スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第66話 死の湖へ

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 翌朝、事前に関所の開く時間と場所を聞いておいた俺は時間通りに目的地に到着した。こんなのあったんだなぁ…。この領地に入った時はルシュール辺境伯の転移で一瞬だったからこんなところは通っていない。ここに来るのは初めてだ。

「おお、来たな。こっちだこっち。」

 到着するとすでに待っていたマックを含む冒険者5人組が手招きをしている。しかしなんだろうか…ガラ悪そうで近づきたくない。帰ろっかなぁ…

「ちょいちょいちょい!何帰ろうとしてんの。これからだぜにいちゃん。」

「いやぁ…なんか、みなさん見たら色々不安になって来て…」

「安心しろって、俺たちゃ一流だからよ。とりあえず列に並ぶぞ。後、自己紹介もしておかないとな。」

 そのままズルズルと引きづられながら他のメンバーと合流する。みんなガタイ良くて、囲まれるとなんかいじめられっ子の気分。

「よし、これでいつでもいけるな。じゃあ早速自己紹介から始めるか。まずはこちらが今回の依頼人の……そういや俺も名前聞いてなかったわ。」

「ミチナガです。今はミチナガ商店という店を運営しています。今回はメリリドさんの紹介で指名依頼をさせてもらいました。それと伝言です。俺に何かあると今の仕事場所にも影響が出るからちゃんと護衛するようにだそうです。私としても安全に行きたいのでお願いします。」

「姉御にも念押しされたらそりゃ頑張るが、俺らだってプロだぜ?それに死の湖までなら、なんてことはねぇよ。ちゃんと仕事はするから安心しな。おっと、俺の自己紹介だが…まあ手短にな。マックだ。このチームのリーダーだ。獲物はこの双剣だ。ゴブリンだろうがオークだろうが細切れよ。」

 ヘヘッと自慢している。確かに強そうなことは確かだ。しかし双剣ということは前に出て戦うが、指揮系統は大丈夫なのだろうか?

「次に俺っすね。俺はケック。見て分かる通り武器は弓っす。食料調達と援護射撃っていう扱いになっているっす。まあ俺以外は遠距離攻撃苦手っすからね。」

「けっ!俺らにはそんなちまちましたもん性に合わねぇんだよ。俺はガーグ、この戦斧でどんな奴でもぶった斬ってやるよ。俺の腕力はここのギルドの中でもトップだぜ。」

「やめとけ、それ言ったせいで姉御に目をつけられたの忘れてねぇだろ。またボコボコにされんぞ。」

「う、うるせぇ!姉御の怪力が異常なんだよ!なんで俺のこの戦斧を強化もなしに軽々と扱えんだよ……くそっ」

 メリリドさんってそんなに怪力なのか?そんなイメージは全くない。確かにがっちり…いやむっちりしている感じはあるけど…冒険者やめて肉ついたとか?まあそんな失礼なこと決して言わないけど。けどあの感じも男としてはたまらない要因なんだよなぁ…

「まあ俺たちは昨日会っているしこんなもんでいいだろ。後の二人だが…まずは借金返しに行っていた方からだな。」

「おい!そんな紹介の仕方あるかよ。全く…ああ、俺はナラーム、槍使いだ。まあ長剣なんかも使うんだが、一人くらい中距離で戦うやつがいた方がいいと思ってな。主に雑務担当だ。ああ、借金返しに行っていたのは本当だが、その借金はこのチームの借金だ。こいつら金遣い荒くて毎回任務のための金借りんだよ。まあ自分で言うのもなんだが、俺がこの中で一番まともだ。よろしくな。」

 なるほど、多分この人がこのチームの要だな。戦闘において状況を見ながら槍を使ったり長剣を使ったりするんだろう。周りを見て動いて集団をうまく動かして勝利に導いているんだろうな。この人と仲良くしていこう。

「あ、気をつけた方がいいっすよ。ナラームは元山賊で、結構やばかったっすから。姉御にボコられて改心した奴の一人っす。」

 前言撤回、ナラーム危険。なんだよ元犯罪者かよ。まあ今はとっくに改心したんだろうけどそれでも注意に越したことはないな。

「おい、もうすぐ関所が開くから手短に済ませるぞ。俺はウィッシ、土魔法使いだ。戦闘時は防御壁を建てるから俺の近くに来い。以上だ。列が進み始めたから行くぞ。」

 おお、なんかこう…堅物って感じだな。しかし魔法使いか。そういう役職もあるんだな。だけど土魔法って言っていたな。つまりいろんな属性の魔法を使うっていうわけじゃないのか。まだまだ俺の知らないことがいろいろあるんだなぁ…

「ちなみにウィッシは昨日帰ってきた途端に風俗に行くほどの色狂いっす。結構なドMで有名なんすよ。必ず稼いだ金は嬢王様に会うために使うっすから。ちなみに土魔法使い全般がMらしいっす。本当かどうかは知らないっすけどね。」

 その情報は今いらなかったなぁ…せっかくまだまともな人に会えたと思ったのに。あれ?このチームまともな人間一人もいなくね?ヤベェ…これから数日まじで不安なんだけど……




「おーい、そっちに行ったぞ。」

「じゃあ俺っすね、任せといて…あ、ガーグさん!俺の獲物!」

「ちまちまおせぇんだよ。こんなもんぶった斬ればすぐ終わる。」

「おい、ケック。まだ敵はいるんだから他のを片付けろ。マック!どこまで行く気だ!戻ってこい。」

 なかなか手早く片付けるな。あれからすでに5時間は経過している。朝のうちはまだまだ元気なので基本的にずっと歩いてきた。ちょっとしたモンスターの襲撃の際に俺は休憩していたのでまだ余裕はある。

 今は数十体のゴブリンの群れの襲撃を受けたのでそれを片付けているのだが、10分ほどでほとんど片付いてしまった。さすがに現在C級でB級の昇格を間近にしている冒険者というだけある。

 そのまま時間もいいので、どこかで安全を確保したのちに昼休憩をすることとなった。彼らもこれだけの群れだったので返り血を流したいらしい。確かに武器も血だらけなので生臭い。

「じゃあ汚れを落としたら食事の準備をするっすから待っていてくださいっす。」

「ああ、食事は俺が準備しておきますよ。何かリクエストありますか?」

「本当っすか?なら…肉と米っすかね。力の出そうなやつがいいっす。」

「おーいケック!早くしろ!まとめて洗い流さないと魔力の無駄になる!」

 ケックは呼ばれてすぐに仲間の元に向かった。俺は一人残されているが、そこまで遠くに行ったわけでもないし、すでに安全は確保されている。それに彼らのもとに行くと血なまぐさくて嫌だ。

「じゃあ飯の準備しておくか。とは言っても…」

ミチナガ『“おーい、飯の準備頼む。椅子は6個な。飯は丼物でガッツリ系で頼む”』

ピース『“はい!すぐに用意します!えっと…シェフさーん…ご飯は…はい、はい…あ、今用意しますから。”』

 またメッセージ飛ばすのを切るの忘れていたな。俺からのメッセージは打ち込んで送信するが、使い魔達のメッセージは頭の中で思い浮かんだものをそのまま送信する。だから切り忘れるとずっとメッセージが送られる。

 少し待っているとピース達が机と椅子を持って現れた。まあ正確には重たくて持つというより、しがみついている感じだけど。重たいものを動かすのは俺の役目だからな。用意が終わると次は食事を持って現れた。メニューは親子丼と焼き鳥丼だ。

 俺は移動で汗をかいたので塩分多めの焼き鳥丼。タレに絡んだ鶏肉とネギがうまそうだ。あとはここにパラパラっと海苔をかけたいところだが、まあそれは我慢しよう。こんな内陸じゃあ海苔は手に入りそうにないからな。

「お待たせしたっす……なんか色々できてるっす…」

「こいつは…なんかすごいな……ただ机と椅子はいらないぞ。呑気に座って飯を食えるほど安全でもないからな。」

「あ、それもそうですね。」

 確かに椅子に座ってのんびり昼食をとるなんていうのはあまりにも不用心だろう。ここはモンスターの出る森の中なのだから。正直、ルシュール辺境伯たちとの旅のせいでかなり感覚が鈍っている。

 とりあえず昼食を受け渡した後に机と椅子をしまう。それから適当な地面の上に座って食事を始める。そう言えばこんな風に地面に座って食事をするのは久しぶりだな。

 ルシュール辺境伯たちと釣りに行った時はちゃんと机が用意されていたからな。もしかしたら小学校の遠足の時以来かもしれない。

 服が汚れる、虫がつくなどそんなことを考えていた時もあったが、こうして地面の上に座って食事をするのもたまにはいいもんだな。

「こんな熱々の飯が普通に食えるとはな。しかも美味い。」

「ホントっすね。これだけ美味い飯が依頼中に食べられるなんて本当にラッキーっす。だけどわざわざ用意しておいたんすか?」

「うちは食品を扱う店ですから。色々あるんですよ。」

 ここで正直にいう必要もない。なんせ作ったのはついさっきだ。使い魔達も食事をするので毎日のように昼食は作られている。なので急遽頼んでもある程度用意はできているので、すぐに出来上がるのだ。

「それよりも目的地まではあとどのくらいですか?先ほどの戦闘があったので少し遅れますかね?」

「いや、それまでは順調に進めていたからな。この調子なら夕方ごろには着けるだろうよ。さて、飯食ったらとっとと行くぞ。あまり休みすぎると体がだらけちまう。」

 昼食を手早く食べると再び移動を開始した。それからもモンスターによる襲撃はあったがなんとか予定通り、日が沈む前に死の湖にたどり着いた。

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