失われた愛と偽りの婚約〜復讐の令嬢が選ぶのは冷酷な隣国王子か？

第6話裏切り者たちの仮面

リリーは宮廷の舞踏会でのアランとのやり取りを終え、ゼロスと共に宮廷の裏側で繰り広げられている陰謀を掴むため、行動を開始した。ゼロスの冷静さと彼の知識を頼りにしながらも、リリーの心の中には複雑な感情が渦巻いていた。彼女はアランを裏切った理由を知りたい気持ちと、復讐心の狭間で揺れていた。

舞踏会の翌日、リリーはゼロスと共に宮廷の秘密を探るため、ある貴族の屋敷を訪れた。そこでは、アランとミリアの行動に関する新たな情報を得るための手がかりが隠されているはずだった。

「ここが例の屋敷か…」リリーは豪奢な扉を見上げ、深呼吸をした。「この中に、あの二人の秘密が隠されているのね」

ゼロスは落ち着いた声で答えた。「ああ、だが油断はするな。ここにはお前を狙う者たちもいるかもしれない。慎重に動くんだ」

「わかってるわ、ゼロス。でも、もう引き返すつもりはないの。あいつらの真実を知るまで、私は止まらない」

ゼロスは微笑みながら彼女の肩に手を置いた。「お前がここまで強くなったのは俺も驚いているよ。でも、その強さを無駄にするなよ」

リリーはゼロスの手を握り返し、決意のこもった瞳で答えた。「ありがとう、ゼロス。あなたがいなければ、私はここまで来られなかったかもしれない。だけど、これから先も一緒に戦ってほしい」

「もちろんだ。お前を一人にはしないさ」とゼロスは優しく答えた。

二人は屋敷に足を踏み入れると、そこには豪奢な装飾が施された広間が広がっていた。貴族たちの影がちらつく中、リリーは冷静に周囲を観察しながら、耳を澄ませた。

すると、奥から誰かが近づいてくる足音が聞こえた。リリーとゼロスは一瞬緊張したが、現れたのはアランだった。彼は笑みを浮かべながら近づいてきた。

「リリー…こんなところで会うとはな。君は相変わらず美しい」とアランは優雅に挨拶をしたが、リリーは冷たい目で彼を見返した。

「その口先だけの言葉、もう聞き飽きたわ。アラン、ここで何をしているの？あなたの目的は何なの？」リリーは冷たく問い詰めた。

アランは少し微笑みを崩さずに答えた。「目的？そんなに警戒しなくてもいい。君と話をしたかっただけさ、昔のようにね」

「昔のように…？」リリーは苦笑した。「あなたが私を裏切ったのは、もう昔のことだと言いたいの？」

「そうじゃないさ、リリー。俺は…君のことを本当に大切に思っていたんだ。ただ、状況が変わったんだよ」とアランは優しい声で語りかけた。

「状況が変わった？」リリーはその言葉に眉をひそめた。「それが、ミリアと一緒にいる理由なの？」

「ミリアは…俺にとって必要な存在だったんだ。だが、それは君に対しての気持ちが消えたわけじゃない」とアランは真剣な顔で言った。

リリーはその言葉を聞いて、心の中で湧き上がる怒りを押さえつけながら答えた。「そんな言葉で私を騙せると思ってるの？もういいわ、アラン。あなたに期待するのはやめたの。私は私の道を進むわ」

アランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑を取り戻し、少し近づいた。「リリー、君は本当に変わったな。だが、それでも俺にはまだ君が必要なんだ。もう一度…」

その瞬間、ゼロスが一歩前に出て、冷たい声で遮った。「もういいだろう、アラン。リリーにはお前と話す時間はない。俺たちは忙しいんだ」

アランはゼロスを見て、冷たい笑みを浮かべた。「ゼロスか…お前も相変わらずだな。だが、俺のことを邪魔するな。リリーとのことは、俺たちの問題だ」

ゼロスは静かに答えた。「いいや、アラン。お前はもうリリーに何も言う権利はない。彼女を裏切ったのはお前だ。そして、俺たちはお前の裏切りを許さない」

アランは少し挑発的な笑みを浮かべたが、肩をすくめて去っていった。

リリーはゼロスを見つめ、安堵の表情を浮かべた。「ゼロス、ありがとう…」

「気にするな、リリー。俺はお前の側にいる。それだけだ」