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第130話 使い魔たち

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 ドワーフ達に桜の古木を渡したその日の夕食時、それはそれは大変だった。ドワーフ達はドワーフ殺しを飲ませてもらった上に桜の古木までもらったのになんの恩返しもなくては自分たちの沽券にかかわると言って何か欲しいものはないかとずっと付きまとって来た。

 俺からはとりあえず金属の精製の方法とスミスを弟子入りに出させたのだが、それでも足りないから何かないかとずっと聞いてくる。しかし金属の精製方法を知るのとスミスを弟子入りさせたらそれで割と満足だったりする。しかし他に何かないかなんて…

「あ、そうだ。この設計図なんですけど…作ること可能ですか?」

「なんだ?…こいつは釣竿か?しかしなんともアホな設計図…いや、どれも高度な理論から成り立つ…完成品は馬鹿げておるがこいつは珠玉の逸品だ。こんな設計図、どこで手に入れた?」

「以前貴族の方々と盛り上がってしまいまして、その知識を全て総動員させて完成させたものです。まああまりにも無茶苦茶なので作れないと諦めていたんですよ。」

 俺もすっかり忘れていたが以前(第24話参照)白熱して作り上げた完璧な釣竿の設計図だ。そういえば俺が預かっていたのをすっかり忘れていた。まあこんなもの作れるのは当分先なので放っておいたのも確かだ。しかし彼らなら作り上げることも可能かもしれない。

「う~む…いくつか揃えることのできない素材はあるが、他のもので代用することも可能だ。少し考える時間をくれ。」

 どうやら職人の魂に火をつけてしまったらしい。先ほどまでの騒がしさが嘘のように静まり返ってしまった。俺は夕食を食べきりそそくさと部屋に戻っていった。こういう時の人は邪魔をしてはいけないだろう。

 部屋に戻ると俺はベッドの上でゆっくりと横になった。これでようやくゆっくりとした自分の時間が過ごせる。昨日は酒の飲み過ぎでそのまま寝てしまったからな。ゆっくりする暇がなかった。俺はスマホを開いてまったりごろごろする。やっぱりこの時間が最高だ。

 色々とやりたいことはあるが一番重要なことから始めよう。それは使い魔ガチャだ。リカルドからもらった白金貨15枚をまだ1枚も使っていない。これは由々しき事態だ。俺がガチャを回せるのに回さないなんて…はぁ…本当に忙しかったな。

 しかしここで少し躊躇してしまう。なんせ白金貨はこの先の英雄の国ではその価値が跳ね上がり金貨50万枚分だと言われた。つまり白金貨15枚は金貨750万枚分だ。それを簡単に使っても良いものだろうか。

「とりあえず2~3回だけ回すか?いや…でもなぁ…やっぱりガチャは10連でしょ。まあこのガチャには10連機能ないんだけど。だけどやっぱりロマンだよなぁ…」

 まあ10連がないんだから途中で止めれば良いんだよな。6回ぐらい回して良いの出なかったら辞めれば良いんだし。まあ考えていても仕方ないからとりあえずガチャ回すか。

「まずは1回目…まあノーマルか。2回目は…またノーマルか。」

 前回のブラント国の10連を思い出してしまう。あの時はスーパーレアが2体だけだった。もしや今回も…ま、まだ可能性はある。大丈夫だ。大丈夫。あと2回やってダメならもう今日はやめておこう。

「あ、レア来た!…レア?レアってなんだ?今までスーパーレアしか出たことないのに。逆に珍しいな。あ、またレア来た。」

 レアってなんだろ。気になるけどまあ後でにしておこう。しかしこれは上り調子、今勢いは俺にある。フフフフフ…。あ、これだとやられる感じになっちゃう。落ち着いて次にいってみよう。

「あ、ノーマル…またノーマル!!やべぇ!」

 やばいぞ、せっかくの勢いが完全になくなった。どうする…ここで終わりにしておくか?いや…もしかしたら次出るかもしれない。そ、そうだ…きっと出るはずだ。

「た、たの……来たぁ!スゥゥゥパァァァレェェェアァァ!!」

 来たぞ来たぞ!しかもその次もスーパーレアだ!これは完全に来てるぞ!8回回してノーマル4回、レア2回、スーパーレア2回。50%の確率でレア以上が出てる。間違いなくいける!

「次は…うお!!まじかよ超久しぶりにウルトラレア来たじゃん!やっぱり今日は来てるぞ!」

 これは完全に来てるぞ。そう思い3回回すと3回ノーマルが来てしまった。あ、もしかしてもう運全部使い切った?嘘でしょ…もう終わり?い、いや…まだくるはずだ。まだ可能性が…

「お、来たぁぁ!本日2回目のウルトラレア!!しかもその次もスーパーレア!まだいける!まだいけるはずだ!」

 そう思いもう一度回すとノーマル。しかし完全に今は来ているはずだ。このまま回せばさらにウルトラレアが出るはずだ!

「次は…あ、あれ?これで終わり?嘘でしょ!白金貨15枚全部使い切った!?まじで!?」

 嘘でしょ、まだ気分的には10回くらいのつもりなのに。あれ?確か…ノーマルが8回、レアが2回、スーパーレアが3回、ウルトラレアが2回。あ、全部で15回だ。物の見事にガチャの戦略に嵌ってんじゃん。もうズブズブだよ、沼の奥底に引きずり込まれているよ。

 しかしまあ結果的に言えばかなりの成果だよな。半分まではいかないけどかなりの割合でレア以上出たし。なんならウルトラレア出ちゃったし。そんな時ふと画面ハジを見てみるとびっくりすることが起きていた。

「あ、バッテリーの残量が80%台になってる。もしかして…良い排出にはスマホの力を使う的なやつか?」

 確かにウルトラレアとかになるとスマホに機能が拡張されたりするからな。スーパーレアだってスマホに機能が増えたりする。つまり良い排出にするためにはスマホのバッテリーの残量が多い方が良いってことか。

 確かにそう考えるとブラント国の時の使い魔ガチャが悪かったのも頷ける。あの時はスマホのバッテリーの残量がギリギリだった。だから力の消費が少ないノーマルが8回も出た。そうなるとこの使い魔ガチャの必勝法が明らかになるな。

「ガチャの必勝法か…なんかそう考えるとちょっと冷めるな……まあその必勝法は使わせてもらうけどね。」

 こういうガチャは当たるか当たらないかのギリギリを攻めるのが一番良い。そこに必勝法とかってなるとなぁ。あ、けどこの考えってギャンブラーと一緒か。やばい、下手なこと考えると破滅するぞ。とりあえず今当たった使い魔の確認でもしよう。

 シティアプリを確認すると新人のノーマル使い魔達がポチから色々と話を聞いていた。彼らはこれから何をするかゆっくりと考えていくのだ。ポチは教育係としていつも頑張ってくれている。感謝しないとな。

 それから周囲を見ているとガーディアンの訓練に一人混ざっている奴がいる。見た所新顔だ。話しかけてみるとどうやらスーパーレアの使い魔のようだ。

名無し『“拙者は剣士です。能力は切れ味が上がるというものです。よろしくお願いします。”』

ミチナガ『“よろしく。じゃあお前は…ソードだ。それで良いか?”』

ソード『“ええ、よろしくお願いします。”』

 拙者とかいうから堅物かと思いきや優しい感じのやつだな。一人称が拙者なだけで武士感もないし、まともそうなやつだ。どうやらガーディアンとの特訓はお互いの能力を引き伸ばすためにはちょうど良いようだ。ガーディアンの物体を硬質化させる能力とソードの切れ味をあげる能力。完璧な組み合わせだ。

 その後さらに探してみると一人農場で働いている新入りを見つけた。こいつもスーパーレアの使い魔のようだ。まだ新入りのはずなのに農作業がとびっきり早くてうまいので割と目立った。

名無し『“始めましで。おらは農業の能力が高い能力です。”』

ミチナガ『“よろしく。じゃあ…ファーマーって名前でどうだ?”』

 どうやらそれで良いらしい。訛りがあるようだが一体なんの訛りなんだよ。お前まだ生まれたばっかりだろ。なんか妙に貫禄あるんだよな。名前お父さんにしようかと思ったぞ。

 それからファーマーは近くにもう一人新入りがいるということで教えてくれた。どうやら今は家畜小屋の中で作業をしているらしい。なので家畜小屋の中を探索しているとすぐにそれらしきヤツを見つけた。

名無し『“ああ、どうも初めまして。すみません作業に夢中で…ああ、私の能力は動物の飼育能力が高いというものです。ちなみにレア度はレアです。”』

ミチナガ『“ごめんな、作業中なのに。聞きたいんだけどなんでレア度はレア止まりなんだ?ファーマーだって似たような能力だろ?”』

名無し『“いえ、ファーマーは収穫する農産物の成長速度と品質を上げる能力もあるんです。言葉にするなら…加護的な感じですかね?スーパーレアの方々はみんなそういった加護的なものを与えるんです。レアの使い魔はあくまで自分自身のみにしか影響はありません。”』

ミチナガ『“へぇ…そんなことになっていたのか。ああ、そういや名前をつけてなかったな。じゃあ…飼育員だしエンチョウとか?”』

エンチョウ『“いいですね、気に入りました。それとお願いなのですが今後、様々な動物も飼育してみたいので色々と連れてきてください。”』

 そういえばまだまだ動物は少なかったな。まだ鶏と牛くらいしかいない。そのうち色々と買い集めておこう。色々と挑戦するのは良いだろうからな。その後エンチョウから他の使い魔の情報を聞き出すことができた。どうやら2人ほど聖国の方に行っているらしい。

 俺はスマホの中の世界樹を選択し、そこから聖国へ移動する。すでに何度か来たことがあるがここはなんというか別世界だ。どこもかしくも光り輝いている。美しい綺麗な場所だ。ここでは妖精界の植物を問題なく育てることができる。精霊の力や妖精の力で溢れているのだ。

 そこには綺麗な泉もある。これは元妖精の溜め池だ。今では課金もしてグレードアップし、妖精の泉となっている。1日あたりの水を汲める量と魚類の大きさが大きく上がっている。まだ次の強化も残っているようだが、そのためにはもう少しこの聖国そのものの力をあげなくてはならないようだ。

 そんな妖精の泉から水を吸い上げるミツバチがいる。しかしそのミツバチは俺のよく知る普通のミツバチと違って気品に溢れている。この蜂は精霊蜂だ。最高に美味しい蜂蜜をつくり出してくれるそうなのだが、俺はまだ食べたことがない。まだこのスマホに引っ越したばかりなので巣作りで忙しいそうだ。

 そんなミツバチの後を追ってみるとそこには大きな蜂の巣があった。そこの前では2人の使い魔が精霊蜂を相手に何かを聞いているようだ。どうやらあの2人の使い魔は新入りの使い魔のようだ。

ミチナガ『“仕事中だけどちょっといいか?新しく入って来た新入りだろ?今何しているんだ?”』

名無し『“ああ、これはボス。今は精霊蜂に蜂蜜の出荷の話し合いをしているところです。もう巣もできたのでは蜂蜜の出荷ができるそうです。ああ、私はスーパーレアの使い魔で能力は養蜂の能力です。”』

名無し『“ぼくわぁ~いまね~蜂さんとね~なんのお花をね~育てるか~相談中~~ぼくわぁ~お花の能力~それとね~蜂さんからね~”』

名無し『“彼は花の育成能力を持っています。ただレアなのですが、今精霊蜂から精霊の能力を借り受けてその力でより花を育てることに特化しています。元々精霊蜂には花を育てる能力がありますから。”』

ミチナガ『“手短にすんだよ、ありがとう。じゃあお前らの名前は…養蜂家の方がビーで花の方がフラワーな。蜂蜜出来たら教えてくれ。また他の使い魔達にみんな食べられちゃうから。”』

ビー『“了解です。ボスが食べるまで大事に保管しておきます。”』

 ビーの方はハキハキしていてわかりやすいけどフラワーはゆったりすぎて聞くのに時間がかかるな。しかしこれでようやく美味しい蜂蜜が食べられそうだ。花にもこだわれるからすごいのが作れそうだ。

 これで残りはウルトラレアの使い魔だけだ。場所はどこか聞いてみるとどうやら研究所にいるらしい。なんでも社畜が呼び出して何やらやろうとしているようだ。すぐに聖国から出て研究所に向かう。そこでは何やら怪しげな会議が行われていた。

ミチナガ『“おーい、何やってんだ?”』

社畜『“おお!これはこれは我が主人どの。今まさに世紀の大発明が行われるところです!その名も収納短縮機ですぞ!”』

名無し『“お初にお目にかかる。我は転移を扱う能力者。1日に一度まで仲間の使い魔の元まで他の使い魔を転移させることができる。この能力を社畜殿に説明したところ、彼も呼ばれました。”』

名無し『“初めまして。我輩は魔術陣を扱う能力者。我輩の能力を合わせて今回のものを完成させようとしているところです。”』

社畜『“我輩は閃いたのであります。この2人の能力を合わせれば素晴らしいものが完成すると。特に彼の魔術陣を扱う能力は革命をもたらす!これから一気に研究が進みますぞ。”』

ミチナガ『“よくわからないから詳しい説明よろしく。”』

 ゆっくりと話を聞くとまずは転移の能力の方だが、聞いたままの通りの能力で使い道がなさそうにも思えた。しかし例えば今まで他の街に登録させておいた使い魔の元に他の使い魔を転移させて新しく登録させることができる。今まではルシュール領にはシェフしか行けないので他の使い魔を登録できるのはありがたいな。

 そして一番よくわからない魔法陣を扱う能力。これは一体どういう能力なのかと思ったら魔法を使うことのできる能力、とは少し違うらしい。簡単にいうと魔道具を作ることのできる能力のようだ。

 魔道具はそれぞれに魔力を別の性質に変換する術式が刻み込まれている。術式によって水や火を出せるのだ。この魔法陣を扱う使い魔はその術式を扱える能力者らしい。つまり俺は魔道具を作れるようになったのだ。これは実にありがたい能力だ。

 そして今考えているのはこの転移の能力を解析して、その術式を書き込んだ魔道具を作り出すということだ。結構な難題のようにも思えるが1週間ほどで完成しそうとのことだ。これが出来上がると使い魔達は複数のアイテムを同時に収納することができるらしい。社畜初めてまともなものが作れるかも。

ミチナガ『“まあ出来上がったら是非とも見せてくれ。それからお前ら2人には名前をあげないとな。えーっと…転移させる方はワープで魔法陣を扱う方はウィザード…ウィザにしよう。”』

ワープ『“ありがたく頂戴する。では早速研究にかかる。ご用の際にはいつでもお申し付けくだされ。”』

ウィザ『“我輩も頑張らせていただきます。それから魔法陣には特別な言語が複数必要ですのでそちらの言語を翻訳できるようにしておいてください。”』

ミチナガ『“了解。じゃあ頑張ってくれ。”』

 新入りの使い魔達と話していたらいつの間にか時間がそこそこ経ってしまった。俺はウィザの依頼通りいくつかの言語を翻訳できるようにした。ただ全部で金貨1000万枚かかったんだけど。まあまだ流通禁止金貨が残っているからいいけどね。しかしだいぶ減ってきたか。

 まあ考えていても仕方のないことか。もう少し夜更かしをしたいところだけど明日も明日で忙しそうだから早いところ寝ることにしよう。なんか忘れている気がするけどまあいいか。




 ミチナガが寝静まった夜中、スマホの画面に明かりがつく。そこには昼間に回収した金槌の遺産を回収できたという報告がされていた。しかし最も重要なのはそれによりスマホのバッテリーが250%に到達したことだ。金槌の遺産の力は過去最高のようだ。すると何やら画面に通知が来た。

『……ぁ……よう…くか………要望……半分……読ん…ない…に……まあ……今度……か……さて……仕事……か……頑…れ……人の子……救っ……』

 スマホの画面は消え、読み込みが始まる。この通知を見たものは誰もいない。

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