失われた愛と偽りの婚約〜復讐の令嬢が選ぶのは冷酷な隣国王子か?

マミナ

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第3話ゼロスの過去と重なる復讐の道

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リリーとゼロスの婚約が宮廷で発表されたその日、ルイネス王国の王宮は賑やかな宴で満ちていた。だが、その喧騒の中で、リリーの心は静かに計画を進める決意に燃えていた。ゼロスとの婚約は単なる契約であり、彼女にとっては復讐への一歩に過ぎない。

パーティーが進む中、リリーは美しいドレスに身を包み、笑顔を浮かべながらも、周囲の視線を感じていた。特に貴族たちの一部は彼女の行動に疑念を抱いている様子で、ちらちらと冷ややかな視線を投げかけてきた。それでも、リリーは毅然と振る舞い続けた。彼女の目的は、この場で注目を集めることではなく、アランとミリアを打ち倒すための布石を着実に打つことにあった。

「随分と大胆な婚約を結びましたね、リリー様」と、ある貴族の女性が声をかけてきた。その女性は、ほのかに嫌味を込めた笑みを浮かべていた。「ゼロス王子と婚約するなんて、相当な覚悟がおありのようで。」

リリーはその挑発に動じることなく、優雅に微笑み返した。「ええ、すべては未来のために。無駄な嫉妬に囚われている暇などありませんわ。」
相手は言い返す言葉を失ったように黙り込み、リリーはその場を後にした。

その後、ゼロスが静かに彼女のもとに現れ、二人は宮廷の外れにある静かなテラスへと移動した。パーティーの喧騒が遠ざかり、夜風が心地よく二人の間を通り抜ける。

「よくやっているな、リリー」と、ゼロスは静かに口を開いた。彼の声には微かな冷たさとともに、何か別の感情が混じっているように感じられた。

リリーはゼロスの言葉に少し驚きながらも、「ありがとうございます。ですが、これはまだ始まりに過ぎません。」と答えた。

ゼロスはリリーをじっと見つめ、少しだけ微笑んだように見えた。「そうだな。君の復讐はまだこれからだ。しかし、一つ忠告しておこう。復讐は必ずしも望んだ形で終わるとは限らない。君はその覚悟があるのか?」

リリーは一瞬の沈黙の後、真っ直ぐゼロスを見つめ返した。「もちろんです。私はすべてを失いました。だから、何を失うことになろうとも、後悔するつもりはありません。」

ゼロスはその言葉を聞き、静かに頷いた。「分かった。だが、君にはまだ知らないことが多い。復讐の道は、決して簡単なものではない。それを私が証明しよう。」

「どういう意味ですか?」リリーはゼロスの意図を探ろうとした。

ゼロスは少し遠くを見つめ、低く語り始めた。「君と似たようなことが、かつて私にもあった。私もある人間に裏切られ、その結果、すべてを失った。だが、その復讐は甘いものではなかった。むしろ、苦痛に満ちたものだった。」

リリーは驚きながらも、ゼロスの言葉を黙って聞いていた。彼が語る過去は、彼の冷酷さの裏にある理由を示唆しているようだった。

「だから私は言っているんだ、リリー。復讐は甘美だが、その後に残るのは虚しさだ。君はそれに耐えられるか?」ゼロスは再び彼女に問いかけた。

リリーは深呼吸をし、強い決意を持って応えた。「私にとって、後戻りはありません。私は彼らを許さない。それだけです。」

ゼロスはその答えを聞き、再び微笑んだ。「いいだろう。君がその覚悟を持っているなら、私は手を貸そう。ただし、君が思っている以上に厳しい道だということは忘れるな。」

リリーはゼロスの冷酷さを理解しつつも、彼がただの冷たい人間ではないことに気づき始めた。彼もまた、過去に囚われ、復讐の道を歩んだ一人なのだ。

その夜、リリーは自室に戻り、ゼロスの言葉を反芻していた。彼が持つ暗い過去は、彼女にとって警告でもあり、同時に共感を呼び起こすものだった。だが、リリーは決して揺らぐことはない。彼女の復讐はまだ始まったばかりであり、ゼロスの助けを得て、さらに計画を進めていく決意を新たにした。

次なるステップ――アランとミリアの弱点を突き、彼らを追い詰める計画を、リリーは静かに練り始めた。

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