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第277話 とある冒険家の集まり
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「おお、こっちだこっち。そこに置いておいてくれ。」
「はい。」
セキヤ国の建設現場。そこでは今日も慌ただしく住宅の建設が行われている。まだ建設中のアパートだというのにすでにこの住宅も居住者が全て決まっている。建てた家全てが建つ前に居住者が決まっているほど住居不足は深刻だ。ガゼルもその現状を知って仕事の手伝いをしている。
ガゼルは現在建築現場で働きながらレベールの元で寝泊まりしている。ホテルを取っても良かったのだが、危険物を持ち込んでいるため監視がついていないといけない。だからレベールの元で寝泊まりするのが一番楽なのだ。
すでにこの国に着いて1週間。ガゼルは随分この国に慣れた。今では飲みに行く仲間までできている。するとそんなガゼルの元に兵士が近づいてきた。
「おーいガゼルさん。お仲間の冒険家の方が3名ほど到着したぞ。今入国審査しているから会い行くか?」
「本当ですか!でも今は仕事があるので……」
「もうすぐ休憩だから先に休憩してな!2時間も経ったら戻ってくるんだぞ。」
「ありがとうございます親方!それじゃあ行ってきます。すみません案内お願いします。」
ガゼルは兵士に案内されて入国審査所の中まで入って行く。その中では3人の男たちがバラバラに入国審査を受けている。ガゼルは窓越しに全員の顔を確認する。
「知り合いか?」
「ええ、皆さん私の先輩です。会って話をしても?」
「ちょっと待ってくれ。今血液検査と衣服の除菌をしている最中だ。あとこっちの一人は少し汗臭いな。入国審査終わったら風呂にでも連れて行ってくれるか?問題なければ後10分ほどで終わるはずだ。」
ガゼルは言われた通り待っていると20分ほど経った頃に入国審査を終えた3人の冒険家がやってきた。予定時刻を少し過ぎたのは、書類の確認などに少し手間取ったらしい。
「おお!ガゼルか。先に来ていたんだな。」
「お久しぶりです。1週間ほど前に着きました。この国のことはあらかた調査済みです。報告がてら食事でもどうですか?後ゲラッジさんはちゃんと水浴びしていますか?風呂もあるので後で案内します。」
「水浴びは嫌いだ。だが熱い風呂なら…歓迎する。」
ガゼルは3人を連れて店に入る。すぐに料理を注文するとガゼルのこの国に対しての調査報告をする。1週間の間に様々なことを調べ上げたようで調査内容は実によく調べられている。
「識字率が8割近く。殺人などの凶悪犯罪は0件。住んでいるのは火の国からの避難民か。う~む…面白い街だな。」
「街並みが美しいのもいいわね。国として良く出来上がっているわ。これで建国2年なんて…正直信じられないわ。」
「猫森もこの国の一部になっているんだろ?よく猫神が許したな。」
「この国の国王ミチナガ陛下が猫神のすべての難題を解決したそうですよ。だから猫たちも良き隣人として共に暮らしているようです。ほら、あそこの屋根の上。私たちの監視役です。」
「あれは…影猫か。その隣にいるのはなんだ?」
「ミチナガ陛下の使い魔です。この国の運営は彼らが行なっているようです。何か手に負えない問題が起きた時はあの使い魔たちが解決のために動いてくれるそうですよ。」
ガゼルたちが食事をしているテラス席が良く見える隣のアパートの屋根の上。そこにはガゼルたちの様子をお菓子を食べながら監視している使い魔と影猫がいた。影猫は半分モンスター化した猫で影に潜み獲物を狩る獰猛な猫だ。
しかしこの国の猫はすべて猫神ミャー様の魔力によって知性が増している。だから人を襲うことはまずない。ガゼルが手を振ると影猫は使い魔とともに影の中に沈み込み、ものの数秒でガゼルたちの食事をしているテーブルの上に移動して来た。
『ニャン。』
『ニャーン・あ!食べちゃダメニャーン。すまニャーン。気がつかれたなら気にせず食べると言って聞かないニャーン。おっと、自己紹介が遅れたニャーン。ミチナガの使い魔、猫神の弟子ニャーンだニャーン。目的地が猫森ということなので案内兼監視役としてついて行くニャーン。』
「…不思議な語尾ですね……」
『ニャーン・気にするニャーン。』
その後、ガゼルの奢りということでニャーンも影猫も食事にありつく。しばらくゆっくりと食事をとったのちに話は再び猫森に戻った。
「現在猫森を納めているのは猫神ではなく他の猫ということでしたが…」
『ニャン』
『ニャーン・クロニャーは優秀だニャーン。おかげでこの辺りのモンスター被害は無いニャーン。いつ頃来る予定ニャーン?』
「集まるのは次の満月の予定です。日数にすると…後5日ほどです。今回の集まりは大きなものなので他にも大勢来る予定なのですが……人目を避ける方もいるので少し集まりが悪くなるかもしれませんね。」
『ニャーン・そうなのかニャーン。……んにゃ…侵入者ニャーン!』
街に散らばる猫たち、さらに衛兵たちも慌ただしく動き出した。ニャーンも影猫の背に乗って影の中に消えていった。侵入者はかなりの手練れのようで追い詰めるのに時間がかかったが猫森に住む猫たちが追っているため逃げ切ることはできず、捕まってしまった。
すぐに調書を取ると冒険家の一人らしい。人目を避けるために隠れて侵入したとのことだが、かえって目立つ結果になってしまった。そしてこの件があったためガゼルたちは1日に数度この国の外で仲間と合流するようになった。
そして満月の夜。月明かりが木々を照らす中、冒険家たちが猫森に集った。その数は30以上。これほどの数の冒険家が集うことは滅多にない。この数年、いや10年以上ここまで集まったことはないだろう。
そして一堂に会した冒険家たちの前には猫森の代理土地神、黒猫のクロニャーがいる。冒険家たちはクロニャーに対して膝をつき最敬礼を行う。
「お初にお目にかかる。我が名はデラス。冒険家である。」
『ミャー様から一時的にこの地を任せられているクロニャーです。あなた方のことはミャー様から聞いております。こちらも準備は整えて起きました。いつでもどうぞ。』
「ありがたい。ではお願いいたします。」
そういうとデラスと名乗る男は懐から厳重に封印されている箱を取り出し、開封を始めた。その中からは黒い瘴気にまみれた何かが現れた。あまりにも禍々しいそれはデラスの肉体を蝕み始めた。
クロニャーはすぐさまデラスに近づきその瘴気を放つ塊を噛み砕いで飲み込んでしまった。蝕まれていたデラスの肉体も元に戻っていった。
『初めからこれとは……どうやらミャー様不在はマズいかもしれません。』
「左様ですか…しかし……この場まで運んで来るのがやっとの代物がまだいくつもあります。」
デラスが目を向ける先には先ほどの瘴気がわずかに漏れ出して肉体を汚染されている冒険家が数人いた。あまりにも強い瘴気に封印が完璧にできておらず、己の肉体で漏れ出した瘴気を止めているのだ。
その様子を遠くから見ていた使い魔のニャーンとミャーンは既視感を覚えた。それはユグドラシル国でのリリーが侵されていたあの瘴気だ。しかし似ているようで何か根本的なものが違うような気がする。しかしそれが何かはわからない。
その後もクロニャーは瘴気の塊を浄化していくがあまりにも数と瘴気の強さが想定を超えていたため、途中からふらつき出した。
「さすがにこれ以上は無理でしょうか…月の力も借りようと満月の夜に来ましたがやはり猫神がいなければ…」
『ニャーン・ちょっと貸してニャーン。』
ふらりと目の前に現れたニャーンは瘴気の塊を口の中に放り投げた。慌てて取り出そうとするデラスであったがすでに使い魔の口の中を通してスマホの中に収納されている。
そして収納された瘴気の塊は一人の使い魔の元へ行く。それはミチナガの持つ世界最強の癒しの力を持った存在の力を行使できる使い魔、世界樹を扱うドルイドの元だ。ドルイドは瞬時に世界樹の力を使い瘴気を浄化した。
しかし浄化したドルイドは不思議な感覚を感じた。それはこの瘴気の塊を浄化する際に世界樹は浄化をしたというよりは養分を吸収したように感じたのだ。そしてその疑問はすぐにミャーンを通してデラスに問いかけられた。
『ミャーン・浄化は完了したミャーン!だけどこれはなんなのかミャーン?』
「まさか浄化が可能とは……これは…簡単にいってしまえば世界の間違い、エラー物質だ。」
『ミャーン・どういうことミャーン?』
デラスはこの瘴気の塊について説明した。この瘴気の塊は魔力溜まりにできる。本来魔力溜まりは魔力は精霊の住処になるか、モンスターに変質する。荒れた魔力の魔力溜まりは強力なモンスターを大量に生み出し、それは酷い惨状になるという。
そしてその中に時折この瘴気の塊が生まれるのだという。原因は不明だが、冒険家の中では神の間違いと呼んでいる。いわゆるゲームのエラーのようなものらしい。放っておくとこの瘴気の塊はどんどん大きくなる。そして周辺の生命を汚染して死の大地に変えてしまう。
しかしそれだけならまだ良い。時折その瘴気に耐性を持つ存在が現れる。そしてその存在が瘴気の塊を体内に取り込むとそれはもうこの世のものではない何かに変わってしまう。その存在は魔神にも匹敵する怪物だという。
「この世界は狂い始めている。かつて世界樹が現存していた頃は世界樹がその瘴気を消し去る力があったため、こんな瘴気の塊が現れることはなかった。世界樹が無くなった今、我ら冒険家が世界を巡り歩きこの瘴気の塊を回収して大精霊に浄化してもらっている。だが年々瘴気の数が増えている。やがてかつてない危機が訪れることだろう…」
デラスはさらに語った。この瘴気の塊が世界に点在するようになってから世界中でモンスターの強さが増していると。200年、300年前までSS級なんて凶悪なモンスターは年に数体しか観測できなかった。しかしこの数十年は数百は軽く観測しているという。
「我らも倒してはいるが限界はある。だがこの近年は随分観測される数が減ったように思われる。我らの努力…ということはないだろう。減り方がおかしいからな。おそらく何者かが倒しているのではと考えている。」
『ニャーン・間違いなくナイトだニャーン。』
『ミャーン・あの人日に数体は凶悪なモンスター倒しているから間違いないミャーン。』
「ほう!お仲間であったか。それはありがたい。強力なモンスターとの戦いで命を落とす冒険家も少なくない。感謝を申し上げたい。…今その方はどこに?」
『ニャーン・火の国の中央辺りだニャーン。』
『ミャーン・確か9大ダンジョン、ムスプルヘイムから漏れる魔力溜まりだったはずミャーン。』
「何!!それはまずい!あそこは手に負えないと判断して我らで封印した地!!あまりにも危険すぎる!!!」
『ニャーン・大丈夫だニャーン。』
『ミャーン・ムーンさんからナイトが生き生きしているって連絡も来ていたミャーン。ついでに瘴気の塊もあったら回収させとくミャーン。』
あまりにも呑気そうな使い魔2人に冒険家たちは動揺を隠せない。しかし使いたたちからしてみればあのナイトが負けるところなど想像もできない。
とりあえずその話は置いておいて再び瘴気の塊の浄化作業に移った。使い魔たちも加わったことで夜が明けるまでに全ての瘴気の塊の浄化作業が完了した。
「はい。」
セキヤ国の建設現場。そこでは今日も慌ただしく住宅の建設が行われている。まだ建設中のアパートだというのにすでにこの住宅も居住者が全て決まっている。建てた家全てが建つ前に居住者が決まっているほど住居不足は深刻だ。ガゼルもその現状を知って仕事の手伝いをしている。
ガゼルは現在建築現場で働きながらレベールの元で寝泊まりしている。ホテルを取っても良かったのだが、危険物を持ち込んでいるため監視がついていないといけない。だからレベールの元で寝泊まりするのが一番楽なのだ。
すでにこの国に着いて1週間。ガゼルは随分この国に慣れた。今では飲みに行く仲間までできている。するとそんなガゼルの元に兵士が近づいてきた。
「おーいガゼルさん。お仲間の冒険家の方が3名ほど到着したぞ。今入国審査しているから会い行くか?」
「本当ですか!でも今は仕事があるので……」
「もうすぐ休憩だから先に休憩してな!2時間も経ったら戻ってくるんだぞ。」
「ありがとうございます親方!それじゃあ行ってきます。すみません案内お願いします。」
ガゼルは兵士に案内されて入国審査所の中まで入って行く。その中では3人の男たちがバラバラに入国審査を受けている。ガゼルは窓越しに全員の顔を確認する。
「知り合いか?」
「ええ、皆さん私の先輩です。会って話をしても?」
「ちょっと待ってくれ。今血液検査と衣服の除菌をしている最中だ。あとこっちの一人は少し汗臭いな。入国審査終わったら風呂にでも連れて行ってくれるか?問題なければ後10分ほどで終わるはずだ。」
ガゼルは言われた通り待っていると20分ほど経った頃に入国審査を終えた3人の冒険家がやってきた。予定時刻を少し過ぎたのは、書類の確認などに少し手間取ったらしい。
「おお!ガゼルか。先に来ていたんだな。」
「お久しぶりです。1週間ほど前に着きました。この国のことはあらかた調査済みです。報告がてら食事でもどうですか?後ゲラッジさんはちゃんと水浴びしていますか?風呂もあるので後で案内します。」
「水浴びは嫌いだ。だが熱い風呂なら…歓迎する。」
ガゼルは3人を連れて店に入る。すぐに料理を注文するとガゼルのこの国に対しての調査報告をする。1週間の間に様々なことを調べ上げたようで調査内容は実によく調べられている。
「識字率が8割近く。殺人などの凶悪犯罪は0件。住んでいるのは火の国からの避難民か。う~む…面白い街だな。」
「街並みが美しいのもいいわね。国として良く出来上がっているわ。これで建国2年なんて…正直信じられないわ。」
「猫森もこの国の一部になっているんだろ?よく猫神が許したな。」
「この国の国王ミチナガ陛下が猫神のすべての難題を解決したそうですよ。だから猫たちも良き隣人として共に暮らしているようです。ほら、あそこの屋根の上。私たちの監視役です。」
「あれは…影猫か。その隣にいるのはなんだ?」
「ミチナガ陛下の使い魔です。この国の運営は彼らが行なっているようです。何か手に負えない問題が起きた時はあの使い魔たちが解決のために動いてくれるそうですよ。」
ガゼルたちが食事をしているテラス席が良く見える隣のアパートの屋根の上。そこにはガゼルたちの様子をお菓子を食べながら監視している使い魔と影猫がいた。影猫は半分モンスター化した猫で影に潜み獲物を狩る獰猛な猫だ。
しかしこの国の猫はすべて猫神ミャー様の魔力によって知性が増している。だから人を襲うことはまずない。ガゼルが手を振ると影猫は使い魔とともに影の中に沈み込み、ものの数秒でガゼルたちの食事をしているテーブルの上に移動して来た。
『ニャン。』
『ニャーン・あ!食べちゃダメニャーン。すまニャーン。気がつかれたなら気にせず食べると言って聞かないニャーン。おっと、自己紹介が遅れたニャーン。ミチナガの使い魔、猫神の弟子ニャーンだニャーン。目的地が猫森ということなので案内兼監視役としてついて行くニャーン。』
「…不思議な語尾ですね……」
『ニャーン・気にするニャーン。』
その後、ガゼルの奢りということでニャーンも影猫も食事にありつく。しばらくゆっくりと食事をとったのちに話は再び猫森に戻った。
「現在猫森を納めているのは猫神ではなく他の猫ということでしたが…」
『ニャン』
『ニャーン・クロニャーは優秀だニャーン。おかげでこの辺りのモンスター被害は無いニャーン。いつ頃来る予定ニャーン?』
「集まるのは次の満月の予定です。日数にすると…後5日ほどです。今回の集まりは大きなものなので他にも大勢来る予定なのですが……人目を避ける方もいるので少し集まりが悪くなるかもしれませんね。」
『ニャーン・そうなのかニャーン。……んにゃ…侵入者ニャーン!』
街に散らばる猫たち、さらに衛兵たちも慌ただしく動き出した。ニャーンも影猫の背に乗って影の中に消えていった。侵入者はかなりの手練れのようで追い詰めるのに時間がかかったが猫森に住む猫たちが追っているため逃げ切ることはできず、捕まってしまった。
すぐに調書を取ると冒険家の一人らしい。人目を避けるために隠れて侵入したとのことだが、かえって目立つ結果になってしまった。そしてこの件があったためガゼルたちは1日に数度この国の外で仲間と合流するようになった。
そして満月の夜。月明かりが木々を照らす中、冒険家たちが猫森に集った。その数は30以上。これほどの数の冒険家が集うことは滅多にない。この数年、いや10年以上ここまで集まったことはないだろう。
そして一堂に会した冒険家たちの前には猫森の代理土地神、黒猫のクロニャーがいる。冒険家たちはクロニャーに対して膝をつき最敬礼を行う。
「お初にお目にかかる。我が名はデラス。冒険家である。」
『ミャー様から一時的にこの地を任せられているクロニャーです。あなた方のことはミャー様から聞いております。こちらも準備は整えて起きました。いつでもどうぞ。』
「ありがたい。ではお願いいたします。」
そういうとデラスと名乗る男は懐から厳重に封印されている箱を取り出し、開封を始めた。その中からは黒い瘴気にまみれた何かが現れた。あまりにも禍々しいそれはデラスの肉体を蝕み始めた。
クロニャーはすぐさまデラスに近づきその瘴気を放つ塊を噛み砕いで飲み込んでしまった。蝕まれていたデラスの肉体も元に戻っていった。
『初めからこれとは……どうやらミャー様不在はマズいかもしれません。』
「左様ですか…しかし……この場まで運んで来るのがやっとの代物がまだいくつもあります。」
デラスが目を向ける先には先ほどの瘴気がわずかに漏れ出して肉体を汚染されている冒険家が数人いた。あまりにも強い瘴気に封印が完璧にできておらず、己の肉体で漏れ出した瘴気を止めているのだ。
その様子を遠くから見ていた使い魔のニャーンとミャーンは既視感を覚えた。それはユグドラシル国でのリリーが侵されていたあの瘴気だ。しかし似ているようで何か根本的なものが違うような気がする。しかしそれが何かはわからない。
その後もクロニャーは瘴気の塊を浄化していくがあまりにも数と瘴気の強さが想定を超えていたため、途中からふらつき出した。
「さすがにこれ以上は無理でしょうか…月の力も借りようと満月の夜に来ましたがやはり猫神がいなければ…」
『ニャーン・ちょっと貸してニャーン。』
ふらりと目の前に現れたニャーンは瘴気の塊を口の中に放り投げた。慌てて取り出そうとするデラスであったがすでに使い魔の口の中を通してスマホの中に収納されている。
そして収納された瘴気の塊は一人の使い魔の元へ行く。それはミチナガの持つ世界最強の癒しの力を持った存在の力を行使できる使い魔、世界樹を扱うドルイドの元だ。ドルイドは瞬時に世界樹の力を使い瘴気を浄化した。
しかし浄化したドルイドは不思議な感覚を感じた。それはこの瘴気の塊を浄化する際に世界樹は浄化をしたというよりは養分を吸収したように感じたのだ。そしてその疑問はすぐにミャーンを通してデラスに問いかけられた。
『ミャーン・浄化は完了したミャーン!だけどこれはなんなのかミャーン?』
「まさか浄化が可能とは……これは…簡単にいってしまえば世界の間違い、エラー物質だ。」
『ミャーン・どういうことミャーン?』
デラスはこの瘴気の塊について説明した。この瘴気の塊は魔力溜まりにできる。本来魔力溜まりは魔力は精霊の住処になるか、モンスターに変質する。荒れた魔力の魔力溜まりは強力なモンスターを大量に生み出し、それは酷い惨状になるという。
そしてその中に時折この瘴気の塊が生まれるのだという。原因は不明だが、冒険家の中では神の間違いと呼んでいる。いわゆるゲームのエラーのようなものらしい。放っておくとこの瘴気の塊はどんどん大きくなる。そして周辺の生命を汚染して死の大地に変えてしまう。
しかしそれだけならまだ良い。時折その瘴気に耐性を持つ存在が現れる。そしてその存在が瘴気の塊を体内に取り込むとそれはもうこの世のものではない何かに変わってしまう。その存在は魔神にも匹敵する怪物だという。
「この世界は狂い始めている。かつて世界樹が現存していた頃は世界樹がその瘴気を消し去る力があったため、こんな瘴気の塊が現れることはなかった。世界樹が無くなった今、我ら冒険家が世界を巡り歩きこの瘴気の塊を回収して大精霊に浄化してもらっている。だが年々瘴気の数が増えている。やがてかつてない危機が訪れることだろう…」
デラスはさらに語った。この瘴気の塊が世界に点在するようになってから世界中でモンスターの強さが増していると。200年、300年前までSS級なんて凶悪なモンスターは年に数体しか観測できなかった。しかしこの数十年は数百は軽く観測しているという。
「我らも倒してはいるが限界はある。だがこの近年は随分観測される数が減ったように思われる。我らの努力…ということはないだろう。減り方がおかしいからな。おそらく何者かが倒しているのではと考えている。」
『ニャーン・間違いなくナイトだニャーン。』
『ミャーン・あの人日に数体は凶悪なモンスター倒しているから間違いないミャーン。』
「ほう!お仲間であったか。それはありがたい。強力なモンスターとの戦いで命を落とす冒険家も少なくない。感謝を申し上げたい。…今その方はどこに?」
『ニャーン・火の国の中央辺りだニャーン。』
『ミャーン・確か9大ダンジョン、ムスプルヘイムから漏れる魔力溜まりだったはずミャーン。』
「何!!それはまずい!あそこは手に負えないと判断して我らで封印した地!!あまりにも危険すぎる!!!」
『ニャーン・大丈夫だニャーン。』
『ミャーン・ムーンさんからナイトが生き生きしているって連絡も来ていたミャーン。ついでに瘴気の塊もあったら回収させとくミャーン。』
あまりにも呑気そうな使い魔2人に冒険家たちは動揺を隠せない。しかし使いたたちからしてみればあのナイトが負けるところなど想像もできない。
とりあえずその話は置いておいて再び瘴気の塊の浄化作業に移った。使い魔たちも加わったことで夜が明けるまでに全ての瘴気の塊の浄化作業が完了した。
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