公爵は妻となった私よりも浮気相手を本気で愛し、新たな妻にしたいと思っていますが、絶対に許しません!

マミナ

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密告⑨

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私がいいようのない悔しい気持ちになっている間もウェルヘムはクルルギ大司教にまんまと騙されていることに気づかず、彼に上手いことおだてられているためか、気を良くしてしている。

スカーレットも同じのようだ。

「スカーレットよ、この贖宥状さえあれば私達二人は幸福を得られるとクルルギ大司教様から申し出られたのだ。それに彼が全面的な協力を得る事が出来れば、私と君の仲を邪魔するリリアンやラフェル達を黙らせることだって可能になる。」

「まあ、本当ですの!?ウェルヘム様!!あのお邪魔虫達が私達に口出しを封じる事が出来るのですか!??」

「ああ本当だよ。この教会がどれだけの影響力を持っているのか嫌という程分かっている筈だ!!その教会で教皇に次ぐ権力と財力を持っているのが今目の前にいる彼だ!!彼と力を合わせればあいつ等の干渉をうける事が無くなるんだ!!」

スカーレットのいうお邪魔虫とは恐らくリリアン様の事だろう。

あまりにも酷い物言いだ!

貴族や領主としての仕事を一途に愛してくれている妻を…!!

なんて奴等だ!!

心の中でわなわなと怒りがこみ上げていく。

リリアン様は気づいているのだろうか…?

それとも彼を一途に思うあまりまだ気づかずに仕事をこなしながらウェルヘム様の帰りを待っているのだろうか?

元々一途で真面目な性格の女性だ、結婚して夫婦にまでなった夫を疑うことなど余程の事情がない限り出来るものではないのも無理はない。

周囲の者たちも恐らく彼女に真実を伝えて辛い思いをさせるのは気が引けるのではないだろうか…。

そんな彼らにこの部屋で私たち以外誰もいないのを良いことに悪口や陰口を言い合う二人には憤りを抱くよりも呆れの感情の方が勝っている。

君たち疑うことなく相談している相手は聖職者の皮を被ったとんでもない悪魔だと気づかずにいるのだ。

彼を盲信している他の貴族と同じように。

◆◆◇◇◆◆


「しかし、この贖宥状はただではないのだろう。分かっているさ、クルルギ。一体いくらいるんだ、遠慮なく言ってくれてもいいぞ。私とスカーレットにとっては多大な利益をもたらしてくれる大事な大事な書類だからな。」

「それは大変ありがたい。そうですよ、この贖宥状はあなた方の為にご用意したものですから。とても、貴重な物ですので…それとシモニーに関しても現在では私の信頼していた部下の一人が辞めたばかりでして……もし良ければ辞めた部下の代わりの地位にあなたを推薦したいのです。」

「それは、始めて聞いたな……それで私がもし公爵の地位を捨てて君がカエサルに推薦して君の部下になった場合はそれ相応の待遇と報酬を得られる保証はあるのか??それが出来なければ、贖宥状はともかくシモニーの取引はしないぞ!」

あまりにも身勝手で愚かな考えだ。

リリアン様を初めとした親しい者たちに感謝の一つもない上に問題のある女性と不貞を働いていることを秘密にしてなんの責任も取ることなくアリエント教会の要職につこうというのか。

嘘はよしてくれ!!

私たちは何も聞いてはいないし、カエサル教皇はこんな滑稽無糖な取引などしない筈だ!!

カエサル教皇がどんな人柄をしているのか分かっているだろ!

クルルギ大司教!!

……いや、まさか彼は二人に真っ赤な嘘を…?

そんな筈はない、相手はれっきとした公爵だぞ…!!

もしかして彼はまた別のことを考えているのだろうか?

たからありもしないことをでっち上げているのだと私は感じた。


だが彼と話している二人は全く気づいておらず、目の前の贖宥状に目を輝かせて書類にサインをした。

そんな二人の様子をニヤニヤと歪んだ笑みを浮かべているクルルギ大司教に私は今までにない嫌悪感を抱いた。

贖宥状にサインを終えると意気揚々と笑顔で帰っていく二人に金蔓が出来たという風に笑みを浮かべてお辞儀をして見送ったクルルギ大司教に黙ったままお辞儀をして二人の姿が見えなくなるのを待った。

人影が見えなくなるとクルルギ大司教は「愚かな二人だ…」と小馬鹿にしたようにポツリと呟く。

私は何も言わずにそのまま教会に戻ろうとした時、黒くみずほらしいフードを被ったご老人がぽつんと寒さに震えた姿で教会の前に立っているのに気づいたので声をかけることにした。

「なんだ?どうしたんだマルクス。」

「いえ、教会の外に黒いフードをきたご老人が寒さに震えて教会の前に立っているので声をかけようとしているだけです。」

「声をかけるだけだそ。いいな。」

少し不機嫌気味な表情をしたクルルギ大司教に苛立ちを覚えながらも私は教会の前で震えている老人の元に急いで駆け寄ったのだった。













    
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