村石君の華やかな憂鬱 Remake

A.Y

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交差編

第70話 日曜の晩

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鮎川家に戻った竜也を待って居たのは凛だった。
帰宅するなり凛は竜也に迎えの口付けを交わす。

直後…「ムッ…」と、凛は何かを感じ取り不機嫌な表情で竜也を見た。

「ねえ…竜也さん、貴方…今日何人位の女性と関わったのよ⁈」
「え…と、1人くらいかな?」
「ふーん…で、その相手とは何回ヤッたのよ?」
「そんなにはしてないよ…」
「正直に答えなさい、怒ったりしないから…。相手とは2回くらいヤッたの?」
「違うよ、え…と3~4回くらいだよ」

慌てた素振りで竜也は答えた。

直後…

パシン!

凛は竜也の頬に大きな平手打ちをお見舞いした。

「今後は外出時には同行者も付けるからね!」

怒りながら凛は屋敷の中へと入って行く。

「怒こらないって言っておきながら…これかよ…」

竜也を放って屋敷の中へと向かう凛を見付けて内藤が慌てた様子で彼女の側に来た。

「お嬢様、先程御主人様から電話がありました」
「何かあったの?」
「はい、実は…ご両親様は明日帰宅するそうです」

その言葉に凛は少し驚いた。

「え…?何で突然帰宅するの?」
「私にも分かりません、事務所からの報告ですので…一体何故なのでしょう?」

凛の両親は帰宅する時は大体1ヶ月前か…1週間前に連絡が来るのが普通だった。余程の事が無い限り、滅多に翌日帰宅する様な事はしなかった。
話を聞いた凛は腑に落ちない様子でいた。

(何か変だ…、まるで何か、誰か間引かれる様な…?)

そう考えながら竜也の居る風の間へと凛は向かう。部屋には竜也と舞が居た。

「舞ちゃん、凄くご機嫌だね」
「ウフフ分かる?私ね、新しいオモチャが出来たのよ」
「部屋に入る前に聞こえた2人の会話を聞きながら凛が部屋に入る」
「あ…お姉ちゃん」
「あ、どうも…」

竜也は軽く手を振る。

「竜也さん、軽くシャワーでも浴びて来たらどうでしょうか?」
「そうだね…ちょっと体洗って来るよ」

竜也は軽く返事をして部屋を出る。姉妹だけが残った部屋で、凛は考え事をしていた。

「何かあったの?気難しそうな顔をして…」
「うん…明日お父様達が帰って来るのだけど…」
「ふうん…珍しいね、突然次の日に帰るなんて、前にも一度あったね。確か…」
「あの時は…民宿長の代理を皆が決める時だったね…」

「そう…仕事が出来て皆からの信頼も大きかった人、でも…お父様達は彼の事好きになれず、クビになったのよね」
「そうだったわね」
「何か…その時の事と似てる見たいね」

舞の何気ない一言を聞いた凛がハッとある事に気付く。

「ちょっと事務所に一緒に来て!」

凛は舞の腕を引っ張り一緒に風の間を出て行く。2人は事務所に向かうと内藤と吉川の4人で別室に集まった。

「どうしたのですお嬢様?」

凛はある事に気付き、彼等の前で話を始める。

「私の勘が正しければ…お父様が家に戻る理由は竜也さんの事だと思うわ」

その言葉に周囲は「なるほど…」と、頷く。

「お父様も、竜也さんの事が気になったのね」

内藤の言葉に凛は首を横に振る。

「多分…違うと私は思う。状況からしてお父様は彼に何か言うわ…。ただ、私が思うのは…何故お父様は今回こんな風な行動を取ったのか…それが疑問なの」
「まるで、こちらの状況を知らされて動いた…と、言う事ですね」

その言葉に凛は頷く。

「誰かが今の家の事を伝えたとしか思えない。ねえ…吉川、貴方お父様に何か告げ口とかはしてない?」

それを聞いた吉川は驚きながら言う。

「滅相も無い、私はお嬢様にお叱り頂いてからは、信頼を裏切るような行為は致しておりません」
「そう…疑って申し訳ありません」

凛は腕を組んで考える。

「そう言えば、今日は鬼頭家に関わる人が沢山来たのでしょう?」

舞が凛に向かって言う。

「そうだけど…」
「彼女達がお父様に何か話したとかは考えられないの?」
「状況からして鬼頭沙耶が何かするとは思えないわね、大体…彼女がお父様と関わりになるなんて在り得ないわ。それに関連する人物でもいない限り…」

その言葉を聞いた内藤が「なるほどね…」と頷いた。

「ねえ、お嬢様怒らないで聞いてくれるかしら?」
「どうしたの?」
「もし私が鬼頭家のお嬢様だったら、どんな汚い手を使ってでも竜也さんを奪い返して見せるわね」
「どう言う事なの?」

「裏で繋がっている人を利用して、偽の情報を流して相手を追い出すのよ。つまり…お父様には竜也さんが家にいる事で、民宿達に迷惑が掛かっていると…情報を流すのよ。そう言う経緯なら…今回の件も納得行く筈よ」
「もし、そうだとしても…沙耶にそれだけの手回しが出来るとは思えないわ」
「彼女で無く、それに関連した人を雇うのよ。私が思うに…その人物は鮎川家の内情に通じてる人物と思えるわ」
「え…そんな人居るかしら?」

と…凛は言った瞬間、ハッとある人物が頭の中を横切った。

「居たわ、とんでも無い人物が1人…」

~ホテルの寝室…

ルミとラブホに入っていた鴉取は一緒のベッドで横になっていた。彼はスマホの時計を見て、休憩時間が終了に近付いて来ているのを確認する。

「そろそろ終わりかな…」

そう言うと、ルミが彼に迫って来た。

「ねえ…延長しましょう。もっと貴方のオチンチンで、私の中をいっぱい掻き回して欲しい…アソコが疼いてるの」
「そうしたいけど…今日は、そんなにお金無くてね」
「さっき私に渡してくれたお金で、もう少し楽しみましょう」
「どうしようかな…」
「もお…イジワルゥ」
「それに君は未成年者だろ?あまり遅いと親が心配するのでは?」
「身体は未成年者かもしれないけど、アソコはもう立派な大人よ」

(やれやれ…)

気の強い少女だと思いながら鴉取は柔らかな身体の彼女を抱き上げ、軽く口付けを交わす。彼女は鴉取との口付けだけでウットリとした表情を見せる。

「可愛いな…」

その言葉にルミは微笑む。

「もっと言ってェ」

彼女は身体を寄せ付けながら鴉取を見る。
本番を再開させようとした時、彼のスマホに着信が入った。

「おやおや…お客さんから電話だ」

ルミはつまんなそうな表所を見せる。

「無視しちゃって、始めましょう」

それを聞いた鴉取は着信相手を見る…

「無視出来ない相手からだ…ちょっと待ってて」

彼は電話に出た。

「もしもし…」
「久しぶりだね、鴉取君」
「これは…これは、鮎川茂社長ご無沙汰しております」
「何を言うかね、つい先日電話しただろう」
「ああ…そうでした」

鴉取は薄笑いしながら答える。

「前回の話の件だが…明日彼と面接する予定だ」
「そうですか、では…打合せ通りに話を勧めて頂くのですね」
「それで、君が娘と関わっていた時の画像等を消去してくれるのだろう?」
「一応約束は守りますが…こちらの要件を満たした事が必須条件になりますが…宜しいですか?」
「分かった、その条件で事を勧めよう、ただし…条件が満たされたのに要求が受け入れられなかった場合も考慮して貰いたい」

スマホの通話が終わると鴉取は「全く怖ろしい男だ、茂は…」と呟く。
彼はスマホの通話を終えるとルミに抱き付き、2人はベッドの上へと横になる。



ビジネスホテルの一室では、スマホの通話を切った40代半ばの男性がソファーに腰を降ろしていた。その近くには同じ年頃の女性がウイスキーとグラスを2つ持って近付いて来た。
グラスに氷の塊を入れてウイスキーを注ぐと男性のテーブルへと1つ寄せる。

「彼は承諾してくれたの?」
「取り敢えずは了解を得たがな…」
「あまり信用出来る様な人物では無いと思いますがね…」
「それは承知している、こちらの要件を受け入れないのなら…それ相応の対処をするまでだ」
「常に行方を晦ます者を追うのは困難かと思いますが…」
「あやつの足掛かりさえ掴めば良いのだが…」

女性はソファーに腰を降ろして、屋敷から送られて来た書類を眺める。

「それにしても…我が家に、今…世間を賑わせている人がいるのは頼もしい限りなのに」

彼女は書類を眺めて言う。

「今日も街で奇跡的に助けられた少女達が数名居る…と言うニュースが舞い込んで来たけど、多分…彼が起こした行為だと思える」
「そんな人物を屋敷から追い出すなんて…世間から見れば無情と思われるかもしれないわね」

女性は男性の顔を見て言う。

「詩織、説教はよしてくれ無いか。家族の事を思っての判断だ。私としても彼には是非とも屋敷に居残って役職に就かせたい気持ちだ。ただ…彼には一旦ほとぼりが冷める間、別の場所に居てもらおうと言う私なりの考えだ」

詩織と言われた女性はフッと愛想笑いしながら男性を見る。

「果たして娘達がそれで納得してくれるかしら?内藤や吉川からの情報からだと、凛も舞も彼には随分と夢中になっている見たいよ。今は下手に距離を置かせるよりはこのまま彼に居させる方が娘達には良いと思いますけどね」

それを聞いた男性はウイスキーを少し口に運び、溜息交じりに考え込む。

「出所不明のフェイク情報だと、彼は悪名を晒しているけどね。茂…貴方も随分悪人扱いされてるわよ」
「そんな変な噂信用するな」

茂は「フン」と、面白く無さそうに他を見る。

「彼に夢中なのは、凛や舞だけでは無い…。鬼頭家の娘も彼に夢中らしい…。彼を家に留めて置けば、いずれ鬼頭家から我が家に対しての動きが出て来ると思う。それを見越しての判断だ」
「あの家のお嬢さんまでもが絡んでいたの…」
それを聞いた詩織は口を慎んだ。
「まあ…私自身も、彼には興味がある…一度話をして見たいと思った所だ、村石竜也君と言う男性にはな」

彼はソファーに乗せて居た背中を上げて、テーブルに置かれた書類に目を掛ける。書類の見出しには「村石竜也」と、名前が書かれていた。
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