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第297話 星屑の如く
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「ゆっくり進め~…もう少しハンドルを右に切ってくれ。」
『アルケ・了解だよ。』
ミチナガが出発してから2日後、魔動装甲車は山を登っていた。あの港町は周囲に自然が広がっており、一番平地で楽そうなルートにはモンスターの住処があり、そこを避けるために一番安全な山越えのルートを利用しているのだ。
おかげでこれまでの間、酷いモンスターの襲撃は起きておらず、被害も出ていない。ただ道路は悪路なため、移動速度はあまり出せない。これでは馬車での移動でもあまり変わらないかもしれない。
「ハンドル操作しっかり頼むぞ。これ落ちたら崖底まで真っ逆さまだからな。」
『ポチ・わかっているけど、貨物分の車輪幅があるからなかなか難しいんだよ。』
ゆっくり進むため、車内の揺れは軽い。そのためずっとティータイムだ。時折他の車両から遊びに来るものまでいる。そんな移動を続けること半日、ようやく山の頂上までたどり着いた。時刻は昼過ぎ。外で景色を楽しみながら昼食を、と思ったが風が強いためそれは難しい。
仕方なくしばらく景色を楽しんだ後に少し山を下ってから風の当たらない場所で昼食にした。頂上ではないが景色は最高だ。遠くにあの港町と海がうっすらと見える。もっと遠くに目を凝らせば、海運の拠点となっている街らしきものも見えた。
「こうやって見るとあの港町は本当に陸の孤島だな。陸路で運搬をすることはできないのか?」
「こうやって見るとあまりわかりませんが街と街の間にはいくつかの崖やモンスターの危険地帯がありますからね。それにあくまで私たちの街は中継地点。あそこにうっすらと見える街から向こうの方にある街まで届けますからかなりの距離ですよ。」
「なるほどねぇ…こうなると空輸とかもやりたくなるけどこっちの世界じゃ難しいよなぁ。バードストライクならぬモンスターストライクも頻発するだろうし、モンスターの襲撃も山ほどあるだろうし。やるなら飛空挺みたいにゆっくりでも良いからかなり戦える装備にしないとな。」
ミチナガは頭の中で構想を広げるが、現実味のない費用がかかりそうなため諦めた。そもそも今はマクベスへの出資と港町の3大商会への出資、さらにセキヤ国への出資、メリアの化粧品開発への出資、それに使い魔たちが定期的に物資や金を勝手に使っている。
今のところそれら全てをミチナガ商会の売り上げでまかなっているが、今後も何かしら出資することを考えると、費用回収ができそうにない飛空挺開発はやめるべきだ。またそのうち出資が増えた時のために、貯められる時に貯めるべきだ。
昼食をとり終えた一行は再び出発する。その移動速度は登ってきた時よりも遅い。下り坂のため、下手に移動速度を上げると勢いがつきそのまま脱輪して落下する、なんてことも十分あり得るため慎重に移動しているのだ。
それから慎重に移動を続け、夕方前には下山することができた。しかしまさか山一つ越えるだけで丸一日使うとは予想もしていなかった。仕方なくその日はその辺りで野営、と思ったのだが、このあたりはモンスターが多いらしい。少し危険だが、この先に開けた場所があるのでそこまで向かうとのことだ。
しばらく走ると確かに小高い開けた丘が見えた。これならば周囲を警戒するのにも問題ないだろう。頂上には一本の木が生えている。そこを野営地にしようと向かったところ、そこに人影が見えた。
『アルケ・女の子眠ってるよ。どうするよ。』
『ポチ・ボス~女の子が一人で眠っているって。』
「こんなところでか?近くの村の子かな?とりあえずここを野営地にするから準備頼む。俺はその子のこと見に行くわ。何人かついてきてくれ。」
魔動装甲車から降りたミチナガはその少女の元へと向かう。他の面々は野営の準備に当たる。しかしこれだけ魔動装甲車の駆動音や人の騒ぐ声を聞いても全く目を覚まさないというのは異常だ。もしかしたら死んでいるのではないかと思ったが、どうやら完全に爆睡しているらしい。
「無理に起こすのも可哀想か。それにしてもそんな格好で寒くないのか?仕方ない…毛布の一枚でもかけておくか。今はゆっくり寝かしておいてやろう。起きたらお腹も減っているだろうからこの子の分も用意しておいてやるか。」
ミチナガはスマホから毛布と取り出し、少女にかぶせてやる。その手つきはおっかなびっくりだ。下手に触ってセクハラとか変態とか言われても困る。そして毛布をかぶせてやるとその場から離れていった。
「ああ、ミチナガさん。少女の様子はどうでしたか?」
「びっくりするくらい爆睡してました。起こすのも可哀想なんでしばらく放っておきましょう。そのうち起きてきたらとりあえず、翌朝にでも家まで送りましょう。」
「そうでしたか。しかしその少女は一体どこからきたのでしょうかね?この辺りに村はなかったと思いますけど……」
ハルマーデイムは考え込むが、覚えているこの周辺の村の情報は一切ない。どうやらなかなか訳ありの少女のようだ。ミチナガもまずいことに関わったかと思ったが、もう遅い。まあなるようになるだろと楽観的に考えながら野営の準備が完了するのを待つ。
それから30分ほどで準備も完了し、早速夕食の準備に取り掛かる。出発時の取り決めでは夕食はミチナガ商会で2品、ロッデイム商会で2品用意すると決めたのだが、途中からミチナガ商会が全て用意することに変わった。
というのもロッデイム商会の料理はワイルドな料理だ。それはそれで良いのだが、ミチナガにはシェフという一流の料理人がいる。シェフが調理すればその香りだけで他のものたちを魅了する。
こうなってしまうとシェフが作った料理以外のものが味気なく思えてしまい、旅の初日の夕食ではロッデイム商会が用意した食事が余ってしまった。それで結果的にミチナガ商会が全て用意することになったのだ。
「すみません毎度毎度そちらにお任せしてしまって……せめてもと思いましてとりあえず飲み物はこちらで用意しましたので……」
「そういうことならありがたく頂戴します。みんな!ハルマーデイムさんから酒もらったぞ!飲み過ぎないようにほどほどにな。」
「「「ごちそうさまです!」」」
食事と酒を受け取った皆は思い思いの場所で食べる。食事中は使い魔の数を増員して周辺の警戒に当たらせる。食事のときぐらいはゆっくりして欲しいという配慮だ。そして食事をとっていると毛布に包まった何かが近づいてきた。
「…ご飯……」
「起きたか。お腹減ったろう?食べるか?」
「……食べる………」
どうやらまだ眠いようで瞼を擦っている。椅子を用意してやるとそこに座り、ウトウトとしている。どうやらよほど疲れているらしい。食事を渡してやるとゆっくりと食べ始めた。美味しいのか鼻歌が聞こえてくる。
「美味しいか?それにしてもこんなところで一人で眠っていたら危ないだろ?なんでこんなところにいたんだ?」
「…1週間ずっと遊び続けてた……流石に眠くなった時に良いところ見つけてそのまま寝てた……」
「い、1週間って…随分気合入っているな。しかも寝ずに……一人で遊んでいたのか?」
「ん~ん…友達たちと代わる代わる……おかわり…」
「はいはい。よそってきてくれるか?」
どうやらよほどお腹が減っていたようであっという間に平らげてしまった。ミチナガはその後も何度かメイドにおかわりを頼む。すると徐々に目が冴えてきたのかさらに食べる速度が上がってきた。
「おかわり!」
「ちょ、ちょっと食べ過ぎ。これじゃあみんなの分がなくなっちゃう。…ああでもお腹空いているのか。なら……」
ミチナガはスマホからお菓子を取り出して少女に手渡した。すると少女は毛布の隙間から覗かせる目を輝かせてお菓子を貪る。お菓子もどんどんおかわりを要求するので、ミチナガはどんどん与える。ミチナガはこの少女の気持ちの良い食べっぷりが気に入ってしまったようだ。
「このお菓子は本当に美味しい!その板の中に入っているのか?」
「ん?まあそうだけど…」
「見せて見せて!」
少女は両手を伸ばしてくる。ミチナガは少し渋い顔をしながらも悪用されることはないとわかっているので少女にスマホを渡してやった。
「おお!見た目よりも重い。それにツルツルしてる。こんなの初めて見た!…あれ?魔力吸収している?」
「ん?そうなのか?俺魔力ないからよくわからないけど…」
「おお!どんどん魔力吸う!なんだこれ!面白い!もっと吸って良いぞ!」
少女はスマホに魔力を込め始めた。ミチナガにはよくわからないが、なかなかな量の魔力をスマホが吸収していっている。
このスマホは魔力をエネルギーに変える。普段は遺産から発生する魔力や世界樹の魔力で満タンまで補充されているが、もしもの時は金貨を魔力に変換する機能まである。しかし他人の魔力を吸収するという能力は初めて知った。
「面白い!面白い!まだ吸うのかな?もっと吸うのかな?もっと吸って良いぞ!あはははは!」
「あ~…まあ壊れないと思うけどほどほどに…」
「み、ミチナガさん…この魔力量異常です……ま、まさかこの子……」
「あはははは!面白い面白い!!もっと吸え!もっともっと!!!」
突如少女の手からミチナガにもわかるほどの高密度の魔力が発せられた。その魔力量はまるでナイトやヴァルドールにも匹敵するのではないかと思わせるほどだ。そんな魔力を放出し続けている。
そこでミチナガは危機感を覚えた。このまま放っておいてスマホは大丈夫かと。正直このスマホが壊れるというのは想像がつかないが、万が一ということがある。すぐにでも少女を止めようと手を伸ばすが、大量の魔力が放出されているせいで近づけない。
するとスマホから聞いたことのない音声が発せられた。それは音を聞いただけでわかるような危険信号であった。
『魔力量999%突破。第2補充能力を使用します。第2補充庫100%突破。第3、第4、第5補充庫を使用します。全100%突破。魔力許容限界突破しました。危険です。これ以上の魔力補充は危険です。速やかに放出してください。速やかに放出してください。速やかに…放出…して…くださ…い…い……速や…』
そして魔力許容量を突破したスマホから発せられていた音声は止まった。そして次の瞬間、ミチナガの目の前でスマホは弾け飛んだ。
『ポチ・ちょ!』
『アルケ・まずいよ…』
スマホはまるで星屑のごとく四散した。そしてそれと同時にスマホから現れていた使い魔たちはこの世界から姿を消した。
『アルケ・了解だよ。』
ミチナガが出発してから2日後、魔動装甲車は山を登っていた。あの港町は周囲に自然が広がっており、一番平地で楽そうなルートにはモンスターの住処があり、そこを避けるために一番安全な山越えのルートを利用しているのだ。
おかげでこれまでの間、酷いモンスターの襲撃は起きておらず、被害も出ていない。ただ道路は悪路なため、移動速度はあまり出せない。これでは馬車での移動でもあまり変わらないかもしれない。
「ハンドル操作しっかり頼むぞ。これ落ちたら崖底まで真っ逆さまだからな。」
『ポチ・わかっているけど、貨物分の車輪幅があるからなかなか難しいんだよ。』
ゆっくり進むため、車内の揺れは軽い。そのためずっとティータイムだ。時折他の車両から遊びに来るものまでいる。そんな移動を続けること半日、ようやく山の頂上までたどり着いた。時刻は昼過ぎ。外で景色を楽しみながら昼食を、と思ったが風が強いためそれは難しい。
仕方なくしばらく景色を楽しんだ後に少し山を下ってから風の当たらない場所で昼食にした。頂上ではないが景色は最高だ。遠くにあの港町と海がうっすらと見える。もっと遠くに目を凝らせば、海運の拠点となっている街らしきものも見えた。
「こうやって見るとあの港町は本当に陸の孤島だな。陸路で運搬をすることはできないのか?」
「こうやって見るとあまりわかりませんが街と街の間にはいくつかの崖やモンスターの危険地帯がありますからね。それにあくまで私たちの街は中継地点。あそこにうっすらと見える街から向こうの方にある街まで届けますからかなりの距離ですよ。」
「なるほどねぇ…こうなると空輸とかもやりたくなるけどこっちの世界じゃ難しいよなぁ。バードストライクならぬモンスターストライクも頻発するだろうし、モンスターの襲撃も山ほどあるだろうし。やるなら飛空挺みたいにゆっくりでも良いからかなり戦える装備にしないとな。」
ミチナガは頭の中で構想を広げるが、現実味のない費用がかかりそうなため諦めた。そもそも今はマクベスへの出資と港町の3大商会への出資、さらにセキヤ国への出資、メリアの化粧品開発への出資、それに使い魔たちが定期的に物資や金を勝手に使っている。
今のところそれら全てをミチナガ商会の売り上げでまかなっているが、今後も何かしら出資することを考えると、費用回収ができそうにない飛空挺開発はやめるべきだ。またそのうち出資が増えた時のために、貯められる時に貯めるべきだ。
昼食をとり終えた一行は再び出発する。その移動速度は登ってきた時よりも遅い。下り坂のため、下手に移動速度を上げると勢いがつきそのまま脱輪して落下する、なんてことも十分あり得るため慎重に移動しているのだ。
それから慎重に移動を続け、夕方前には下山することができた。しかしまさか山一つ越えるだけで丸一日使うとは予想もしていなかった。仕方なくその日はその辺りで野営、と思ったのだが、このあたりはモンスターが多いらしい。少し危険だが、この先に開けた場所があるのでそこまで向かうとのことだ。
しばらく走ると確かに小高い開けた丘が見えた。これならば周囲を警戒するのにも問題ないだろう。頂上には一本の木が生えている。そこを野営地にしようと向かったところ、そこに人影が見えた。
『アルケ・女の子眠ってるよ。どうするよ。』
『ポチ・ボス~女の子が一人で眠っているって。』
「こんなところでか?近くの村の子かな?とりあえずここを野営地にするから準備頼む。俺はその子のこと見に行くわ。何人かついてきてくれ。」
魔動装甲車から降りたミチナガはその少女の元へと向かう。他の面々は野営の準備に当たる。しかしこれだけ魔動装甲車の駆動音や人の騒ぐ声を聞いても全く目を覚まさないというのは異常だ。もしかしたら死んでいるのではないかと思ったが、どうやら完全に爆睡しているらしい。
「無理に起こすのも可哀想か。それにしてもそんな格好で寒くないのか?仕方ない…毛布の一枚でもかけておくか。今はゆっくり寝かしておいてやろう。起きたらお腹も減っているだろうからこの子の分も用意しておいてやるか。」
ミチナガはスマホから毛布と取り出し、少女にかぶせてやる。その手つきはおっかなびっくりだ。下手に触ってセクハラとか変態とか言われても困る。そして毛布をかぶせてやるとその場から離れていった。
「ああ、ミチナガさん。少女の様子はどうでしたか?」
「びっくりするくらい爆睡してました。起こすのも可哀想なんでしばらく放っておきましょう。そのうち起きてきたらとりあえず、翌朝にでも家まで送りましょう。」
「そうでしたか。しかしその少女は一体どこからきたのでしょうかね?この辺りに村はなかったと思いますけど……」
ハルマーデイムは考え込むが、覚えているこの周辺の村の情報は一切ない。どうやらなかなか訳ありの少女のようだ。ミチナガもまずいことに関わったかと思ったが、もう遅い。まあなるようになるだろと楽観的に考えながら野営の準備が完了するのを待つ。
それから30分ほどで準備も完了し、早速夕食の準備に取り掛かる。出発時の取り決めでは夕食はミチナガ商会で2品、ロッデイム商会で2品用意すると決めたのだが、途中からミチナガ商会が全て用意することに変わった。
というのもロッデイム商会の料理はワイルドな料理だ。それはそれで良いのだが、ミチナガにはシェフという一流の料理人がいる。シェフが調理すればその香りだけで他のものたちを魅了する。
こうなってしまうとシェフが作った料理以外のものが味気なく思えてしまい、旅の初日の夕食ではロッデイム商会が用意した食事が余ってしまった。それで結果的にミチナガ商会が全て用意することになったのだ。
「すみません毎度毎度そちらにお任せしてしまって……せめてもと思いましてとりあえず飲み物はこちらで用意しましたので……」
「そういうことならありがたく頂戴します。みんな!ハルマーデイムさんから酒もらったぞ!飲み過ぎないようにほどほどにな。」
「「「ごちそうさまです!」」」
食事と酒を受け取った皆は思い思いの場所で食べる。食事中は使い魔の数を増員して周辺の警戒に当たらせる。食事のときぐらいはゆっくりして欲しいという配慮だ。そして食事をとっていると毛布に包まった何かが近づいてきた。
「…ご飯……」
「起きたか。お腹減ったろう?食べるか?」
「……食べる………」
どうやらまだ眠いようで瞼を擦っている。椅子を用意してやるとそこに座り、ウトウトとしている。どうやらよほど疲れているらしい。食事を渡してやるとゆっくりと食べ始めた。美味しいのか鼻歌が聞こえてくる。
「美味しいか?それにしてもこんなところで一人で眠っていたら危ないだろ?なんでこんなところにいたんだ?」
「…1週間ずっと遊び続けてた……流石に眠くなった時に良いところ見つけてそのまま寝てた……」
「い、1週間って…随分気合入っているな。しかも寝ずに……一人で遊んでいたのか?」
「ん~ん…友達たちと代わる代わる……おかわり…」
「はいはい。よそってきてくれるか?」
どうやらよほどお腹が減っていたようであっという間に平らげてしまった。ミチナガはその後も何度かメイドにおかわりを頼む。すると徐々に目が冴えてきたのかさらに食べる速度が上がってきた。
「おかわり!」
「ちょ、ちょっと食べ過ぎ。これじゃあみんなの分がなくなっちゃう。…ああでもお腹空いているのか。なら……」
ミチナガはスマホからお菓子を取り出して少女に手渡した。すると少女は毛布の隙間から覗かせる目を輝かせてお菓子を貪る。お菓子もどんどんおかわりを要求するので、ミチナガはどんどん与える。ミチナガはこの少女の気持ちの良い食べっぷりが気に入ってしまったようだ。
「このお菓子は本当に美味しい!その板の中に入っているのか?」
「ん?まあそうだけど…」
「見せて見せて!」
少女は両手を伸ばしてくる。ミチナガは少し渋い顔をしながらも悪用されることはないとわかっているので少女にスマホを渡してやった。
「おお!見た目よりも重い。それにツルツルしてる。こんなの初めて見た!…あれ?魔力吸収している?」
「ん?そうなのか?俺魔力ないからよくわからないけど…」
「おお!どんどん魔力吸う!なんだこれ!面白い!もっと吸って良いぞ!」
少女はスマホに魔力を込め始めた。ミチナガにはよくわからないが、なかなかな量の魔力をスマホが吸収していっている。
このスマホは魔力をエネルギーに変える。普段は遺産から発生する魔力や世界樹の魔力で満タンまで補充されているが、もしもの時は金貨を魔力に変換する機能まである。しかし他人の魔力を吸収するという能力は初めて知った。
「面白い!面白い!まだ吸うのかな?もっと吸うのかな?もっと吸って良いぞ!あはははは!」
「あ~…まあ壊れないと思うけどほどほどに…」
「み、ミチナガさん…この魔力量異常です……ま、まさかこの子……」
「あはははは!面白い面白い!!もっと吸え!もっともっと!!!」
突如少女の手からミチナガにもわかるほどの高密度の魔力が発せられた。その魔力量はまるでナイトやヴァルドールにも匹敵するのではないかと思わせるほどだ。そんな魔力を放出し続けている。
そこでミチナガは危機感を覚えた。このまま放っておいてスマホは大丈夫かと。正直このスマホが壊れるというのは想像がつかないが、万が一ということがある。すぐにでも少女を止めようと手を伸ばすが、大量の魔力が放出されているせいで近づけない。
するとスマホから聞いたことのない音声が発せられた。それは音を聞いただけでわかるような危険信号であった。
『魔力量999%突破。第2補充能力を使用します。第2補充庫100%突破。第3、第4、第5補充庫を使用します。全100%突破。魔力許容限界突破しました。危険です。これ以上の魔力補充は危険です。速やかに放出してください。速やかに放出してください。速やかに…放出…して…くださ…い…い……速や…』
そして魔力許容量を突破したスマホから発せられていた音声は止まった。そして次の瞬間、ミチナガの目の前でスマホは弾け飛んだ。
『ポチ・ちょ!』
『アルケ・まずいよ…』
スマホはまるで星屑のごとく四散した。そしてそれと同時にスマホから現れていた使い魔たちはこの世界から姿を消した。
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