失われた愛と偽りの婚約〜復讐の令嬢が選ぶのは冷酷な隣国王子か？

第8話隠された手紙と新たな同盟

リリーは一人、宮殿の書庫に足を踏み入れた。静寂に包まれた室内、ただ本の匂いと薄暗い灯りが彼女を包んでいる。アランが隠していた密書が、この場所にあるはずだった。

「ここに、全ての証拠が…」

リリーは内心、期待と不安が交錯していた。アランが裏切った事実は重いが、ミリアと手を組んでいる証拠を掴めれば、彼を追い詰めることができる。彼女の指先が震えながらも本棚を辿り、ついに一冊の古い本を手に取る。

パラリ、と古びたページがめくれる音が響く。その中から、一枚の手紙が滑り落ちた。

「これが…」

リリーは震える手で手紙を拾い上げ、急いで中身を確認した。そこには、ミリアからアランに宛てた甘い言葉と共に、宮廷内での陰謀が書かれていた。

「ミリアが…これほどまでに？」

彼女の瞳は、怒りで燃え上がった。ミリアとアランは、自分をただの道具として使っていたのだ。これで全てが繋がった。

「この手紙さえあれば、私は…」

その時、後ろから低い声が響いた。

「お探しのものが見つかりましたか？」

リリーは振り返ると、そこに立っていたのはかつて敵対していた貴公子、カイルだった。彼の冷たい笑みが、いつも通りだが、どこか違った。

「カイル…あなたがここにいるなんて、偶然？」

カイルは軽く肩をすくめ、彼女に歩み寄る。

「偶然だと思いたいのか？それとも、助けが欲しいのか？」

リリーは警戒心を強めたが、彼が何を狙っているのか分からない。

「…何が目的なの？私を利用しようとしているんでしょう？」

カイルは苦笑し、リリーの手にある手紙をちらりと見た。

「利用？いや、そういう関係はもう終わりにしよう。リリー、君は強くなった。だが、これから戦う相手は強大すぎる。協力が必要だ。君には選択肢がある。私と手を組むか、一人で戦うか。」

彼の言葉に、一瞬、リリーは心を揺さぶられた。カイルの力を借りれば、アランとミリアに対抗できるかもしれない。

「…協力するとして、あなたは私に何を求めているの？」

カイルの表情が少しだけ柔らかくなり、彼は一歩前に進んでリリーの顔を見つめた。

「君の信頼だけでいい。私は君を守りたい。それだけだ。」

その言葉に、リリーは戸惑いを隠せなかった。彼の言葉は甘く、どこか真実味があった。

「…信じられるの？」

「それは君次第だ。」

カイルは優しく手を差し伸べた。リリーはその手を見つめ、深く息を吸い込んだ。ここで彼を信じることが最良の選択なのか、自分自身に問いかけながら、その手を取った。

「いいわ、カイル。あなたを信じる…今は。」

カイルは満足げに頷き、リリーの手を握り返した。

「賢明な選択だ。これで、我々は対等な立場だ。」

その瞬間、リリーの心には新たな決意が芽生えた。アランとミリアを打ち倒すためには、カイルの助けを借りるしかない。だが、彼を完全に信用するわけではない。常に裏切りを警戒しながら、慎重に進めなければならない戦いが始まった。