失われた愛と偽りの婚約〜復讐の令嬢が選ぶのは冷酷な隣国王子か?

マミナ

文字の大きさ
上 下
19 / 23

第19話不穏な影と潜む刺客

しおりを挟む
リリーはカイルの裏切りを知り、ゼロスと行動を開始する。

カイルが自分を裏切ったことはショックだったがそれ以上に今、彼を止める為に前進しなければならない。


リリーは激しい怒りを胸に抱いて進むべき未来を決意した。

「ゼロス…これで本当にカイルと戦わなければならないわけね。彼は私を利用してただけだったなんて…なんて酷いことを…許せない…本当に許せない!!」

リリーはぎゅっと拳を握り締めて前を見据える。ゼロスはそんな彼女の横顔を俯きながら見つめている。


「すまないリリー。私は最初からカイルは君を都合の良い駒として扱っていたことを分かっていたが、本当のことを言ってしまえばカイルのことで揺れ動いていた君を傷つけてしまうのかと思ったんだ。本当に申し訳ない。」

ゼロスはリリーに向かって謝罪をした。

「私こそごめんなさい。私もあなたに辛い思いをさせてしまったのね。本当にごめんなさい。」

リリーはゼロスに申し訳ない気持ちになる。だがゼロスはリリーを見つめて優しく微笑んだ。

「謝る必要はないんだリリー。今は目の前にいるカイルを全力で倒しに行くぞ!準備は出来ているか。」

「ええ、準備万端よ!!」

リリーとゼロスは今目の前にいるカイルを全力で倒す決意を固める。

しかし、彼女には不安があった。ゼロスがいるとはいえ、カイルの邪悪な力は想像以上に強大であることを知っているからだ。

もしゼロスが私をかばって大きな傷を負ったら。

カイルの邪悪な力の強さに死亡するなんてことがもし現実になってしまったら……。


リリーは心配のあまりゼロスを見つめる。だがゼロスは彼女を見つめて静に微笑んだ。

「心配しなくて良いんだリリー。俺は君が思っているよりずっと強い。だからこそいま君が覚悟を決めたなら俺が何があっても君を全力で守って見せる!」

彼の決意は堅い。

「ありがとうゼロス。私もあなたと共に全力で戦わわ!!」

リリーは安心して覚悟を決めた。

その時、周囲の気配が一瞬で変わる。暗い森の奥から異様な気配が漂ってくる。リリーは咄嗟に異常に気づき、警戒心を高める。

「ゼロス、何か感じる?…誰か近づいてくるわ」

ゼロスもすぐにその気配に気づく。彼の目が鋭くなる。

「刺客だ…恐らくカイルが仕向けたものだ。注意しろリリー」

言葉が終わる前に影の中から数人の魔人たちが姿を現す。コウモリのような尖った大きな羽と真っ黒な肌が特徴的だ。

彼ら魔人は無言のまま二人を取り囲むようにバサバサと動き出す。

「お前たちは何者だ…?カイルの手下か?」

ゼロスが問いかけたが数人の魔人は何も答えないまま剣を抜いて二人に襲いかかる。

「話す気はないみたいね…。ゼロス、やるわよ!」

リリーは魔力を集中させて周囲に風の魔法光速の鳩ライトスピードピジョンを発動する。

彼女の髪が風に揺れるて、鳩の形をした風が周囲を光速で不規則に飛び周りながら数人の魔人を攻撃する。

その間にゼロスは剣を抜き、一瞬で魔人たち突進し、次々と斬り伏せていく。

(凄い…こんな一瞬で…魔人たちを…)

リリーはゼロスの剣さばきに感嘆する他ない。

数人の魔人はリリーの魔法とゼロスの圧倒的な剣さばきによって次々と倒されて砂のような形状になった後、そのまま消滅して土に還ったのだった。

リリーはほっとしたかのように息をつく。

「やったわね、ゼロス!あなたのおかげよ。」

「リリーの魔法もだんだんと強くなってきているじゃないか。このまま行けばカイルに対抗出来るかもしれない。」

ゼロスが優しい笑みを浮かべている。

リリーは頬を赤らめて少し気恥ずかしい気持ちになった。

「ゼロスの言う通り、私も自分の魔法が強くなってきているのは実感しているわ。でも…この程度じゃ、カイルに敵わないわ。もっと強くならないと…」

「分かっているよリリー。これからだ、お前が強くなるのは。だから今は自分自身を信じることが大切だ。」

「ありがとう、ゼロス。」

ゼロスの励ましたにリリーは少しだけ心が軽くなった。

そして二人は次の目的地に向かって歩き出した。












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません

片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。 皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。 もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

処理中です...