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第260話 戦後の動き

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「うっわぁぁ…でけぇ……全部で何隻あんの?」

「17隻ほど入手しました。本来ならもう少し手に入れようかと思いましたが、敵もなかなかやるもので、無傷で手に入れられたのはこれだけです。申し訳ない我が王よ。」

 戦勝パレードから数日後、ひと段落したミチナガとマクベスは共に300ほどの兵を引き連れてシェイクス国の沿岸部に向かった。そこには以前法国から奪った戦艦が17隻浮かんでおり、これを入手することが決定されていた。

「いやいや、17隻もあれば十分だよ。なあマクベス。」

「す、すごいですね…こんなのが何隻も襲ってきていただなんて……そう考えるとゾッとします。しかし本当に良いんですか?何隻か貰っても。」

「セキヤ国は周辺に海ないしなぁ。使えるところといえば海上都市に英雄の国の漁港辺りだけだけど……船がデカすぎて専用の停泊地作らないと船止められないだろ。」

 眼前に停泊している戦艦は全長200m以上。金属製でいくつかの武装が施されているものと、そうでないものがある。船に種類がある理由はおそらく法国が10万もの大軍を引き連れるためにこの戦艦を利用したからだろう。

 この国に攻め込んできたときは元々は100隻以上の大船団だったのだろう。その光景は圧巻であったであろうが、もう過去の話だ。そして法国としては全ての船が船自体で戦えるようにする必要はない。上陸作戦が主な目的であったため、船体をなるべく軽くして、乗員数を増やしたのだろう。

 武装が施してある船体はおそらく上官クラスのもの。特にこれといって何も施されていないものは一般の兵のものだろう。あの船1隻に一体何人詰め込まれていたのだろうか。

 その後、ヴァルドールの案内で船に乗り込み、船内を見て回る。一般兵が乗っていたと思われる方はおそらく乗員1000人ほどであっただろう。なぜそう思ったかというと船内に上陸するために用意されていた小型の船があったからだ。

 この戦艦で近づけるところまで近づいて、そこからは小型の船に乗り換えて上陸する。予算不足だったのか、一般兵用のものはほとんど手漕ぎのボートであった。中にはいくつか小型の魔法エンジンがついているものもある。おそらく下級士官のものだろう。

 こういった船は全てシェイクス国で一般人用の漁船として貸し出す予定だ。少し改造してやれば立派な漁船として使えるだろう。ただシェイクス国から海まではそれなりに距離がある。道中の安全を確保できなければ安定的な漁業は難しい。

 一番の目玉は武装の施された戦艦に積まれていた小型船だ。こちらはかなり位の高い者が乗る予定だったのだろう。その小型船に搭載されている魔道具はどれも質の高いもので、使い魔たちはバラして研究する気満々だ。

 まあ小型船自体はミチナガ商会で保有している漁船と比べると乗り心地は悪そうなので、バラして研究する許可を与える。他にもよくわからない装置が色々と見つかったので使い魔たちに好きにやらせる。

 もともとこの戦艦をそのまま利用する気は無い。元々法国のものであったため、勝手に使っていることがバレたら面倒なことになりかねない。だからかなり改造を施し、塗装も変えてから使うつもりだ。そのためしばらくは使用できない。

「さてと…それじゃあ一度全隻預かって、改造を施してからマクベスに12隻渡すってことで良いな?」

「そんなにたくさんありがとうございます。だけど…かなりお金もかかるし……本当にいいんですか?」

「まあお前がここで法国の侵入を食い止めてくれればセキヤ国としても安泰だしな。それに上陸される前に足止めできればかなり有利になるだろ。時間が稼げれば俺たちはすぐに駆けつける。」

「ありがとうございます。それじゃあ…改造している間はどうしますか?」

「俺が持っていくから安心してくれ。時間かかるけど…多分このスマホの中に入ると思うから。」

 そういうとミチナガは船内に誰もいないことを確認してからスマホを使い、戦艦を収納しようとする。しかし流石にこれだけ巨大だと収納完了までになかなかの時間がかかるようだ。結局1隻収納するのに20分ほど、全隻収納するのに6時間以上時間がかかってしまった。

 結局その日は海岸で一泊することが決定し、翌日帰国することになった。シェイクス国に戻ると国民全員が出迎えてくれているのでは無いかというほどの歓待で出迎えられた。今もまだ皆忙しいはずであるため、そこまでしてもらう必要はないのだが辞めさせることは無理だろう。

 今シェイクス国が早急に行なっていることは城壁の修復と今回の戦争の戦死者全ての埋葬だ。戦争が終わって数日経った今でも死者の埋葬は続いている。ちゃんと埋葬しなければ死臭にモンスターが集まったり、病原菌が蔓延したりしかねない。2次災害が起きる前に早急に終わらせる必要がある。

 報告によると明後日までには完全に終わるとのことであるが、時折風に乗ってくる血の匂いはまだまだ続いている。セキヤ国国軍や傭兵団も手伝いをしているのでそういった匂いもそのうちなくなると信じたい。

 城に戻ったマクベスとミチナガはお互いに今回の船に関する書類を取りまとめ、契約を結んだ。これでミチナガの方は少しひと段落できる。マクベスは次の仕事があるため再び書類作成に着手しだした。

 そんなマクベスを横目にミチナガは自室に戻り休もうとする。しかし部屋に入るとそこにはいくつもの書類を持った使い魔たちとその使い魔たちを一人一人相手しているナイトがいた。

『社畜・ナイト殿ナイト殿!この術式なのであるがどうにも上手くいっていないのである…』

「……なるほど。つまりやりたい術式はこういうことだな?」

 ナイトは社畜の出した不完全な術式から、完成された術式を構築して社畜に見せてやる。社畜は感激しながらもすぐにその術式を紙に書き写す。その隣ではアルケが他の書類を見せて、それにナイトが答えている。

「お前らまだやってんのか?ナイトごめんな、こいつらに付き合わせて…」

「気にするな。この程度はたやすいことだ。」

『アルケ・容易くないよ。半端ないよ。』

『社畜・そうなのである!どの術式も世界でまだ研究途中のものばかりである!ナイト殿の魔法技術は100年先をいっているのである!』

 どうやらナイトの魔法技術は本当にレベルが高いらしい。どこで学んだのか気になって聞いてみたが、学んだということはなく、なんとなくわかるらしい。つまり本当の天才だ。そんなナイトを頼って使い魔たちは毎日無理難題とも言えるような術式を見せているのだが、どれもいとも容易くこなしてしまう。

 おかげで今後のミチナガ商会の魔道具分野は発展するだろう。そんなナイトと使い魔を放っておいてミチナガはベッドに突っ伏す。疲れを少しでも癒そうとしているミチナガにポチが饅頭とお茶を運んだ。

「サンキュー……あぁ~~…甘いものが沁みる。」

『ポチ・お茶も飲みなぁ。それで……いつ頃帰るつもり?』

「ん~~…落ち着くまで長居したいけどセキヤ国の方も心配だし……後1週間もしたら帰るか。さすがにそれまでにはひと段落つくでしょ。ナイトは何時頃までいる?」

「そうだな…近くに遺跡があると聞いた。しばらくそこに潜るつもりだ。」

『ムーン・そこの遺跡は9大ダンジョンの煉獄のムスプルヘイムから漏れる魔力溜まりなんだって。しばらくモンスター討伐の話聞いてないから随分凶悪なのが住み着いているかもっていう話。しばらくは火の国周辺で活動するからいざという時も任せておいて。』

「そっか。それは助かるな。ヴァルくんは次回作の作成に取り掛かるって言ってもう帰っちゃうからナイトがいると心強いよ。……ああ、そうだ!ナイトのモンスター素材の売上使ってこの国にも孤児院と学校作って良いか?多分今回の戦争で戦争孤児が随分出たと思うんだよ。マクベスもそのうち困るだろうから早いうちにな。」

「ああ、やってくれて構わない。」

『ポチ・あ、そうだ!今回の戦争でかなり費用がかさんで出費のほどがこのように……』

「ん?どれどれ………桁がオカシイヨ……」

 ポチが提示した出費額に顔面蒼白になるミチナガ。今回の戦争で間違いなく出費がかさんだのはわかってはいたが、流石に覚悟を決めた金額よりもはるか上をいく結果になり動揺が隠せない。しかも他にもいくつか書類を取り出してきた。

『ポチ・それから今後、セキヤ国での軍備のための資金と僕たちの兵器開発にかかる最低限の金額ね。毎月このくらいはかかると思うから。セキヤ国は国としては収入が少なくてわりと貧乏な国だからミチナガ商会から一定額捻出しないとね。それでミチナガ商会の月平均の収入から収支を計算すると……』

「え?儲けこれだけしかないの?マジで?」

『ポチ・各店舗の改築費なんかも入れてあるからね。もう少し手広くやらないとミチナガ商会傾くね。それからセキヤ国の方の収入源も今後増やしていきたいところだけど、増やしても戦争難民が増えるからここに記載してある必要額は変わらないと思うよ。』

「つまりあれか……今回の戦争で貯金がほとんどなくなり、今後の起こりかねない戦争のために収入も減るってことか?」

『ポチ・そゆこと。』

「だぁぁ~~~~……」

 ミチナガはベッドの上に仰向けで転がる。ぐるぐると色々考えているがもうどうしようもない。使い魔たちが散々考えたというのにミチナガが何か考えたところで何か変わるようなことはないだろう。

「まあ…仕方ないか……よし!とりあえずかなり出費はあったけど、まだ貯金はある!それを使ってゆっくりと色々やっていこう!」

『ポチ・あ、今ある貯金はほとんどマクベスの今後の資金として貸し出しちゃうから。というかマクベスに貸すこと考えると早急に稼ぐ方法考えないと。』

「……もう!戦争嫌い!!平和大好き!カモンピース!」

『ピース・…あれ?呼んだ?』
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