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序章 迷子の子猫ちゃん状態
リーダーは46歳(偏見)
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「おい! 起きろ、起きろっ」
肩を揺さぶられ、微睡の中から急浮上する。気分はダイバーである。潜ったことないけど。
「……武装した強姦っすか?」
朧げな頭で必死に目を見開く。目の前に存在するは毛皮で身を包み、要所を鎧を当てているおっさんだった。結構エグい寝起きドッキリだね。
凝視する。どう考えても武装した強姦にしか思えなかった。
いや、思い込みだよな。さっきまでご飯食べていたし…場面展開が早すぎるって物語かよ。現実でした。
何で寝てしまったのかは…空気中に存在する構成物質の小数点以下を求めるに等しい無意味な行為なので突かないが、寝る前はご飯を食べていたのだ。ドラゴン肉って食いづらいんだね。筋がエグい牛肉って感じでした。旨味強過ぎな。食感の悪さで帳消しだけどな。
そんな訳で腹の満たされで微睡の中に出発した訳なのだが…ああ、夢じゃなかった。おっさんの足元に火起こしの残骸があったわ。
火を作るのに苦労したんだぞっ! と思ったが魔法で火種作ったので苦労はしていない。強いて挙げるなら乾いている木材とかを見つけるのが大変でした。サバイバル適正あるわ、魔法。どうも、魔法使いです。
目の前のおっさんが無言で見つめてくる。
流石の俺でも初対面の人に強姦呼ばわりは怒るよな、と思っていたが
「な、何でバレたんだ……? まさか匂いとかか? 昨日致したのが悪かったのか……」
おっさんの後ろに立っている男女二人組の男の方が喋った。
「おい待て。変に心を読むな。いや、読んでねえけどな? 擦りすらしてねえけどな?」
「ニアピンってやつっすか?」
「ニアですらねえよ」
立ち上がり、オールバックの金髪の兄ちゃんに近づき思いっきり殴る。クソ痛そうだった。殴る方がだが。
少し避けたのか頭ではなく、鎧で覆っている肩に打撃が逸れたのだ。鈍い音が聞こえた。
「ーーーッッッぅう……こ、殺す」
殴った手を抱えてうづくまる。
封印された右腕が、と変なアテレコしてみる。何だよ、ギャグかよ。移動販売か?
喧嘩は売って買う、っとよく聞くがギャグも同じようになるとは……時代の移り変わりって早いですね。先取りってレベルじゃないけどな。先行き過ぎて帰ってこれないまである。
痛そうだね、と覚めてきた頭の中で考える。行動は冷たい目線を向けることで示した。おっさんの肩を優しく掴んだ金髪の兄ちゃん。事情を知らなかったら親父狩りの現場かと思ってしまう。あながち間違いじゃないので問題はない。
さて、ドラゴンとエルダートレントとは別のベクトルでヤバいやつと出会ってしまったな。逃げるか、と思って上体を起こすが、自身の服装がウェディングドレスな事実に目が行く。立ち上がるに立ち上がれなかった。
入れ替わるようにして片割れの茶髪のロン毛ウェーブのお姉さんが近づいて来た。
「ごめんね? 変な人だけど悪い人じゃないから」
「……これが?」
「うーん、説得力皆無だわね。まあ、それは別に良いとして」
良いのかよ。
「このウィンドドラゴン、倒したの貴女であってるかしら? ソロで潜ってるなら無理強いはしないけど、都合がよかったら一緒に行動しませんか、ってお誘いに来ました。起こしてごめんね」
「こちらは実力者が入って攻略の安全性が上がる、君は夜営とかで一人で休める時間ができる、とwin-winな関係だと思うんすよ」
今まで付き添っていた金髪の兄さんが言う。
実力者、攻略、安全性、と危機感をより一層覚えてしまう言葉が出てきたことに身震いしてしまう。確かに昨日からトイレ行ってねえもんな。しょうがないわ。
…てか、良くこの肉塊で個体名まで判別できたね。博士かな? 俺だったらデッカイ蜥蜴がいるね、恐竜かな? と言うまである。無いけどな。
「確かに倒したのは俺だけど…動物愛護団体とかに連れてかれるってオチはないですよね? 拉致監禁でしょっ引いてもらいますよ?」
「動物、愛護団体? ……えっと、神聖神教事かな? 流石に森の中での殺傷に関してまで口を出してこないから。……拉致監禁? え?」
「まあ、確かに正当防衛すもんね。文句言ってきたら手足縛ってここに放置しましょ。近くで肉とか焼いて敵をおびき寄せてから逃げましょう」
「動物愛護とは別の罪状で捕まりそうね、それ」
「悪魔的発想すね、それ」
二人からツッコミを受けるがお仲間のおっさんの悲痛な声をバチバチにスルーしてる薄情はどこにいるんですかね……。
俺がその立場でも同じ事をしてるだろうから何も言わないが。悪魔じゃねえか。どうも、悪魔のアクです。これが名は体を表す、か。
微かに残った神聖神教がグルグルと脳内を回遊する。マジで何だよ、意味重なりすぎだろ。頭痛が痛いが可愛く思えるわ。新しい四文字熟語かな? 違うけどな。
気にはなったが動物愛護団体的なものなのだろう。どこの世界でもいるんだね。
妙な共通点を知り、変な気持ちになる。
手を差し出される。何それどこの青春漫画かよ。例え下手だな。
了承の意味もかねて手を掴み、立ち上がる。近くで見れ場見るほど美人だったのでうどんを捏ねる要領でニギニギする。バレない程度にだが。
「よし、って事で自己紹介ね。私がキルビア、今年で3年目のスタンダードよ」
スタンダード? 何が?
謎が謎を呼ぶ自己紹介だったがキルビアが「ステータス」と言い、半透明な板を回転させて見せてくる。何その機能。新生代のスマホじゃん。バーチャル的なね。
名前;キルビア
性別;女
職業;中級魔道士
レベル;47
ステータス
『だって魔道士だもん』
魔法
『・基礎魔術lv7 ・中級魔術lv6 ・上級魔術lv3』
ユニークスキル
『無し』
称号
『「非表示」』
と書いてあった。
魔道士? 魔法と何か差異でもあるの? と、気になったのだがここで妙案である。俺にはユニークスキルがあった。いや、ここで使えるかわからないけどさ。
ステータスや魔法と同じような要領で発動してみる。
名称;魔術
「杖や魔導書、魔法石などの触媒を通じて魔法を発動する術の事。適正の有無で発動できる魔法とは違い、それぞれの属性の触媒があれば発動できるので戦士でも誰でも使える万能なもの」
らしい。
何だよ俺の下位互換じゃん、首を垂れ供物を捧げよ。
って、それもう生贄要求してるよな。何に使うんだよ、黒魔術でもするのか? 魔術ってついてるんだしキルビア使えそうだけど……魔道士との違いってあるのかしら? ってかそもそも黒魔術ってあるのか?
名称;黒魔術
「基本的には魔術と同様に触媒を通じて発動するが触媒の内容が生き物寄りな魔術。触媒の生体エネルギーに左右されるのでミジンコが出る時もドラゴンが出る時も。別名召喚術」
あったわ。てか意識してない中でもスキル発動できるのね、会話の流れが途絶え過ぎて先進まないんだけど。誰が原因だよ、俺だな。
とりあえず最後に……
名称;スタンダード
「冒険者ギルドに登録されている三階級の一つ。ビギナー、スタンダード、エキスパートに分かれる。分ける方は使える魔法、技術の総数とレベルの高さ。下から1~30。31~60。61~↑。と、言うように分かれている。スタンダードは中級者。これ、テストに出ます」
なるほど、と納得は出来たが…スキルの説明が俺寄りになっているのは気のせいじゃないよな。まあ、尊敬する人の言葉使いは真似しちゃうって言うもんな。
目の前のキルビアに戻る。
「理解したけど……これって、こっちも見せた方が良いのか? プライバシーの問題が……」
両手で体を包み、か弱い女性を演じる。か弱くはねえよな。ウェディングドレス姿な時点で精神は鋼鉄より硬いもんな。強制的な着せ替えだけど。
そんな俺に気を使ったのか片方の金髪オールバックがアホのような笑顔で近づいてきた。肩をバンバンと叩く。何だよ、スキンシップ下手か。
「大丈夫っすよ! こっちがお願いしてる立場なんで見せてるだけで本当は名前と年齢、所帯持ちか否か、を答えれば良いだけなんだから!」
「おお、合コンみたいだな」
行った事ないけど。
「もう……違うわよ? このアホの金髪がシェルダ。身も心もアホだけど索敵はお手の物だわ」
「豚に真珠みたいなもんか? いや、馬の耳に念仏か……?」
「はっは! 意味はよくわかんねえけどバカにされてるよな、俺!! 美人さんに罵倒は新しい道開けそうっすよね、リーダー?」
美人さん……? まさか、俺の事? この遊んでそうな男に言われるくらいな造形ってことは将来安定? 美人局? それは意味違うよな。
まあ、森の中にドレスでドラゴンを倒す美人ってだけでプラマイのマイナス寄りだよな。格好がおかしすぎるわ、流石に。
リーダーと振り返ったフェルダが見た先は、過食部位を探しまくった結果の残骸ドラゴンを眺めているおっさんの姿だった。呼ばれて振り返る。
「お、話は済んだか? よろしくな、俺はリーダーのギルバだ。まあ、よろしくつっても森から抜けるまでだけどな。俺達迷子だし。もしかして帰り道とか知ってない?」
初対面、あった時に感じた常識人あるあるの苦労してます雰囲気は一瞬で頭の中から消え去った。キルビア以外変人しかいねえじゃねえか。どうも、変人筆頭のアクです。見た目から醸し出してるもんな。
そしての迷子発言。戦力増やしたところでどうするんだよ。この森のモンスター全部狩るつもりなの? わお、コンプリートしないと気が済まないタチなのかしら? マジで脳筋な。俺も魔法ブッパしか能がないから反論できないけどな。
「……また、変な話に俺を巻き込んだな? キルビアどころじゃなくてその子も変な目線を向けてるじゃねえか」
「どうも、アクです。変な目線じゃねえけど……強いて言うなら母性本能的な? ほら、馬鹿な子ほど可愛いって」
嬉々としてフェルダがギルバに視線を合わせる。
「リーダー、これまさかの脈ありじゃないっすか!?」
「ばかっ! 逆だよ逆。キルビア並みの精神攻撃じゃねえか!! 何だよ、俺は別に馬鹿じゃねえよ! 巻き込まれてるだけの被害者だって」
と、言ってるが頬は赤く染まって照れている様子だった。何だよ、チョロインかよ。おっさんがってどこに需要があんだよ……ね、キルビア?
「やっぱり、可愛いわね。46歳」
「ガチガチのおっさんじゃねえか……その年でその性格は難あり判定どころじゃないと思うけど」
ギャップ萌えすら覚えないレベルである。ギャップは想像外を通り越していけば良いってもんじゃないですぜ?
そして常識人かと思われたキルビアも変態であった。何だよこのグループ。おっさん、能天気、おっさん好き、コスプレ、と森の中を歩くには心配しかない組み合わせである。一番コスプレが訳わかんねえな。メンバーで薄れてるけどウェディングドレスだもんな。
視界が結婚式のもの過ぎて現実味が薄くなっていた。森の中で挙げる結婚式って何だよ、エルフかよ。
どうも、森と結婚するアクです。エリザベス女王の簡易版かな?
肩を揺さぶられ、微睡の中から急浮上する。気分はダイバーである。潜ったことないけど。
「……武装した強姦っすか?」
朧げな頭で必死に目を見開く。目の前に存在するは毛皮で身を包み、要所を鎧を当てているおっさんだった。結構エグい寝起きドッキリだね。
凝視する。どう考えても武装した強姦にしか思えなかった。
いや、思い込みだよな。さっきまでご飯食べていたし…場面展開が早すぎるって物語かよ。現実でした。
何で寝てしまったのかは…空気中に存在する構成物質の小数点以下を求めるに等しい無意味な行為なので突かないが、寝る前はご飯を食べていたのだ。ドラゴン肉って食いづらいんだね。筋がエグい牛肉って感じでした。旨味強過ぎな。食感の悪さで帳消しだけどな。
そんな訳で腹の満たされで微睡の中に出発した訳なのだが…ああ、夢じゃなかった。おっさんの足元に火起こしの残骸があったわ。
火を作るのに苦労したんだぞっ! と思ったが魔法で火種作ったので苦労はしていない。強いて挙げるなら乾いている木材とかを見つけるのが大変でした。サバイバル適正あるわ、魔法。どうも、魔法使いです。
目の前のおっさんが無言で見つめてくる。
流石の俺でも初対面の人に強姦呼ばわりは怒るよな、と思っていたが
「な、何でバレたんだ……? まさか匂いとかか? 昨日致したのが悪かったのか……」
おっさんの後ろに立っている男女二人組の男の方が喋った。
「おい待て。変に心を読むな。いや、読んでねえけどな? 擦りすらしてねえけどな?」
「ニアピンってやつっすか?」
「ニアですらねえよ」
立ち上がり、オールバックの金髪の兄ちゃんに近づき思いっきり殴る。クソ痛そうだった。殴る方がだが。
少し避けたのか頭ではなく、鎧で覆っている肩に打撃が逸れたのだ。鈍い音が聞こえた。
「ーーーッッッぅう……こ、殺す」
殴った手を抱えてうづくまる。
封印された右腕が、と変なアテレコしてみる。何だよ、ギャグかよ。移動販売か?
喧嘩は売って買う、っとよく聞くがギャグも同じようになるとは……時代の移り変わりって早いですね。先取りってレベルじゃないけどな。先行き過ぎて帰ってこれないまである。
痛そうだね、と覚めてきた頭の中で考える。行動は冷たい目線を向けることで示した。おっさんの肩を優しく掴んだ金髪の兄ちゃん。事情を知らなかったら親父狩りの現場かと思ってしまう。あながち間違いじゃないので問題はない。
さて、ドラゴンとエルダートレントとは別のベクトルでヤバいやつと出会ってしまったな。逃げるか、と思って上体を起こすが、自身の服装がウェディングドレスな事実に目が行く。立ち上がるに立ち上がれなかった。
入れ替わるようにして片割れの茶髪のロン毛ウェーブのお姉さんが近づいて来た。
「ごめんね? 変な人だけど悪い人じゃないから」
「……これが?」
「うーん、説得力皆無だわね。まあ、それは別に良いとして」
良いのかよ。
「このウィンドドラゴン、倒したの貴女であってるかしら? ソロで潜ってるなら無理強いはしないけど、都合がよかったら一緒に行動しませんか、ってお誘いに来ました。起こしてごめんね」
「こちらは実力者が入って攻略の安全性が上がる、君は夜営とかで一人で休める時間ができる、とwin-winな関係だと思うんすよ」
今まで付き添っていた金髪の兄さんが言う。
実力者、攻略、安全性、と危機感をより一層覚えてしまう言葉が出てきたことに身震いしてしまう。確かに昨日からトイレ行ってねえもんな。しょうがないわ。
…てか、良くこの肉塊で個体名まで判別できたね。博士かな? 俺だったらデッカイ蜥蜴がいるね、恐竜かな? と言うまである。無いけどな。
「確かに倒したのは俺だけど…動物愛護団体とかに連れてかれるってオチはないですよね? 拉致監禁でしょっ引いてもらいますよ?」
「動物、愛護団体? ……えっと、神聖神教事かな? 流石に森の中での殺傷に関してまで口を出してこないから。……拉致監禁? え?」
「まあ、確かに正当防衛すもんね。文句言ってきたら手足縛ってここに放置しましょ。近くで肉とか焼いて敵をおびき寄せてから逃げましょう」
「動物愛護とは別の罪状で捕まりそうね、それ」
「悪魔的発想すね、それ」
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俺がその立場でも同じ事をしてるだろうから何も言わないが。悪魔じゃねえか。どうも、悪魔のアクです。これが名は体を表す、か。
微かに残った神聖神教がグルグルと脳内を回遊する。マジで何だよ、意味重なりすぎだろ。頭痛が痛いが可愛く思えるわ。新しい四文字熟語かな? 違うけどな。
気にはなったが動物愛護団体的なものなのだろう。どこの世界でもいるんだね。
妙な共通点を知り、変な気持ちになる。
手を差し出される。何それどこの青春漫画かよ。例え下手だな。
了承の意味もかねて手を掴み、立ち上がる。近くで見れ場見るほど美人だったのでうどんを捏ねる要領でニギニギする。バレない程度にだが。
「よし、って事で自己紹介ね。私がキルビア、今年で3年目のスタンダードよ」
スタンダード? 何が?
謎が謎を呼ぶ自己紹介だったがキルビアが「ステータス」と言い、半透明な板を回転させて見せてくる。何その機能。新生代のスマホじゃん。バーチャル的なね。
名前;キルビア
性別;女
職業;中級魔道士
レベル;47
ステータス
『だって魔道士だもん』
魔法
『・基礎魔術lv7 ・中級魔術lv6 ・上級魔術lv3』
ユニークスキル
『無し』
称号
『「非表示」』
と書いてあった。
魔道士? 魔法と何か差異でもあるの? と、気になったのだがここで妙案である。俺にはユニークスキルがあった。いや、ここで使えるかわからないけどさ。
ステータスや魔法と同じような要領で発動してみる。
名称;魔術
「杖や魔導書、魔法石などの触媒を通じて魔法を発動する術の事。適正の有無で発動できる魔法とは違い、それぞれの属性の触媒があれば発動できるので戦士でも誰でも使える万能なもの」
らしい。
何だよ俺の下位互換じゃん、首を垂れ供物を捧げよ。
って、それもう生贄要求してるよな。何に使うんだよ、黒魔術でもするのか? 魔術ってついてるんだしキルビア使えそうだけど……魔道士との違いってあるのかしら? ってかそもそも黒魔術ってあるのか?
名称;黒魔術
「基本的には魔術と同様に触媒を通じて発動するが触媒の内容が生き物寄りな魔術。触媒の生体エネルギーに左右されるのでミジンコが出る時もドラゴンが出る時も。別名召喚術」
あったわ。てか意識してない中でもスキル発動できるのね、会話の流れが途絶え過ぎて先進まないんだけど。誰が原因だよ、俺だな。
とりあえず最後に……
名称;スタンダード
「冒険者ギルドに登録されている三階級の一つ。ビギナー、スタンダード、エキスパートに分かれる。分ける方は使える魔法、技術の総数とレベルの高さ。下から1~30。31~60。61~↑。と、言うように分かれている。スタンダードは中級者。これ、テストに出ます」
なるほど、と納得は出来たが…スキルの説明が俺寄りになっているのは気のせいじゃないよな。まあ、尊敬する人の言葉使いは真似しちゃうって言うもんな。
目の前のキルビアに戻る。
「理解したけど……これって、こっちも見せた方が良いのか? プライバシーの問題が……」
両手で体を包み、か弱い女性を演じる。か弱くはねえよな。ウェディングドレス姿な時点で精神は鋼鉄より硬いもんな。強制的な着せ替えだけど。
そんな俺に気を使ったのか片方の金髪オールバックがアホのような笑顔で近づいてきた。肩をバンバンと叩く。何だよ、スキンシップ下手か。
「大丈夫っすよ! こっちがお願いしてる立場なんで見せてるだけで本当は名前と年齢、所帯持ちか否か、を答えれば良いだけなんだから!」
「おお、合コンみたいだな」
行った事ないけど。
「もう……違うわよ? このアホの金髪がシェルダ。身も心もアホだけど索敵はお手の物だわ」
「豚に真珠みたいなもんか? いや、馬の耳に念仏か……?」
「はっは! 意味はよくわかんねえけどバカにされてるよな、俺!! 美人さんに罵倒は新しい道開けそうっすよね、リーダー?」
美人さん……? まさか、俺の事? この遊んでそうな男に言われるくらいな造形ってことは将来安定? 美人局? それは意味違うよな。
まあ、森の中にドレスでドラゴンを倒す美人ってだけでプラマイのマイナス寄りだよな。格好がおかしすぎるわ、流石に。
リーダーと振り返ったフェルダが見た先は、過食部位を探しまくった結果の残骸ドラゴンを眺めているおっさんの姿だった。呼ばれて振り返る。
「お、話は済んだか? よろしくな、俺はリーダーのギルバだ。まあ、よろしくつっても森から抜けるまでだけどな。俺達迷子だし。もしかして帰り道とか知ってない?」
初対面、あった時に感じた常識人あるあるの苦労してます雰囲気は一瞬で頭の中から消え去った。キルビア以外変人しかいねえじゃねえか。どうも、変人筆頭のアクです。見た目から醸し出してるもんな。
そしての迷子発言。戦力増やしたところでどうするんだよ。この森のモンスター全部狩るつもりなの? わお、コンプリートしないと気が済まないタチなのかしら? マジで脳筋な。俺も魔法ブッパしか能がないから反論できないけどな。
「……また、変な話に俺を巻き込んだな? キルビアどころじゃなくてその子も変な目線を向けてるじゃねえか」
「どうも、アクです。変な目線じゃねえけど……強いて言うなら母性本能的な? ほら、馬鹿な子ほど可愛いって」
嬉々としてフェルダがギルバに視線を合わせる。
「リーダー、これまさかの脈ありじゃないっすか!?」
「ばかっ! 逆だよ逆。キルビア並みの精神攻撃じゃねえか!! 何だよ、俺は別に馬鹿じゃねえよ! 巻き込まれてるだけの被害者だって」
と、言ってるが頬は赤く染まって照れている様子だった。何だよ、チョロインかよ。おっさんがってどこに需要があんだよ……ね、キルビア?
「やっぱり、可愛いわね。46歳」
「ガチガチのおっさんじゃねえか……その年でその性格は難あり判定どころじゃないと思うけど」
ギャップ萌えすら覚えないレベルである。ギャップは想像外を通り越していけば良いってもんじゃないですぜ?
そして常識人かと思われたキルビアも変態であった。何だよこのグループ。おっさん、能天気、おっさん好き、コスプレ、と森の中を歩くには心配しかない組み合わせである。一番コスプレが訳わかんねえな。メンバーで薄れてるけどウェディングドレスだもんな。
視界が結婚式のもの過ぎて現実味が薄くなっていた。森の中で挙げる結婚式って何だよ、エルフかよ。
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