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第181話 使い魔増産

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 翌朝、俺が起きると白獣の村では大規模な工事が始まっていた。いつのまにか使い魔達もスマホから出て材料などを提供している。かなり大規模な工事のようだが、どうやら俺の出る幕はなさそうだ。

 まあ100年前から準備されて来たことだからな。俺がとやかく言う必要もないし、逆に俺が出張ると作業効率は落ちるだろう。なんだかもどかしい気持ちはあるが、考えてみれば俺はこれで完全にフリーだ。つまり自分だけの時間が持てる。

 俺の暇な時間など町から町へ移動するときくらいしかなかった。それが今はこうして寝床の上でゴロゴロできるのだ。やばい、最高かもしれない。

 そんなことを思っていると一人の使い魔がやって来た。その使い魔は俺を見て敬礼をした。すると俺も同じように敬礼をし返す。堅苦しいような感じはあるがお決まりのことなのでもう面白半分になって来ている。

『ショウグン・おはようございます総督!現在、白獣の村、改造計画が始動中であります!すでに計画書は完成しておりますので、それに沿った形で作業にあたっております!それに伴い金貨を大量消費しておりますがよろしいでしょうか!』

「構わん!好きにやってくれ!」

『ショウグン・ありがとうございます!それでは作業に戻ります!』

 そう言うと再び作業に戻っていった。なんと言うかこのノリは割と好きだ。本人は真面目にやっているんだけどな。しかしショウグンのおかげで作業効率は間違いなく上がっている。

 このショウグンはあの神剣との接触により得た最後の使い魔だ。その能力は指揮。使い魔に瞬時に命令を下すことができるのと、人を動かすのがうまい。指揮官に必要な能力は全て持っていると考えて問題ないだろう。俺の細かい指示を代行してくれるので楽になる。

 さて、それでは自由な時間ということだし久しぶりに使い魔ガチャでも回すか。残り25枚の白金貨全て使い切ってやろう。

「さて…運命の第1投は…ウルトラきたぁ!そして~…ノーマル、ノーマル、ノーマル、ノーマル…あ、6連チャンノーマルかよ。」

 一発目でウルトラレア来たから喜んでいたらノーマルが連続しやがった。さすがに7連続はやめてと願ったところレアが出た。ちょっと嬉しくなったところでさらにノーマル3連続。もう心が折れそうだ。

「一旦確認するぞ。今のウルトラとレアはどいつだ?」

『名無し・あ、どうもです。自分は加工人です。あ、でも食べ物とかではなくてですね、革や木材なんかを加工するのが得意で…あ、でも加工といっても素材として使える状態にするだけでですね、そのですね…』

 おどおどしているがなんとかゆっくりと話を聞いていくとモンスターから剥いだ皮などを鞣して皮の製品として使えるようにすることができるということだ。それから木材も木の皮を剥いで乾燥させたりすることができるらしい。

「じゃあ今このスマホ内にある森林の木々を乾燥させて木材として使えるようにできるのか?」

『名無し・えっとですね、まあつまりそういうことになるんですが、あくまで乾燥させるだけで、そこから木の器を作ったりなんかはできなくてですね。まあつまりあの~…はい。』

 まあできるということでいいのだろう。余計な情報が多くて分かりづらいが、つまり今後は木材の供給が安価に済むということだ。ただルシュール領ではすでに毎月木材を買う契約をしてしまっているらしい。

 今まで結構木材を買っていたので、使い魔達が少しでも購入価格を安くするために頑張った結果だという。それから木材乾燥と革加工のための特別な施設の建設をお願いされたので建築許可を出しておいた。

「じゃあ今後は木材の余剰が増えそうだな…」

『名無し・そのことなら私が役に立つでしょう。私は炭焼きを生業にします。大量の木材を消費して炭を作りたいと思うのですがよろしいですか?』

「炭…か。正直利用価値は低いような気もするけど……まあどうせ木材が余りそうだからいいんじゃないか?どうせなら質の良い炭を作ってくれよ。備長炭みたいなさ。」

『名無し・そういうことなら喜んで!最高の炭を作り上げて見せますよ。』

 返って気合いが入ったみたいだ。ちなみに炭焼きはシェフが大喜びしていた。ウナギなんかは薪で焼くと薪の臭いがつくし、魔道具のコンロはいい感じに焼けないらしい。備長炭でうなぎを焼けば最高に美味くなるだろうとのことだ。それに焼き鳥なんかもうまい。

 俺がイマイチかもと思っても使い魔同士では需要があるようだ。すぐに炭焼き小屋の建設も始まるだろう。それから加工人の方はカコ、炭焼きの方はスミと名付けた。

「さて…確認も終わったし続き行くか。残り14回、ここから俺のガチャ運を見せつけてやるぞ!」

 そうしてガチャを回すこと5回、全てノーマルを引いた俺はふて寝した。16回引いてウルトラレアとレア一回ずつのみというのは初めての体験かもしれない。心が折れそう…

『ポチ・ねえねえ!引いてもいい?』

『暗影・あ!引きたい引きたい!!頑張ったご褒美もらってないから引きたい!』

「あ~?別にいいよぉ…どうせ当たらないし。もう当たるわけないし。きっとレアなやつもう出切っちゃったんだよ。」

 引きたければ勝手に引くが良い。どうせこれは当たらないんだ。そうだ、そうに決まっている。ちなみにこの暗影はあのゴブリンの巣へ死んだモンスターの口に隠れて最初に侵入したやつだ。頑張ったからとフィーフィリアルに名前をつけてもらった。

 ちなみに暗影、一影、八雲は全員使い魔のシノビに弟子入りした。腕前はまだまだということだが、今後成長するとシノビと同系統の隠密系のスキルを入手するらしい。

『ポチ・何が出るかな何が出るかなちゃらちゃちゃんちゃらちゃちゃちゃ…スーパーレア!』

「まじ!?」

『暗影・でーてこい、でーてこいスーパーレア!おまけに~~レア!』

「嘘だろ!?」

 スマホを確認すると確かにスーパーレア2人とレア1人が増えていた。こいつらのガチャ運高いな。そのままガチャを引かせてみるとなんとレアが3連続で出た。この流れなら俺もいけると思い、3回引いてみるとノーマルが3連で出た。なんでだよ!

『ポチ・ボス…どんまい!』

『暗影・まあそんな日もありますよ!むふふふふ…』

「慰めるか馬鹿にするかどっちかにしろや…まあいいや、とにかく確認するぞ。」

 俺が当てたわけではないので実に癪ではある。しかし手に入ったのは間違いないので喜ぶことにしよう。だけどなんで俺の時だけでないんだよ。そういえば前回も使い魔がやった時にレアなのが出たような…

『ミチナガ・それじゃあ自己紹介よろしく。』

『名無し・おっす、俺は木こりっす。植林なんかもするっす。林業関係ならなんでもいけるっすよ。あ、ちなみにスーパーレアの方っす。』

『名無し・自分は臭い担当です。鼻がいいんで。』

 木こりはちょうど良いな。これからは林業が必要になってくるだろう。どんどん活躍してもらおう。それに嗅覚強化の使い魔か。これで視覚、聴覚、嗅覚は揃ったな。じゃあ名前は木こりがウッド、嗅覚強化がノーズだ。

 するといくつかの使い魔が画面上を横切った。しかしなんというか小さく見える。一瞬眷属のようにも見えたが、それにしても小さい。

『名無し・あ、どうもどうも。私はレアの使い魔で能力はミニマム。自身の大きさを10分の1まで小さくできるのと、発生する眷属の大きさを10分の1まで小さくすることで、小さくした分の使い魔を出すことができます。つまり眷属5人が50人まで増えます。ただ小さくなると能力も下がります。』

『ミチナガ・ユニークな能力だな。だけどそれならウルトラレアとかにもなりそうなものだけど。』

『名無し・まあそうかもしれないんですけど、能力は小さくなるだけですから。強力な能力でもないので。』

 まあ小さくなって力も落ちるのなら確かに強い能力ではないのかもな。試しに最小にした眷属を出してもらうと指先ほどの大きさしかない。だけど小さくて可愛いな。…これはある意味やばい。そして肝心の名前だが、能力をそのままにミニマムと名付けた。

『名無し・こんにちわぁ。僕はね、レアの使い魔でね、時間がわかるよ!』

「…は?」

 あ、思わず普通に声が出た。あまりに動揺してしまったので改めて聞いてみることにした。俺の聞き間違いかもしれない。

『名無し・あのねぇ、僕は体内時計が正確でね、一分一秒正確に時間がわかるよ。』

『ミチナガ・そ、そうかぁ~ありがとな。じゃあお前の名前はクロックな。』

 こんなの初めてかもしれない。こいつの能力なんの役にもたたねぇ…この先絶対に使うことないわ。こういう超ハズレ使い魔みたいなのもいるんだな。ちょっと今後は色々と考えさせられるものがあるな。

『ミチナガ・最後のレアは…お前か?』

『名無し・うっす!自分がそうっす!自分の能力はパワーっす。他の使い魔の10倍以上のパワーがあるっす。ただスピードはないっす。』

 あ、これは普通に役に立つわ。使い魔は力がないのでいつも力仕事は俺任せだった。こいつがいれば俺の仕事もかなり減る。こいつは能力をそのまま名前にしてパワーと名付けた。

『ミチナガ・後、スーパーレアいなかったっけ?』

『名無し・はいはーい!僕です、ボクボク!僕の能力は泳ぐこと!泳ぐの早いんだよ!』

 他の使い魔も普通に泳げたはずだけど、しかしこいつはそれよりもはるかに速く泳ぐことができるらしい。潜水だろうがなんだろうが泳ぐことに関してはすごいとのことだ。この能力は今後役にたっていくかもしれないな。

 こいつの名前はクロールと名付けた。確かクロールって泳ぎの中で一番早く泳げるんだよな?俺クロールだろうが平泳ぎだろうがまともに泳げないからよくわからないんだけどね。

 とにかくこれで今の資金からゲットできる使い魔は全てゲットしてしまった。また白金貨を頑張って入手しよう。

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