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周遊編
第78話 会食
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~和食料理屋…
その日、夕方5時過ぎ…店の前に一台の高級セダンが停まる。車内から高級なスーツに身を包んだ40半ばの男性が現れた。
彼は、日本庭園の雰囲気を感じさせる店の前に立ち建物を眺める。
竹等で作られた塀。更に入口は木材で作られた門があり、店の入口は質素だが、高級そうな雰囲気を感じさせる。
店の玄関に入ると、和服姿の女将が数名「いらっしゃいませ」と、頭を下げながら声を掛けてくれる。
「本日、予約した鮎川氏の客人ですが…」
「お待ちしてました。どうぞこちらへ」
女将は荷物を持って相手が待っている客室へと案内してくれる。
部屋の前で彼女は、戸の入口に腰を降ろし…。
「お連れ様がお見えになりました」
と、一言声を掛ける。
「どうぞ」
室内から声が聞こえて、女将が戸を開けると室内には鮎川茂が立って、和義を出迎えてくれた。
「ようこそ、お待ちしておりました」
旧友と久しく会う2人は微笑みながら握手する、茂はお膳を挟んで和義を上座に座らせた。
「まずは、軽く乾杯をしましょう」
茂が和義のおちょこに酒を注ぎ、和義が茂のおちょこに酒を注ぐ。2人は軽く、乾杯をして酒を口にした。
2人は酒を口にした後、今回の本題へと話を進める。
「急に及び立てして申し訳ない」
「いや、君の事だから、おおよその検討は付いていたよ」
和義が少し年上口調な感じで対応する。
「そう…でしたか」
「まあ、お互いにとっては他人事では済まされない内容だとは思ったけど…実際のところはどうなのだ?」
「私の企業の役員達が提案してくれたプロジェクトの案件があります。宜しければ拝見して貰えれば…我々としては、是非とも鬼頭家に強力して頂きたいと考えてます」
茂は和義に、プロジェクトの内容に目を通した。
「中々興味深い内容だけど…これに何故、鬼頭家側が参加する必要があるのか、少し分かりかねるのだが…」
「我々は、これを一種のビジネスとして発展させようと思っております。上手く行けば、お互いの利益にも繋がると思いますが…」
「なるほど…」
そう言っている間に、戸が開き女将達が料理を持って来てくれて、それぞれのお膳の上に料理が並べられる。
女将達が部屋から出て行くと和義は茂を見る。
「悪く無い内容だが…ただ、私も一企業の社長を背負う者。自分の肩には数千人の社員達が居る様なものだ。自分の安易な考えで彼等に職を失わせる訳には行かない…。先ずは彼がどの程度の能力があるか、見定めさせて頂いてから返事を求めたいのだが…」
「まあ、その辺の事を見据えての提案でもあります。宜しければ後日、そちらの屋敷に彼を同行させて、お邪魔致します」
「了解した。ちなみに…私の知人で不治の病で寝込んでいる女性が居てね。彼の能力で治せるかどうか見させて貰うよ」
「分かりました。その様に話をして置きます」
お互い話が了承すると軽く微笑んだ。2人は、お膳の料理を軽く食べる。
「そう言えば、君とこんな感じで食事するのは…何時以来だろうね」
「お互い子供が生まれてから会う機会は減ってしまって、こんな感じで会うのは…あの時以来なのでは?」
「あの時と言うと…?」
和義がおちょこの日本酒を軽く飲む。
「屋敷の管理者に付いて相談した時ですよ」
それを聞いた和義が「ああ…!」と、声を出して思い出す。
「確か…屋敷で働く人が不正に資金を横流している噂が流れて、その管理者の処遇を私に相談して来たんだよね」
「そうです、黒幕は彼だったのですが…。彼も操られて居たのですが…未だ、その人物の手掛かりは掴めておらず。娘を辱める人物かと思われましたが、彼でも無かったのです」
「その…元管理者を問いだす事は?」
その言葉に茂は首を横に振る。
「彼は、屋敷を追い出した後…しばらくして、事故に遭って…もう居ません」
「なるほど…」
「私が思うに、屋敷で働く者でなく。私の企業側で働く人物で有る可能性が強いと思っております。まあ…いずれシッポをみせたら捕まえますよ」
「その時は犯人を教えて貰おうかな…相手の真意を確かめたいから…」
「分かりました」
茂は軽く微笑む。
2人はその後、食事を続ける。和義は茂を見て微笑みながら食事をする。
「この店は…確か君が経営している企業関連の店だったんだよね?」
「そうです。直接関連ではありませんが、我が社が重要取引先として、運営費を任されています」
「なるほどね…料理も一品だし、味も悪く無く申し分ない。今度妻や娘を連れて来店させて貰うよ」
「ええ、是非ともいらっしゃって下さい」
茂は微笑みながら言う。
その後、2人は酒を酌み交わしながら、若かった頃の思い出話に華が咲いた。
~ある日の事…
「チーッス!」
賑やかな繁華街で、スマホの動画で生配信live撮影している、金髪で色眼鏡にキャップ帽のスタイルの若い男性が、自分を撮影しながら歩いていた。
「オレ村石竜也ッス!ヨロシク~」
動画のコメント欄には沢山のメッセージが流れて行く。
「え、恋人?もうモテモテですよ。2~30人位いるよね。毎日日替わりで相手して貰ってますよ!」
彼の生配信liveを見ていた2人の女子高生達が、偶然自分達の近くに相手が居る事に気付く。
「チョット、アイツ…ムカつく!文句言って来るわ!」
「止めなよミカ、何かあったらどうするの?」
「私の憧れの人の名前を汚しているのよ、黙って見てられないわよ!」
「ほっとけば良いのよ、あんなヤツは…」
そんな友人の手を振り払って、ミカと言う女子高生は男性の近くへと早歩きで近付いて行く。
「失礼ですが、貴方…村石竜也さんですか?」
「イエス!そうですよ」
動画のコメント欄は、2人の顔が見えなくなる位に字幕が流れる。
「何、俺と付き合いたいの?」
「違います。本物なら、今直ぐに病院に行って、急病の患者を助けて見て下さい」
「は?」
男性は呆れた表情でミカを見る。
その日、夕方5時過ぎ…店の前に一台の高級セダンが停まる。車内から高級なスーツに身を包んだ40半ばの男性が現れた。
彼は、日本庭園の雰囲気を感じさせる店の前に立ち建物を眺める。
竹等で作られた塀。更に入口は木材で作られた門があり、店の入口は質素だが、高級そうな雰囲気を感じさせる。
店の玄関に入ると、和服姿の女将が数名「いらっしゃいませ」と、頭を下げながら声を掛けてくれる。
「本日、予約した鮎川氏の客人ですが…」
「お待ちしてました。どうぞこちらへ」
女将は荷物を持って相手が待っている客室へと案内してくれる。
部屋の前で彼女は、戸の入口に腰を降ろし…。
「お連れ様がお見えになりました」
と、一言声を掛ける。
「どうぞ」
室内から声が聞こえて、女将が戸を開けると室内には鮎川茂が立って、和義を出迎えてくれた。
「ようこそ、お待ちしておりました」
旧友と久しく会う2人は微笑みながら握手する、茂はお膳を挟んで和義を上座に座らせた。
「まずは、軽く乾杯をしましょう」
茂が和義のおちょこに酒を注ぎ、和義が茂のおちょこに酒を注ぐ。2人は軽く、乾杯をして酒を口にした。
2人は酒を口にした後、今回の本題へと話を進める。
「急に及び立てして申し訳ない」
「いや、君の事だから、おおよその検討は付いていたよ」
和義が少し年上口調な感じで対応する。
「そう…でしたか」
「まあ、お互いにとっては他人事では済まされない内容だとは思ったけど…実際のところはどうなのだ?」
「私の企業の役員達が提案してくれたプロジェクトの案件があります。宜しければ拝見して貰えれば…我々としては、是非とも鬼頭家に強力して頂きたいと考えてます」
茂は和義に、プロジェクトの内容に目を通した。
「中々興味深い内容だけど…これに何故、鬼頭家側が参加する必要があるのか、少し分かりかねるのだが…」
「我々は、これを一種のビジネスとして発展させようと思っております。上手く行けば、お互いの利益にも繋がると思いますが…」
「なるほど…」
そう言っている間に、戸が開き女将達が料理を持って来てくれて、それぞれのお膳の上に料理が並べられる。
女将達が部屋から出て行くと和義は茂を見る。
「悪く無い内容だが…ただ、私も一企業の社長を背負う者。自分の肩には数千人の社員達が居る様なものだ。自分の安易な考えで彼等に職を失わせる訳には行かない…。先ずは彼がどの程度の能力があるか、見定めさせて頂いてから返事を求めたいのだが…」
「まあ、その辺の事を見据えての提案でもあります。宜しければ後日、そちらの屋敷に彼を同行させて、お邪魔致します」
「了解した。ちなみに…私の知人で不治の病で寝込んでいる女性が居てね。彼の能力で治せるかどうか見させて貰うよ」
「分かりました。その様に話をして置きます」
お互い話が了承すると軽く微笑んだ。2人は、お膳の料理を軽く食べる。
「そう言えば、君とこんな感じで食事するのは…何時以来だろうね」
「お互い子供が生まれてから会う機会は減ってしまって、こんな感じで会うのは…あの時以来なのでは?」
「あの時と言うと…?」
和義がおちょこの日本酒を軽く飲む。
「屋敷の管理者に付いて相談した時ですよ」
それを聞いた和義が「ああ…!」と、声を出して思い出す。
「確か…屋敷で働く人が不正に資金を横流している噂が流れて、その管理者の処遇を私に相談して来たんだよね」
「そうです、黒幕は彼だったのですが…。彼も操られて居たのですが…未だ、その人物の手掛かりは掴めておらず。娘を辱める人物かと思われましたが、彼でも無かったのです」
「その…元管理者を問いだす事は?」
その言葉に茂は首を横に振る。
「彼は、屋敷を追い出した後…しばらくして、事故に遭って…もう居ません」
「なるほど…」
「私が思うに、屋敷で働く者でなく。私の企業側で働く人物で有る可能性が強いと思っております。まあ…いずれシッポをみせたら捕まえますよ」
「その時は犯人を教えて貰おうかな…相手の真意を確かめたいから…」
「分かりました」
茂は軽く微笑む。
2人はその後、食事を続ける。和義は茂を見て微笑みながら食事をする。
「この店は…確か君が経営している企業関連の店だったんだよね?」
「そうです。直接関連ではありませんが、我が社が重要取引先として、運営費を任されています」
「なるほどね…料理も一品だし、味も悪く無く申し分ない。今度妻や娘を連れて来店させて貰うよ」
「ええ、是非ともいらっしゃって下さい」
茂は微笑みながら言う。
その後、2人は酒を酌み交わしながら、若かった頃の思い出話に華が咲いた。
~ある日の事…
「チーッス!」
賑やかな繁華街で、スマホの動画で生配信live撮影している、金髪で色眼鏡にキャップ帽のスタイルの若い男性が、自分を撮影しながら歩いていた。
「オレ村石竜也ッス!ヨロシク~」
動画のコメント欄には沢山のメッセージが流れて行く。
「え、恋人?もうモテモテですよ。2~30人位いるよね。毎日日替わりで相手して貰ってますよ!」
彼の生配信liveを見ていた2人の女子高生達が、偶然自分達の近くに相手が居る事に気付く。
「チョット、アイツ…ムカつく!文句言って来るわ!」
「止めなよミカ、何かあったらどうするの?」
「私の憧れの人の名前を汚しているのよ、黙って見てられないわよ!」
「ほっとけば良いのよ、あんなヤツは…」
そんな友人の手を振り払って、ミカと言う女子高生は男性の近くへと早歩きで近付いて行く。
「失礼ですが、貴方…村石竜也さんですか?」
「イエス!そうですよ」
動画のコメント欄は、2人の顔が見えなくなる位に字幕が流れる。
「何、俺と付き合いたいの?」
「違います。本物なら、今直ぐに病院に行って、急病の患者を助けて見て下さい」
「は?」
男性は呆れた表情でミカを見る。
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