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歌う狂気
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夜の静まりかえったスタジオで、売れないアイドルグループ「クレッシェンド」が最後のリハーサルを行っていた。
彼らの希望と夢は薄れていた。
なにせデビュー当時から人気が出てこなくて今でもただの地下アイドルグループの1つにとどまっているのだから。
それでも争い事がグループ全体を蝕んでいた。
それは無理もないことで、地下アイドルグループといってもセンターになれば他のメンバーよりも給料や待遇が必然的に良くなる。
だから争い事は収まる気配は無くて、メンバー同士の仲は悪いまま。
美咲を含めたこのアイドルグループは歌と踊りで観客を引き込むことが出来ず、それが彼女達の心に重いプレッシャーを与えていた。
いや、それだけじゃなくてルックスやスタイルも世間を賑わせているアイドルグループからすれば一段と劣っている気がしてならない。
だからこそ、未だにこんな小規模なステージでのライブの最後のリハーサルをしている地下アイドルグループに甘んじているのだけど…。
そんなある日、スタジオの片隅で見つかった古びた楽譜に目を奪われる。
楽譜の歌詞のタイトル
【闇に囁く歌声の呪縛の扉を開けて歓びを知る】
リーダーの美咲は他のメンバーたちにその歌を披露することを提案し、他のメンバーは興奮と不安が入り混じった表情を浮かべた。
良くも悪くも。
「これで何かが変わるかもしれないね!」
(でもセンターに相応しいのはあなたじゃなくて私…。)
ナツミは美咲をギラギラとした瞳で見つめる。
でも、隣のユリは少し怯える。
「でも、この歌詞って不気味だよね。」
だけど美咲とナツミはユリの言ってることを大して気にもせずに「心配要らないんじゃない、気にし過ぎだって…」とやんわりと言い返した。
そんなことよりも彼女達は明日のリハーサルを成功させることをただ考えていた。
そして夜が明け、最後のリハーサルステージで「クレッシェンド」は歌い始めた。
しかし、歌う度にメンバー達の表情がガラリと変わる。
嫉妬と憎しみ、怒りといったそれぞれのメンバーが他のメンバーに対しての憎悪を光輝かせる邪悪な笑顔を互いに見せ合うかのように。
それはまるで狂気に取り込まれていくかのように増幅していく。
センターを巡る争いも勃発し、舞台裏では暗闘が繰り広げられていた。
「私の方がセンターに相応しいに決まってるでしょう!あんた達よりずっと可愛いし、スタイルも良いから美咲の後のセンターは私で決まりなの!!」
「違う!私の方があんたなんかよりも歌が上手いんだから次のセンターは私一択でしょう!!」
「いいえ、私に決まってるじゃん!!」
「"私の方がセンターに相応しい"って冗談もほどほどにしてよ!!この私よりも不細工で歌もイマイチな癖に!!」
言い争いの影に隠れていた感情が爆破し、何故か床に落ちてあったナイフと鈍器をメンバー達はすぐさま拾い、殺し合いを始めていく。
(どういうことなの…なんでさっきまで無かったナイフと鈍器を拾って殴りあってるの…おかしいでしょ…デビュー当時から今までこんな酷い事なんてなかったのに…。)
ただただこの状況を傍観することしか出来ない美咲。
何故ならば急な金縛りによって体がガクガクと震えて動けなくなっているからだ。
(どうしよう、どうしよう…このままじゃ他のメンバーが…でも…もう皆はボロボロだから…私だけでもここからすぐ逃げなきゃ…!!)
美咲は殺し合いで一人また一人と血まみれになって死んでいく他のメンバーのことを考えていない。
彼女自身も心の中では他のメンバーなんて哀れみや見下すべき対象だと感じていたから。
(このまま巻き込まれるなんて嫌だ!!絶対に私だけでも……!!)
金縛りから必死に抜け出そうとした瞬間。
シュッバキイイイイ!!
ビシャァァァァァァ!!!
ゴホッゴホッゴホッ……。
頭と口から大量の血と激痛に見舞われる。
「なんで……他のメンバーはもう死んでいる筈なのに…??」
そう他のメンバーは全員死んでいた。
互いに嫉妬と憎悪を拗ねらせた殺し合いの末、一人残らず無惨な死体となっていた。
(なんで、なんで……どうして私は……。)
つい後ろを向いてしまう、激痛が走ったのは後頭部だったから。
透明で青白く、眼球のない若い女性が後ろに立っている…。
若い女性は笑っている。
死体となった他のメンバーが見せていた邪悪な笑みで。
女性は美咲に言う。
♡♡その血と眼球をチョーダイ♡♡
え……ちょ……冗談じゃ……。
ブシュウ!!
ビチャァァ!!
ガクッと倒れ込んで激痛のあまり涙を流す美咲。
嫌よ……助けて……死にたくない……誰か……。
息絶えるなかで助けを呼ぶ。
でも心臓は動かなくなり…。
♡取れた♡
女性は死体となった美咲の眼球を取り出してそのままスッと何処かへ消えた。
その日からこのリハーサル会場は二度と使われずに、すぐさま取り壊す事が決まったという。
彼らの希望と夢は薄れていた。
なにせデビュー当時から人気が出てこなくて今でもただの地下アイドルグループの1つにとどまっているのだから。
それでも争い事がグループ全体を蝕んでいた。
それは無理もないことで、地下アイドルグループといってもセンターになれば他のメンバーよりも給料や待遇が必然的に良くなる。
だから争い事は収まる気配は無くて、メンバー同士の仲は悪いまま。
美咲を含めたこのアイドルグループは歌と踊りで観客を引き込むことが出来ず、それが彼女達の心に重いプレッシャーを与えていた。
いや、それだけじゃなくてルックスやスタイルも世間を賑わせているアイドルグループからすれば一段と劣っている気がしてならない。
だからこそ、未だにこんな小規模なステージでのライブの最後のリハーサルをしている地下アイドルグループに甘んじているのだけど…。
そんなある日、スタジオの片隅で見つかった古びた楽譜に目を奪われる。
楽譜の歌詞のタイトル
【闇に囁く歌声の呪縛の扉を開けて歓びを知る】
リーダーの美咲は他のメンバーたちにその歌を披露することを提案し、他のメンバーは興奮と不安が入り混じった表情を浮かべた。
良くも悪くも。
「これで何かが変わるかもしれないね!」
(でもセンターに相応しいのはあなたじゃなくて私…。)
ナツミは美咲をギラギラとした瞳で見つめる。
でも、隣のユリは少し怯える。
「でも、この歌詞って不気味だよね。」
だけど美咲とナツミはユリの言ってることを大して気にもせずに「心配要らないんじゃない、気にし過ぎだって…」とやんわりと言い返した。
そんなことよりも彼女達は明日のリハーサルを成功させることをただ考えていた。
そして夜が明け、最後のリハーサルステージで「クレッシェンド」は歌い始めた。
しかし、歌う度にメンバー達の表情がガラリと変わる。
嫉妬と憎しみ、怒りといったそれぞれのメンバーが他のメンバーに対しての憎悪を光輝かせる邪悪な笑顔を互いに見せ合うかのように。
それはまるで狂気に取り込まれていくかのように増幅していく。
センターを巡る争いも勃発し、舞台裏では暗闘が繰り広げられていた。
「私の方がセンターに相応しいに決まってるでしょう!あんた達よりずっと可愛いし、スタイルも良いから美咲の後のセンターは私で決まりなの!!」
「違う!私の方があんたなんかよりも歌が上手いんだから次のセンターは私一択でしょう!!」
「いいえ、私に決まってるじゃん!!」
「"私の方がセンターに相応しい"って冗談もほどほどにしてよ!!この私よりも不細工で歌もイマイチな癖に!!」
言い争いの影に隠れていた感情が爆破し、何故か床に落ちてあったナイフと鈍器をメンバー達はすぐさま拾い、殺し合いを始めていく。
(どういうことなの…なんでさっきまで無かったナイフと鈍器を拾って殴りあってるの…おかしいでしょ…デビュー当時から今までこんな酷い事なんてなかったのに…。)
ただただこの状況を傍観することしか出来ない美咲。
何故ならば急な金縛りによって体がガクガクと震えて動けなくなっているからだ。
(どうしよう、どうしよう…このままじゃ他のメンバーが…でも…もう皆はボロボロだから…私だけでもここからすぐ逃げなきゃ…!!)
美咲は殺し合いで一人また一人と血まみれになって死んでいく他のメンバーのことを考えていない。
彼女自身も心の中では他のメンバーなんて哀れみや見下すべき対象だと感じていたから。
(このまま巻き込まれるなんて嫌だ!!絶対に私だけでも……!!)
金縛りから必死に抜け出そうとした瞬間。
シュッバキイイイイ!!
ビシャァァァァァァ!!!
ゴホッゴホッゴホッ……。
頭と口から大量の血と激痛に見舞われる。
「なんで……他のメンバーはもう死んでいる筈なのに…??」
そう他のメンバーは全員死んでいた。
互いに嫉妬と憎悪を拗ねらせた殺し合いの末、一人残らず無惨な死体となっていた。
(なんで、なんで……どうして私は……。)
つい後ろを向いてしまう、激痛が走ったのは後頭部だったから。
透明で青白く、眼球のない若い女性が後ろに立っている…。
若い女性は笑っている。
死体となった他のメンバーが見せていた邪悪な笑みで。
女性は美咲に言う。
♡♡その血と眼球をチョーダイ♡♡
え……ちょ……冗談じゃ……。
ブシュウ!!
ビチャァァ!!
ガクッと倒れ込んで激痛のあまり涙を流す美咲。
嫌よ……助けて……死にたくない……誰か……。
息絶えるなかで助けを呼ぶ。
でも心臓は動かなくなり…。
♡取れた♡
女性は死体となった美咲の眼球を取り出してそのままスッと何処かへ消えた。
その日からこのリハーサル会場は二度と使われずに、すぐさま取り壊す事が決まったという。
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