失われた愛と偽りの婚約〜復讐の令嬢が選ぶのは冷酷な隣国王子か?

マミナ

文字の大きさ
上 下
23 / 23

第23話カイルの罠

しおりを挟む
リリーとゼロスはカイルに向かって光の魔法
閃光の蝶フラッシュバタフライを解き放つ。

無数の金色の蝶をが出現し、周囲を縦横無尽に飛び回る。

ゼロスも同時に光輝の一閃レイディアントフラッシュを放つがカイルの闇の魔法吸血の影シャッテンデスヴァンピールスを瞬時に発動し、周囲に飛び立つコウモリの生命を一瞬で吸い取って強力なバリアを形成し、二人の攻撃を上手くかわした。

「甘いな…」

カイルには余裕が感じられる。

塔の中は薄暗く、かすかな風が吹き荒れている。

彼女は剣を握りしめ、ゼロスと共に戦う覚悟を決めていたが、カイルの冷ややかな笑みが二人をじわじわと追い詰める。

「お前たちの力なんてこんなものか?」

カイルの低い声が響き渡ると同時に塔自体が揺れ始めた。

ゴゴゴゴゴ…

「え…なにこれ、塔全体が勝手に揺れて…!」

強い揺れに思わず転びそうになるがゼロスが手を伸ばし、彼女を元の姿勢に戻した。

「ありがとう」

「気にするな。それよりもカイルのところへ!」

「分かったわ!!」

二人は急いで態勢を立て直そうとするが、壁の中から闇が染みだし、床に広がっていく。

「これってまさか…」

「恐らくはあの結界魔法で…」

ゼロスは厳しい顔になる。

「薄々気づいているようだなゼロス!そうだ。私はお前たちがこの塔に入った瞬間から、闇の結界魔法闇の要塞フェストゥングデアドゥンケルハルトを発動していたのだからな。逃げることなど不可能だ!!」

カイルは得意げに笑い声をあげる。

「クソッ」

ゼロスは剣を構え、闇の中に突っ込もうとしたが、カイルの罠はその先に待っていた。

ガシャーンッ!

金属音が周囲に響き、床から鋭いトゲが突き出る。

ゼロスは素早い動きで躱そとしたが、その動きにほんの僅かな隙が生じてしまう。

「ゼロス危ない!」

リリーが叫んだ瞬間、カイルが手をかざし、彼の足元に黒い鎖が絡みつく。

カシャ――ン!

鎖の音と共にゼロスは一瞬で動きを封じられ、地面に引きずり込まれていく。

「リリー――…!!」

「ゼロス!」

リリーは必死で駆け寄り彼を助けようとするが、カイルの魔力がさらに強まる。

「ふふふ…ふはははは…お前たちはもう終わりだ!」

カイルが嘲笑しながらさらに邪悪な力を注ぐ。

「諦めるなリリー!俺はまだお前と一緒に戦える!」

ゼロスは苦痛に耐えながら叫ぶ。

その声にリリーは奮い立ち、光の魔法エルフの矢エルフアローを発動する。

無数の光から、光の矢を瞬時に生成し、非常に速い速度でカイルに狙い撃ちをする。

だが、カイルは無数の矢の動きを次々と避けていき、無効化していく。

「どうして…!?」

リリーは驚愕するがカイルは平静を保っている。

「その程度の速さでは、この私に傷をつけるすら不可能だ」

彼は軽く手を振るとリリーの背後に大きな闇の塊が現れ、彼女を押し潰すように襲いかかる。

ドガァァン!

リリーはなんとか体をひねって避けるものの、衝撃で床に叩き付けられる。

「痛い…!」

リリーは激しい痛みで顔を歪める。

それに、叩き付けられた衝撃で息が詰まり、体が重く感じられた。

「なんて…力…」

「この塔そのものが俺の力だ。この空間では俺が神だ!」

カイルの声はどこからともなく響き、リリーを圧迫し続ける。

リリーは再び立ち上がり息を整える。

「ゼロス、まだ負けないわ…!」

彼女は自分を奮い立たせて落ちた魔法の杖を拾い、強く握りしめた。

ゼロスもまた鎖をほどこうと必死に抵抗している。

「リリー、聞いてくれ!あの邪悪な力を打ち破るには二人の力を合わせるしかない!」

ゼロスはリリーに向かって叫ぶ。

彼の声が彼女に届く。

「二人の力…?」

「そうだ。お前と俺、二人が力が交わるとき真の力が生まれるんだ。だから俺を信じてくれ!」

ゼロスの言葉にリリーは頷く。

そして二人は心を一つにするため、互いの魔力を呼び覚ます準備を始める。

「行くぞ!」

ゼロスが闇の鎖を振り切り、リリーの隣に立った。

二人の魔力が同時に輝き始める。

キイイイイン…という高音が鳴り響き、カイルの顔が一瞬、驚愕に染まる。

「なんだと…!?なにが起きたんだ…!!」

彼は後ずさりし、魔力をさらに強化しようとするが、リリーとゼロスの魔力がまるで一つの存在のように融合し光を放つ。

「コレが私たちの力…」
熾天使の聖光セラフィムルミエール

リリーとカイルは力を合わせてカイルに攻撃する。

天使の六翼が光輝き、全てを浄化するかのように。

「ぐおおおお…!」

カイルは倒れ込み、苦悶の声を上げた。

「莫迦な…この俺が…ここで負けるだと…!」

彼は信じられない様子で二人を見つめる。

リリーはゼロスに向かって微笑む。

「これで…終わったの。」と尋ねるが、ゼロスの表情は険しいままだ。

「いや…まだだ。カイルはこれで終わらない。」

ゼロスは剣を握りしめたまま、慎重に周りを見渡す。

「奴の真の力はまだ隠されている。」

「そうなのね…これからが本当の戦いなのね。」

リリーはゼロスと共に気を引き締め次の一手を考え始めた。

  
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私は弱虫令嬢ではいられません! 〜依頼主の怨念は、この魔女が血で応えます〜高慢メイドの地獄行き編

パクパク
恋愛
時の魔女”と呼ばれる、世界の法則を踏み外した存在。  星が生まれ、人が滅び、文明が築かれては崩れゆく様を、幾度となく見下ろしてきた。千年どころか、何万年もの歳月を生きてなお、彼女の容姿は変わらない。白銀の髪に、空のように淡い青の瞳。瞳の奥では、数多の時間が交差し、映し出されている。  そんな彼女が、唯一心を動かされたもの。それが**“復讐”**だった。

落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~

しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。 とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。 「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」 だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。 追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は? すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。 小説家になろう、他サイトでも掲載しています。 麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

処理中です...