怖い日常

夜ふかしの代償

「また夜ふかしか…」

時計を見ると、既に深夜2時を回っていた。勉強しなきゃいけないのに、ついついYouTubeやゲームに手が伸びる。この時間が一番集中できる気がして、気づけば毎晩のように夜更かししている。

「明日も学校か…ま、なんとかなるっしょ。」

受験生としては最低の態度だって分かってる。でも夜中の静けさは、昼間の雑音とは違って心地いい。スマホを片手にベッドに転がりながら、友達からのメッセージに返信する。

『お前、まだ起きてんの？勉強しろよｗ』

「うるせぇよ…今からやるって。」

嘘だ。本当は全然勉強してない。もう少し、動画を見てから始めればいいやって、いつも自分に言い聞かせているだけだ。

――その時、ふと部屋の電気がチラッと瞬いた。

「え、なにこれ…停電？」

一瞬、電気が消えかけたかと思ったけど、すぐに元に戻った。気のせいかもしれないと、軽く肩をすくめて再びスマホに集中する。

でも、今度はスマホの画面が急にフリーズした。再起動させようとしても、反応がない。どうしようもなくて、スマホを放り投げ、机の上の教科書に目を移した。

「くそ、仕方ねぇ…勉強すっか。」

机に向かうも、なんだか集中できない。何かが、気になる。部屋の中の空気が重いというか、どこか違和感がある。

「…ん？音？」

聞きなれない音が、どこか遠くから聞こえてくる。何だろう…？　テレビの音？いや、違う。誰かが、僕の名前を呼んでいるような…そんな感じがした。

「……」

気のせいだ。そうに決まってる。そんなこと、あるわけない。でも、妙にリアルだった。

――ピコンッ

急にスマホが再び鳴った。画面を見ると、知らない番号からのメッセージが届いていた。

『まだ起きてる？』

「誰だよ…」

不気味さを感じつつも、返信はしなかった。寝不足で頭がおかしくなってるだけだろう。気にしないでおこうと思い、スマホを机の上に置いた瞬間――また、あの声が聞こえた。

「こっちに来て…」

「……誰だ？」

思わず声に出してしまった。心臓がバクバクして、息が上がる。さっきの音は確かに僕の耳に届いている。

そして、その声がさらに近づいてくる。

「ずっと、見てるよ…」

部屋の隅に目を向けると、ぼんやりと人影のようなものが見えた。

「え、嘘だろ…？」

全身が凍りつく。影は、少しずつ僕の方に近づいてきている。背中に冷たい汗が流れ、手足が震え始めた。

「や、やめろ…来るな…！」

必死に後退りしながらも、影は止まらない。まるで僕を捕まえようとしているかのように、ゆっくりと、確実に。

その時、スマホが再び鳴った。画面にはまた、同じ番号からのメッセージ。

『もう遅いよ。』

「何が…遅いって…？」

その一瞬、影が僕に触れた。

全身に走った感覚は、まるで電流が体を駆け抜けたような激痛だった。視界がぐにゃりと歪み、僕の意識は暗闇へと沈んでいく。

――そして、最後に見たのは、スマホの画面に映る、ぼんやりとした"何か"の影だった。