66 / 572
第65話 冒険者ギルド
しおりを挟むさて、店は使い魔の眷属を4体おいてきた。彼らは自由に俺のスマホからアイテムを取り出せるし、何か問題が起きても知らせることが可能だ。まあ昨日の営業を見る限り、俺がいなくても全く問題はない。眷属たちと従業員のみんなさえいれば十分に店は回る。
なので今日は冒険者ギルドに来ている。これは来るべき英雄の国へ行く時の護衛選抜だ。別にそこまで急ぐことはないので、じっくりと選ばせてもらおう。
冒険者ギルドに入ると中には屈強な男女がぞろぞろといる。まあ魔法使いのような割と華奢めの人もいるにいるのだが、俺はあまりこの雰囲気は好きではない。なんて言うんだろう、みんな血の気が多いから怖いんだよね。ちょっと小突かれただけで死ぬ気がする。
とりあえずビクビクと移動しながらギルドの受付カウンターに移動する。結構視線が集まっていてなんか怖いし恥ずかしい。受付の人は優しい感じのお姉さんだった。受付は外部の人のことも考えてこう言う人を選んでいるのかな?だとしたらそれ正解。結構心が安らいだよ。
「こんにちは。ご依頼の方でしょうか。」
「はい、護衛依頼を出したいんです。場所は…死の湖まで。」
「なるほどわかりました。それでは…」
「おいおいにいちゃん。護衛かい?それなら俺たちがやってやろうか?ヒック…」
うっわ、何これテンプレじゃん。マジでこんな風に絡んでくる人いんのかよ。ちょっとなんだろう。逆に感動したわ。すげぇ…
けどこの感じ、酔っ払いにただ絡まれただけという感じも否めないな。こいつまだ朝だって言うのにかなり酔っぱらっているぞ。足元ふらついているし。
「いえ、指名依頼なので大丈夫です。」
「そんなこと言うなって、俺たちに任せとけば…ヒック…安心ってもんよ。」
えーっと…こう言う時の対処法はすでにメリリドさんから教えてもらっているし、貰っている。懐から一本の短剣を取り出し、机に突き刺す。
「紹介状があるんです。これを見せれば良いって言う。」
「そ、それは……め、メリリドの姉御の…つ、つまり……し、失礼いたしやしたぁぁ!!」
うわ、一瞬で酔い冷めているよ。すげえなメリリドさんって。周りの冒険者も何人か立ち上がっているし、あ、なんか小刻みに震えている人もいるんだけど。
「えっと…指名依頼と言うことなのですが、どなたをご指名なんでしょうか?」
「えっと…C級冒険者のマックと言う人のパーティですね。そこなら大丈夫だと聞きましたから。」
「あ、それ俺だわ。」
お前かい!ものすごく信用できなさそうなんだけど!こんな朝っぱらから酔っ払っているようなやつで本当に大丈夫なのか?メリリドさん?メリリドさーん!
「いや…その…他の人でいい人いますか?」
「ちょちょちょ…待ちなや、にいちゃん。確かに今は酔っ払っているが、それは前の報酬の良い仕事がうまくいったからってだけだ。俺たちはちゃんと腕は良いんだぜ。もうじきB級に上がるしよ。」
「…本当ですか?」
「本当だぜ。まあここで話しすんのもなんだからこっち来いよ。俺たちのパーティ紹介するからよ。」
う~ん…まあそう言うなら試しに話しくらいはしてみるか。ダメそうならメリリドさんに断りを入れて他の人を探そう。今の所、第一印象は最悪だけどね。
「おう、ここだ。おいオメェら指名依頼だ。護衛だってよ。」
「あ?護衛?今そんな面倒なことしていられねぇな。他あたんな。」
「俺たちは今羽振りはいいんっすから、そんなシケた依頼はごめんっす。」
「そうですか、わかりました。メリリドさんの紹介でしたが、そんなにダメならメリリドさんにもそう伝えて断っておきます。」
「「ちょっと待て!」」
うお、すごい反射神経だな。一瞬で席から立ち上がって俺の肩掴むとは。ちょっと怖かったけど、その小刻みに震える手で肩握られているとなんだかなぁ…
「あ、姉御のお知り合いの方で?」
「今、メリリドさんの働いている商店の経営者です。」
「こ、これはこれは大変失礼いたしましたっす。それで…お願いします!このことは姉御には黙っておいてください!もうあんな目にあうのはごめんだぁぁ!!うわぁぁぁん」
「な、泣くんじゃねぇよ、だからお前はガキだって言われんだよ。ほら、酒でも飲んで元気出せや。」
「オメェも手が震えていんぞ。いい加減グラスから手を離せ、中身がみんな溢れちまう。」
「そんなにメリリドさんはすごい人だったんですか?」
今からは想像もつかな……いや、なんとなく雰囲気で感じる時はあるが、それでもそこまで想像できないな。そんなに怖かったのか。
「やめてやってくれ。みんなすげぇ世話にはなったが、それ以上に恐怖が優っちまってんだよ。今はにいちゃんのとこで働いていんだな?」
「ええ、毎日ニコニコ働いていますよ。なかなか忙しくて苦労をかけさせてしまっていますが。」
「ニコニコ?」
「ダメだ…金棒片手に笑われた時のことしか思い出せねぇ……うぅ…すまん、ちょっと吐いてくる。」
そう言うと厠の方へと一目散にかけて行く。よっていたはずなのにかなり足元はしっかりとしているな。一瞬で酔いは覚めたか。
「それで依頼は受けるんですか?」
「ああ、もちろんだ。断りでもしたら姉御が来るからな…みんなもそれでいいだろ?」
「もちろんだ。断ることなんてゆるされねぇ…」
「しかし3人だけですか?それだと護衛には…」
「ああ、今は3人だが、普段は5人だ。残り二人は借金の返済と娼館に行ってんだ。戻ったらこっちから伝えておく。5人なら問題ないだろ?さて、依頼内容に戻ろうか、死の湖までだったな?」
「ええ、そこまで行って帰る間の護衛です。一泊二日、場合によっては日数が伸びる場合もあります。」
「なるほどっすね。つまり、今回の護衛は俺たちの見極めっすか。」
やはりすぐに気がついたか。実はメリリドさんと護衛の見極めのために移動する、いいとこはないかと聞いた時に今回行く死の湖がすぐに出てきたのだ。多くに人が護衛の見極めのために行く場所らしい。
初めは死の湖なんて、なんて酷いとこに行かせる気だよ!と思ったのだが、この死の湖は周囲にモンスターも人も植物でさえもない場所で、かなり安全な場所らしい。そこには何か面白いものがあると言うのをメリリドさんから聞いており、ちょっと楽しみにもなっている。
「それで今回の報酬はいくらなんだ?」
「金貨1枚です。日数が伸びた場合もその値段で。」
「安くないっすか?5人で割ったらたいした儲けにもならないっすよ。」
「ボーナスが欲しかったらメリリドさんが、私が一日可愛がってあげる、だそうです。」
「金貨1枚だけでお願いします。」
まあ確かに日数が伸びても金貨1枚だけと言うのは少し少ない。5人で割ったら大銀貨2枚だからな。せいぜい二日までが割に合った仕事だ。それ以上となると損になる。
「しかし俺らもそんな仕事じゃこの先食っていけなくなる。その後の護衛の仕事はデカいんだろうな?」
「ええ、英雄の国まで行こうと考えていまして。そこまでの護衛をする方を探しにきたんですよ。」
「英雄の国っすか。超長期の護衛依頼っすね。俺、あの国に行ったことまだないんすよ。」
「それだけ長期ならB級への昇格依頼にも十分なるな。俺らにも渡りに船ってことか。よし、それならなんの問題もねぇ。仕事についてだが、行くのはいつにする?なんなら明日でもかまわねぇぞ。」
「本当ですか?なるべく早い方が良いと思っていたのは確かですけど。」
「数日分の護衛に必要なものならすぐに集まる。じゃあ明日で良いな。すぐに全員に伝えておこう。時間は関所が開く時間だ。集合も関所で良いな?」
「ええ、それで大丈夫ですよ。ではそれでお願いします。」
21
お気に入りに追加
572
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる