怖い日常

友達の彼氏と秘密の関係、そして破滅

「ねぇ、彼氏とどう？」
親友の彩香が、いつもと変わらない無邪気な笑顔でそう尋ねてくる。

「…うん、まあまあかな」
私は適当に答えながら、心の中で冷や汗をかいていた。彩香の彼氏、涼とは半年前から密かに関係を持っている。彩香はもちろんそのことを知らない――はず。

でも、最近の彼女は少し変だ。なんとなく、私をじっと見つめるその目が冷たい。もしかして、何か気づいているんじゃないか？そんな不安がよぎる。けれど、涼との関係はやめられない。私の方が彼にふさわしいし、いつか彩香もそれを理解するだろう。

そんな楽観的な考えが私を支えていた。

「そっか、まぁ彼女として色々気をつけてあげなきゃね…いろんなことにさ」
彩香は意味深な笑みを浮かべ、私を見つめた。その瞬間、背筋にゾクリとした寒気が走った。

数日後。

夜、ベッドに横たわっていると、スマホが震えた。涼からのLINEだ。
「今夜も会える？」
私は小さく微笑み、返信する。
「もちろん、すぐ行くね」

涼との密会はいつも刺激的だ。彩香にはバレるわけがない、彼は私のものだ。そう思っていた。

部屋を出て涼のアパートへ向かおうとしたその瞬間、背後で何かがカサリと音を立てた。振り向くと、薄暗い廊下にうっすらとした影が揺れている。

「……誰？」
誰もいない。けれど、何かがいる感覚が確かにあった。まるで、生き霊のような存在感が部屋の中に漂っているのだ。

ドクン、ドクン、と心臓が早鐘のように鳴る。これ以上ここにいたくない。私は急いで部屋を飛び出した。

涼のアパートに到着し、彼と抱き合った瞬間、全てを忘れられた。

「大丈夫、彩香にバレるわけないよ」
涼の言葉に安堵を覚え、束の間の安心感が私を包む。彼と一緒にいる時間が何よりも大切で、罪悪感なんて感じない。それでも、あの時感じた影のことが頭の片隅から離れない。

「本当に…大丈夫だよね？」
私がそう言った瞬間、部屋の窓が突然ガタガタと音を立て始めた。風はないのに、異様な気配が漂っている。

「涼…なんか、いる…」

彼が振り返ろうとしたその時、部屋の隅から黒い影がゆっくりと現れた。それは…彩香だった。けれど、彼女の目は生気がなく、顔はまるで死んだように青白い。

「……嘘、彩香？」
言葉が出ない。彼女の姿は、この世のものではなかった。

「私を裏切ったね…」
彩香の声は低く、ひどく冷たかった。涼が叫び声を上げる間もなく、その生霊が彼に襲いかかる。骨が砕けるような音が響き、涼はその場に倒れ込んだ。

私は恐怖で動けなくなり、ただその惨劇を見つめることしかできなかった。

「ごめんなさい…彩香、違うの…」
私は必死に弁解しようとするが、彼女は微笑んで近づいてくる。
「もう遅いよ、彼もあなたも、私を裏切った罰を受けるんだから」

目の前が暗くなり、気づけば私は涼の隣に倒れ込んでいた。動かない。息もできない。彩香の冷たい手が、私の首に触れた。

「友情の代償、ちゃんと払ってもらうからね…」

そのまま、私は静かに意識を手放した。彩香の微笑みだけが、私の最後の光景となった。

そして、全ては終わった――永遠に。