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第7話 使い魔
しおりを挟むロックスの酒場で食事を済ませた後、宿に戻り今日の成果を見る。
成果と言っても堆肥と釣り餌だけだが。
しかしかなり重要なのは間違いない。
早速ファームファクトリーを開き、堆肥を使用する。
今ではレベルも上がり、7つの畑を扱うことができるようになった。
それぞれの畑ごとに堆肥を使用するのかと思いきや、一度使用することで全ての畑に影響があるようだ。
これに関してはかなりありがたい。
さすがにこの量の堆肥はそう簡単に集めることはできない。
とりあえず一気に全て使うのではなく、半分だけ使用する。
するとどこからともなくメーターが現れてどんどん増えていく。
おそらくレベルが上がっているのだろうが、結構な勢いでレベルが上がっている。
確かにこの堆肥は長い間放置されていたようだし、生ゴミや葉などがしっかりと分解されている。パッと見ただけだが、良いものであることは間違いない。
結果として一気に土壌レベルが8になった。
しかしこれはまだ半分の量なのだ。
残りも全て使用すると土壌レベルを12にすることができた。
『レベル10になりましたので果樹をアンロックします。』
「お!果樹もいけるようになったのか。これはありがたいかもな。」
果物は人気もあるし単価もそれなりに良い。
それに加工すれば、さらに付加価値をつけることだってできる。
試しに何が育てられるか、見てみるとかなりの種類があった。
それなりにこの世界の果物にも詳しくなってきたので、わかるものもいくつかあった。
しかしその値段が高い。最低でも金貨50枚もかかるのだ。
しかも下の説明欄を見て見ると収穫まで最短でも2週間はかかるし、一度植えるとその畑はその果樹専用になってしまうとのことだ。
その代わり手入れは野菜に比べて少なくて済む。その上一度育ててしまえば一定期間の経過で再び収穫することが可能とのことだ。
デメリットもあるが、それよりもメリットの方が大きい。
なんせ7つも畑があると全てに手が回らなくなってきているのだ。
それに価格割れを起こすため、なかなか野菜を売ることができず、かなりの量の在庫がある。
しかし今すぐに買うと決断できるほど安い値段ではない。この件に関しては一旦保留ということにしておく。
そういえばもう金貨もだいぶ溜まってきていて80枚近くある。
これなら何か新しいアプリを買っても良いんじゃないだろうか。
正直今は金策において、良い値で魚が売れるので問題ない。
いずれ新しい商売をする予定ではあるが、今の仕事がもう少し落ち着いてからにしよう。
そうなると買うものは便利アプリだろう。
ならば前々から欲しかったマップアプリとメモアプリ、それに計算機にライト機能といったところを今のうちに買ってしまおう。
ライト機能に関しては、課金しなくても普通に使えるようにしとけよと思わなくもない。まあ安いので許そう。
一度に4つも買ったというのに金貨22枚で済んだ。
いや、金貨22枚は大金なのでこの考え方はおかしいだろう。
まあ他のアプリが異様に高いせいで安く見えてしまうというのもあるのだが。
まずはマップアプリを開いて見る。
すると今まで俺が通ってきた道だけが地図になっていた。
どうやら俺が行ったことのない場所は表示されないらしい。
地図を見る感じ、俺の半径5m以内が地図として作られるようだ。
色々いじくっていると機能追加欄がでてきた。
そこには建物の名称の追加、ストリートビュー、など色々あったがどれもバカみたいに高い。
その中でマップの記録範囲の拡大が金貨5枚だったので購入しておいた。これで俺から半径10m以内が記録されるらしい。さらにその上の記録範囲拡大があったが、少し値が上がるため一旦保留だ。
その後も色々いじってみたが、課金しない限り特にできそうなことはないので次に移ることにした。
次はメモアプリ。
これも無料でいいだろ!と心の底から叫びたかったが諦める。
これは普通にメモできるだけだ。なんら普通のメモアプリと変わりない。
追加機能はないかといじくっていると、ボイスメモの追加があったので追加しておいた。
これも金貨5枚だった。
次に計算機であるが、機能追加をどこからして良いかわからない。おそらく、これには特に追加機能はないと思う。
色々と計算機能がついているようだが、正直そこまで細かい計算はないので、基本的に暗算で済む。だからあまり使わない。
じゃあなんで買ったんだよと言われそうだが、そのうち使うかもしれないからというだけである。
最後にライト機能だが、これには意外と追加機能がいくつか存在した。
光量アップと光球、聖光の3つである。
光量アップの意味はわかるが、後の二つは意味がわからない。
ただ値段が高いので、もしかしたら良い機能なのかもしれない。だが、当分買う気にはなれない。
さて、これで買ったものすべての確認を終えたが、今のところ特に使わない。まあそのうち役に立つことを祈ろう。
結果として金貨32枚で済んだ。
手元にはギリギリ金貨50枚残っているので果樹の苗を買ってしまおう。
実はアプリを買いながら、なんの果樹の苗を買うか考え、すでに何にするか決めた。プルーの木だ。
まあわかりやすくいうとりんごだ。
実自体はそこまで高く取引はされないが、多くの人に愛されているもので供給量が増えても、そこまで問題がないというメリットがあるのだ。
そういうことでプルーの苗を早速植えて行く。
いつもの地獄のタップ作業かと思いきや、たったの500回ほどで済んだ。
いつもならその10倍近くはあるというのにかなり楽だった。
これは果樹が育てやすいということなのか、土壌が良くなって楽になったのかのどちらかだが、まあそのうちわかるだろう。
これでやることはすべて終えた。
今日は疲れたので最後に女神ちゃんガチャを引いたら寝ることにしよう。
そう思いアプリを起動させてガチャを引く。
するといつものカプセルではなく何か白い塊が転がり出てきた。
『大当たり!使い魔をゲットしたよ!』
「え?使い魔?」
よく見て見ると、先ほどまでの白い球から手足が伸びてきて、ちんちくりんな人形のようになった。
こんなことは初めてで正直よくわからない。
すると画面にチュートリアルのような説明が現れた。
『使い魔は様々なアプリで使用することができるよ。例えば自分の代わりにアプリ内で作業をやらせたり、手元に召喚して働かせることもできるよ。ただしシティアプリがないと消えてしまった使い魔を復活することはできないよ。』
「つまり…俺の代わりに働かすことができるってことか。結構手が回らなくなってきた作業も多いし、ちょうどいいかもな。」
『指示の仕方は簡単。ホームボタンを長押しして画面が切り替わったら指示を出してね。それと使い魔は同じ作業を繰り返しやらせておくと作業効率が上がるよ。』
「それって…。いや、皆まで言わないでおこう。とりあえず俺の代わりに釣りでもしておいてもらうか。」
ホームボタンを長押しにする。
すると画面が切り替わる。
もう完全にあれだがツッコミは入れないぞ。
指示を出した後作業を眺めていたが、どうやら熟練度的なものがあるのか、それとも単にこの使い魔がポンコツなだけなのかはわからないが、何度も釣りを失敗していた。
失敗するたびにホームボタンを長押しにしてアドバイスを与える。
それをちゃんと聞いているようで試行錯誤をして行く。
その姿がなんとも愛らしく、初めて魚を釣り上げた時は思わず諸手を挙げて喜んでしまった。
その後はコツをつかんだのか、どんどん魚を釣り上げて行く。
どんどんといっても一度魚を釣り上げると、釣った魚を自ら持ち運んで収納アプリにしまいに行く。
その姿は小動物的な可愛さがあり、思わず微笑んでしまう。
そのため1匹を釣り上げるのに30分近くかかっている。そんな様子を見ていると気がつけば、
朝になっていた…
「う、嘘だろぉ…今日はゆっくり寝るつもりだったのに…」
こんなことなら一緒に釣りをしていればよかった。
ほんの数分だけ見守るつもりが、がっつり見守っていた。
今日も魚の納品の約束があるので、このまま眠るわけにはいかない。
仕方ないのでこのまま起きて商業ギルドが空いたら朝イチで納品して、それから寝ることにしよう。
そんなことを考えていると使い魔がラディールにかぶりついていた。
どうやら使い魔も食事は必要なようだ。
表情は読み取れないが食事に不満はないのだろうか。
さすがに生の食べ物をそのままっていうのは…
「じゃあ金貯まったらどこでもクッキングのアプリ買うか。」
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