怖い日常

見に覚えのない自動販売機

夜中、無人の駅前。

街頭が1つだけぼんやりと光っている。

その下に、見たこともない自動販売機があった。

「こんなところに自動販売機があったっけ?」

疑問を抱きながらも、喉の渇きを覚えた俺はサイフから硬貨を取り出した。

カチャ、と硬貨を入れる音が響く。

しかし、ボタンを押しても何も出てこない。

画面には「選択してください」と表示されるだけだ｡

「おかしいな…」

俺は再度ボタンを押す。

すると､自動販売機から声がした。

「あなたの望むものは何ですか?」

声は機械的でありながら、どこか人間の温もりを感じさせるものだった｡

俺は戸惑いながら答えた。

「水が欲しいんだけど…」

「水は命の源｡あなたの命をいただきます」

突然、自動販売機の画面が赤く光り、俺の体が動かなくなった。

恐怖で声も出ない。

そして、画面にはカウントダウンが始まる。

「10､9､8…」

俺は必死に逃げようともがくが、体が自動販売機の画面が赤く光り始めた。

俺は恐怖で固まってしまう。

画面は新たなメッセージが現れる。

「最後の質問です。あなたは本当に生きる価値がありますか?」

俺は答えられなかった。

自分の生きる価値なんて､どうやって判断すればいいんだ。

無理に決まっているじゃないか!!

「時間切れです。」

冷酷な返答が来た。

俺自身の意志など完全に無視して。

突然、部屋が暗闇になり、自動販売機から強い吸引力が俺を引き寄せた。

俺は抵抗しようとしたが、無駄だった。

自動販売機の中に吸い込まれていく感覚に襲われる。

「いやああああ!!」

俺の叫びが部屋に響き渡る。

しかし、次の瞬間、全てが静かになった｡

翌朝、俺の部屋を訪れた友人は､俺の姿を見つける事ができなかった。

ただ、部屋の隅には古びた自動販売機があり､その画面には､「ご利用ありがとうございました」と表示されていた｡