行方を大きく左右する。
そして負けた側の法国がこれで諦めるはずがない。さらなる者達が現れた。第2戦の始まりである。
「俺はもう十分に戦ったから次の人どうぞ。負けないでくださいよ。」
「当たり前だ。全勝以外ない。英雄がこんな小競り合いで負けて良いはずがない。」
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