村石君の華やかな憂鬱 Remake

A.Y

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鮎川家編

第57話 平穏な日常④

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その日の午前中、鬼頭家の屋敷の前には数台の車が並んでいた。車の中からは少女達が降りて来た。
最初に現れたのは川谷美穂、次に篠崎薫、梅木雫、最後に漆畑玲奈と、その姉…梨花が車から降りて来た。梨花以外…全員竜也との性体験を済ませた事のある少女達であった。
鬼頭家で竜也と交わった絵里と琴美は、既に屋敷の中で待機していた。
屋敷の玄関先では少女達を待っていた沙耶と執事の中澤が、彼女達を出迎えた。

「これで全員なの?」

沙耶は美穂に尋ねる。

「あと…ナースの川島直美と、言う女性が彼と交わったけど…今日は忙しくて来れない…と言ってたわ」
「そう…分かったわ」

沙耶は全員を屋敷に招いて、奥にある会議室の様な場所へと案内する。
30人位余裕で入れる部屋へと招き入れる。
沙耶は室内のリモコンを操作して、自動で部屋に暗幕を掛ける。
そして映写機を使ってモニターに映像を出す。

「皆さんに今日、家に来て頂いたのは、もうご存知かもしれませんが…私達の恋人である村石竜也さんが、現在…鮎川家と呼ばれる屋敷に居るとの情報があって、彼を…この屋敷から解放させたいと思うのです。その為に皆さんの協力を求めたくて、お呼び致しました」

映写機を使って、航空写真を映す。

「鮎川家は、我が鬼頭家よりも若干敷地面積など広く、山を1つ削って建てた場所でもあり、敷地面積なら東京ドームよりも大きいです。更に…この屋敷で働く人も大勢居ます、その上…セキュリティも整えられているので、安易に立ち入る事も難しく…難攻不落の要塞とも言えます。そこで皆さんの協力して、この要塞から彼を救いたいと思うのです」

話しを聞いていた雫は大きく欠伸していた。
沙耶が話しを終えると、映写機を消して暗幕を降ろす。

「何か…質問は?」

沙耶が聞くと真っ先に手を上げたのは玲奈だった。

「屋敷に入る為の口実は、あるのですか?」
「今度の日曜日に日本舞踊の稽古があります、鮎川家では無料体験も行なっていて…その無料体験に参加する時に屋敷の中を探索するのです」

それを聞いた薫が、手を上げる。

「そもそも…竜也さんが、この屋敷に居ると言う根拠が分かりませんが…本当に居るのですか?」
「証拠は分かりませんが…可能性としては濃厚だと思われます、鮎川家に住む娘さんと同じ学校に通っている琴美ちゃん…その辺を詳しく皆さんに説明して下さい」
「え…あ、はい…」

いきなり呼ばれて、数名の女子達の前で話す事となった琴美は、少しぎこちなく話しを始める。

「え…と、鬼頭家には姉妹がいまして…その、妹が学校で手を切ったのだけど…次の日には、傷が無くなって居たのよ。保健の先生も1日で治るのは奇跡だ…て言ってました」
「成る程ね…」

玲奈の姉、梨花が口を出して来た。

「彼の治癒能力なら、可能性は考えられるわね。でも…同じ能力を持った他の人だったら、どうするの?まして…ここに居る貴女達の誰かが、鮎川家に行って見た人がいるの?その辺を詳しく調べないと、後でシッペ返しが来るわよ」

その言葉に沙耶は、言葉を詰まらせた。

「あの…」

絵里が席を立って言う。

「あくまでも、今回は屋敷の探索と言う事で、潜り込むのはどうですか?」
「それが失敗だった場合の事は考えているの?」
「いえ…」

梨花の言葉に絵里は、何も言えず席に座る。

「まあ…一度、お屋敷入って、見つからなかったら別の事を考えれば…」

雫が溜息混じりに言う。

「あんた…随分気楽ね」

隣に座っていた琴美が呆れた顔で言う。

「だってさ…竜也さんが居なくなってから、何かやる気無くしちゃって、つまんないんだもん…」
「それは…私も同じよ…」

美穂が、向かい側の席で言う。

「何て言うか…気持ちがモヤモヤして、何も手につかない状態なのよね」

その言葉に周囲の少女達も頷く。

「確かに…私も、彼と会わなくなってから…気持ちが落ち着かないのよね…」

薫が声を潜めて言う。
周囲の雰囲気が少し落ち込んで来ている様子に、沙耶は感じて周囲を見渡して話し出す。

「皆さんは、今回の件に関しては異論は無いですか?」

集まった少女達は、何も言わなかったが…1人手を上げる者がいた…玲奈であった。

「申し訳無いですが…私は辞退させていただきます」

その言葉に周囲は驚いた表情をしていた。

「辞めるの…?」

絵里が驚きながら言う。

「貴女達は、彼をどうしたいの?屋敷から連れ出して…その後はこっちの屋敷に連れ込む気なの…それでは、やっている事は同じじゃない?私は…彼には尽くし切れない恩があるのよ。一生目を覚まさ無いかもしれなかった私を、救ってくれたのが彼だったのよ、その為にも彼を主人として迎える覚悟はあるわ。それに比べて貴女達は、彼の子を身籠って、そのまま彼との関係を終わらせるつもりなの?」

玲奈の言葉に周囲は沈黙した。

「本気で彼との関係を求めるなら、その屋敷に居る可能性があるのなら直接会いに行けば良いのではないのかしら…。何故隠れて行動しなければならないの?残念だけど…私は、これで失礼するわ」

そう言って玲奈は部屋から出て行く。
彼女の姉梨花が残って周囲を見渡す。

「あの子ね…毎日、友達と連絡し合って彼を探しているのよ…」
「本気で竜也さんと一緒になる覚悟があるのね…」

薫が梨花を見て言う。

「他に、このやり方に異論があるなら辞退しても構わないけど…」

沙耶が周囲を見渡すが…席を立つ姿は見られなかった。

「異論は無い見たいですね、では…次に今回私達だけで行動するには、少々リスクがあるので、ちょっと助っ人を用意しました。どうぞ、入って来て下さい」

そう言われて室内に1人の男性が現れた。それを見た時、周囲は少しザワついて。

「やあ、ドモドモ…」

現れたのは40代過ぎの男性で頭は白髪が混ざり、年齢のわりには少し老け顔で、猫背でニヤ付いた表情をしている。

「こちらは鴉取と言う方です。情報屋として、彼には事前に私達の為に動いて貰っています」
「ども…鴉取です、いやぁ…それにしても可愛い子や、美人揃いですね…」

彼に対しては少々不快な表情を浮かべているのも居た。

「あの、すみませんが…こちらの方は、何か理由があって雇っているのですか?」

梨花が戸惑いながら沙耶に聞く。

「彼は…過去に凛とは関係を持っていた時期があり、鮎川家にも出入りした経歴があります。更に今回の件に関しても色々と調べてくれました」
「まあ…俺としても、久しぶりに彼女を抱きたいし・・・屋敷に土足で上がっている男性を引きずり降ろしたいんですよ。まあ…その為にも事前に手は打ってます。今回の行動が上手く行かなかった場合の為にも保険を用意しておりまして…。へへ…」

鴉取はニヤ付いた笑みを浮かべて話す。
少女達は、少し不安な感情を抱いていた。


~鮎川家…

厨房で飾り切りをしている竜也は、ペティナイフで何度か、人参の飾り切りに挑戦しているが…上手く使えず苦戦していた。
それを見ていた三松と言う女性の調理担当の人が、彼の側へと行き手伝う。

「飾り切りは、最初に切り込みを付けてやると上手く行くわよ」

そう言って彼女は、竜也に近付き彼の手を握ってやり方を教える。

「ちょっとー、三松さん!」

厨房のカウンターで、竜也の仕事を眺めていた凛が三松を呼ぶ。

「はい、何でしょうか?」

呼ばれた三松は凛の方へと行く。

「必要以上に彼に接近しないでくれますか?」
「あ…あの、私はただ…彼に仕事を教えていただけですが…」
「体をくっつけてまで教える必要があるの?」
「まあ…私なりのやり方で、教えてます。彼には私の全てを注ぎたいと思います、いろんな事をね、勿論仕事以外の事も…」

少し笑みを浮かべた三松は、竜也の側へと戻ろうとするが…

「彼に1m以上近付かないでくださる?」

凛が言うと、三松は凛の側に戻って来る。

「失礼ですが…お嬢様、彼と私は年が近いので…気が合うと思います。お嬢様と彼では親子並みの年の差があるでしょう?将来的な事を考えても、やはり…年が近い方が良いかと思われますが…」
「親子並みに年の差があろうとも、お互いの愛があれば大丈夫でしょう?」
「あら…そうですか?それにしては…お嬢様、何時も彼を叱ってますよね?」

それを聞いた凛が少し赤面する。

「それは…その、彼を教えているのよ!」

少し痛い処を突かれ凛は珍しく戸惑いながら答える。
その時、使用人が凛の処へと来て話し掛ける。

「え…来客者?」

それを聞いた凛は、その場から離れる。
凛がいなくなると、木谷が三松の側へと行く。

「よく…お嬢様相手に引き下がらなかったな…場合によっては解雇になるかもしれないのに…」
「だって彼の側にいると気持ちが落ち着くのよ、それにお嬢様には申し訳ないですけど…彼とお嬢様は似合わないわ」

そう言って三松は、邪魔者が消えたと思って竜也の側に行こうとしたら…

「ねえねえ…三松さん、1m以上竜也さんに近寄らないでください…」

今度は舞が現れて三松に注意する。

(まだ…もう1匹煩いのがいたか・・・)

少し悔しそうに三松は舌打ちする。
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