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第151話 魔動車試験
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「とうとう1月も終わりか…あともう少しでこの国も出発かな。」
早いものでもう2月になった。雪の降る勢いも随分落ちてきたように見えるが、まだまだ雪解けには早いだろう。寒い日もまだまだ続く。聞いた話によると2月の終わりあたりから雪が止むとのことだ。だから出発は3月の中旬から下旬になるだろう。
それから使い魔達なのだが、全員に魔力生成炉が行き渡り全員が魔力持ちになった。そのおかげで全員に魔法能力が、と思ったのだがどうやらそううまくはいかないらしい。魔法能力を得ることができるのはスーパーレア以上だけらしい。
ただレアもノーマルも魔法能力を得られることには得られらしい。得るためには現在の職業適正値、つまり今自身がやっている仕事を一人前にこなせるようになったら魔法能力を得ることができる。まあそれまでは我慢だな。
それから毎日の使い魔達の復活費用だが、初めは使い魔一人当たり1日1回復活していたが、今では2日に1回まで減ってくれた。余計な金貨を消費しなくて良いのは助かる。それと使い魔達の得た魔法能力の中ですぐに使えるものが出てきた。魔力量の問題で1日1回までが限度だがそれでも重宝する。今日も出来上がったようだ。
『カントク・今日もできました。もう5枚溜まったので良いのでは?』
「う~ん…まあそうか。じゃあウィルシ侯爵に届けておくわ。」
俺は一度カントクから出来上がったものを受け取る。カントクの魔法能力、それは映像の魔道具化だ。映写機のようなものを作り、そこに映像を記録させていくのだ。映写機の作成には2日分の魔力が必要で、そこに映像を記録させるのは1日分の魔力で1時間の映像を記録できる。
ウィルシ侯爵には日頃のお礼ということで、無料で差し上げる。しかしこれはかなりの金になるだろう。希少価値も高く、俺のところで作成した映像はこの映写機しか使えない。まあまだ映像の数が少ないので欲しがる人間は少ないだろうが、俺のこれから次第ではかなりの金になる。
まあとりあえずはウィルシ侯爵に渡し、それ以降は俺が作る映画館で配置していく。しばらくはカントクに頑張ってもらわないとな。それからカントク以外にもすぐに使える魔法能力を持った奴はいる。しかし今は魔力の許容量を上げたいということであまり魔法能力は使っていない。
まあそいつらには今後期待するということで良いだろう。それから工事の方も順調であと3ヶ月ほどでこの辺りの俺の店は全て完成するだろう。まあここまでは今まで起きた良いことだ。ここからが問題。いや、まだそこまで問題視するほどでもないが問題は問題だ。
それは俺の所有する流通禁止金貨、というか流通禁止硬貨だな、その額がとうとう金貨1億枚分を切った。最近はスマホの課金もなかったのでそこまで激しく使うことはなかったのだが、魔力生成炉を造ったのが効いた。
しかも流通禁止硬貨の大半は銅貨と銀貨だ。金貨に関してはもう2000万枚ほどしかない。ちょっと考えないとまずいだろう。魔力生成炉を一般流通できる金貨で作りたくはない。というか一般流通できる金貨はなるべく使いたくない。
どこかで流通禁止金貨を入手したいものだが、そう上手くはいかないだろう。ただ流通制限金貨ならなんとかなりそうだし、ちょっとそこで考えてみようかな。ただ流通制限金貨は金貨20万枚とかなんだよな。そんなちっぽけな…まあすごい金額なんだけどさ。俺からするとちっぽけなんだよな。
そんなことを考えながら書類に目を通す。使い魔達が現状報告として作成してくれている資料なのだが、日に日にまとめ方が上手くなって読みやすくなっている。ブラント国でまた結構な額使っているな。一体今度は何を企んでいるのか。そんな書類を見ていると窓を真っ白なカラスがつついている。
「可愛いカラスだな……真っ白なカラス!?あ、何か首から下げているな。あれは…ルシュール様の家紋だな。」
窓を開けてみるとひょこひょこと跳ねるように部屋に入ってくる。そして俺の目の前に佇むと俺に首から下げているものを渡す。どうやら手紙のようだ。開けてみるとそこにはルシュール辺境伯からの手紙以外にいくつか他の手紙も入っていた。
「こういうことはうちの使い魔に任せてくれれば良いのに…えっとまずはルシュール様の手紙から。ふむ…このカラスはルシュール様の使い魔なのか。それで…今はエルフの里にいると。トゥルーリヤさんが連れて行って…エルフの族長会議にも出席してその時に世界樹の話したのか。重要な部分は秘匿してくれたんだな。それは良かった。」
わざわざルシュール辺境伯がこのカラスの使い魔を使った理由は最低限のエルフ達からの礼節ということらしい。エルフの族長は頭の固い人が多いらしい。そしてそんな彼らは俺にとても感謝しているとのことだ。他の手紙はエルフの族長からのものらしい。
「じゃあ早速読んで…おい、なんだよこの字。まだ翻訳してないやつじゃん。課金して翻訳できるようにしないと…ん?これも他の手紙とちょっとずつ字が違う。」
他の手紙も確認してみると全部で4種類の言語が使われていた。全て古代エルフ語ということだったのだが、地域別に少しずつ違うらしい。全部翻訳できるようにするために金貨300万枚もかかった。
内容はどれも堅苦しい言葉で礼が書かれている。それからどれにも別紙で各族長が俺の身分を証明する文章が書かれていた。つまり俺という身分をエルフ全体で保証してくれることとなった。これで対エルフ相手には俺はある意味最強かもしれない。
それから1通だけ他とは違う手紙が入っていた。読んでみると12英雄の1人、森弓の魔帝フィーフィリアルへの紹介状だ。ちなみに12英雄というのは国王を除いて王国トップの12人のことらしい。大臣とかそんなものすら目ではないクラスの偉い人だ。
かなり順調に進んでいる。世界貴族への道も順調だ。紹介状も十分と言えるほど集まった。手紙も読み終わり、このルシュール辺境伯からの使い魔をどうしたら良いのかと悩んでいると目の前で白い使い魔のカラスが弾けるようにただの羽に変わり、後には一つの袋が出てきた。それからメッセージカードまである。
「え、えっと…驚きましたか、これはちょっとしたサプライズとお礼の品です…って一体なんな…」
袋を開き逆さまにして中身を出してみると袋の容量からは考えられない量のものが出てきた。植物の種や苗木、そして白金貨もある。しかしその数がエグい。
「え?え?ちょ…1…5…10…20……50枚!?う、嘘でしょ!白金貨50枚!?あ、手紙がもう1枚…各族長からのお礼の品を全てまとめてって…こ、これだけで一生遊んで暮らせそうだぞ。」
白金貨はもちろんだが、種や苗木もかなりの価値がありそうだ。それこそ簡単に豪邸が立ちそうだぞ。ルシュール辺境伯も俺を驚かせようとして手紙を小分けで入れておいたんだな。ものの見事に引っかかったよ。
「袋自体も収納能力がかなり拡張されている特別製なのか。こんなにもらって良いのかな…まあもう返す気ないけど。けど…スゲェなぁ…」
とりあえずすぐにスマホに収納して種や苗木はドルイドとファーマーに任せる。しかしこれだけの白金貨、使い魔を一気に獲得できちゃうな。あ、でも魔力生成炉はどうしよう。今の流通禁止金貨の残量だと20個が限界だ。
「とりあえず…10回回すか。いつもの10連ガチャだ。だけど50連…い、いや楽しみは長くとっておこう。とりあえず10連だ。」
まあこの使い魔ガチャの必勝法は分かっているからな。このスマホの力が100%であれば問題なく良いのが出る。遺産を3つ所持している今の俺はスマホの力の消費が回復力を下回ったのでスマホの力を気にする必要がない。
では早速ガチャを回そうと思ったその時、扉をノックする音が聞こえた。返事をすると子供が1人入ってきた。何用か尋ねると俺にお客さんらしい。早いところガチャを回したいところだがお客さんが来てしまったのなら仕方ない。教会の外に出るとそこにはいつものようにリカルドがいるのだが、今日はいつもとはちょっと違った。
「あれ?今日はリカルドさんだけですか?」
「今日は魔動車の納車だ。話はついたからな。お前の魔動車を持って来たぞ。ただしこれから試験がある。後、整備員の試験もやる。準備しろ。」
おいおい急だな。まあ魔動車の試験の方はどうとでもなるけど、整備員の方は厳しくないか?なんでも魔動車の運転免許の試験員と整備員の監督官が同一人物らしい。だから整備員の方はあくまでついでということだ。今回の試験である程度どんな感じか掴んでまた次回受けるということらしい。そのための手はずは整えているとのことだ。
「早速筆記試験をするぞ。空いている部屋はあるな?」
「ええ、まあ…」
空き教室に移動すると早速試験の準備が始まる。カンニングや外部からの連絡を断つために部屋の四隅に魔道具を設置している。その間に簡単に試験内容の説明を受けるが運転免許の方は1時間ほどの簡単な試験で今日は3回まで受け直しができるとのことだ。
整備員の方は3時間の試験で1発勝負。しかも9割以上の正答がなければ受からないという結構な難関だ。試験を受けるのは4組。運転免許を俺と使い魔のポチ、整備員免許にアルケと名無しの使い魔。とはいえ試験には名前がいるのでこの名無しの使い魔にはメンテとつけた。
監督官のドワーフもこれには驚いた様子だが、まあなんとか受け入れてくれた。早速試験が始めるとまあなんとも初歩的な問題ばかりでスラスラと溶けてしまう。これなら余裕だろと思ったその時、魔動車の魔法に関しての問題が出て来た。
簡単な話は聞いたような気がするけどやばい、この辺りは全然わからない。記述式もあるが選択式もある。選択式でなんとか点数を稼ぐしかない。だけどこの選択式も当てずっぽうだ。考えろ、出題者の傾向を、そこから考えられる回答の順番を!
「え~…ポチさんは満点、ミチナガさん70点でどちらも合格です。…使い魔の方が点数いいなんて聞いたことないな。」
『ポチ・わーい!』
「ご、合格ライン70点…あ、あぶねぇ……」
もうこの際ポチに負けたとかどうでも良いわ。受かったことが大事だ。しかしポチめ、あいつはマザーから情報共有すればいくらでも答えられる。まじでずりぃ…俺にもスマホ使って試験受けて良いってルール加えて欲しかった。
アルケとメンテの方はまだテストが終わらないようだ。まあそっちは3時間の試験だから仕方ないだろうな。すると先に俺たちの実技試験をやってしまうということだ。実技試験は他の監督官がいるのでそっちで受けることとなった。
実技試験は簡単。多少アクセルやブレーキなどの配置は違うが慣れてしまえば問題ない。さらりとこなしてこれで終わり、かと思ったらまた出ました魔法関連の実技。とはいえ本当に簡単なものだ。魔動車には魔力を貯蓄する設備があるのだが、万が一魔力が切れた場合にハンドルから応急処置として魔力を供給する。それを実践する。
ただこれはある程度魔力コントロールができないといけないので、いつも大雑把に魔力を使っている人にはできないらしい。では魔力がない俺は一体どうしたらいいのかな?もうこればかりは俺にはどうしようもない。そこでスマホから使い魔を取り出してハンドルに押し当てて魔力供給する。これには監督官も苦い表情だ。
「あ~…ミチナガさん…」
「お、俺魔力無いんでしょうがないんですよ!ほ、ほら!冒険者カード!」
冒険者カードを見せて説得すると今度は哀れんだ表情を向けられた。そ、そんな表情するんじゃ無いやい!こっちまで悲しくなるだろ。ちなみにポチの方はというとなんの問題なく試験が終わったらしい。俺より使い魔の方が優秀とか泣けてくる…まあ今に始まったことじゃ無いけど。
そして運命の結果発表。もちろんポチは文句なしの満点合格。俺の方はというと魔法関連には心配が残るがまあ合格ということだ。ちょっとした特別講習みたいなのはあったけどね。
免許証の交付を待っているとアルケとメンテの整備員の実技試験が始まった。筆記試験はなんの問題もなかったのかと監督官に尋ねてみると満点合格らしい。あいつらいつのまにそんな勉強していたんだ?
そして30分もすると実技試験が終わったらしい。気になったので合格発表を近くで聞いていると2人とも全く問題なしの合格のようだ。これにはリカルドも驚いている。まあ今回はあくまでお試し受験ということだったからな。
「おい、お前の使い魔優秀すぎないか?それに一体いつの間にそんな勉強したんだ?」
「えっと…ちょっと俺もわからないです。」
そして試験は無事に終わり、早速魔動車の引渡しと代金のやり取りをするのだが…
「ちょ…金貨100万って高く無いですか?なんか魔動車本体以外にも色々と加算されているような…」
「今回の監督官の出張代に試験にかかった料金、それからある程度壊れた時の予備の部品代などだ。それに運送費もあるからな。まあこんなものが妥当だ。ここは貴族街から遠いから運送費や出張費が余計にかかる。」
なんか思いっきりボッタくられている気がする!だけどうだうだ言っても仕方ないので金を払ってしまう。しかしこれでようやく魔動車が手に入った。こんなに嬉しいことはない。じゃあこれで早速獣人街の方へ遊びに行ってみようかと思ったらこれではまだダメらしい。
俺は貴族なので貴族として最低限の装飾と家紋を入れないといけないらしい。俺家紋なんてないんだけど…。そんな愚痴をリカルドに言ったらそのくらい作っておけと怒られた。ちなみに家紋は作ってからそれを登録するために評議会に提出しなければならないとのことだ。
その手続きも無駄に時間がかかるため、家紋一つ決めるのに最低10日はかかる。魔動車を使って遊びに行くのはまだまだ時間がかかりそうだ。
早いものでもう2月になった。雪の降る勢いも随分落ちてきたように見えるが、まだまだ雪解けには早いだろう。寒い日もまだまだ続く。聞いた話によると2月の終わりあたりから雪が止むとのことだ。だから出発は3月の中旬から下旬になるだろう。
それから使い魔達なのだが、全員に魔力生成炉が行き渡り全員が魔力持ちになった。そのおかげで全員に魔法能力が、と思ったのだがどうやらそううまくはいかないらしい。魔法能力を得ることができるのはスーパーレア以上だけらしい。
ただレアもノーマルも魔法能力を得られることには得られらしい。得るためには現在の職業適正値、つまり今自身がやっている仕事を一人前にこなせるようになったら魔法能力を得ることができる。まあそれまでは我慢だな。
それから毎日の使い魔達の復活費用だが、初めは使い魔一人当たり1日1回復活していたが、今では2日に1回まで減ってくれた。余計な金貨を消費しなくて良いのは助かる。それと使い魔達の得た魔法能力の中ですぐに使えるものが出てきた。魔力量の問題で1日1回までが限度だがそれでも重宝する。今日も出来上がったようだ。
『カントク・今日もできました。もう5枚溜まったので良いのでは?』
「う~ん…まあそうか。じゃあウィルシ侯爵に届けておくわ。」
俺は一度カントクから出来上がったものを受け取る。カントクの魔法能力、それは映像の魔道具化だ。映写機のようなものを作り、そこに映像を記録させていくのだ。映写機の作成には2日分の魔力が必要で、そこに映像を記録させるのは1日分の魔力で1時間の映像を記録できる。
ウィルシ侯爵には日頃のお礼ということで、無料で差し上げる。しかしこれはかなりの金になるだろう。希少価値も高く、俺のところで作成した映像はこの映写機しか使えない。まあまだ映像の数が少ないので欲しがる人間は少ないだろうが、俺のこれから次第ではかなりの金になる。
まあとりあえずはウィルシ侯爵に渡し、それ以降は俺が作る映画館で配置していく。しばらくはカントクに頑張ってもらわないとな。それからカントク以外にもすぐに使える魔法能力を持った奴はいる。しかし今は魔力の許容量を上げたいということであまり魔法能力は使っていない。
まあそいつらには今後期待するということで良いだろう。それから工事の方も順調であと3ヶ月ほどでこの辺りの俺の店は全て完成するだろう。まあここまでは今まで起きた良いことだ。ここからが問題。いや、まだそこまで問題視するほどでもないが問題は問題だ。
それは俺の所有する流通禁止金貨、というか流通禁止硬貨だな、その額がとうとう金貨1億枚分を切った。最近はスマホの課金もなかったのでそこまで激しく使うことはなかったのだが、魔力生成炉を造ったのが効いた。
しかも流通禁止硬貨の大半は銅貨と銀貨だ。金貨に関してはもう2000万枚ほどしかない。ちょっと考えないとまずいだろう。魔力生成炉を一般流通できる金貨で作りたくはない。というか一般流通できる金貨はなるべく使いたくない。
どこかで流通禁止金貨を入手したいものだが、そう上手くはいかないだろう。ただ流通制限金貨ならなんとかなりそうだし、ちょっとそこで考えてみようかな。ただ流通制限金貨は金貨20万枚とかなんだよな。そんなちっぽけな…まあすごい金額なんだけどさ。俺からするとちっぽけなんだよな。
そんなことを考えながら書類に目を通す。使い魔達が現状報告として作成してくれている資料なのだが、日に日にまとめ方が上手くなって読みやすくなっている。ブラント国でまた結構な額使っているな。一体今度は何を企んでいるのか。そんな書類を見ていると窓を真っ白なカラスがつついている。
「可愛いカラスだな……真っ白なカラス!?あ、何か首から下げているな。あれは…ルシュール様の家紋だな。」
窓を開けてみるとひょこひょこと跳ねるように部屋に入ってくる。そして俺の目の前に佇むと俺に首から下げているものを渡す。どうやら手紙のようだ。開けてみるとそこにはルシュール辺境伯からの手紙以外にいくつか他の手紙も入っていた。
「こういうことはうちの使い魔に任せてくれれば良いのに…えっとまずはルシュール様の手紙から。ふむ…このカラスはルシュール様の使い魔なのか。それで…今はエルフの里にいると。トゥルーリヤさんが連れて行って…エルフの族長会議にも出席してその時に世界樹の話したのか。重要な部分は秘匿してくれたんだな。それは良かった。」
わざわざルシュール辺境伯がこのカラスの使い魔を使った理由は最低限のエルフ達からの礼節ということらしい。エルフの族長は頭の固い人が多いらしい。そしてそんな彼らは俺にとても感謝しているとのことだ。他の手紙はエルフの族長からのものらしい。
「じゃあ早速読んで…おい、なんだよこの字。まだ翻訳してないやつじゃん。課金して翻訳できるようにしないと…ん?これも他の手紙とちょっとずつ字が違う。」
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それから1通だけ他とは違う手紙が入っていた。読んでみると12英雄の1人、森弓の魔帝フィーフィリアルへの紹介状だ。ちなみに12英雄というのは国王を除いて王国トップの12人のことらしい。大臣とかそんなものすら目ではないクラスの偉い人だ。
かなり順調に進んでいる。世界貴族への道も順調だ。紹介状も十分と言えるほど集まった。手紙も読み終わり、このルシュール辺境伯からの使い魔をどうしたら良いのかと悩んでいると目の前で白い使い魔のカラスが弾けるようにただの羽に変わり、後には一つの袋が出てきた。それからメッセージカードまである。
「え、えっと…驚きましたか、これはちょっとしたサプライズとお礼の品です…って一体なんな…」
袋を開き逆さまにして中身を出してみると袋の容量からは考えられない量のものが出てきた。植物の種や苗木、そして白金貨もある。しかしその数がエグい。
「え?え?ちょ…1…5…10…20……50枚!?う、嘘でしょ!白金貨50枚!?あ、手紙がもう1枚…各族長からのお礼の品を全てまとめてって…こ、これだけで一生遊んで暮らせそうだぞ。」
白金貨はもちろんだが、種や苗木もかなりの価値がありそうだ。それこそ簡単に豪邸が立ちそうだぞ。ルシュール辺境伯も俺を驚かせようとして手紙を小分けで入れておいたんだな。ものの見事に引っかかったよ。
「袋自体も収納能力がかなり拡張されている特別製なのか。こんなにもらって良いのかな…まあもう返す気ないけど。けど…スゲェなぁ…」
とりあえずすぐにスマホに収納して種や苗木はドルイドとファーマーに任せる。しかしこれだけの白金貨、使い魔を一気に獲得できちゃうな。あ、でも魔力生成炉はどうしよう。今の流通禁止金貨の残量だと20個が限界だ。
「とりあえず…10回回すか。いつもの10連ガチャだ。だけど50連…い、いや楽しみは長くとっておこう。とりあえず10連だ。」
まあこの使い魔ガチャの必勝法は分かっているからな。このスマホの力が100%であれば問題なく良いのが出る。遺産を3つ所持している今の俺はスマホの力の消費が回復力を下回ったのでスマホの力を気にする必要がない。
では早速ガチャを回そうと思ったその時、扉をノックする音が聞こえた。返事をすると子供が1人入ってきた。何用か尋ねると俺にお客さんらしい。早いところガチャを回したいところだがお客さんが来てしまったのなら仕方ない。教会の外に出るとそこにはいつものようにリカルドがいるのだが、今日はいつもとはちょっと違った。
「あれ?今日はリカルドさんだけですか?」
「今日は魔動車の納車だ。話はついたからな。お前の魔動車を持って来たぞ。ただしこれから試験がある。後、整備員の試験もやる。準備しろ。」
おいおい急だな。まあ魔動車の試験の方はどうとでもなるけど、整備員の方は厳しくないか?なんでも魔動車の運転免許の試験員と整備員の監督官が同一人物らしい。だから整備員の方はあくまでついでということだ。今回の試験である程度どんな感じか掴んでまた次回受けるということらしい。そのための手はずは整えているとのことだ。
「早速筆記試験をするぞ。空いている部屋はあるな?」
「ええ、まあ…」
空き教室に移動すると早速試験の準備が始まる。カンニングや外部からの連絡を断つために部屋の四隅に魔道具を設置している。その間に簡単に試験内容の説明を受けるが運転免許の方は1時間ほどの簡単な試験で今日は3回まで受け直しができるとのことだ。
整備員の方は3時間の試験で1発勝負。しかも9割以上の正答がなければ受からないという結構な難関だ。試験を受けるのは4組。運転免許を俺と使い魔のポチ、整備員免許にアルケと名無しの使い魔。とはいえ試験には名前がいるのでこの名無しの使い魔にはメンテとつけた。
監督官のドワーフもこれには驚いた様子だが、まあなんとか受け入れてくれた。早速試験が始めるとまあなんとも初歩的な問題ばかりでスラスラと溶けてしまう。これなら余裕だろと思ったその時、魔動車の魔法に関しての問題が出て来た。
簡単な話は聞いたような気がするけどやばい、この辺りは全然わからない。記述式もあるが選択式もある。選択式でなんとか点数を稼ぐしかない。だけどこの選択式も当てずっぽうだ。考えろ、出題者の傾向を、そこから考えられる回答の順番を!
「え~…ポチさんは満点、ミチナガさん70点でどちらも合格です。…使い魔の方が点数いいなんて聞いたことないな。」
『ポチ・わーい!』
「ご、合格ライン70点…あ、あぶねぇ……」
もうこの際ポチに負けたとかどうでも良いわ。受かったことが大事だ。しかしポチめ、あいつはマザーから情報共有すればいくらでも答えられる。まじでずりぃ…俺にもスマホ使って試験受けて良いってルール加えて欲しかった。
アルケとメンテの方はまだテストが終わらないようだ。まあそっちは3時間の試験だから仕方ないだろうな。すると先に俺たちの実技試験をやってしまうということだ。実技試験は他の監督官がいるのでそっちで受けることとなった。
実技試験は簡単。多少アクセルやブレーキなどの配置は違うが慣れてしまえば問題ない。さらりとこなしてこれで終わり、かと思ったらまた出ました魔法関連の実技。とはいえ本当に簡単なものだ。魔動車には魔力を貯蓄する設備があるのだが、万が一魔力が切れた場合にハンドルから応急処置として魔力を供給する。それを実践する。
ただこれはある程度魔力コントロールができないといけないので、いつも大雑把に魔力を使っている人にはできないらしい。では魔力がない俺は一体どうしたらいいのかな?もうこればかりは俺にはどうしようもない。そこでスマホから使い魔を取り出してハンドルに押し当てて魔力供給する。これには監督官も苦い表情だ。
「あ~…ミチナガさん…」
「お、俺魔力無いんでしょうがないんですよ!ほ、ほら!冒険者カード!」
冒険者カードを見せて説得すると今度は哀れんだ表情を向けられた。そ、そんな表情するんじゃ無いやい!こっちまで悲しくなるだろ。ちなみにポチの方はというとなんの問題なく試験が終わったらしい。俺より使い魔の方が優秀とか泣けてくる…まあ今に始まったことじゃ無いけど。
そして運命の結果発表。もちろんポチは文句なしの満点合格。俺の方はというと魔法関連には心配が残るがまあ合格ということだ。ちょっとした特別講習みたいなのはあったけどね。
免許証の交付を待っているとアルケとメンテの整備員の実技試験が始まった。筆記試験はなんの問題もなかったのかと監督官に尋ねてみると満点合格らしい。あいつらいつのまにそんな勉強していたんだ?
そして30分もすると実技試験が終わったらしい。気になったので合格発表を近くで聞いていると2人とも全く問題なしの合格のようだ。これにはリカルドも驚いている。まあ今回はあくまでお試し受験ということだったからな。
「おい、お前の使い魔優秀すぎないか?それに一体いつの間にそんな勉強したんだ?」
「えっと…ちょっと俺もわからないです。」
そして試験は無事に終わり、早速魔動車の引渡しと代金のやり取りをするのだが…
「ちょ…金貨100万って高く無いですか?なんか魔動車本体以外にも色々と加算されているような…」
「今回の監督官の出張代に試験にかかった料金、それからある程度壊れた時の予備の部品代などだ。それに運送費もあるからな。まあこんなものが妥当だ。ここは貴族街から遠いから運送費や出張費が余計にかかる。」
なんか思いっきりボッタくられている気がする!だけどうだうだ言っても仕方ないので金を払ってしまう。しかしこれでようやく魔動車が手に入った。こんなに嬉しいことはない。じゃあこれで早速獣人街の方へ遊びに行ってみようかと思ったらこれではまだダメらしい。
俺は貴族なので貴族として最低限の装飾と家紋を入れないといけないらしい。俺家紋なんてないんだけど…。そんな愚痴をリカルドに言ったらそのくらい作っておけと怒られた。ちなみに家紋は作ってからそれを登録するために評議会に提出しなければならないとのことだ。
その手続きも無駄に時間がかかるため、家紋一つ決めるのに最低10日はかかる。魔動車を使って遊びに行くのはまだまだ時間がかかりそうだ。
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