失われた愛と偽りの婚約〜復讐の令嬢が選ぶのは冷酷な隣国王子か?

マミナ

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第21話決戦の予兆と新たな力

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リリーとゼロスはついにカイルの本拠地がある黒い塔を遠くに望む場所まで辿りついていた。

遺跡での戦いを得てリリーは着実に力をつけたがカイルの力がどれほど強大なのかを考えるとまだ心の奥には不安が渦巻いていた。

「ついた…カイルの居場所はあの塔なのね、ゼロス。」

リリーはゼロスに聞いて確かめる。

「ああそうだ。」

リリーは遠くにそびえ立つ黒い塔を見つめながら静かに言葉を漏らす。

その塔は不気味な程に巨大で、彼女たちを圧迫するかのようにそびえ立っている。

塔の周囲には人間と同じくらいの大きさのコウモリが何匹か飛び回っている。

「あれが奴の古城だ。カイルは塔の中で君を待っているだろうな。」

「そうね。だって彼の狙いは私だから。」

リリーとゼロスは厳しい表情をして塔を見つめる。

二人の間に重たい空気が漂う。

戦いの緊張感が、肌を刺すように広がっていく。

リリーの厳しい表情を見たゼロスはふと彼女の体が緊張と不安でぶるぶると小刻みに震えていることに気づいたが、当の本人はゼロスの視線に気づけていない。

リリーの表情を見ればいくら平静を装っているつもりだろうが、体は正直だ。

(カイルと戦うのはやっぱり怖い。あの強大な力と狡猾な本性を目の前で見てきた私だけでは正直にいって勝てるかどうかは分からないわ。だけどゼロスが一緒だから…いやそれは駄目よ!これ以上彼には…)

彼女が心の中で俯きながら悩んでいた。

あのカイルと対峙する恐怖よりも自身の力不足のせいでまたゼロスに危険な目に遭わせてしまうのではないかという不安。

なにせカイルは今まで刺客よりもずっと強大で邪悪な力の持ち主なのだから。

不安な気持ちで俯いているリリーの悩みを何故か理解したゼロス。

だが、ゼロス自身も何故リリーの悩みを理解したのかは分かっていない。

(そんなことで悩んでいたのか。でもなんだか少し安心したな。)

ゼロスはリリーの様子に少しだけ安堵をする。

「別に気にすることではない。俺はお前よりもずっと強いし耐久力もある。お前が言う程弱くはないし、なにより俺自身がお前と共にいたかったからだ。だから心配するな。」

ゼロスはリリーに安心させるかのように少し穏やかな表情を見せた。

リリーはゼロスの言葉を受け止めて強く頷く。

(ゼロス、ありがとう。もう迷ったりしないわ。)

「行こうゼロス。カイルを倒して私たちの未来を取り戻すために。」

二人は再び足を踏みだし、カイルとの決戦に向けてまっすぐと歩きだす。

リリーとゼロスには新たな力と決意が満ちていくのを感じていた。








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