村石君の華やかな憂鬱 Remake

A.Y

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帰宅編

第27話 研究所

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竜也はバスで知り会った絵里と言う名の少女に手を引っ張っられて、柳沢研究所の建物へと向かう。研究所は少し小高い丘の上にあった。研究所に向かう周辺は緑の絨毯の様な芝生に覆われていた。絵里と丘の道を進んで行くと…目の前に白塗りの大きな施設が見えて来た。

「大きな建物だ…でも、よく僕がここに用があると分かったね…」
「貴方には不思議な魅力があるからよ…男性が苦手な私の心を動かしてしまうのだから、多分…用があるとすれば、ココだろうな…と感じたのよ」
「そうなんだ」

「ねえ…用が終わったら、私の家に来てくれない?パパやママに貴方を紹介したいの」
「ちょっと気が早過ぎるでしょ…ソレは」
「良いじゃない、私は…もう貴方だけのモノだから…私の両親が許してくれれば、お互いが何をしようとも誰にも文句は言われないわよ」
「それって、たとえば…」
「セックスとかね」

少女の口からそんな言葉が出て来るとは思わなかった…、それだけ相手は真剣だと言える。

「もしも、僕が別れたいと言ったら…?」
「私は貴方を絶対に離さないわ、もう…私は決めたの…貴方と生涯を共にするってね。まあ…そう言う話は帰る時にゆっくりしましょう。研究所に用があるのでしょ?行きましょう」

絵里は竜也の腕を掴んで研究所に向かう。
研究所のドアを開けて中に入ると年配の白髪の男性の姿が現れた。彼は竜也を見るなり嬉しそうに竜也に近付き肩を掴んだ。

「君が来るのを待っていたぞ村石君、私が柳沢だ…宜しくな」
「ハイ、こちらこそ宜しく」
「まあ…ここで話すのも何だから、奥の応接間に行こう」

そう言うと彼は竜也と絵里連れて奥の応接間へと案内する、その時…彼は受付にいた女性に、お茶を淹れるよう頼む。
応接間に入ると彼は、竜也と絵里をソファーに座らせて、自分は向かい側に腰を下ろして、中央にガラス製のテーブルを挟んで柳沢は話を始める。

「君に関する内容を、君の担当医からカルテ等の資料をFAXで内容を送らせて貰って少し見たが…実に興味深いものだね」
「何か分かったですか?」
「まあ…一言で言えば、担当医も言ったと思うけど…、事故当時の状況からして今の君が一般の健常者と変わらず生活しているのは、ある意味奇跡に近い事だと言える」
「それは担当医からも聞きました。自分としては、それ以外の事に付いても知りたくて…こちらまで足を運んだのです」

「それは…つまり、突然モテ始めた…と言う事かな?」
「ハイ、そうです」
「これは…私にも少し難しい問題ではあるな…」

柳沢は頭掻きながら言う。

「私の憶測からすれば…君のモテるのは、特定の人物だけと言える」
「それは…何故でしょうか?」
「考えて見たまえ、君に対して全ての女性が同時に…君だけに惚れてしまったら、世の中の秩序そのものが狂ってしまうだろう?」
「まあ…そうですね」
「ただ…君に対して惚れた女性が、どう言う者で…今までどうだったのか…を知りたい。そこから少しずつ研究を重ねれば、多少の解決の糸口も見つけられる…」
「でしたら、彼女はどうでしょうか?」
「え…?」

柳沢は、絵里を見て驚いた。

「彼女とは、出会ってまだ1時間も経過していない関係です」
「そ…そうだったの、もう長い付き合いの様な関係かと思っていた」

柳沢は絵里を見ると、竜也の腕を両腕で抱き締めて身を寄せて顔を竜也の肩に乗せている。
余程の関係で無ければ、相手がこの様な仕草を見知らぬ人の前でするはずが無い。

「え…と、失礼ですが…貴女のお名前は…?」
「熊切絵里です」
「彼とは、どんな関係でしょうか?」
「私にとって最高で最愛の恋人よ」
「そうですか…では、彼とは何時から交際を始めたのですか?」
「今日からよ、出会って1時間位前からですかね?」

それを聞いて柳沢は少し驚いた。

「学者が言うのも何だが…コレは、ある意味魔術みたいだね…、相手は完全に君に心を奪われているよ…」
「催眠術とかだったら、元に戻す方法とか教えて欲しいですね」
「これは催眠術でも無い、女性が本能から君と言う人間に惚れてしまっているのだよ。まあ…言い方を変えれば、スポーツ選手やアイドルにファンが付くのと同じモノだよ。君が事故で奇跡的に助かった事により、君の中で眠っていたアンテナが高く伸びて、それを女性が感じ取ると…君と言う人間に惚れてしまう…と言う一種の現象では無いかと思う」

「以前…同じような事を別の人からも聞きました。自分としては改善させる方法を知りたいのです」
「それは難しい問題だね、甘い蜜の味を知ってしまって…その味を忘れろと言われて、出来ない様な物と同じ事だね。君と言う人間に惚れてしまったら…もう、そのまま一緒になるしか他に方法は無いと思うよ。今…君の隣に居る彼女の様に…」
「それが1番困るのです。まさか…全員と結婚しろと…言うのですか?」

竜也は俯きながら言う。
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