スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第114話 モンスター素材販売

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 翌朝、マックたちとともに飯を食べていると神妙な面持ちでマックたちが重要な話があると切り出した。ハジロもその様子には驚いたようでなぜかそちらも真剣な表情になっている。

「頼む!今回の護衛料前払いしてくれ!たまには思いっきり遊びたいんだ!」

「は?まあ別にいいけど…たまにはってお前らブラント国でもアラマード村でも結構遊んでいただろ。」

 しかしまあ遊びたくなる気持ちも十分わかる。そこで今までの護衛料を全て支払う。まあそれなりに頑張ってくれていたと思うのでちょっと色もつけて金貨60枚だ。マックたちは5人なので割っても一人金貨12枚手に入る。一般人の給料2ヶ月分はゆうにあるな。

 それを受け取ると皆一斉に遊びに行こうとするので今日の護衛を一人生贄として捧げてもらう。そこで厳正なじゃんけんという名の協議の結果、ナラームが今日は1日護衛として働くことになった。

「よっしゃ!俺らは遊んでくるからお前は頑張れよ!」

「サボっちゃダメっすよナラーム。」

「お前ら覚えとけよ!!」

 ナラームを除いた全員は水を得た魚のように生き生きとした表情で遊びに行った。ナラームは不服そうな顔をしながらも仕事なのでしっかりと俺についてきた。ハジロも一人では不安だということで俺と行動をともにする。

 まずは冒険者ギルドに行くのはまだ早いので商業ギルドに向かい良い土地がないか情報集めだ。場所はおそらく冒険者ギルドの周辺だが、詳しくはわからないので道中誰かに聞こう。あ、それから大事なことを忘れていた。

ミチナガ『“それじゃあお前ら頼んだぞ。”』

眷属一同『“りょうかーい!”』

 俺はスマホから眷属を出して周囲に散会させる。これがブラント国で学んだ新しい国についた時の眷属の使い方。名付けて眷属マップ作成だ。眷属を周囲に散会させてマップをどんどん埋めて行く。さらに店名なども記憶させて、より正確なマップを作成するのだ。しかも眷属ならば死んでしまっても金貨の消費なしで復活することが可能だ。

 移動速度が遅いのが難点だが、1~2日も頑張ってくれれば全部埋まるだろう。それに今は雪が積もっているので眷属たちが目立たない。何事もなくマップを作成できるだろう。

「おい!商業ギルドの場所がわかったぞ。ここからすぐだ。」

「サンキューナラーム。じゃあとっとと移動しよう。」

 ナラームは仕事が早いな。ナラームが聞いた通りに移動すると商業ギルドが見つかった。この国の冒険者ギルドもそうだが、商業ギルドはさらにでかいな。中に入ると装飾などもこだわっている。何というかかなり見栄を張った感じだな。正直ごちゃごちゃしすぎてあんまり好きじゃない。とりあえず受付でとっとと済ませよう。

「ようこそ当ギルドへ。ご用件を伺います。」

「店を開くための店舗を買いたいんです。場合によっては土地だけでも構わないから一覧を出してください。それなりに広い土地でお願いします。」

 受付嬢はかしこまりましたというとすぐに担当の人に引き継ぎを行った。しばらく時間がかかるということで座って待っていると飲み物まで出してくれた。結構手厚い対応だな。まあ土地買うほどの上客だからそのぐらいは当然か。

「これ…緑茶じゃないですか。…しかも上物ですよ。」

「え!本当だ!緑茶は今までなかったんですよね。これは嬉しいな。是非とも後で買っておかなくちゃ。」

 まさかのこんなところで緑茶発見。今までは紅茶や薬草茶ばかりで緑茶を飲めなかったのだ。まあ紅茶の茶葉は本来緑茶の茶葉と同じだ。なので一度紅茶の茶葉を収穫直後に買い付けて緑の状態で飲んでみたが、コレジャナイ感がすごかった。やっぱり紅茶の茶葉と緑茶の茶葉はちょっと違うようだ。

「やっぱり緑茶を飲むと落ち着きますよね…」

「そうですね。まあ私はコーヒー党なんですけど。」

 仲間と思いきやまさかの裏切り。そういえばコーヒーもまだ見つけていないな。こっちの方は温帯とか寒帯に近いからコーヒー栽培には向かないのだろう。そのうち熱帯とかそっち方面にも遊びに行きたいなぁ。

 そんなことを話していると若い獣人の男が冊子を持って現れた。説明されるがまま冊子を読むとわかりやすいように写真付きで一覧表が作られていた。オススメ物件は間取りなども細かく書かれている。これならすぐに良い物件を見つけられそうだ。

「せ、関谷さん…これ…」

「何です?…元教会?現在も孤児院として…ってこれは売ったらまずくないですか?」

「これは確かに孤児院なのですが、所有権を有する方が売ってしまいたいと言い出したんです。何でも事業に失敗して赤字が出たのでその補填にと…慈善事業は金にはなりませんから。」

 まあ確かにそうだけど、何というか遣る瀬無い気持ちになるなぁ…しかし金がないのにそんなことを続けて行くのは無理だろうし仕方のないことだ。するとハジロは何やら興奮した様子で立ち上がった。

「関谷さん!この土地を我々で買いましょう!子供達のためです!」

「え…普通に嫌ですけど…」

「な、何でですか!?」

 何でですかって…そんなことあげようと思えばいくらでもあげられる。まずこの土地買ったところで俺には一文の得にもならない。むしろ損しかない。まあこの国である程度信用みたいのは買えるかもしれないが、それにしては高すぎる買い物だ。

 それにこの土地を買って空いているスペースでうちの店を開いたとしよう。ここ立地はあんまりよくない。大通りから2本も離れた場所にあるのだ。人が寄り付かないし、誰にも気がつかれないで閉店する可能性だってある。何で俺がそんなに損をしなくてはならないのだ。

「で、では私が」

「葉白さんへの報酬は金貨1000枚です。それに比べてこの土地は金貨5000枚。葉白さんでは買うことは不可能です。まあ正直、広いだけなのでこの土地の価値は金貨3000枚もないでしょう。持ち主が赤字の補填用に値段を釣り上げているだけです。まあそのおかげでこの土地が買われずに済んでいるんでしょうね。それでも値引きさせても葉白さんでは無理ですよ。」

 それでもと引き下がろうとしないハジロをナラームに頼み落ち着かせている。ハジロはよほど慈善事業に傾倒しているのだろう。だからと言ってそれを俺にも押し付けないでほしい。今の俺にはそんなことをする金の余裕はない。

 それから昼ごろまでいくつか物件を見繕っておき、今度内見ができるように頼んでおく。ハジロは最後まで不服そうだったが、致し方ないだろう。世の中そんなに甘くはない。まあ地球にいた頃のハジロなら歯医者なので金もたっぷりあっただろうけどな。

 その後は冒険者ギルドへと向かった。もうギルド側も買うものを決めてあるだろう。ギルドに着いて要件を話すと別室に案内された。そこは加工場に備え付けられている部屋のようで幾人ものギルド職員が待っていた。

「えっと…この大勢の人は何ですか?」

「お気になさらなくても大丈夫です。彼らは素材を買い付けたい貴族や商人と連絡を取るものです。モンスターの素材の状態を見極めながら彼らに伝え、その場で買い付けてもらうんですよ。」

 あれか、海外とかによくあるオークションの電話で落札するやつ。まあ素材が素材だから買い付けたい人間も多くいるんだろうな。では早速始めるとのことなので、加工場に移動してモンスターを順次取り出す。

「えっと…じゃあこれから。」

「アースオークですね。状態は…これはSクラスですね。一体どうやって倒したのやら…これの総数は?」

「えっと…127体ですね。どれも同じ状態です。全部取り出しますか?」

「いえ……おい、すぐに伝えろ。アースオーク状態はS、総数127体。」

 すぐに買い付け商人や貴族に連絡をすると50体まで一体あたり金貨20枚の値がついた。ただそれ以上の買取りは値が下がるとのことだ。それでも買うかと言われたので俺はすかさずスマホで連絡を取る。

ミチナガ『“同時並行で始まっているな?アースオーク金貨20枚以上の値はついたか?”』

マザー『“連絡はついています。ルシュール領のシェフから40体まで金貨25枚がつきました。ブラント国で残り37体を金貨20枚で取引可能です。”』

ミチナガ『“よし!それで頼んだ。”』

 同時並行で多国間オークションを行う。これぞこのスマホと使い魔達の強みだ。今の俺、この世界に来てから一番輝いている気がする。販売数量がどんなにあっても値下がりが起こらないで販売取引が可能だ。

「では50体まで販売します。ああ、それから言っていませんでしたが、この販売はここにいる方々だけでなく私の販売経路もありますので、あまり安値だと他の方に売りますのでご了承ください。」

「なっ!…そういうことは早めにおっしゃってもらわないと…わかりました。他の方々にも伝えます。」

 そこからは今までと打って変わってさらにオークションがヒートアップした。金貨数千や数万が平気で飛び交う。その熱気はまるで戦場だ。そして名前の分かるものは全て売り終わった。ここからは名前もわからないモンスター素材の販売だ。正直どうなるかわからない。

「あと数点あるんですけど、実は名前がわからないモンスターなんです。こちらで調べながらお願いします。」

 そう告げてから俺が取り出したのは何かのモンスターの片翼だ。ムーン曰くこのモンスターは希少だから殺さずに片翼だけをもらったらしい。その程度の傷なら数分で回復するとのことだ。

「……これは…まさか……いや…そんな…」

「お、おい…この羽……間違いないって…八咫烏…しかも漆黒…S級…上位だぞ…」

 全員うろたえることもできずただ固まっている。貴族との取り次ぎをしている職員たちでさえ固まったまま動かない。それでも何とか声をかけ正気に戻させる。

「す、すみません…お、おい…お伝えしろ。八咫烏漆黒種、状態S…片翼のみの販売だ…」

 取り次ぎの職員たちがそれを伝える。するとしばらく固まったのちにまるで怒号のような声が離れた俺にも聞こえるほど響いた。ここからは先ほどまでのチンケな販売ではない。今まではいっても金貨数万だ。それが今は普通に金貨十万、百万と膨れ上がっていく。この内容はマザー経由で他の使い魔にも伝えられ、ブラント国やルシュール領でも取引が始まった。

 しかしこのままではどこまでも値段がつり上がり、収拾がつかなくなると判断した職員が翼を半分に分けて2つで再度取引を開始した。それから30分ほどが経過したのちに買い取り手がついた。

「それでは当ギルドの会員様1枚が翼の先側を購入、そしてミチナガ様の伝の方が根本側を購入でよろしいですね?」

「は、はい…」

「それでは八咫烏漆黒種の翼の先側を金貨874万7000枚で購入いたします。」

 や、やばい。これはやばい。何つう金額だよ。ちなみにもう片方はルシュール領で売れた。というかルシュール辺境伯が金貨880万枚で買った。この最後のやりとりだけで金貨1754万7000枚っておかしいだろ。今までのやり取りが本当に可愛かったよ。

 金の受け渡しはまだこれからモンスターを細かく解体をしてする必要がある。それから金銭のやり取りをするということなので当分先らしい。しかし今日だけで、八咫烏以外の金も含めて金貨2000万枚が動いた。コミュ障の男ナイトは、今日だけで金貨2000万枚の大金持ちになった。

 あ、そういや俺も手数料で2割もらえるんだよな。つまり俺としても金貨400万枚の儲けだ。やばい、なんかすごく悪い気がして来た。俺何もしてないもん。というか冒険者夢ありすぎだろ。冒険者になろうかな…あ、でも俺クソ雑魚だから無理だわ。

 ちなみに今日はここまでで終わらせたけど、他にもまだまだこのクラスのやばそうなモンスターの素材がちらほらある。だけどこれを今日売るのはやめておこう。俺の心臓がもたない…

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