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闇オークション会場
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人身売買闇オークションなどというものは、性消費エンタメの妄想だと思っていた。ノゾムは虚ろな目で引っ張られながら、舞台の中央へと引っ立てられる。
父に連れられて見た、鉱石オークションを思い出す。そこそこ大きな会議室に椅子を並べ、出品された鉱石を競り落とす。趣味のものだった。
このオークション開場は、なんらかのホールを借りたものではないだろうか。まるでオペラか音楽ホールのように、舞台を中心に半円形に広がった席は階段のように少しずつ段差があり、遠くても対象がよく見えるだろう。
「次。十二番。こちらはセックス用の少年。十八才。性技はしこみ、拡張と調教はしているがまだ抱いても抱かれていない。前がご必要なかた、後ろが欲しいかた、兼用。少々年をとっているため、価格低めの五〇万から。以上、出品者からの商品説明です」
舞台中央に放り出されたノゾムは、情けなくて泣きたくなった。手枷足枷つけられ真っ裸である。競り落とされることも含め、消費動物と変わらない。
大金持ちとまではいかないが、そこそこ育ちが良く苦労したことない人生だった。毎年恒例の海外旅行は、ヨーロッパと西アジアの狭間にある観光都市であった。父と母と自分で満喫し、
「来春から大学生だなあ、家族で旅行という年でもなくなるかな」
「オレが世界旅行しても、ジブンサガシとか言わないでくれよ。そういうのは古いんだから」
とピタパンにタマモサラダを乗せながら笑いあった。平和でお気楽な、日本の核家族そのものであった。
が。いきなりテロが起こり、混乱の中で誘拐され、父とも母とも引き離された。当初は家族が心配で、次に家に帰りたい気持ちとなり、最後に自分はこれからどうなるのか、と恐怖でなんどか吐いた。
幾度か転売され、ノゾムは子供を性消費の道具として売る奴隷商人に行き着いた。むろん、違法であり犯罪である。しかし彼らは、罪の意識無く子供を仕入れてパッケージし、商品として売る。ノゾムは、
「じゅうはち。薹が立っている。医療のほうへ流すか」
とまず、言われた。さすがに平和ボケしているノゾムだって、わかる。殺されて体をバラバラにされるということだった。
「嫌だ、死にたくない」
日本語でつぶやいているうちにぽろぽろ涙が出てくる。この年になって恥ずかしい、と少し思ってしまうのが、ノゾムの育ちの良さだ。子どものように泣き恐怖に怯えながらも、妙に恥じ入ってる姿が、良かったのであろう。
「東アジアのやつらは童顔でつるつるしているし、こいつはそれなりに顔が良い。なんとかなるだろ」
ということで、殺されずに凌辱されることとなった。
奴隷商人どもにとって、オークションはそこまで実入りの高いものではない。直接のお得意様、中間業者、紹介者などで、良質で高価な奴隷はすぐに売れるし、大量出荷の低価格もはける。
どちらかというと広告がわりであり、できれば新規開拓といったところである。そうなると、確定で高く売れる奴隷は連れてこない。低価格帯のものは、宣伝にならない。
ノゾムは、珍しい日本人、年のわりには幼い姿、それなりに教育を受けているため反応が多彩。なにより、仕込んだがオボコである。幅広く良質な商品を取り揃えてますよ、というアピール商品であった。そのうえで、お得意様に出すには型落ちのスペック、というところもあった。年齢の高さと、自我である。唯々諾々と従っても、イヤイヤという態度が出る。奴隷根性が作られず、商人にとってはネックだったらしい。
「くそ、だって、むりなものは、むりだ。こんなの」
少しずつつり上がっていく値段に、ノゾムは歯ぎしりした。群衆の視線が痛く目をつむると、競りの声と、自分を苛む快感が強くなる。
萎えた陰茎の先に尿道プラグがささっている。肛門にはエネマグラが挿入されていた。ノゾムは女を抱いたことも男に抱かれたこともないが、仕込んでいるとはこのようなことであった。
スポットライトが熱いと身じろぎすれば、電撃がつんざくような快感が体中をかけめぐる。
「あぅ、あっ」
思わず出た嬌声に、会場が静まり返った。奴隷オークションは性商品だけではない。先ほどは、戦いのエキスパートが競り落とされた。その熱気が少々残っていたのが、今度は粘性の欲望と切り替わる。
ノゾムは気づいていない。競りの声が無くなる。決まったのか、それとも中止か。
目を開けると、皆が見ていた。人種問わず、老若男女問わず、じっとノゾムの痴態を見ている。ノゾムは嫌悪で身を捩らせた。むろん、快楽を助長させるだけである。
「やだ、見るな! 見るなぁ、あっ、あ、あ、あっ」
少年の青臭さが残るしぐさで、ノゾムは観客から顔を背け、体を丸めて縮こませる。男としても人としても恥ずかしく、苦しく、死にたいほどである。しかし、死ぬほどの覚悟もない。開き直って媚びることも、できない。
「……えー……。五五〇万。お声がない、それでは――」
ノゾムが気づかぬ間に、己は十倍の値がついていたらしい。商人たちはまずまずそこそこ、と笑っているであろう。ノゾムは虚ろな気持ちとドライオーガズムの波との双方に頭を撹拌されながら、泣き、呻く。
「一〇〇〇万」
強く熱っぽい声が響き渡った。せきを切ったように、さらなる声がして、競りが続く。ノゾムはわけがわからず、ただ喘ぐしかない。一度入ってしまった淫欲のスイッチは止まらず、腹の奥が熱く達し続ける。のけぞると陰茎が動き、尿道の奥がぐうぐうと押される。前立腺がバカになるほど気持ちいい。がまん汁がプラグに少し滴った。
「やっ、もぉいってる、おねがい、止めて」
こう言えば、仕込んでるやつらに怒鳴られ、媚びる練習をしろと言われたが、どうしようもない。ノゾムは人の足を舐めて生きることなど気持ち悪かったし、なにより無邪気で素直すぎた。したたかさのかけらもない。
さんぜんまん。
一人がまたいきなり跳ね上げた。他のものは黙った。それで決まった。
落札した客が、ノゾムを受け取りに来る。パッケージのためと衣服を持ってきた男を制した。
「僕はこの少年を落札した。手数料は払うが、オプションはいらない」
艶と深みのある男の声だった。父より年上にも年下にも思えた。少なくとも大人で、命じなれた声でもあった。
「あなたさまは、おもったより……いや、しっかりものですね」
ケチか、ということばを飲み飲んで奴隷商人が真っ裸のノゾムを渡す。ノゾムはそこまで小柄ではないが、男の腕の中にすっぽりと入った。癖のある黒髪が男の顎を少し撫でる。短く刈り込んでた髪も、いまや肩ほどに長い。
「性分でね。むかしから、オマケというものが邪魔だった。支払いは後ろのものが持っている」
男が優雅かつ傲慢に指図すると、控えていた誰かが、小切手らしきものを渡していた。ノゾムは、怪盗アニメを思い出す。有名怪盗三世、小切手は偽物で、かわいそうなお姫様を助けるような。
自分がお姫様、という発想に気づき、ノゾムはうめきながら恥ずかしがった。それもこれも、男に抱えられているからだ、と思った。まさにお姫様だっこをされているのだ。
もはや己の席ではなく、出口に向かおうとした男に、ノゾムは顔を向けた。
「子供じゃないです、ひとりで歩けます。あの、前と後ろ抜いてくれたら、歩けます」
ノゾムは精一杯、丁寧にお願いしたつもりであった。奴隷が主人に言う言葉では無い、と気づいていない。周囲は眉をしかめた。が、男は面白そうな顔をする。
「ここで、それら抜きながら君が絶頂のきわみになるのは興味深い。手伝おう」
ノゾムは、それはいいです、そういうのいやです、と必死に断った。おのれの失言に混乱するノゾムを抱きしめ、男は首から耳の裏にかけ手をそわし、髪をかきわける。
「みずみずしい肌と髪。象牙の肌はなかなか売られていない。友人にはいるけどね」
愉快そうに笑った後、男はノゾムを抱えなおして歩き出した。その衝撃でまた中で達し、顔を覆って泣いた。耳どころか首筋まで羞恥で赤かった。
父に連れられて見た、鉱石オークションを思い出す。そこそこ大きな会議室に椅子を並べ、出品された鉱石を競り落とす。趣味のものだった。
このオークション開場は、なんらかのホールを借りたものではないだろうか。まるでオペラか音楽ホールのように、舞台を中心に半円形に広がった席は階段のように少しずつ段差があり、遠くても対象がよく見えるだろう。
「次。十二番。こちらはセックス用の少年。十八才。性技はしこみ、拡張と調教はしているがまだ抱いても抱かれていない。前がご必要なかた、後ろが欲しいかた、兼用。少々年をとっているため、価格低めの五〇万から。以上、出品者からの商品説明です」
舞台中央に放り出されたノゾムは、情けなくて泣きたくなった。手枷足枷つけられ真っ裸である。競り落とされることも含め、消費動物と変わらない。
大金持ちとまではいかないが、そこそこ育ちが良く苦労したことない人生だった。毎年恒例の海外旅行は、ヨーロッパと西アジアの狭間にある観光都市であった。父と母と自分で満喫し、
「来春から大学生だなあ、家族で旅行という年でもなくなるかな」
「オレが世界旅行しても、ジブンサガシとか言わないでくれよ。そういうのは古いんだから」
とピタパンにタマモサラダを乗せながら笑いあった。平和でお気楽な、日本の核家族そのものであった。
が。いきなりテロが起こり、混乱の中で誘拐され、父とも母とも引き離された。当初は家族が心配で、次に家に帰りたい気持ちとなり、最後に自分はこれからどうなるのか、と恐怖でなんどか吐いた。
幾度か転売され、ノゾムは子供を性消費の道具として売る奴隷商人に行き着いた。むろん、違法であり犯罪である。しかし彼らは、罪の意識無く子供を仕入れてパッケージし、商品として売る。ノゾムは、
「じゅうはち。薹が立っている。医療のほうへ流すか」
とまず、言われた。さすがに平和ボケしているノゾムだって、わかる。殺されて体をバラバラにされるということだった。
「嫌だ、死にたくない」
日本語でつぶやいているうちにぽろぽろ涙が出てくる。この年になって恥ずかしい、と少し思ってしまうのが、ノゾムの育ちの良さだ。子どものように泣き恐怖に怯えながらも、妙に恥じ入ってる姿が、良かったのであろう。
「東アジアのやつらは童顔でつるつるしているし、こいつはそれなりに顔が良い。なんとかなるだろ」
ということで、殺されずに凌辱されることとなった。
奴隷商人どもにとって、オークションはそこまで実入りの高いものではない。直接のお得意様、中間業者、紹介者などで、良質で高価な奴隷はすぐに売れるし、大量出荷の低価格もはける。
どちらかというと広告がわりであり、できれば新規開拓といったところである。そうなると、確定で高く売れる奴隷は連れてこない。低価格帯のものは、宣伝にならない。
ノゾムは、珍しい日本人、年のわりには幼い姿、それなりに教育を受けているため反応が多彩。なにより、仕込んだがオボコである。幅広く良質な商品を取り揃えてますよ、というアピール商品であった。そのうえで、お得意様に出すには型落ちのスペック、というところもあった。年齢の高さと、自我である。唯々諾々と従っても、イヤイヤという態度が出る。奴隷根性が作られず、商人にとってはネックだったらしい。
「くそ、だって、むりなものは、むりだ。こんなの」
少しずつつり上がっていく値段に、ノゾムは歯ぎしりした。群衆の視線が痛く目をつむると、競りの声と、自分を苛む快感が強くなる。
萎えた陰茎の先に尿道プラグがささっている。肛門にはエネマグラが挿入されていた。ノゾムは女を抱いたことも男に抱かれたこともないが、仕込んでいるとはこのようなことであった。
スポットライトが熱いと身じろぎすれば、電撃がつんざくような快感が体中をかけめぐる。
「あぅ、あっ」
思わず出た嬌声に、会場が静まり返った。奴隷オークションは性商品だけではない。先ほどは、戦いのエキスパートが競り落とされた。その熱気が少々残っていたのが、今度は粘性の欲望と切り替わる。
ノゾムは気づいていない。競りの声が無くなる。決まったのか、それとも中止か。
目を開けると、皆が見ていた。人種問わず、老若男女問わず、じっとノゾムの痴態を見ている。ノゾムは嫌悪で身を捩らせた。むろん、快楽を助長させるだけである。
「やだ、見るな! 見るなぁ、あっ、あ、あ、あっ」
少年の青臭さが残るしぐさで、ノゾムは観客から顔を背け、体を丸めて縮こませる。男としても人としても恥ずかしく、苦しく、死にたいほどである。しかし、死ぬほどの覚悟もない。開き直って媚びることも、できない。
「……えー……。五五〇万。お声がない、それでは――」
ノゾムが気づかぬ間に、己は十倍の値がついていたらしい。商人たちはまずまずそこそこ、と笑っているであろう。ノゾムは虚ろな気持ちとドライオーガズムの波との双方に頭を撹拌されながら、泣き、呻く。
「一〇〇〇万」
強く熱っぽい声が響き渡った。せきを切ったように、さらなる声がして、競りが続く。ノゾムはわけがわからず、ただ喘ぐしかない。一度入ってしまった淫欲のスイッチは止まらず、腹の奥が熱く達し続ける。のけぞると陰茎が動き、尿道の奥がぐうぐうと押される。前立腺がバカになるほど気持ちいい。がまん汁がプラグに少し滴った。
「やっ、もぉいってる、おねがい、止めて」
こう言えば、仕込んでるやつらに怒鳴られ、媚びる練習をしろと言われたが、どうしようもない。ノゾムは人の足を舐めて生きることなど気持ち悪かったし、なにより無邪気で素直すぎた。したたかさのかけらもない。
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ケチか、ということばを飲み飲んで奴隷商人が真っ裸のノゾムを渡す。ノゾムはそこまで小柄ではないが、男の腕の中にすっぽりと入った。癖のある黒髪が男の顎を少し撫でる。短く刈り込んでた髪も、いまや肩ほどに長い。
「性分でね。むかしから、オマケというものが邪魔だった。支払いは後ろのものが持っている」
男が優雅かつ傲慢に指図すると、控えていた誰かが、小切手らしきものを渡していた。ノゾムは、怪盗アニメを思い出す。有名怪盗三世、小切手は偽物で、かわいそうなお姫様を助けるような。
自分がお姫様、という発想に気づき、ノゾムはうめきながら恥ずかしがった。それもこれも、男に抱えられているからだ、と思った。まさにお姫様だっこをされているのだ。
もはや己の席ではなく、出口に向かおうとした男に、ノゾムは顔を向けた。
「子供じゃないです、ひとりで歩けます。あの、前と後ろ抜いてくれたら、歩けます」
ノゾムは精一杯、丁寧にお願いしたつもりであった。奴隷が主人に言う言葉では無い、と気づいていない。周囲は眉をしかめた。が、男は面白そうな顔をする。
「ここで、それら抜きながら君が絶頂のきわみになるのは興味深い。手伝おう」
ノゾムは、それはいいです、そういうのいやです、と必死に断った。おのれの失言に混乱するノゾムを抱きしめ、男は首から耳の裏にかけ手をそわし、髪をかきわける。
「みずみずしい肌と髪。象牙の肌はなかなか売られていない。友人にはいるけどね」
愉快そうに笑った後、男はノゾムを抱えなおして歩き出した。その衝撃でまた中で達し、顔を覆って泣いた。耳どころか首筋まで羞恥で赤かった。
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