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消える足音
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―――東京のある学校の放課後。
校舎裏には、曰く付きの通路があった。
「なあ、ここって本当に幽霊が出るのか?」
太一が、薄暗い通路を覗き込みながら言った。
通路は冷たいコンクリートに覆われていて、照明のぼんやりとした明かりを放っているだけだが、それでも真夜中の何もないところよりは明るい。
「バカだな、幽霊なんているわけないだろ。それ全部噂に決まってるだろう。作り話だって!」
陽太が笑い飛ばす。
「でもさ、この通路だけ何故か閉鎖されているんだよな。ネットで検索してもはっきりとした理由が明記されてないしな。何か理由でもあるんじゃ……」
圭介が不安な表情になる。
彼は一歩後ろに下がっている。
「行かないのか?もしかして今更ビビっるとか?」
「ビビってねえよ!」
からかうように言う陽太に太一は言い返す。
「おい、待てよ…」
圭介も渋々とついて行く。
歩き始めてからしばらくして、三人の足音だけが響く。
「ほら、何も起きないじゃん。幽霊がでるなんて作り話に決まってるって!」
陽太が言った瞬間、足音が一つ減った。
「あれ?何か今、誰かの足音が一つ止まってるんだが気のせいか?」
圭介が思わず振り返る。だが、全員が足を動かしている筈だ。
「気のせいだろ。驚かせるなって。ほら、先に進めるぞ。」
陽太が意気揚々と先を急ぐが、再び足が消えた。
今度は2つ。
「おい、本当に何かいるんじゃないのか?」
圭介の声は震えている。
「だ、大丈夫だって…ただの偶然だろ…」
陽太の声は震えている。
しかし、さらに数歩進むと、全ての足音がピタリと消えた。
「え?…お前らどこにいるんだ?返事をしてくれ!」
陽太が周りを見渡すが、二人の姿が見当たらない。
『何があったんだ。頼むから返事をしてくれ!』
恐る恐る背後を振り返ると後ろは誰もいない。
通路の入口は暗闇に包まれて、何も見えない。
「圭介!太一!」
必死で二人の名前を呼ぶ陽太。
しかし、二人からの返事は来ない。
代わりに、背後から知らない声が…。
「帰れないよ…」
肩を震わせて思わず振り向いてしまう陽太。
その瞬間に何か冷たいものが彼の肩に触れた。
次の瞬間、彼の視界は全部真っ黒になる。
―――そして陽太の足音もピタリと消える。
その通路は、三人が消えた後、再び清寂に包まれた。
彼らの足音はもう二度と聞こえることはなかった。
校舎裏には、曰く付きの通路があった。
「なあ、ここって本当に幽霊が出るのか?」
太一が、薄暗い通路を覗き込みながら言った。
通路は冷たいコンクリートに覆われていて、照明のぼんやりとした明かりを放っているだけだが、それでも真夜中の何もないところよりは明るい。
「バカだな、幽霊なんているわけないだろ。それ全部噂に決まってるだろう。作り話だって!」
陽太が笑い飛ばす。
「でもさ、この通路だけ何故か閉鎖されているんだよな。ネットで検索してもはっきりとした理由が明記されてないしな。何か理由でもあるんじゃ……」
圭介が不安な表情になる。
彼は一歩後ろに下がっている。
「行かないのか?もしかして今更ビビっるとか?」
「ビビってねえよ!」
からかうように言う陽太に太一は言い返す。
「おい、待てよ…」
圭介も渋々とついて行く。
歩き始めてからしばらくして、三人の足音だけが響く。
「ほら、何も起きないじゃん。幽霊がでるなんて作り話に決まってるって!」
陽太が言った瞬間、足音が一つ減った。
「あれ?何か今、誰かの足音が一つ止まってるんだが気のせいか?」
圭介が思わず振り返る。だが、全員が足を動かしている筈だ。
「気のせいだろ。驚かせるなって。ほら、先に進めるぞ。」
陽太が意気揚々と先を急ぐが、再び足が消えた。
今度は2つ。
「おい、本当に何かいるんじゃないのか?」
圭介の声は震えている。
「だ、大丈夫だって…ただの偶然だろ…」
陽太の声は震えている。
しかし、さらに数歩進むと、全ての足音がピタリと消えた。
「え?…お前らどこにいるんだ?返事をしてくれ!」
陽太が周りを見渡すが、二人の姿が見当たらない。
『何があったんだ。頼むから返事をしてくれ!』
恐る恐る背後を振り返ると後ろは誰もいない。
通路の入口は暗闇に包まれて、何も見えない。
「圭介!太一!」
必死で二人の名前を呼ぶ陽太。
しかし、二人からの返事は来ない。
代わりに、背後から知らない声が…。
「帰れないよ…」
肩を震わせて思わず振り向いてしまう陽太。
その瞬間に何か冷たいものが彼の肩に触れた。
次の瞬間、彼の視界は全部真っ黒になる。
―――そして陽太の足音もピタリと消える。
その通路は、三人が消えた後、再び清寂に包まれた。
彼らの足音はもう二度と聞こえることはなかった。
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