スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第152話 使い魔達の日常

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『シェフ・ハイこれ7番様ね。』

「はーい」

 昼時、ルシュール領では誰もが仕事を一休みし、昼食をとっている。そんな中でなかなかの賑わいを見せる食堂がある。なんでも珍しい食事を楽しめるということで話題のこの店はミチナガ食堂。ミチナガがルシュール領を去ってからシェフが売り上げの一部を密かにためて建てたシェフの店だ。

 とはいえシェフは普段自分の仕事で忙しい。だから忙しい時に時折やってくるだけだ。厨房には数人の料理人がいてシェフが彼らに料理を教えている。シェフは腕も良いし教え方も上手いということで人気がある。

「店長~団体様来ましたよ~」

『シェフ・了解、じゃあみんな頑張るよ。』

「「「はい!」」」

 こうして今日も一致団結してお客さんに料理を振る舞う。その団結力はなかなか目を見張るものがある。そして徐々に昼食時も過ぎ、人も少なくなって来た頃、ちょっとした団体が来る。彼らの顔には見覚えがある。ミチナガ商店の従業員の面々だ。

『シェフ・ローナにティッチ来たね、それに新人さんも。あれ?メリリドさんは?』

「あ、今日はこういうローテーションです。メリリドさんは私たちが戻ってから来ますよ。あ、私はいつもので。」

「えっと…私はお魚系で何かお願いします。あ、皆さんもどうぞ。今日は私たちが奢りますから」

「「ごちになります!」」

『シェフ・ティッチも随分先輩らしくなって来たね。それに尻尾出しても何も言わなくなったし。』

「えへへ…まあ私も頑張っているんです。」

 ティッチは耳をパタパタとしながら尻尾を揺らしている。現在ミチナガ商会はルシュール領で3店舗経営している。メンバーは残留組もいるが週ごとに各店をローテーションで回っている。雇っている店員の数もそこそこ増えて来た。

 ちなみにこうしてミチナガ商店の面々がこの店に来るのは従業員割りがあるからだ。まあ元々の値段が安いというのもあるし、色々な料理が楽しめるというのもあるだろう。そんなことで話していると作業服に身を包んだ数名が入って来た。そこには使い魔の眷属の姿もある。

『シェフ・お、マッシュ。休憩か?』

『マッシュ#2・息抜き息抜き。ずっと建物の中にいたらこっちまでキノコが生えて来そうだ。こっちは肉くれ。みんなは?』

「「「肉!」」」

 マッシュは街から少し離れた場所に構えた巨大キノコ工場の運営をしているが、まだ満足いく生産量を出せていない。正直赤字続きだが他の店でなんとか補填している。だがあともう少しで黒字になるだろう。

『マッシュ#2・そういやオイルの方はどうだ?順調なのか?』

『シェフ・あ~…前に来た時はまた石油が詰まったってぼやいてた。どうにも粘性が高くてもっとパイプでかくしたいらしいけど、そうすると吸い込みが悪くなるから悩んでいるみたいだ。そのうち社畜になんとかしてもらおう。』

 死の湖で石油採取しているオイルも順調にいっていないらしい。拠点を利用した石油採取量がまだまだ低く、精製スピードの方が早くてしょっちゅう催促されている。こちらはまだまだ採取速度増加の目処が立っていないらしい。

『マッシュ#2・そういやそっちはどうだ?ソーマの酒の技術は覚えたか?』

『シェフ・そんな簡単に覚えられたらどんなに楽か。あの天才の足元にたどり着くまでに何年かかるか。』

 シェフもソーマの元で必死に学んでいるが学んでも学んでも学ぶことが増えて来る。そして学ぶと分かる、ソーマのその知識と技術力の高さが。なかなか手を焼くものだ。

「店長、4番様の料理できました。チェックお願いします。」

『シェフ・ハイよ、それじゃあ俺も仕事に戻るか。』

 束の間の語り合いを終えたシェフは今日も頑張る。しかし疲れはするがちっとも嫌な気分にはならない。こうして毎日を過ごすたびに自身が成長していくのがわかる。




『ブラン・いやぁ~今日も疲れたね。』

『ラント・最近は第2店舗も忙しくて疲れるよ。その上第3、第4店舗まで作ったからてんやわんや。』

『ランファー・みんなお疲れ、こっちは雪のおかげで一休憩中だ。子牛の買い付けも順調だからしばらくはのんびり。ただ夏頃からは忙しいだろうなぁ…スマホ内で乳牛の数が揃って来たし。』

『ブラドウ・こっちは暇でもなく忙しすぎもせずだな。道路工事は国が主導で始めたからこっちはあくまで現場責任者だし。ただ今はルシュール領とユグドラシル国に伸ばす道路計画が立って来てね…そっちの方は忙しいみたい。そのうち呼び出しくらうかもなぁ…』

 この使い魔達4人がいるのはブラント国のミチナガ商店が経営する高級レストランだ。とはいえあまり高級にしすぎると人が入らないのである程度である。そこの一室を貸し切って時折こうして話をしている。別にスマホの中でしても変わりないのだが、たまにはこういうのも良いだろうということで集まっている。

『ブラン・まあここがミチナガ商会の稼ぎ頭になっているから頑張らないといけないけど…これ以上の店舗増設は危険だよね。』

『ラント・危険だなぁ…やるにしても取り扱うもの変えないと同じ店同士で潰しあっちゃうよ。』

『ランファー・うちの牧場が完成したら牧場製品を主体に取り扱う店作れば良いとは思うよ。…今の内に土地だけは確保しておきたいね。』

『ブラドウ・それなら良い土地があるぞ。今度道路工事するから…この辺りの交通量が増える。今はまだ土地も安いから…買っとくか?』

『ランファー・お願い。なんなら広めに買っておいて。』

 さらりと土地購入が決定する。もちろんミチナガへの許可は無しだ。だが今の売り上げで一部を使えば十分買えるので事後報告で十分だ。ミチナガ自身いちいち許可を取る必要もないと言っているのでいつもこのくらい軽い感じで決まる。

『ブラン・そういやこの前新しく来た商会がなんかうちを嗅ぎ回っているみたい。仕事も随分派手にやって位るよ。ちょっと怪しい。』

『ラント・ああ、あの商会か。うちにも来たよ。うちの店員にまでちょっかい出してた。ちょっと探ってみる?』

『ランファー・じゃあ手が空いているし今度探ってみるよ。いざという時の準備はよろしく。』

『ブラドウ・うちの若いやつにも声かけておく。臨時収入で喜ぶでしょ。道路工事がてら見回りも強化しとく。』

 後日、一つの商会が不正の疑惑で捕まった。必死にもみ消そうとしたのだが既に証拠を押さえられ、逃げ道を道路工事の作業で止められたらしい。

 そして使い魔達はまた同じように一室を貸し切り今日もだべりながら飯を食う。料理を運ぶ店員も会計を済ませた店員も知らない。まさかこんな小さい可愛らしいのがこの国のトップの商会の重鎮だとは…そしてこの国有数の権力者だなんて夢にも思わない。


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