145 / 572
第144話 植物展1
しおりを挟む
あれから7日が経った。俺はこの7日間本当によく頑張った。そのおかげでこれからほぼやることがなくなった。しかしなぜ俺がこんなに頑張れたか、それは今から6日前に使い魔達からとある報告を受けたからだ。
マザー『“中央の世界樹を囲むように5つに分かれる街の情報です。そのうちの一つの街でとある催しが行われるようです。”』
ミチナガ『“ああ、そういや5つに分かれているんだっけ。俺の今いるところと中央の貴族街、それにドワーフ街は行ったから知っているけど残り二つは知らないな。”』
マザー『“我々のいるこの場所は人間街と呼ばれていたそうです。残りの二つは獣人街とエルフ街です。世界樹が失われた今ではエルフ街でエルフを観ることはほとんどありません。今回はそのエルフ街で植物展をするようです。世界樹が現存していた時代から続く由緒あるもののようです。とても珍しい植物の展示とそれの購入もできるようです。”』
ミチナガ『“へぇ…休みなかったし、たまにはそういうのも行ってみると面白いかもな。”』
そんなやりとりをした後に、なぜか猛烈にそれに行きたくなった俺は仕事を頑張った。まあ溜まっている仕事はほとんどない。むしろこれから溜まるであろう仕事を俺抜きでもできるように調整するために頑張ったのだ。この7日間のおかげで俺はこれからの仕事がほぼ無くなった。
そして早朝から実ににこやかに教会の外で立っていると目の前に数台の魔動車が並んだ。扉が開くと勢いよくリリーが飛び出してきた。
「ミチナガくんだ!おけましておめでとうございます。」
「おけましておめでとうございます。リリーちゃんは今日も元気だ。あ、リカルドさん、リッカーさんもいるじゃないですか。今日はすみませんね。」
「お前は私をなんだと思っている。移動手段くらい自分でなんとかしろ。」
リカルドはぶすっとした表情だ。リッカーは相変わらず優しそうな笑みを浮かべている。護衛も数人いるがもう全員顔見知り程度にはなっている。ちゃんと全員に挨拶をすると俺はリカルドに答える。
「そうは言ったって馬車だと時間かかるじゃないですか。そんなに言うなら俺にも魔動車くださいよ。いや、お金払うんで売ってください。これ国家機密だから国の中でもそれなりの階級じゃないと買えないんでしょ。」
「…まあ確かにそうだ。しかし……なんとかなるかもしれんな。お前は一応子爵だから身分的にはギリギリだが問題ない。信頼度の面は…こちらでなんとかしよう。話がまとまったらもう一度連絡しよう。」
え、まじでか。俺買えちゃうの?ありがとうリカルド。リリーのことで俺にメンチきるだけの奴じゃなかったんだな。とりあえず魔動車に乗ると操作マニュアルと運用に関する規定などを説明される。事故には細心の注意をするように速度制限など様々な規定があった。一通りの説明を受けた後にこれらを守れるなら話を通すと言われた。
もちろん守れる。と言うか自動車免許を取る時よりも簡単だ。複雑な規定などはないのですぐに覚えられた。するとそこから魔動車に関わる別の面倒な規定を説明された。
「月に一度メンテナンスと情報提供のために整備に出さなくてはダメだ。事前にこの国で定められている整備員を呼んで整備する必要がある。それから年に一度分解して部品交換もする。」
「…維持費半端なくないですか?」
「ああ、だが貴族としてのステータスにもなる。それだけ費用がかかっても魔動車を持つ価値はある。」
いや、俺そんなステータスとかいらない。まあ商人としてのステータスは欲しいな。そして魔動車は欲しい。色々と希望が多くて面倒だけど、まとめてしまえばお金をかけずに魔動車を持ちたいということだ。整備にお金がかかるんだったよな?それさえなんとかなればいい訳なんだろ?
「その整備士の免許を取るための試験とかはあるんですか?もしもあるなら使い魔に受けさせることは可能ですか?」
「…この小さいのにか?それは……まあ不可能…ではない?本来は2年間修行したものが受ける試験があるのだが…試験官は技術者の多いドワーフばかりだ。お前が受けるといえばなんとかなるかもしれん。話すだけ話してみるが…自信はあるのか?」
「う~ん…どうでしょうか…まあやってみるだけやってみたいんですよ。とりあえず勉強させるだけさせてみます。」
魔動車の設計図はあるからそこからある程度は学べるだろう。後はリカルドに整備士を紹介してもらうか、ドワーフであり腕前もあるグスタフに紹介してもらおう。人脈だけはあるからいくらでもやりようはあるだろう。
リカルドと魔動車について話していると街の風景が徐々に変わってきた。窓の外は雪がちらついているが、そんな雪の中でもしっかりと葉を茂らせた植物が豊富な街並みだ。事前に情報は収集しておいたのだが、ここはエルフ街で植物栽培の得意な人々が多い。その影響で薬学や香辛料の豊富な料理などが有名だ。
こんな真冬でも巨大な温室があるので店では新鮮な野菜を提供できているとも聞く。それ以外にも様々な施設があるらしいが、そこまではまだ調べられていない。もしかしたら新しい発見とかあるかもな。今回はそこにも期待しよう。
「もう少ししたら会場に着く。始まるのは明日からだ。今日は会場で挨拶をした後にホテルに泊まるぞ。評議員や貴族を専門に請け負っているホテルがある。いい経験になるぞ。」
「う~ん…まあ分かりました。面倒な立食パーティーみたいなのはないですよね?」
「立食パーティーは無いがホテルの食事会場で主催者と幾人かの貴族達と食事をする。」
面倒だな。まあ繋がりを持つのには大切なんだけど、いちいち作法とか気にしなくちゃいけなくて食事の味がわからなくなる。まあそのあたりは我慢するかな。
しばらくして魔動車が止まると無駄にでかい会場らしき場所にたどり着いた。本当にでかい、どのくらいでかいかと言うと…とってもでかい。なんか例えようが無いな。なぜこんなにでかいかと言うと、本来は今回の展示会は世界樹が生存しているときは外で大々的にやっていたらしい。
それこそ大陸中の人間が集まってくるレベルのお祭りだったらしい。そんな規模の祭りも世界樹が無くなり、規模が小さくなったが、それでもこれぐらい広さが必要だと言うことだ。会場内に入ると明日のためにセッティングをしているようだ。誰もがガラスケースの中に植物を展示している。
どうやらあのガラスケースは何かの魔道具のようだ。何やら細々と操作しているが俺にはよくわからない。すると数人の男たちがやってきた。どうやら主催者のようで、リカルドに挨拶をしている。その流れで俺も紹介され、簡単にどんな催し物かなどを説明される。すると会場の入り口付近でどよめきが起きた。
「おお、今年も来てくれたぞ。エルフたちだ。」
「やはり彼らが来てくれるとこの催しをする意義が出てくるな。」
「本当にな。しかし毎年連れて来てくれる彼の方には感謝せねば。」
会場の入り口にはエルフ族の人々が数人、いや十数人ほど来ている。エルフは植物のエキスパートで長命種だ。人間ではたどり着けないような知識と技術力を有している。彼らの展示物は毎年新たな知識を与えてくれる。そしてそんな中に思いっきり知り合いがいた。
「あれ?ルシュール様じゃないですか。」
「おや、ミチナガくん、来ていたんですか。お久しぶりですね。」
そう、エルフであり魔帝であり辺境伯でもあるルシュール辺境伯だ。まさかこんなとこに来るとは思いもしなかった。そういえば植物の品種改良をしているとか言っていたな。俺は近寄ってちゃんと挨拶をすると他のエルフの人たちの注目、いや、ここにいる全員の注目を集めてしまった。
「それにしてもミチナガくんがこんなとこに来ているとは思いませんでした。もうとっくに英雄の国に行ったものだとばかり。」
「雪に足止め食らっちゃいまして。ここまで来るのもギリギリでしたよ。あ、それから俺この国で子爵になりました。ブラント国では男爵です。結構頑張ったんですよ。」
「それはすごいですね!ミチナガくんのところの使い魔くんはよく来ますがそういった話はしなかったものですから。どうせなら今日は夕食を一緒しませんか?どんなことがあったか話しを聞きたい。」
「それは嬉しいですね。それじゃあこの近くのホテルなんですけどそこでどうですか?」
「ええ、それで構いませんよ。ああ、皆もどうですか?彼は私の友人です。」
「良いだろう。」
おっと、こんな話を俺だけで決めてしまってはまずいだろう。リカルドのところに戻り話をしようとすると頭を抱えていた。これはまずいかと思ったが、なんか許可はもらえた。主催者からは泣きながら握手を交わされた。
ルシュール辺境伯はこれから設営と準備があるので、また後で合流することとなった。その後、リカルドとともに魔動車に戻りホテルへと向かったのだが、リカルドはその間何か悩んだようだった。ホテルに着き、部屋へととりあえず移動しようとするとリカルドに呼ばれ、そのままリカルドたちが泊まる部屋へと連れて行かれた。
「さて、色々と…いや一つだけか。聞きたいことがある。お前はあの白幻の魔帝ルシュールと知り合いなのか?」
「ええ、俺は彼の元でしばらくお世話になっていました。もう友達みたいなものですよ。ルシュール様も友人だって言ってくれましたし。あれ?言っていませんでしたっけ?」
「…初耳だ。そうか…彼はな…毎年エルフたちを連れてこの催しに参加してくれるんだ。彼のこの国での功績は非常に高い。彼はこの植物展以外は興味がなくてな…終わればすぐに帰ってしまう。だから食事ができるというのは本当にありが……待て、エルフはベジタリアンだと聞いた。しかもかなりの美食家だ。そんな彼らの食事を用意する?まずい…」
そうなのか?ルシュール辺境伯は結構何でも食べていた気がする。いや…だけどステーキみたいなのは食べていなかったかもしれないな。俺もそんなことに注意していなかったから気がつかなかったかもしれない。リカルドは慌ててホテルの料理長を呼びつけようとする。
「まってもらえますか?野菜中心で美味しいものですよね。なら俺が何とかしておきますよ。シェフも腕を上げたんできっと満足させられますよ。」
「本当か?……まあお前の商人としての腕は本物だ。よし、任せた。お前が失敗しても友人ということなら何とかなるだろう。」
保険も効いているのか。まあそういうことなら任せてもらおう。そんな保険なんか無くたって俺はやれる!正確には使い魔のシェフだけどな!シェフも大役ということがかなり張り切っている。今のうちからいくつか試作を始めたようだ。ルシュール辺境伯にも俺の成長を見てもらおうじゃないか。
マザー『“中央の世界樹を囲むように5つに分かれる街の情報です。そのうちの一つの街でとある催しが行われるようです。”』
ミチナガ『“ああ、そういや5つに分かれているんだっけ。俺の今いるところと中央の貴族街、それにドワーフ街は行ったから知っているけど残り二つは知らないな。”』
マザー『“我々のいるこの場所は人間街と呼ばれていたそうです。残りの二つは獣人街とエルフ街です。世界樹が失われた今ではエルフ街でエルフを観ることはほとんどありません。今回はそのエルフ街で植物展をするようです。世界樹が現存していた時代から続く由緒あるもののようです。とても珍しい植物の展示とそれの購入もできるようです。”』
ミチナガ『“へぇ…休みなかったし、たまにはそういうのも行ってみると面白いかもな。”』
そんなやりとりをした後に、なぜか猛烈にそれに行きたくなった俺は仕事を頑張った。まあ溜まっている仕事はほとんどない。むしろこれから溜まるであろう仕事を俺抜きでもできるように調整するために頑張ったのだ。この7日間のおかげで俺はこれからの仕事がほぼ無くなった。
そして早朝から実ににこやかに教会の外で立っていると目の前に数台の魔動車が並んだ。扉が開くと勢いよくリリーが飛び出してきた。
「ミチナガくんだ!おけましておめでとうございます。」
「おけましておめでとうございます。リリーちゃんは今日も元気だ。あ、リカルドさん、リッカーさんもいるじゃないですか。今日はすみませんね。」
「お前は私をなんだと思っている。移動手段くらい自分でなんとかしろ。」
リカルドはぶすっとした表情だ。リッカーは相変わらず優しそうな笑みを浮かべている。護衛も数人いるがもう全員顔見知り程度にはなっている。ちゃんと全員に挨拶をすると俺はリカルドに答える。
「そうは言ったって馬車だと時間かかるじゃないですか。そんなに言うなら俺にも魔動車くださいよ。いや、お金払うんで売ってください。これ国家機密だから国の中でもそれなりの階級じゃないと買えないんでしょ。」
「…まあ確かにそうだ。しかし……なんとかなるかもしれんな。お前は一応子爵だから身分的にはギリギリだが問題ない。信頼度の面は…こちらでなんとかしよう。話がまとまったらもう一度連絡しよう。」
え、まじでか。俺買えちゃうの?ありがとうリカルド。リリーのことで俺にメンチきるだけの奴じゃなかったんだな。とりあえず魔動車に乗ると操作マニュアルと運用に関する規定などを説明される。事故には細心の注意をするように速度制限など様々な規定があった。一通りの説明を受けた後にこれらを守れるなら話を通すと言われた。
もちろん守れる。と言うか自動車免許を取る時よりも簡単だ。複雑な規定などはないのですぐに覚えられた。するとそこから魔動車に関わる別の面倒な規定を説明された。
「月に一度メンテナンスと情報提供のために整備に出さなくてはダメだ。事前にこの国で定められている整備員を呼んで整備する必要がある。それから年に一度分解して部品交換もする。」
「…維持費半端なくないですか?」
「ああ、だが貴族としてのステータスにもなる。それだけ費用がかかっても魔動車を持つ価値はある。」
いや、俺そんなステータスとかいらない。まあ商人としてのステータスは欲しいな。そして魔動車は欲しい。色々と希望が多くて面倒だけど、まとめてしまえばお金をかけずに魔動車を持ちたいということだ。整備にお金がかかるんだったよな?それさえなんとかなればいい訳なんだろ?
「その整備士の免許を取るための試験とかはあるんですか?もしもあるなら使い魔に受けさせることは可能ですか?」
「…この小さいのにか?それは……まあ不可能…ではない?本来は2年間修行したものが受ける試験があるのだが…試験官は技術者の多いドワーフばかりだ。お前が受けるといえばなんとかなるかもしれん。話すだけ話してみるが…自信はあるのか?」
「う~ん…どうでしょうか…まあやってみるだけやってみたいんですよ。とりあえず勉強させるだけさせてみます。」
魔動車の設計図はあるからそこからある程度は学べるだろう。後はリカルドに整備士を紹介してもらうか、ドワーフであり腕前もあるグスタフに紹介してもらおう。人脈だけはあるからいくらでもやりようはあるだろう。
リカルドと魔動車について話していると街の風景が徐々に変わってきた。窓の外は雪がちらついているが、そんな雪の中でもしっかりと葉を茂らせた植物が豊富な街並みだ。事前に情報は収集しておいたのだが、ここはエルフ街で植物栽培の得意な人々が多い。その影響で薬学や香辛料の豊富な料理などが有名だ。
こんな真冬でも巨大な温室があるので店では新鮮な野菜を提供できているとも聞く。それ以外にも様々な施設があるらしいが、そこまではまだ調べられていない。もしかしたら新しい発見とかあるかもな。今回はそこにも期待しよう。
「もう少ししたら会場に着く。始まるのは明日からだ。今日は会場で挨拶をした後にホテルに泊まるぞ。評議員や貴族を専門に請け負っているホテルがある。いい経験になるぞ。」
「う~ん…まあ分かりました。面倒な立食パーティーみたいなのはないですよね?」
「立食パーティーは無いがホテルの食事会場で主催者と幾人かの貴族達と食事をする。」
面倒だな。まあ繋がりを持つのには大切なんだけど、いちいち作法とか気にしなくちゃいけなくて食事の味がわからなくなる。まあそのあたりは我慢するかな。
しばらくして魔動車が止まると無駄にでかい会場らしき場所にたどり着いた。本当にでかい、どのくらいでかいかと言うと…とってもでかい。なんか例えようが無いな。なぜこんなにでかいかと言うと、本来は今回の展示会は世界樹が生存しているときは外で大々的にやっていたらしい。
それこそ大陸中の人間が集まってくるレベルのお祭りだったらしい。そんな規模の祭りも世界樹が無くなり、規模が小さくなったが、それでもこれぐらい広さが必要だと言うことだ。会場内に入ると明日のためにセッティングをしているようだ。誰もがガラスケースの中に植物を展示している。
どうやらあのガラスケースは何かの魔道具のようだ。何やら細々と操作しているが俺にはよくわからない。すると数人の男たちがやってきた。どうやら主催者のようで、リカルドに挨拶をしている。その流れで俺も紹介され、簡単にどんな催し物かなどを説明される。すると会場の入り口付近でどよめきが起きた。
「おお、今年も来てくれたぞ。エルフたちだ。」
「やはり彼らが来てくれるとこの催しをする意義が出てくるな。」
「本当にな。しかし毎年連れて来てくれる彼の方には感謝せねば。」
会場の入り口にはエルフ族の人々が数人、いや十数人ほど来ている。エルフは植物のエキスパートで長命種だ。人間ではたどり着けないような知識と技術力を有している。彼らの展示物は毎年新たな知識を与えてくれる。そしてそんな中に思いっきり知り合いがいた。
「あれ?ルシュール様じゃないですか。」
「おや、ミチナガくん、来ていたんですか。お久しぶりですね。」
そう、エルフであり魔帝であり辺境伯でもあるルシュール辺境伯だ。まさかこんなとこに来るとは思いもしなかった。そういえば植物の品種改良をしているとか言っていたな。俺は近寄ってちゃんと挨拶をすると他のエルフの人たちの注目、いや、ここにいる全員の注目を集めてしまった。
「それにしてもミチナガくんがこんなとこに来ているとは思いませんでした。もうとっくに英雄の国に行ったものだとばかり。」
「雪に足止め食らっちゃいまして。ここまで来るのもギリギリでしたよ。あ、それから俺この国で子爵になりました。ブラント国では男爵です。結構頑張ったんですよ。」
「それはすごいですね!ミチナガくんのところの使い魔くんはよく来ますがそういった話はしなかったものですから。どうせなら今日は夕食を一緒しませんか?どんなことがあったか話しを聞きたい。」
「それは嬉しいですね。それじゃあこの近くのホテルなんですけどそこでどうですか?」
「ええ、それで構いませんよ。ああ、皆もどうですか?彼は私の友人です。」
「良いだろう。」
おっと、こんな話を俺だけで決めてしまってはまずいだろう。リカルドのところに戻り話をしようとすると頭を抱えていた。これはまずいかと思ったが、なんか許可はもらえた。主催者からは泣きながら握手を交わされた。
ルシュール辺境伯はこれから設営と準備があるので、また後で合流することとなった。その後、リカルドとともに魔動車に戻りホテルへと向かったのだが、リカルドはその間何か悩んだようだった。ホテルに着き、部屋へととりあえず移動しようとするとリカルドに呼ばれ、そのままリカルドたちが泊まる部屋へと連れて行かれた。
「さて、色々と…いや一つだけか。聞きたいことがある。お前はあの白幻の魔帝ルシュールと知り合いなのか?」
「ええ、俺は彼の元でしばらくお世話になっていました。もう友達みたいなものですよ。ルシュール様も友人だって言ってくれましたし。あれ?言っていませんでしたっけ?」
「…初耳だ。そうか…彼はな…毎年エルフたちを連れてこの催しに参加してくれるんだ。彼のこの国での功績は非常に高い。彼はこの植物展以外は興味がなくてな…終わればすぐに帰ってしまう。だから食事ができるというのは本当にありが……待て、エルフはベジタリアンだと聞いた。しかもかなりの美食家だ。そんな彼らの食事を用意する?まずい…」
そうなのか?ルシュール辺境伯は結構何でも食べていた気がする。いや…だけどステーキみたいなのは食べていなかったかもしれないな。俺もそんなことに注意していなかったから気がつかなかったかもしれない。リカルドは慌ててホテルの料理長を呼びつけようとする。
「まってもらえますか?野菜中心で美味しいものですよね。なら俺が何とかしておきますよ。シェフも腕を上げたんできっと満足させられますよ。」
「本当か?……まあお前の商人としての腕は本物だ。よし、任せた。お前が失敗しても友人ということなら何とかなるだろう。」
保険も効いているのか。まあそういうことなら任せてもらおう。そんな保険なんか無くたって俺はやれる!正確には使い魔のシェフだけどな!シェフも大役ということがかなり張り切っている。今のうちからいくつか試作を始めたようだ。ルシュール辺境伯にも俺の成長を見てもらおうじゃないか。
10
お気に入りに追加
545
あなたにおすすめの小説
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる