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第185話 希少鉱物と5つの遺産
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「それで…ようやく完成したって聞いたんだけど、これは…本気?」
「ええ、これが最大です。今後は同様の設備を増やして採掘量を増やす予定です。」
半月、この砂漠の中に存在する超希少鉱物を採掘する設備を作るのにかかった時間だ。そしてそこからさらに10日、初の採掘が完了したのだが、それは予想だにしないものであった。
「こ、これが最大って…こんな小皿一杯にもならないのが最大なの?」
「正確には13グラムですね。未来の技術をこの時代に再現するのは大変ですし、元々埋蔵量の比率がこの砂漠と比べると低いんです。大体1トンの砂から1~2グラムしか採取できませんから。」
これは予想もできなかった事態だ。こんなにも採取速度が遅いとは思いもしなかった。ちなみに選別方法を簡単に表すと1トンの砂から不純物を取り出し、500キロにするのに1日、さらに500キロの砂から不純物を取り出し、100キロにするのに1日。
100キロの砂から不純物を取り出し50キロにするのに1日、50キロの砂から不純物を取り出し、10キロにするのに1日。10キロの砂から不純物を取り出し1キロにするのに1日。そして1キロの砂の中から目視で1グラムほどの希少鉱物を探し当てるのだ。
本当に気の遠くなる作業だが、他に方法はないらしい。1キロ集めるのに100日近くかかるのか。しかも選別した砂はまた砂漠に戻すことになるので、日数が進むにつれて採取量も減っていく可能性がある。
正直他の方法を模索したいところではあるが、難しいだろう。まあこの作業は白獣たちと使い魔に任せておこう。
「それでなんだけど…俺はこれがどういうものか未だによくわかっていないんですよね。これってなんなんです?」
「…実は我々もわかっていないんです。それどころか預言でもよくわかっていないみたいで…ただ一つだけ言えることは、これは一つの可能性であるということだけ。」
「わかっていないって…確かこの鉱物は世界でも一応数キログラムは発見されているって預言されていましたよね?現在はどのように使われているんですか?」
「そのほとんどはトウショウの作品に使われているようなんです。ただ、なぜトウショウがこの鉱物を使ったか、どのような効果があるのかは全く記録に残されていないんです。」
トウショウの作品に使われていること以外に何もわかっていないのか。そもそもトウショウの作品は国宝、いや世界の宝とされている為、削って研究するなどは何もされていない。そんなことをすれば世界中から非難を浴びることだろう。
トウショウは錬金術師としても知られている。だからこの鉱石のことも何か知っていたのだろう。しかし死した今ではその話を伺うことはできない。一応、トウショウの弟子であるグスタフにコンタクトを取ってみたが、そんな鉱石が使われていること自体知らないようだ。
「それからこれの精錬方法は普通に熱するだけでいいんですか?熱して溶かせばちゃんとした金属になりますか?」
「わかりません。この金属の利用方法を知っていたのはトウショウただ一人だと言います。他にこの金属を使ったことのある人間が存在しないんです。」
え?じゃあ俺は何が何だかわからないものを必死になって作っていたっていうことか?何そのピエロ感。よくわからないお遊びに付き合わされたっていう風にも取れるぞ。
そんな怒りがふつふつと湧いてきたところで使い魔のアルケがスマホから飛び出してきた。そして集められたよくわからない金属を一目見るとすぐにこちらを向いた。
『アルケ・足りないよ。集まれば多分わかるよ。』
「え?お前…これをどうしたらいいかわかるの?」
『アルケ・まだわからないよ。集まればわかるよ。僕は遺産の使い魔だよ。』
そうだ、アルケはトウショウの持っていた遺産から出現した使い魔だ。なんらかの記憶や意思を遺産であった金槌から受け取っている可能性もある。時が来ればこの金属がなんなのかもわかるかもしれない。
何もわからないからと勝手に幻滅するのはよくないかもしれないな。やがてくるその日まで、特に期待せずに待っていよう。でもどうしよう、もしもこれがただのなんてことない金属だったら。
『アルケ・なんて呼ぶ?』
「ん?この金属か?名前くらいあるだろ?」
「いえ…名前もありません。この金属を知っているのはトウショウだけですから。」
本当に謎しかない金属だ。ただ何も呼び名がないと今後呼称するときに面倒だ。そこでしばらく考え、一つの名前を考えついた。
「それじゃあ…賢者の石なんてどうだ?別に赤い石でもないけど、もしかしたらこの金属が金以上のものになるかもしれない。俺たちに可能性を見せてくれるかもしれない。その答えは賢者だけが知ることができるってな。まあ賢者の石じゃなくて愚者の石になったりして。」
特に期待もせずにゆっくりと待たせてもらおう。これが何になるのかはトウショウレベルの錬金術の使い手になることが必要だ。そしてその時には俺たちは賢者になれるかもしれないな。
「あ、結構みんな死んでいるな。その調子で頑張ってくれよ。」
『ポチ・もっと頑張るね~』
ここ数日間は使い魔たちの復活費用が今までの数倍まで膨れ上がっている。その理由は使い魔たちの魔力貯蓄量を上げる為だ。毎日大量の魔力を取り込ませて魔力取り込み過ぎによって何度も死んでいる。
今まで最低でも2~3日かかっていた魔力取り込み上限突破はほんの1時間ほどで上限に達している。なぜここまで早くなっているかは世界樹と遺産のおかげである。
勇者神から賜った遺産の解析が終わり、世界樹に新しい国が解放されたのだ。その名は魔国。悪魔の国、ということではなく魔力の国で魔国だ。この世界は常に超高濃度の魔力が漂っている。
この世界樹の国を解放できたのは勇者神から賜った遺産の一つ、漆塗りの盃のおかげだ。この盃の遺産は常に魔力を生成する能力を持っている。ただ、本来これで生成できる魔力量はそこまで多くはない。
しかしスマホのバッテリーを消耗させることで大量の魔力を生成することができるのだ。本来、ただ生成するだけなので、貯蓄できずにすぐに霧散してしまうのだが、世界樹の国、魔国ではその魔力を魔国の中に留めることができる。
そうして出来上がった超高濃度魔力の魔国の中で使い魔たちは1時間も暮らせば、肌からの吸収や呼吸によって体内に魔力を溜め込み過ぎてしまい死んでしまうのだ。これによってこの数日で使い魔たちの魔力貯蓄量は格段に増している。
今回、勇者神から賜った遺産は全部で5つだが、どれも使える。どれが一番便利などと比べることも難しい。
例えばこの遺産、双眼鏡だが、これによって得られた力はマーカーだ。俺や使い魔が黙視したものにマーカーをつけられる。このマーカーはスマホのマップアプリとも連動し、マップ上でどこにマーカーが打たれたか、マーカーを打たれたものがどこに移動したかが分かるのだ。
このマーカーは目視マーカーと接触マーカーの2つがある。目視マーカーは俺や使い魔たちが目視できている間だけマーカーを打てる。接触マーカーは接触した相手の魔力にマーカーを設置する。その為黙視していなくてもマーカーは記録されたままだ。
ただし接触マーカーの弱点としては俺がまだマップを埋めていない地点にマーカーを記録された相手が移動するか、俺や使い魔たちから1キロ以上離れるとマーカーは消える。
デメリットはあるが、十分に有用な能力だ。この能力を使えるようにするために課金した甲斐があるというものだ。もういくら使ったとかそういう細かいことは気にしない。気にしたらきっと2~3日寝込むことになりそうだから絶対に気にしない。
それからこれに合わせて使える遺産も入手できた。それは本のしおりの遺産だ。正直、え?何これ?と思ったがかなり優秀だ。このしおりの遺産の能力は対象への情報登録機能だ。
例えば今まで使い魔くらいにしか意味がなかった鑑定機能だが、このしおりを入手したことによって進化した。自分で情報を記載する必要はあるが、鑑定を使用した際に記載しておいた情報が瞬時にスマホ上に表示されるのだ。
このくらい普通にできないの?と思われるかもしれないが今までできなかったんだよ!俺だってびっくりしてんだよ!
スマホを使って植物なんかを鑑定したって特に何の反応もなかった。鑑定するとしばらくしてマザーから記録されている情報を教えてもらうという何とも複雑な気持ちになる鑑定になった。
そしてさらにこのしおりに組み合わせることでさらなる力を発揮するのが遺産の万年筆だ。この万年筆によって得た能力はシステムの構築。どういうことかというと、例えば俺が鉄を手に入れたとする。そしてその鉄の入手をスミスに知らせて、その鉄からアイテムを作成したいとする。
その時、このシステム構築の能力を使うと俺が鉄をスマホにしまった時点でスミスに鉄の入手の通達を出して、スミス以外に使えないようにするというシステムを組むことができるのだ。
このシステム構築の能力としおりの情報登録能力のデータベースを組み合わせることで憧れのものが完成する。それは検索機能だ。スマホ内で知りたいことを検索するとしおりに登録されている情報を瞬時に引き出すことができる。
え、スマホなのに検索機能なかったの?と思うだろう。だから言おう、そんな便利なものねぇよ!俺が持っているのはスマホだけど、どちらかというと電話中心の方だ。ある意味ガラケーに近いだろう。
…いや、嘘です。通話できる相手も使い魔たちしかいないわ。これ、ただのゲーム機だったかもしれない。クソゲーしかないただのゲーム機だったわ。
こうして思うとようやくスマホらしくなってきたと思う。ただ、検索するためにはあらかじめ検索対象の情報を自分で登録して、自分で検索できるようにシステムを構築する必要がある。自分で登録した情報を自分で検索かけるとかなんか悲しいものがあるが……まあいいだろ。
しかし色々試してみるものだ。しおりの遺産を手に入れて入手した対象への情報登録能力だが、その情報は一体どこに保存されているのか不思議に思って、システム構築の能力を色々駆使して探し当てた甲斐があるというものだ。
それからもう一つ、今回賜った最後の遺産。それはソロバンだ。ソロバンなんて意味あるのかと思ったが、これによって得た計算機能の向上は実に役立っている。
例えば家屋を立てる際に木材の重量、組み立て時の継ぎ目から負荷重量を算出してその木材が耐えられるかなどを計算して出してくれる。まあ俺はそんな細かい計算の仕方は全くわからないので全て遺産とともに得た使い魔に任せている。
このように何か作りたいときは設計図を書いて、計算機能を用いて材料の変更や補強箇所がすぐにわかる。親方なんかは大喜びしていた。
それから今回の遺産で得た使い魔は全部で5人。盃からの使い魔はサカズキ。双眼鏡からの使い魔はマーカー。しおりからの使い魔はシオリ。万年筆からの使い魔はシス。ソロバンからの使い魔はソン。どいつもこいつも優秀だ。
しかしこのタイミングで遺産を入手できたのは本当に嬉しい。ちょうど時間もあって色々試せたし、何より金があった。勇者神からの多額の資金があったからこそ、ここまで入手した遺産を生かすことができた。
資金がなかったらただの宝の持ち腐れだったであろう。しかし俺も驚いた。今回得たものを十全に使えるようにしただけで、勇者神から得た資金の20%近くを使うことになるとは思いもしなかった。
「ええ、これが最大です。今後は同様の設備を増やして採掘量を増やす予定です。」
半月、この砂漠の中に存在する超希少鉱物を採掘する設備を作るのにかかった時間だ。そしてそこからさらに10日、初の採掘が完了したのだが、それは予想だにしないものであった。
「こ、これが最大って…こんな小皿一杯にもならないのが最大なの?」
「正確には13グラムですね。未来の技術をこの時代に再現するのは大変ですし、元々埋蔵量の比率がこの砂漠と比べると低いんです。大体1トンの砂から1~2グラムしか採取できませんから。」
これは予想もできなかった事態だ。こんなにも採取速度が遅いとは思いもしなかった。ちなみに選別方法を簡単に表すと1トンの砂から不純物を取り出し、500キロにするのに1日、さらに500キロの砂から不純物を取り出し、100キロにするのに1日。
100キロの砂から不純物を取り出し50キロにするのに1日、50キロの砂から不純物を取り出し、10キロにするのに1日。10キロの砂から不純物を取り出し1キロにするのに1日。そして1キロの砂の中から目視で1グラムほどの希少鉱物を探し当てるのだ。
本当に気の遠くなる作業だが、他に方法はないらしい。1キロ集めるのに100日近くかかるのか。しかも選別した砂はまた砂漠に戻すことになるので、日数が進むにつれて採取量も減っていく可能性がある。
正直他の方法を模索したいところではあるが、難しいだろう。まあこの作業は白獣たちと使い魔に任せておこう。
「それでなんだけど…俺はこれがどういうものか未だによくわかっていないんですよね。これってなんなんです?」
「…実は我々もわかっていないんです。それどころか預言でもよくわかっていないみたいで…ただ一つだけ言えることは、これは一つの可能性であるということだけ。」
「わかっていないって…確かこの鉱物は世界でも一応数キログラムは発見されているって預言されていましたよね?現在はどのように使われているんですか?」
「そのほとんどはトウショウの作品に使われているようなんです。ただ、なぜトウショウがこの鉱物を使ったか、どのような効果があるのかは全く記録に残されていないんです。」
トウショウの作品に使われていること以外に何もわかっていないのか。そもそもトウショウの作品は国宝、いや世界の宝とされている為、削って研究するなどは何もされていない。そんなことをすれば世界中から非難を浴びることだろう。
トウショウは錬金術師としても知られている。だからこの鉱石のことも何か知っていたのだろう。しかし死した今ではその話を伺うことはできない。一応、トウショウの弟子であるグスタフにコンタクトを取ってみたが、そんな鉱石が使われていること自体知らないようだ。
「それからこれの精錬方法は普通に熱するだけでいいんですか?熱して溶かせばちゃんとした金属になりますか?」
「わかりません。この金属の利用方法を知っていたのはトウショウただ一人だと言います。他にこの金属を使ったことのある人間が存在しないんです。」
え?じゃあ俺は何が何だかわからないものを必死になって作っていたっていうことか?何そのピエロ感。よくわからないお遊びに付き合わされたっていう風にも取れるぞ。
そんな怒りがふつふつと湧いてきたところで使い魔のアルケがスマホから飛び出してきた。そして集められたよくわからない金属を一目見るとすぐにこちらを向いた。
『アルケ・足りないよ。集まれば多分わかるよ。』
「え?お前…これをどうしたらいいかわかるの?」
『アルケ・まだわからないよ。集まればわかるよ。僕は遺産の使い魔だよ。』
そうだ、アルケはトウショウの持っていた遺産から出現した使い魔だ。なんらかの記憶や意思を遺産であった金槌から受け取っている可能性もある。時が来ればこの金属がなんなのかもわかるかもしれない。
何もわからないからと勝手に幻滅するのはよくないかもしれないな。やがてくるその日まで、特に期待せずに待っていよう。でもどうしよう、もしもこれがただのなんてことない金属だったら。
『アルケ・なんて呼ぶ?』
「ん?この金属か?名前くらいあるだろ?」
「いえ…名前もありません。この金属を知っているのはトウショウだけですから。」
本当に謎しかない金属だ。ただ何も呼び名がないと今後呼称するときに面倒だ。そこでしばらく考え、一つの名前を考えついた。
「それじゃあ…賢者の石なんてどうだ?別に赤い石でもないけど、もしかしたらこの金属が金以上のものになるかもしれない。俺たちに可能性を見せてくれるかもしれない。その答えは賢者だけが知ることができるってな。まあ賢者の石じゃなくて愚者の石になったりして。」
特に期待もせずにゆっくりと待たせてもらおう。これが何になるのかはトウショウレベルの錬金術の使い手になることが必要だ。そしてその時には俺たちは賢者になれるかもしれないな。
「あ、結構みんな死んでいるな。その調子で頑張ってくれよ。」
『ポチ・もっと頑張るね~』
ここ数日間は使い魔たちの復活費用が今までの数倍まで膨れ上がっている。その理由は使い魔たちの魔力貯蓄量を上げる為だ。毎日大量の魔力を取り込ませて魔力取り込み過ぎによって何度も死んでいる。
今まで最低でも2~3日かかっていた魔力取り込み上限突破はほんの1時間ほどで上限に達している。なぜここまで早くなっているかは世界樹と遺産のおかげである。
勇者神から賜った遺産の解析が終わり、世界樹に新しい国が解放されたのだ。その名は魔国。悪魔の国、ということではなく魔力の国で魔国だ。この世界は常に超高濃度の魔力が漂っている。
この世界樹の国を解放できたのは勇者神から賜った遺産の一つ、漆塗りの盃のおかげだ。この盃の遺産は常に魔力を生成する能力を持っている。ただ、本来これで生成できる魔力量はそこまで多くはない。
しかしスマホのバッテリーを消耗させることで大量の魔力を生成することができるのだ。本来、ただ生成するだけなので、貯蓄できずにすぐに霧散してしまうのだが、世界樹の国、魔国ではその魔力を魔国の中に留めることができる。
そうして出来上がった超高濃度魔力の魔国の中で使い魔たちは1時間も暮らせば、肌からの吸収や呼吸によって体内に魔力を溜め込み過ぎてしまい死んでしまうのだ。これによってこの数日で使い魔たちの魔力貯蓄量は格段に増している。
今回、勇者神から賜った遺産は全部で5つだが、どれも使える。どれが一番便利などと比べることも難しい。
例えばこの遺産、双眼鏡だが、これによって得られた力はマーカーだ。俺や使い魔が黙視したものにマーカーをつけられる。このマーカーはスマホのマップアプリとも連動し、マップ上でどこにマーカーが打たれたか、マーカーを打たれたものがどこに移動したかが分かるのだ。
このマーカーは目視マーカーと接触マーカーの2つがある。目視マーカーは俺や使い魔たちが目視できている間だけマーカーを打てる。接触マーカーは接触した相手の魔力にマーカーを設置する。その為黙視していなくてもマーカーは記録されたままだ。
ただし接触マーカーの弱点としては俺がまだマップを埋めていない地点にマーカーを記録された相手が移動するか、俺や使い魔たちから1キロ以上離れるとマーカーは消える。
デメリットはあるが、十分に有用な能力だ。この能力を使えるようにするために課金した甲斐があるというものだ。もういくら使ったとかそういう細かいことは気にしない。気にしたらきっと2~3日寝込むことになりそうだから絶対に気にしない。
それからこれに合わせて使える遺産も入手できた。それは本のしおりの遺産だ。正直、え?何これ?と思ったがかなり優秀だ。このしおりの遺産の能力は対象への情報登録機能だ。
例えば今まで使い魔くらいにしか意味がなかった鑑定機能だが、このしおりを入手したことによって進化した。自分で情報を記載する必要はあるが、鑑定を使用した際に記載しておいた情報が瞬時にスマホ上に表示されるのだ。
このくらい普通にできないの?と思われるかもしれないが今までできなかったんだよ!俺だってびっくりしてんだよ!
スマホを使って植物なんかを鑑定したって特に何の反応もなかった。鑑定するとしばらくしてマザーから記録されている情報を教えてもらうという何とも複雑な気持ちになる鑑定になった。
そしてさらにこのしおりに組み合わせることでさらなる力を発揮するのが遺産の万年筆だ。この万年筆によって得た能力はシステムの構築。どういうことかというと、例えば俺が鉄を手に入れたとする。そしてその鉄の入手をスミスに知らせて、その鉄からアイテムを作成したいとする。
その時、このシステム構築の能力を使うと俺が鉄をスマホにしまった時点でスミスに鉄の入手の通達を出して、スミス以外に使えないようにするというシステムを組むことができるのだ。
このシステム構築の能力としおりの情報登録能力のデータベースを組み合わせることで憧れのものが完成する。それは検索機能だ。スマホ内で知りたいことを検索するとしおりに登録されている情報を瞬時に引き出すことができる。
え、スマホなのに検索機能なかったの?と思うだろう。だから言おう、そんな便利なものねぇよ!俺が持っているのはスマホだけど、どちらかというと電話中心の方だ。ある意味ガラケーに近いだろう。
…いや、嘘です。通話できる相手も使い魔たちしかいないわ。これ、ただのゲーム機だったかもしれない。クソゲーしかないただのゲーム機だったわ。
こうして思うとようやくスマホらしくなってきたと思う。ただ、検索するためにはあらかじめ検索対象の情報を自分で登録して、自分で検索できるようにシステムを構築する必要がある。自分で登録した情報を自分で検索かけるとかなんか悲しいものがあるが……まあいいだろ。
しかし色々試してみるものだ。しおりの遺産を手に入れて入手した対象への情報登録能力だが、その情報は一体どこに保存されているのか不思議に思って、システム構築の能力を色々駆使して探し当てた甲斐があるというものだ。
それからもう一つ、今回賜った最後の遺産。それはソロバンだ。ソロバンなんて意味あるのかと思ったが、これによって得た計算機能の向上は実に役立っている。
例えば家屋を立てる際に木材の重量、組み立て時の継ぎ目から負荷重量を算出してその木材が耐えられるかなどを計算して出してくれる。まあ俺はそんな細かい計算の仕方は全くわからないので全て遺産とともに得た使い魔に任せている。
このように何か作りたいときは設計図を書いて、計算機能を用いて材料の変更や補強箇所がすぐにわかる。親方なんかは大喜びしていた。
それから今回の遺産で得た使い魔は全部で5人。盃からの使い魔はサカズキ。双眼鏡からの使い魔はマーカー。しおりからの使い魔はシオリ。万年筆からの使い魔はシス。ソロバンからの使い魔はソン。どいつもこいつも優秀だ。
しかしこのタイミングで遺産を入手できたのは本当に嬉しい。ちょうど時間もあって色々試せたし、何より金があった。勇者神からの多額の資金があったからこそ、ここまで入手した遺産を生かすことができた。
資金がなかったらただの宝の持ち腐れだったであろう。しかし俺も驚いた。今回得たものを十全に使えるようにしただけで、勇者神から得た資金の20%近くを使うことになるとは思いもしなかった。
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