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第303話 情報入手
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「だけど相手に魔王クラスがそれだけいるなら…ナイトを頼ることも考えておいた方が良いか。個の力だけはどうしようもない。ナイトに連絡取れるか?」
『ポチ・それがナイトはしばらく無理そう。なんかものすごい強敵と戦っているらしいよ。かれこれ1ヶ月以上戦っているけど決着がつかないみたい。』
ナイトは火の国の9大ダンジョンの一つ、煉獄のムスプルヘイムから漏れ出ている魔力溜まりの洞窟で凶悪なモンスターと対峙しているとのことだ。あまりの強さに倒しきることも撤退することもできないらしい。
そうなるともう一人のミチナガの持つ魔帝クラス、ヴァルドールを頼ることになるのだが、それは無理だ。援軍も頼んでしまったため、ヴァルドールのことが世間に露見しかねない。つまり魔帝クラスの戦力を求めることが難しい。
「じゃあとにかく魔王クラスの実力者を探さないと…誰かこの国の内部いる人間で味方に着きそうな人いないかなぁ…」
『ポチ・う~ん…いない……とは言い切れないかもしれないけどリスキーだよ。下手にやればそこから情報が漏れる可能性も高いし。』
「まあそうだけど…一応その敵側の魔王クラスの15人について調べてくれるか?少しでも可能性があるならやる価値はあるだろ。」
『ポチ・そうかもしれないけど…流石に魔王クラスにもなるとこっちの監視に気がつかれるよ。……まあやれるだけやってみるけどね。』
そうと決まれば行動は早い。使い魔たちは引き続き情報収集。ハルマーデイムは他国への救援。そして残ったミチナガたちはというと…日がな一日部屋でゴロゴロしている。この商館から出ることが難しい状態では何もできることがないのだ。だからやることもなく毎日毎日ゴロゴロゴロゴロ…
「はぁ~~…もうハルマーデイムが行ってから1週間経ったよな?もう隣国にはついた?救援求められた?」
『ポチ・流石にまだついて2日しか経ってないよ。救援を求めようにも隣国にはダエーワの手のものがいる可能性があるから下手に動けないんだよ。作戦決行までまだ時間あるんだから我慢して。』
作戦決行はダエーワの兵隊がどこかへ遠征する時。長期の遠征の上、1万人以上動くらしいのでこの国の防備がかなり薄くなる。まさに絶好のタイミングだ。少し怪しい気もするが、このタイミングを逃す手はない。
しかしそれまでの間、本当にミチナガはやることがない。いや、始まったとしてもミチナガの力ではやれることはないだろう。
「なんだかなぁ…手持ち無沙汰だなぁ…」
『ポチ・そう言いながらスマホは手放さないね。じゃあ少しだけ報告。敵側の15人の魔王クラスの内9人までは特定できたよ。他の6人は特定難しそう。とりあえずわかっている全員の顔写真ね。』
スマホで顔写真を確認していくミチナガ。どれもこれも悪人面の魔王クラスばかりだ。男もいれば女もいる。戦士タイプもいれば魔法タイプらしき者もいる。どれもこれも仲間に引き入れるのは無理そうだ。そんな中、一つの写真が目に入った。
「このブレッブレの写真は?」
『ポチ・ああ、それね。それ入手するのすごい大変だったんだよ。隠密タイプの魔王クラスだと思うんだけどね。この中でも頭一つ抜きん出ている魔王クラスだと思う。名前は不明。わかっているのはその写真一枚だけ。』
謎の人物。正直他の書類を調べてなんとかこの写真の男が魔王クラスだと考えているだけで、本当にそこまでの実力の人物か怪しい。もしかしたらそこまでの人物でない可能性だってある。しかしミチナガはその写真の人物に対し非常に興味を持った。
「この見た目さ…忍者じゃね!忍者!いいなぁ…忍者。魔法じゃなくて忍法とか使うのかな?」
『ポチ・いや…普通に魔法だと思うよ。それに忍者ならシノビがいるじゃん。』
「いや、あいつのは名前だけだし。それにあいつも前に忍者から忍術学んでみたいって言ったし。」
『ポチ・あ、そうなんだ。』
ミチナガはその映像を見ながらこの忍者がどんなやつなのか想像を膨らませた。悪人だと思うのだが、あまりにも興味をそそられてしまったため、この忍者について調べたくなった。
「使い魔たちの映像俺にも見せてくれるか?俺も少し調べてみるわ。暇だしね。」
『ポチ・良いよ。すぐに用意するね。』
ポチはすぐに映像の一覧を用意した。ミチナガはすぐにスマホの能力、大きさ変換を用いてスマホを巨大化させる。抱えるほど大きくなったスマホ、というよりタブレットでミチナガは映像を見続ける。
なんてことはない街の風景。そればかりをずっと見続けるミチナガはそれから1週間、毎日毎日そんな映像を見続けた。何も話さず一心不乱に映像を見続けるミチナガを皆心配に思ったが、今日突然ミチナガが動き出した。
『ポチ・どうしたのボス?』
「いくつか気になることができた。自分で動いた方が早いから少し出かける。」
『ポチ・ちょ!外は危ないよ!それにみんなだって許可するわけ…』
「だからこっそり行く。汚い服あったよな?変装用にそれを着て行こう。ここ2~3日風呂にも入ってなかったからちょうど良いだろ。夕食までに戻ればみんなも気がつかないよ。まあいざという時は頼んだ。」
『ポチ・最近まともに服も着替えないと思ったらそんなこと考えてたんだ……はぁ…まあなんとかするよ。あまり遅くならないようにしないとね。』
そういうとミチナガは服を着替え始める。服には家畜の匂いもついているのかなかなかキツイ匂いがする。しかしこのくらいの匂いがした方が身バレがしない。顔に少し泥をつけてやれば完全に見た目はそこらへんの浮浪者だ。
ただ念のためにいくつか魔道具を忍ばせておく。魔力を溜め込んでおけるタイプのお高い魔道具なのでミチナガでも問題なく使える。ただ人に見られてはいけないのでしっかりと服の中にしまいこんである。
そして誰にも気がつかれないように部屋の窓から外に出る。周囲にも人影はない。ミチナガはそのまま街に溶け込むように裏路地を移動して行った。普段は裏路地など危険なため近づかない。しかし今は逆に表通りの方が危険だ。安全な裏路地を選んでどんどん目的の場所まで移動して行く。
まずミチナガが向かった先は一軒の水売りの店だ。文字通り水を売っている。どうやらこの国では元々水源が少なかったようだ。さらにそれに加えて麻薬製造の影響で土壌に薬品などが流れ出ているようで、水売りは必要不可欠らしい。
水の他にも酒も取り扱っているらしいこの店舗はちょくちょくダエーワ所属の男たちがやってくる。ダエーワ公認の店舗ということだ。ミチナガはその店舗へ人がいなくなったタイミングで入った。
「いらっしゃい。……水が欲しいのか?金はあるか?」
「ないんだ…一口で良い……頼む…」
「………この瓶を持っていけ。誰にも見られるなよ。」
そういうと店主は一本の水の入った瓶を渡してきた。しかしミチナガはそれを受け取ろうとしない。そしてスマホを確認すると店主へと近づいた。
「あんたは良い人だ。だけど人が良すぎる。…数人に監視されているぞ。俺を外に放り投げろ。」
「何を言って……」
「いいから。それから食料だ。これだけあればしばらく持つだろ?この食料を隠して…ほら、言われた通りに。」
「誰だか知らんが…助かる。」
そういうと店主はミチナガを外へ放り投げて罵倒を浴びせかけて戸を閉めた。ミチナガはしばらくその扉を叩き続けるとその場を離れた。スマホを確認するとその周囲を偵察していた使い魔から監視の目は無くなったと報告がきた。
その後もミチナガは数件の水売りの店を周り同様のことを繰り返した。それから気がつかれないように今も隠れ続けている人々へ食料を届けた。そんなことを続けているうちに周囲は暗くなってきた。すると使い魔から報告が入った。ミチナガはその報告を確認するとまた移動を続けた。
やがて全く人気のない建物に入り、水を飲みながらしばらく待っているとその建物の中に一人の男が入ってきた。その手には武器を持っている。だがミチナガは全く動じない。
「失礼。警戒を怠るべきではないのでね。君の行動を見させてもらったよ。何者だい?」
「ふう…随分慎重なんだな。歩き回るので疲れたよ。あんたたちと接触できてよかった。まあお互いにまだ信用しきれないだろ?名乗るのはまたにしよう。」
ミチナガは使い魔たちから送られてくる映像を見ているうちに彼らの存在に気がついた。時折映像に現れる怪しい人間。今もそうだがフードを被っており、その顔はわからない。ただ彼らは組織立って動いているように見えた。
使い魔たちから送られてくる映像はどれも全体を俯瞰して写した映像のみだったため、彼らが何をしていたかわからない。ただ彼らは逃げ隠れている人々の元へと定期的に足を運んでいるようであった。さらに歩き方を注視していたミチナガには彼らはおそらく戦闘経験があると見ていた。
「我々に気がつく者がいるとはね。それで?目的は何かな?」
「情報交換といかないか?こちらが得ている情報をいくつか出す。代わりにそちらの得ている情報が欲しい。特に戦力が足りなくてね。特にこちらに引き込めそうな魔王クラスの情報なんかがあれば良い。」
「なるほど。つまり奴らと一戦交えるということか。……こちらはダエーワの幹部の情報が欲しい。特に大幹部の情報があれば最高だ。」
「……この国に滞在している幹部の数は3人。その現在位置は今も捉えている。そのうちの一人が大幹部サルワと定期的に連絡を取り合っている。連絡の取り方は手紙によるもの。追跡が困難になるように幾人も人を使っている。……ただ途中までの追跡には成功した。その位置で良いなら情報提供できる。」
「こちらはある暗殺集団の情報だ。高い報酬でなんでもやる暗殺集団だったが、ある事情でダエーワに入団した。そのある事情さえ解決できればその暗殺集団丸々手に入れられる。魔王クラスは4人在籍している。」
それだけ言うとミチナガとフードを被った男はお互いに近づき手を握った。交渉成立だ。ミチナガは他にも使い魔の情報を提供し、フードの男はそれに答えるようにいくつかの情報を渡した。さらにミチナガは自分たちが動くことも伝えた。
「君たちはこの現状を打破するために動くか……わかった。こちらとしてももうこの国では情報は得られないと思っていたところだ。」
「動くのは幹部の男がサルワに手紙を出してからにしよう。そうすれば追跡できるはずだ。前回まででわかった追跡地点を使えばさらに場所を絞り込めると思う。それから…こいつを連れて行ってくれ。俺の使い魔だ。こいつを通じていつでも俺と連絡を取れる。それに幹部の現在位置も常にわかるぞ。」
「いや、遠慮しておく。こちらの情報が筒抜けになりそうだからな。」
「まあそれもそうか……それじゃあもしもこいつらを見かけたら声でもかけてくれ。そうすればすぐに情報が伝わる。それ以外は…そうだな。この建物の外に空き瓶があっただろ。そこに花でも一輪さしておいてくれ。そしたらこの時間にまた来る。さて…もう時間がないので失礼するよ。それじゃあ。」
ミチナガはそう言うと足早にその場を立ち去った。もうすぐ夕食の時間だ。急がないと無断外出がバレる。ミチナガはそのまま誰の目にも触れることなく商館に戻ることに成功した。ただ服の匂いが身体に移り、あまりの匂いに周りの皆が顔をしかめたため先に風呂に入ることになった。
『ポチ・それがナイトはしばらく無理そう。なんかものすごい強敵と戦っているらしいよ。かれこれ1ヶ月以上戦っているけど決着がつかないみたい。』
ナイトは火の国の9大ダンジョンの一つ、煉獄のムスプルヘイムから漏れ出ている魔力溜まりの洞窟で凶悪なモンスターと対峙しているとのことだ。あまりの強さに倒しきることも撤退することもできないらしい。
そうなるともう一人のミチナガの持つ魔帝クラス、ヴァルドールを頼ることになるのだが、それは無理だ。援軍も頼んでしまったため、ヴァルドールのことが世間に露見しかねない。つまり魔帝クラスの戦力を求めることが難しい。
「じゃあとにかく魔王クラスの実力者を探さないと…誰かこの国の内部いる人間で味方に着きそうな人いないかなぁ…」
『ポチ・う~ん…いない……とは言い切れないかもしれないけどリスキーだよ。下手にやればそこから情報が漏れる可能性も高いし。』
「まあそうだけど…一応その敵側の魔王クラスの15人について調べてくれるか?少しでも可能性があるならやる価値はあるだろ。」
『ポチ・そうかもしれないけど…流石に魔王クラスにもなるとこっちの監視に気がつかれるよ。……まあやれるだけやってみるけどね。』
そうと決まれば行動は早い。使い魔たちは引き続き情報収集。ハルマーデイムは他国への救援。そして残ったミチナガたちはというと…日がな一日部屋でゴロゴロしている。この商館から出ることが難しい状態では何もできることがないのだ。だからやることもなく毎日毎日ゴロゴロゴロゴロ…
「はぁ~~…もうハルマーデイムが行ってから1週間経ったよな?もう隣国にはついた?救援求められた?」
『ポチ・流石にまだついて2日しか経ってないよ。救援を求めようにも隣国にはダエーワの手のものがいる可能性があるから下手に動けないんだよ。作戦決行までまだ時間あるんだから我慢して。』
作戦決行はダエーワの兵隊がどこかへ遠征する時。長期の遠征の上、1万人以上動くらしいのでこの国の防備がかなり薄くなる。まさに絶好のタイミングだ。少し怪しい気もするが、このタイミングを逃す手はない。
しかしそれまでの間、本当にミチナガはやることがない。いや、始まったとしてもミチナガの力ではやれることはないだろう。
「なんだかなぁ…手持ち無沙汰だなぁ…」
『ポチ・そう言いながらスマホは手放さないね。じゃあ少しだけ報告。敵側の15人の魔王クラスの内9人までは特定できたよ。他の6人は特定難しそう。とりあえずわかっている全員の顔写真ね。』
スマホで顔写真を確認していくミチナガ。どれもこれも悪人面の魔王クラスばかりだ。男もいれば女もいる。戦士タイプもいれば魔法タイプらしき者もいる。どれもこれも仲間に引き入れるのは無理そうだ。そんな中、一つの写真が目に入った。
「このブレッブレの写真は?」
『ポチ・ああ、それね。それ入手するのすごい大変だったんだよ。隠密タイプの魔王クラスだと思うんだけどね。この中でも頭一つ抜きん出ている魔王クラスだと思う。名前は不明。わかっているのはその写真一枚だけ。』
謎の人物。正直他の書類を調べてなんとかこの写真の男が魔王クラスだと考えているだけで、本当にそこまでの実力の人物か怪しい。もしかしたらそこまでの人物でない可能性だってある。しかしミチナガはその写真の人物に対し非常に興味を持った。
「この見た目さ…忍者じゃね!忍者!いいなぁ…忍者。魔法じゃなくて忍法とか使うのかな?」
『ポチ・いや…普通に魔法だと思うよ。それに忍者ならシノビがいるじゃん。』
「いや、あいつのは名前だけだし。それにあいつも前に忍者から忍術学んでみたいって言ったし。」
『ポチ・あ、そうなんだ。』
ミチナガはその映像を見ながらこの忍者がどんなやつなのか想像を膨らませた。悪人だと思うのだが、あまりにも興味をそそられてしまったため、この忍者について調べたくなった。
「使い魔たちの映像俺にも見せてくれるか?俺も少し調べてみるわ。暇だしね。」
『ポチ・良いよ。すぐに用意するね。』
ポチはすぐに映像の一覧を用意した。ミチナガはすぐにスマホの能力、大きさ変換を用いてスマホを巨大化させる。抱えるほど大きくなったスマホ、というよりタブレットでミチナガは映像を見続ける。
なんてことはない街の風景。そればかりをずっと見続けるミチナガはそれから1週間、毎日毎日そんな映像を見続けた。何も話さず一心不乱に映像を見続けるミチナガを皆心配に思ったが、今日突然ミチナガが動き出した。
『ポチ・どうしたのボス?』
「いくつか気になることができた。自分で動いた方が早いから少し出かける。」
『ポチ・ちょ!外は危ないよ!それにみんなだって許可するわけ…』
「だからこっそり行く。汚い服あったよな?変装用にそれを着て行こう。ここ2~3日風呂にも入ってなかったからちょうど良いだろ。夕食までに戻ればみんなも気がつかないよ。まあいざという時は頼んだ。」
『ポチ・最近まともに服も着替えないと思ったらそんなこと考えてたんだ……はぁ…まあなんとかするよ。あまり遅くならないようにしないとね。』
そういうとミチナガは服を着替え始める。服には家畜の匂いもついているのかなかなかキツイ匂いがする。しかしこのくらいの匂いがした方が身バレがしない。顔に少し泥をつけてやれば完全に見た目はそこらへんの浮浪者だ。
ただ念のためにいくつか魔道具を忍ばせておく。魔力を溜め込んでおけるタイプのお高い魔道具なのでミチナガでも問題なく使える。ただ人に見られてはいけないのでしっかりと服の中にしまいこんである。
そして誰にも気がつかれないように部屋の窓から外に出る。周囲にも人影はない。ミチナガはそのまま街に溶け込むように裏路地を移動して行った。普段は裏路地など危険なため近づかない。しかし今は逆に表通りの方が危険だ。安全な裏路地を選んでどんどん目的の場所まで移動して行く。
まずミチナガが向かった先は一軒の水売りの店だ。文字通り水を売っている。どうやらこの国では元々水源が少なかったようだ。さらにそれに加えて麻薬製造の影響で土壌に薬品などが流れ出ているようで、水売りは必要不可欠らしい。
水の他にも酒も取り扱っているらしいこの店舗はちょくちょくダエーワ所属の男たちがやってくる。ダエーワ公認の店舗ということだ。ミチナガはその店舗へ人がいなくなったタイミングで入った。
「いらっしゃい。……水が欲しいのか?金はあるか?」
「ないんだ…一口で良い……頼む…」
「………この瓶を持っていけ。誰にも見られるなよ。」
そういうと店主は一本の水の入った瓶を渡してきた。しかしミチナガはそれを受け取ろうとしない。そしてスマホを確認すると店主へと近づいた。
「あんたは良い人だ。だけど人が良すぎる。…数人に監視されているぞ。俺を外に放り投げろ。」
「何を言って……」
「いいから。それから食料だ。これだけあればしばらく持つだろ?この食料を隠して…ほら、言われた通りに。」
「誰だか知らんが…助かる。」
そういうと店主はミチナガを外へ放り投げて罵倒を浴びせかけて戸を閉めた。ミチナガはしばらくその扉を叩き続けるとその場を離れた。スマホを確認するとその周囲を偵察していた使い魔から監視の目は無くなったと報告がきた。
その後もミチナガは数件の水売りの店を周り同様のことを繰り返した。それから気がつかれないように今も隠れ続けている人々へ食料を届けた。そんなことを続けているうちに周囲は暗くなってきた。すると使い魔から報告が入った。ミチナガはその報告を確認するとまた移動を続けた。
やがて全く人気のない建物に入り、水を飲みながらしばらく待っているとその建物の中に一人の男が入ってきた。その手には武器を持っている。だがミチナガは全く動じない。
「失礼。警戒を怠るべきではないのでね。君の行動を見させてもらったよ。何者だい?」
「ふう…随分慎重なんだな。歩き回るので疲れたよ。あんたたちと接触できてよかった。まあお互いにまだ信用しきれないだろ?名乗るのはまたにしよう。」
ミチナガは使い魔たちから送られてくる映像を見ているうちに彼らの存在に気がついた。時折映像に現れる怪しい人間。今もそうだがフードを被っており、その顔はわからない。ただ彼らは組織立って動いているように見えた。
使い魔たちから送られてくる映像はどれも全体を俯瞰して写した映像のみだったため、彼らが何をしていたかわからない。ただ彼らは逃げ隠れている人々の元へと定期的に足を運んでいるようであった。さらに歩き方を注視していたミチナガには彼らはおそらく戦闘経験があると見ていた。
「我々に気がつく者がいるとはね。それで?目的は何かな?」
「情報交換といかないか?こちらが得ている情報をいくつか出す。代わりにそちらの得ている情報が欲しい。特に戦力が足りなくてね。特にこちらに引き込めそうな魔王クラスの情報なんかがあれば良い。」
「なるほど。つまり奴らと一戦交えるということか。……こちらはダエーワの幹部の情報が欲しい。特に大幹部の情報があれば最高だ。」
「……この国に滞在している幹部の数は3人。その現在位置は今も捉えている。そのうちの一人が大幹部サルワと定期的に連絡を取り合っている。連絡の取り方は手紙によるもの。追跡が困難になるように幾人も人を使っている。……ただ途中までの追跡には成功した。その位置で良いなら情報提供できる。」
「こちらはある暗殺集団の情報だ。高い報酬でなんでもやる暗殺集団だったが、ある事情でダエーワに入団した。そのある事情さえ解決できればその暗殺集団丸々手に入れられる。魔王クラスは4人在籍している。」
それだけ言うとミチナガとフードを被った男はお互いに近づき手を握った。交渉成立だ。ミチナガは他にも使い魔の情報を提供し、フードの男はそれに答えるようにいくつかの情報を渡した。さらにミチナガは自分たちが動くことも伝えた。
「君たちはこの現状を打破するために動くか……わかった。こちらとしてももうこの国では情報は得られないと思っていたところだ。」
「動くのは幹部の男がサルワに手紙を出してからにしよう。そうすれば追跡できるはずだ。前回まででわかった追跡地点を使えばさらに場所を絞り込めると思う。それから…こいつを連れて行ってくれ。俺の使い魔だ。こいつを通じていつでも俺と連絡を取れる。それに幹部の現在位置も常にわかるぞ。」
「いや、遠慮しておく。こちらの情報が筒抜けになりそうだからな。」
「まあそれもそうか……それじゃあもしもこいつらを見かけたら声でもかけてくれ。そうすればすぐに情報が伝わる。それ以外は…そうだな。この建物の外に空き瓶があっただろ。そこに花でも一輪さしておいてくれ。そしたらこの時間にまた来る。さて…もう時間がないので失礼するよ。それじゃあ。」
ミチナガはそう言うと足早にその場を立ち去った。もうすぐ夕食の時間だ。急がないと無断外出がバレる。ミチナガはそのまま誰の目にも触れることなく商館に戻ることに成功した。ただ服の匂いが身体に移り、あまりの匂いに周りの皆が顔をしかめたため先に風呂に入ることになった。
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